採用担当者に必要な「アサーション」とは?「関係性を高めるかかわり方」について解説
採用から始まり退職まで、企業内での「人」に関する仕事は、基本的に「人事部門」の担当です。経営と現場をつなぐ架け橋と言ってもよいでしょう。
組織や企業は「人」の集まりです。人間関係の善し悪しによって様々な問題が起こり、これを放っておくと経営状況の悪化を招くほどの大きな問題へと発展する場合があります。
特に新しい仲間を選ぶ採用にかかわる場面では、会社が発展できるような「良い人財(求める人財)」を見抜き採用する重要な役割が求められています。
今回は採用の際に、相手のコミュニケーション能力を見抜き、さらに自身のコミュニケーション能力を磨くための「アサーション」について解説していきます。
採用担当者として期待されること
「採用面接の際、相手のどこを見ると“良い人財”であると分かるのか?」という疑問が頭をよぎった方もいるのではないでしょうか。
人事担当・採用担当の「勘と経験」といった曖昧な基準に頼るのではなく、見極めのヒントとなるのが、相手のコミュニケーション能力です。
コミュニケーション能力は時として相手の態度や言葉遣い、人柄が表れます。日常の中でも、誰もが知っている有名人の配慮が欠ける言動によって、評価を下げてしまう状況を何度となく目にしているのではないでしょうか。
経済産業省の「社会人基礎力」(2006年提唱、2018年改訂)において「発信力」「傾聴力」「働きかけ力」などとして示されている「コミュニケーション能力 」は社会人として基本的で重要な能力と認識されています。
まさに「その人となり(人柄)」を明確に表す指標となるのです。
「その人となり(人柄)」を表すコミュニケーション能力の一つが、今回ご紹介する「アサーション」です。
「アサーション」は手法だけではなく、その考え方の中に「人とのかかわり方の基本的な哲学」が掲げられています。
その姿勢は、
- 自分も相手も大切にする
- 自分を知り、自分をコントロールする
- 相手への配慮
- 相手と言葉や言葉以外でかかわる 他
となります。
これらの姿勢が、社会人として求められている大切な「コミュニケーション能力」となりうる理由です。
そもそも「アサーション」とは何か?
「アサーション」という言葉は、聞き馴染みが無いかもしれません。語源は諸説ありますが、ラテン語の「ad(~へ)」と「sert(つなぐ)」が組み合わされた造語といわれています。まずは、その言葉の意味から考えてみましょう。
アサーションの定義
アサーションとは、「自分の意見や要求を、相手を配慮しつつ正当かつ誠実に自己主張すること」です。非常に大切な能力なのですが、実はほとんどの人が実践できていません。
では、アサーションのポイントを一つひとつ見ていきましょう。
「自分の意見や要求」
例えば、「何でも良いので、人生でただ一つ望みがかなうとしたら何がしたい(何が欲しい)?」と問われると、かなり悩んでしまう方が多いと思います。
自分が何を欲しているのか、言葉にすることはとても難しいものです。相手に伝えるための言葉に変換して初めて「意見」や「要求」となります。
「相手を配慮しつつ」
そもそも「配慮に正解はあるのか?」と考えてしまいます。こちらがどんなに配慮しても、相手に伝わっていない経験をたくさんの方々がされていると思います。
「配慮」とはつまり、「目配り、気配り、心配り」です。ただし、これを実践するには人の意見に流されない、自分が大切にしている信念や価値観といった「自分軸」をしっかりと確立していなければなりません。そうでないと、ただの気のいいお調子者と評価されてしまいます。
「正当かつ誠実に自己主張すること」
「自己主張」とは、自分の権利や要求をしっかりと伝えることです。
そして「正当かつ誠実」とは、適切なことを歪めることなく(素直に)表すことです。
まとめると「本当に言いたい意見や要求を目配り、気配り、心配りをしながら、適切に歪めることなく、しっかりと伝えること」となります。
