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頑張るお母さんが「自分らしく生きてほしい」。 テレワークが叶える自由な働き方で地域活性化へ

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全国11万人の主婦会員を中心に、テレワークを活用した多様な働き方を提供している株式会社キャリア・マム。女性のキャリアと社会をつなぐという理念に基づき、近年は全国の自治体や官公庁とも連携して、テレワークによる地域人材の就労支援の裾野拡大にも貢献しています。
今回は、審査でも評価の高かった「地域産業の活性化や地域情報化の促進等の地域課題解決への寄与につながる取組」や、キャリア・マム設立の思い、テレワークの可能性などについてお話を伺いました。

【総務省主催】「テレワークトップランナー2023 総務大臣賞」とは

総務省では、ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であるテレワークの普及促進のため、先行事例の収集・表彰を行っています。
2023年度は、テレワークの十分な活用実績に加え、「テレワークの活用による経営効果の発揮」、「テレワーク時のコミュニケーション・マネジメント面の課題解決」、「地域産業の活性化や地域情報化の推進等の地域課題解決への寄与につながる取組」という3つの観点も重視し、審査が行われました。

きっかけは「頑張るお母さん」をサポートしたい思いから

——キャリア・マムを立ち上げた経緯を聞かせてください。

まず、1995年にキャリア・マムの前身である「育児サークルPAO」のスタートがあります。当時は阪神淡路大震災をきっかけに、さまざまな民間NPOが誕生し、またWindows95の発売でパーソナルコンピュータが一般家庭に広がった年でもあります。当時は「女性は結婚・出産したらキャリアを捨てて母になる」という考え方が主流でしたが、私にとっては違いました。家庭に入ると誰からも評価されていないという気持ちになり、自分のよりどころが分からなくなったのです。

子供が1歳の時に「子宮頸がんかもしれない、生きられる確率は6割」と言われた時に人生の最後を意識しました。そして、「これからも生きることができるなら、お母さんたちが自分を大切にできる環境をつくりたい」と強く願うようになりました。子供の保育園で出会い、「女性の働き方・生き方を変えたい」という同じ志を持っていた友人もがんを患っていましたが、再発から数年で人生を終えました。そのことも、私にとっては大きかったと思います。

家庭はもちろん大切ですが、私自身の出産や病気を機に、自分らしく生きるためには働くことも大事なことだと気付いたのです。

これらの出来事をきっかけに、主婦が持つ経験や能力を生かした、多様な働き方ができる場を提供することを考えるようになりました。そして、自分らしく頑張るお母さんの姿を子供たちに見せたいという思いから、翌年設立した任意団体に「キャリア・マム」と名付けました。

お母さんたちが自分の生きてきた時間を、すべてキャリアとして活用できる場をつくりたい。それが「キャリア・マム」の原点なのです。

BPOとテレワークのシナジーが地域を救う

——現在の事業内容を教えてください。

事業の柱は3つあります。

1点目はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)です。約11万人の主婦会員のうち、年間約3,000人の地方在住の自営型テレワーカー、業務委託スタッフに対してさまざまな業務を発注しています。

内容は入力作業、画像収集、検索、コール業務などさまざま。しかし、パソコンとインターネット環境さえあれば、場所を問わず働いてもらえるので、30〜40代のお母さんを中心に、家族の介護でフルタイム勤務ができない方や、定年がないので70代で活躍されている方もいらっしゃいます。

2点目は、官公庁や各都道府県市区町村から受託運営する、テレワークを活用した在宅ワーカーの育成・再就職支援事業です。対象となるのは主に育児・介護を機に離職した女性で、地域でのセミナー、交流会、マッチング等、さまざまな事業を行うことで、地域産業の活性化や情報提供、そして各地域での就業実績につなげています。

3点目に、キャリア創業支援のためのインキュベーション施設として、保育室を併設した「コワーキングCoCoプレイス」の運営です。テレワークで働く人に、子供や家族の近くで働ける場所を提供し、地域での雇用創出や起業を支援しています。特に多摩本社の1号店は厚生労働省と東京都多摩市に認定されたコワーキングスペースということで、地方にも知名度が広がっています。

業務の振り分けに関しては、業務管理とヘルプデスクを分けるなど、適材適所に配置することで、組織をつくっています。仕事内容もアシスト業務を経るなど、段階を踏むことで自信をつけてもらっているので、責任者になりたいという人も増えました。業務委託でもマネージャーになっている人はとても優秀ですね。

そうした組織づくりが整っていない時代は辞めていく人もいましたが、現在は仕事の成果に対して指標を用意し、評価点をつけて管理しているので大きく改善されています。

——BPO事業に力を入れた理由は何ですか?