この点を意識しながらコミュニケーションをとるのは、なかなかの難儀です。そこで、少し意識するだけで簡単に実行できる方法を以下に紹介します。
なぜ、アサーションが必要なのか? その効果と効能
「アサーション」が今注目されているのは、人間関係がどんどん希薄化していく環境の中で、経営の危機にも直結する「職場環境」や「働き方」に関する問題が明るみに出てきたためです。
例えば、国が主導をしている「メンタルヘルスマネジメント」の必要性や、2022年4月から中小企業を含む全企業に義務化された「パワーハラスメント対策」 などがあげられます。このようなコミュニケーションに関する問題は解決法を見つけることが難しいです。
そこで「アサーション」が注目されるようになりました。
「アサーション」は、考え方の基盤とテクニックがしっかりと確立されています。その時のコミュニケーション対策のみならず、対立を起こさないための予防策にもなります。余計な問題や争いは避けたい…というのが、人としての心情です。「アサーション」は、その思いを実現してくれます。
アサーションの活用例
では、アサーションの活用例を見ていきましょう。
アサーションは、対面・オンラインに関わらず色々な場面で活用できる方法です。
1対1から、大人数のコミュニケーションまで応用がきくポイントを見ていきましょう。
今回は採用の流れの中で、「対面コミュニケーション」が必要となる「面接」の場面における、次の2点について考えていきます。
- 面接者側(自分)のコミュニケーションのクセを知る
- 応募者のコミュニケーション能力を評価する
まずは自分を知ることから始め、次に自分を基準として相手を知るという方法で進めていきます。
やってみよう!「アサーション」準備編
まずは、自分自身が普段どのようなコミュニケーションを行っているのかをチェックしてみましょう。
「人」は相手と向き合ったとき動物的な本能に従って「攻撃」か「逃避」かの態度を選択しています。その際相手や、その行為によって評価や判断を無意識に行っているのです。
例えば、自分より強い人や権威のある人(上司や雇用者など)が目の前にいると想像しましょう。その時に、真っ直ぐ相手の黒目を直視するのか、もしくは少し目線をそらすのか。
では、相手が自分よりも弱い立場(小さな子供や小動物など)の場合はどうでしょうか。
普段は特に意識をせず、自然にまかせた態度を相手に見せていると思います。
相手との間に信頼関係がある場合は、どの態度でも特に問題はありません。しかし、初対面の相手や関係性が薄い相手の場合は、このコミュニケーションのとり方が相手に誤解を与えてしまう場合があります。
面接の場面では、ほとんどの相手が初対面です。相手にとっても、その会社と初めて関わる機会でもあります。第一印象であらぬ誤解が生じてしまうと、欲しい人財を逃してしまう可能性が生じます。
そういったトラブルを防ぐためにも、自身を知り、自分を常に望ましい状態にコントロールできるようにしておきましょう。
また冷静な時にはある程度コントロールできますが、緊張していたり、感情的になっていたり、自分に余裕がないときはコントロールがきかなくなります。このことを踏まえて、自分のタイプに合わせた対策も考えていきましょう。
準備1:普段のアサーション度は?
まずは、普段のあなたのアサーション度を測ります。
以下の質問に〔○、×〕で答えて下さい。
2) あなたは自分が褒められた時、素直に対応できますか?
3) あなたは自分の長所や、なしとげたことを人に伝えられますか?
4) あなたの行為を批判されたとき、受け答えができますか?
5) あなたは自分が神経質になっていたり緊張したりしているとき、それを受け入れることができますか?
6) あなたに対する不当な要求を拒むことはできますか?
7) あなたは見知らぬ人たちの会話の中に、気楽に入っていくことができますか?
8) 相手が長話をしているとき、あなたは自分から話を切る提案ができますか?
9) あなたは自分が知らないことや分からないことがあったとき、そのことについて説明を求めることができますか?
○の数はいくつありましたか?
5個以上あった場合は、あなたのアサーション度は普通より高いと言えます。
4個以下だった場合は、アサーション度を上げていきましょう。
準備2:「コミュニケーション・タイプ」を知る
さらに、アサーションに関してての「3つのコミュニケーション・タイプ」に分けることができます。について説明します。
■攻撃タイプ(アグレッシブ)
強がり、尊大、無頓着、他者否定的、操作的、自分本位、相手に指示、優越を誇る、支配的、一方的に主張する、責任転嫁、「私はOK、あなたはOKでない」
■調和タイプ(アサーティブ)
正直、素直、積極的、自他尊重、自発的、自他調和、自他協力、自己選択で決める、歩み寄り、柔軟に対応する、自分の責任で行動、「私もOK、あなたもOK」
■非主張タイプ(ノンアサーティブ)
引っ込み思案、卑屈、消極的、自己否定的、依存的、他人本位、相手任せ、承認を期待、服従的、黙る、弁解がましい、「私はOKでない、あなたはOK」
自分や面接者、また周囲の人のタイプをチェックしてみましょう。
準備3:「かかわり方のクセ」を知る
次に自分の「かかわり方のクセ」を分析します。(今回は簡略化した分析となります)
Step1:今までで「コミュニケーションがうまくいかなかった」と感じた経験を1つ思い出してください。
例) トラブルを起こした部下に注意をしたが、うまくいかなかった
Step2:そのときの「自分と相手との関係性」を明確にしてください。
例) 自分:上司 相手:自分の部下
Step3:そのとき特に気になった「相手の行為」と、「自分の感情」を思い出してください。
例) 相手の行為:最後まで話を聴かず、口答えをした
自分の感情:カッとなり、叱責した
Step4:そのときの「自分の態度」をアサーションの3つのコミュニケーション・タイプで分析してください
例) 自分の態度:「攻撃タイプ」(カッとなる、叱責する行為、支配的、他者否定の特徴から)
ちなみに、今回の例では相手の態度も「攻撃タイプ」(口答え、責任転嫁、自分本位の特徴から)といえるでしょう。
人はコミュニケーションをとる相手のタイプによって、自分のコミュニケーションスタイルを使い分けています。それは、「相手との関係性」や「その時の相手の態度や発言」などにより感情が反応し、その結果「自身の態度や発言」として現れます。
先ほどの例で、あなたが上司だとします。部下が失敗し、部下に注意している場面で「口答えをされた」場合、恐らくあなたは「相手のために注意をしているのに…」と怒りを感じたり、カッとなって強い口調でさらに叱責したりするかもしれません。このときのあなたは「攻撃タイプ」の態度になっています。
今度は自分が部下だった場合、上司があなたの功績を否定した(例えば「君一人の力じゃないよね」と言った)とします。その際、相手の態度にドキドキしたり、普段からそういう見方をされているのかと怖れたりすることで、何も言い返せない場合もあるのではないでしょうか。そのようなケースの時は、「非主張タイプ」の反応をしていると言えます。
また面接中、初対面である応募者の学生が時々「タメ口だった」場合、怒ったり、ドキドキしたりすることはなく、いたって冷静に「残念だな」と思ったとします。このような状況が「アサーティブタイプ」の対応です。
これらの場合は、特に自分自身をコントロールしている意識は持っていないはずです。しかし今の自分が置かれている状況を少し意識することにより、どのような相手であっても「自分の態度や発言」をコントロールすることが可能となります。
そのための一つのヒントとして「感情のシフトレバー」をイメージし、常に自分の状態がどこにあるのかを確認するとよいでしょう。
- 穏やかで冷静な時は、ニュートラルの状態〔アサーティブ〕
- 怒りの感情が沸いている時は、前進の状態〔攻撃〕
- 不安や怯え、恐れている場合は、後退の状態〔非主張〕
自分自身をコントロールするコツは、まず今の自分の状況に気づくことです。
コミュニケーションがうまくいかないパターンは、ひとつとは限りません。ここでは1パターンで簡略化した分析を行いました。様々なパターンに応じた分析と対応を行うと、コミュニケーションの行き違いやハラスメントの危険を避けることにもなる「かかわり方のクセ」への的確な理解と対応ができるようになります。興味を抱いた方は研修などで理解を深め実践してみましょう。
実践の前に・・・注意したいこと
さあ、いよいよアサーション実践です。次の点に注意して実践しましょう。
●アサーションは、即効性のある万能薬ではない
日々の努力が、アサーション度を上げることに結びつきます。また、「ストレスにさらされ心に余裕がない」「極度の緊張で頭が真っ白になっている」「ネガティブな感情を解消できていない」など、お互いの心の準備が整っていない状態では、アサーティブな関わりは難しくなります。
●テクニックの濫用は逆効果
アサーションにはいくつかのテクニックがあります。状況やタイミングを選ばず、また安易にテクニックだけを濫用することは、かえって相手との信頼関係に溝ができ、逆効果となってしまいます。一番大切なことは、相手との信頼関係を少しずつ築いてアサーティブなコミュニケーションを目指していくことです。
●自分を表現することは難しい
アサーションは「相手も自分も大切にするかかわり方」です。相手や自分にとって正直で歪みのない言葉で自己主張することが求められます。しかし、それは、色々な事柄に配慮し、適切な言葉の選択をコミュニケーションの中で瞬時に行うことが必要です。そこを意識せずに「つい、正直にストレートな言葉で意見を言ったら、相手を傷つけてしまった。」「自分の立場や影響力を考えず、素直な意見を発言したら、相手が萎縮してしまった」など、誤解を与えてしまう恐れがあります。そう考えると、慣れないうちは、かなり難易度が高い方法と言えるでしょう。まずは、できる所から少しずつ慣れていくことをおすすめします。
やってみよう!「アサーション」実践編
最近は、コロナの影響でオンライン面接も増えています。今回は、オンライン面接を想定して考えていきましょう。オンライン面接時の場合、得られる情報が偏るため サーションの難易度が上がります。
実践1:伝え方を工夫する~DESC法で伝えよう
アサーティブに伝えるための方法として「DESC法」があります。
この「DESC」とは、4つのステップの頭文字です。
この方法で、相手に対して「明確に、端的な表現」で伝えることができます。
Describe 描写 : 客観的な事実や概要を述べます
Explain 表現 : 述べた事実に対する意見や理由を述べます
Specify 提案 : 提案や要求を述べます
Choose 選択 : 提案や要求に対する相手の意向を確認します
また、DESC法は伝えたい表現を組み立てるために頭をフル回転させます。よって感情的になる余裕はなくなり、感情のコントロールがしやすくなるメリットがあります。
【面接者として気をつけたいこと】
オンライン面接では、特にネット環境によって写りが悪く相手の様子がつかめない、マイクに雑音が入って聞き取りにくい、長時間話すことが困難など対面の面接とは異なる問題が発生しがちです。
例えば、相手のマイクに大きな雑音が入ってほとんど相手の声が聞き取れなかった場合、DESC法で伝えてみましょう。
伝える前後に「相手への配慮」の言葉を添えると、よりアサーティブなコミュニケーションになります。
〔例〕
「申し訳ありませんが、少しよろしいですか?」 相手への配慮
「ネット環境にトラブルがあるようで、声が聞こえにくい状態です。」 事実を伝える
「とても興味深いお話しでしたので、もう一度お聞かせいただきたいです。」 思いを伝える
「お伝えいただく前に、お互いの音声を一度テストしても良いでしょうか?その上で、続きをお聞かせください。」 提案を伝える
「よろしいでしょうか?」 提案の返事を確認する
「お手数をおかけします。」 相手への配慮
上記は一例ですので、色々な伝え方を考えてみましょう。
【応募者の伝え方をチェック!】
応募者のコミュニケーション能力をはかる方法として、言いたいことをきちんと伝える能力があるかをDESC法でチェックすることができます。また相手の伝えていることが理解できない場合もDESC法を使って質問し、理解を深めることができます。
面接時、応募者への問いかけにも応用できますので試してみましょう。
〔例〕
面接者 「あなたは弊社に、どのような印象をお持ちですか?」
応募者Aさん「御社は従業員の方がのびのびと働いていて、やりがいのある仕事についているのだと感じました」
応募者Bさん「大学の先輩が御社に入社し、営業をしています。先輩が、給与も待遇もとても良い会社だと推薦してくれました。先輩はスポーツ系の実力のある方です。その方が強くすすめるのだから、素晴らしい会社なのだと思います。」
応募者AさんとBさん。2人のコミュニケーション能力は、どちらが高いと感じるでしょうか。そもそもコミュニケーションは、相手に伝わるように伝える努力が必要となります。
このことを踏まえて、分析してみましょう。
応募者Bさんは、余計な情報が付加されて「結局質問に対する答えが何なのか?」よくわからない表現です。
特に面接で質問をした場合、返答は相手の言葉を聞くことしかできません。
冗長な返答は、記憶に残りにくく相手の理解を阻害します。また、怒りの感情を刺激する場合もあります。
もう1つ問題があります。それは「誰の意見なのか?」ということが、不明瞭です。
今回は特に、自分の考えを問われているわけですから、「私は・・・と思います。」と明確に伝える必要があります。これを I(アイ)メッセージ といいます。アサーション」のスキルの1つです。
応募者Aさんは、どうでしょうか?
まずは、しっかりと I(アイ)メッセージ で自分の考えとして伝えることができています。
また、質問されている内容「弊社の印象」について的確に返答ができています。とてもシンプルな表現に要約されており、理解もしやすい返答です。
この場合、コミュニケーション能力が高いのは応募者Aさんとなります。
もう1つ、応募者Aさんの返答についてコミュニケーション能力が優れている点があります。それは、「DESC」でまとめているということです。
「やりがいのある仕事についているのだと感じました」 理由や思いを伝える
さらに応募者Aさんの発言を発展させてみましょう。
事実とその理由や思いを伝えるだけでも、相手にとってはとても聞きやすい内容となりますが、ここでは言葉を添えて膨らませるとどのようになるかを見ていきます。
「笑顔でのびのび働けるということは、御社が人を大切にしている証拠です。可能であれば、私は営業職として社会へ向けて御社の製品(商品)はもちろんのこと、御社自身やそこで働く社員の良さをたくさんアピールしていけたらと思っています。」提案や要求を伝える
「このような理由で、私は御社への入社を強く希望しました。」 結論を伝える
DESC法を使うことでスマートな文章の組み立てが可能になります。また、相手が理解しやすい伝え方と、自分の意見を明確に伝えることもできるため相手に好印象を与えます。
実践2:もう一人の自分を意識する~今の自分の感情に気づこう
【もう一人の自分とは】
自分を客観視できるイメージ法が「もう一人の自分」です。
感情に任せた言動では、アサーションは不可能です。常に「もう一人の自分」から今の自分の感情をチェックし、相手を尊重した自己主張をすることを目指しましょう。
【面接者の態度から感情をチェック!】
社会人になると周囲の人々と協調・協力するコミュニケーション能力、そしてそのための「自己コントロール力」が求められます。
相手の感情が今どのような状態かを知ることで、相手の「自己コントロール力」の有無を知るためのヒントが得られます。そのためには「3つのタイプ(攻撃⇔アサーティブ⇔非主張)」の特徴を参考にします。
ここでは、相手の振る舞いを「3つのタイプ」で見ていきましょう。
- 常に前のめりで、声を張り上げ、人の話をあまり聞かないところが見受けられると「攻撃タイプ」
- 消極的で、言い訳が多く、自分を否定するような発言が多い人は「非主張タイプ」
- 素直な受け答えで、周囲と調和的で、配慮ある言動を行う人は「アサーティブタイプ」
「攻撃タイプ」や「非主張タイプ」の場合は、感情に流されやすい特徴を持っているので「自己コントロール力」は低いと判断できます。一方で「アサーティブタイプ」の場合は、冷静さを保ち、周囲を客観的に見ることができるので「自己コントロール力」が高いと言えます。
ここまでの分析は、相手の特徴を決めつけるためのものではありません。
ある程度、相手がどのようなタイプであるかを理解するための1つのヒントとして捉えてください。
実際には、しっかりと掘り下げて話を聞くこと、また自分を振り返り自身の態度を変えることにより相手の状況も変わる可能性があることに注意しましょう。
実践3:自分なりの「アサーション」の方法を身につける
前述した以下の3つが、代表的なアサーション方法です。
- 「DESC法+配慮」で伝える
- 感情のレバーを使い、もう一人の自分を常に意識する
- 自分の考えは「I(アイ)メッセージ」で伝える
しかし自分自身に余裕が無い場合や、慣れていない場合は上記の方法を実践するには難しいこともあります。
「アサーション」を習得するために、以下を基準に自分に合った方法を見つけてみましょう。また、応募者に対しても以下の基準を応用することが可能です。
- 感情のコントロールをする
- 肯定的な言葉を選ぶ
- 素直に、誠実に表現する
- DESC法で順序良く、配慮の言葉を加えて伝える
- 自分も相手も大切にする
まとめ
今回ご紹介した場面以外でも、日常の色々な状況や場面でアサーションスキルを活用することが可能です。
●ハラスメント防止
「ハラスメント」の種類は色々ありますが、基本的にアサーションとは逆の「相手を傷つける」または「自分が傷つけられた」と感じる行為です。その代表としては、上司から部下への権力を振りかざしたパワハラ。または、部下から上司への「ハラスメント防止法」を盾にした逆ハラなどがあります。アサーションで相手への配慮を意識することで、ハラスメント防止へとつながります。
●社内外での円滑なコミュニケーション
相手に対する配慮・気遣いがある行動を指します。例えばや電話やメールの受け答え、わかりやすい書類やプレゼン資料等の作成などがあります。
●相手や周囲からの信頼を得る
アサーティブな表現や態度を習慣化することにより、職場の同僚にとどまらず、上司、部下や後輩、顧客や取引先、身近な家族や親類に至るまで「信頼できる人」という印象を強く与えることができます。
●感情のセルフコントロール
感情は一度爆発してしまうと、自分では収拾がつけにくくなります。アサーションを身に付けることにより、怒りの感情が自然と鎮まり相手へ冷静に配慮できる、つまり自分で感情を爆発させないようにコントロールすることができるようになります。
●説得や調整場面での、Win-Winな交渉や対立の防止
頭に血が上った状態では、相手の要求や交渉戦略など読み取ることが難しくなります。よりよい調整が必要な場面では、冷静かつ正直・誠実な態度と表現で臨むとお互いが納得いくWin-Winな交渉が行えるようになります。
●社員や部下の成長促進
昔の部下育成は「叱ってなんぼ」という考え方が主流でした。常に、能力や知識の足りない部分を見つけ叱咤激励していたわけですが、実はそれが逆効果をもたらすことも最近ではわかってきています。社員や部下の成長を促進させるためには、ただ叱ったりするのではなく、冷静沈着にDESC法に沿って改善点をしっかりと伝えることで効果が加速します。
「アサーション」のスキルは毎日意識して使うことで、習得することができます。
今回は、その一部の方法をご紹介しました。
効率的に習得するためにはプロの説明やフィードバックを利用して、体系的に習得することをおすすめします。
「アサーション」は、誰にとっても心地の良いコミュニケーションです。職場で使い続けていると、自然と周囲に伝播していきます。その伝播は広がり、いずれ組織全体へと浸透し組織の環境までも変えることが可能となります。
また職場でのアサーティブなコミュニケーションは、関係する人々の意識や態度を変え、働き方そのものを変える威力を持っています。働き方改革の第一歩として、良好なコミュニケーションを職場に広げるような「アサーション」を活用してみてはいかがでしょうか。
参考図鑑
- 「三訂版 アサーション・トレーニング: さわやかな〈自己表現〉のために」 平木典子(著)、日本・精神技術研究所
- 「アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法 (講談社現代新書)」 平木典子(著)、講談社
- 「自己カウンセリングとアサーションのすすめ」 平木典子(著)、金子書房
- 「アドラーに学ぶ職場のコミュニケーション心理学」 小倉広(著)、日経BP
- 人材採用・育成 更新日:2022/11/01
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