主婦の多くは企業に勤めていた経験があり、多彩なキャリアを持っています。しかし、育児や介護があるため通勤を含むフルタイムで働くことは難しい。一方で、企業は短時間勤務の従業員が増えると、成果を出すためのマネジメントが難しくなります。

そこで、勤務時間のばらつきについて、テレワークで働く従業員をチーム化することで整えれば、効率を優先する企業のTPOに対応できると考えました。キャリア・マムの会員は、1カ月に30時間しか働けない人でも、時間分はしっかり利益を上げることができます。
また、東京一極集中が続く中、都心では労働力不足なのに対して、地方では主婦がキャリアを活かして働けるシーンが限られます。つまり、東京であふれた仕事を、テレワークを活用して地方在住者に発注すれば、Win-Winとなるわけです。東京に住んでいる人の平均年収は高く、地方だと平均年収が低い傾向がありますが、住んでいる場所に関わらず、その人の能力を生かすにはテレワークが最適だと思っています。

なにより、私は従業員に働くことを楽しんでほしいと思っています。首都圏以外の地域において、そうしたアウトソーシングの仕事は探しにくいなかで、キャリア・マムでは働きがいを感じてもらえるような仕事を提供できるよう努めています。

テレワークを活用して地域産業の活性化へ

——地域産業活性化の活動について教えてください。

埼玉県のご担当者から「新しい働き方を創りたい」という相談をいただいたことがきっかけです。主に官民共働で在宅ワーク就業支援、スキルアップセミナー、マッチングの情報発信等を行っています。

弊社の特徴は、職業訓練だけ、就職斡旋や派遣紹介だけでなく、コミュニケーション力やタイムマネジメント術なども教えた上で、企業とのマッチングまでサポートすることです。テレワークを活用するビジネスモデルを増やせば地域に人材が育ち、人材が育ってくれば地域企業とのマッチングが可能になります。そして結果的に地域産業の活性化につながります。さらに、テレワークを推進する企業が増えれば、U・Iターンや二拠点居住などで人材を引き寄せることも可能でしょう。

——今も人材不足を課題としている自治体は、どうすればよいでしょう?

私たちがお手伝いしているのは、テレワークによって今までになかった働き方が実現できることを自治体の方々へ伝え、地域に新しい雇用や事業を創出するきっかけを作ることです。埼玉県の実績を皮切りに、ほかの自治体からもお声がかかるようになりました。

私たちには、もともとBPO事業で培ったテレワーカーの育成ノウハウがあったこともあり、新しい働き方の始め方や運用方法を提案できる強みがありました。ただ、多くの人は従来の働き方や雇用しか知らず、会社に通わない働き方があることを知りません。仮に個人事業主になったとしても、仕事を得るためのビジネススキルがないと続きません。そのため、行政・自治体の方々には私たちの活動を通じて、こんな働き方があるんだ、と知っていただくことや、地域の方に必要なビジネススキルを学べる環境を用意することが重要だと感じています。

テレワークが「自分らしく生きる」を叶えてくれる

——地方でテレワークを定着させる方法とは?

テレワークなら広いオフィスを必要としないし、何より人材活用のチャンスが広がります。テレワークを阻害してきたのは、組織的な意識や慣習ではないでしょうか。必要なのは、管理者層に使いやすいツールやコミュニケーション方法が広がることかもしれません。

また管理職に多いのが、テレワークへの不安や心配で従来の働き方から脱せないケースです。働いている姿を見ていないと、社員が仕事をサボるのではないか、あるいは働きすぎてしまうのではないか、など。ただ、ここで考えてもらいたいのは、テレワークによる効率と成果です。地方でも住まいと会社が離れていて、通勤に1~2時間かかることも珍しくありません。なかには新幹線で通勤している人もいるかもしれません。ただでさえ人手不足の状況で、通勤時間等を考慮して人材を厳選する余裕もありません。

従来の働き方に固執するのとテレワーク導入とで、企業としてどちらが効率的で成果が上げられるかを実感していただければ、全国の地域でも自由な働き方が定着していくと感じています。

——今後の活動やテレワークへの思いを教えてください。

働く側からすると、テレワークが嫌だという人は少ないと思います。かつては顔が見えないことへの不安や孤独感があったかもしれませんが、デジタルツールの急速な発達もあり、コミュニケーションの壁はかなり解消されました。

テレワークが叶えるのは、自分らしく生きることです。住む場所はもちろんですが、大切な家族が置かれている状況に捉われることなく働くには、テレワークしかないと考えています。

多くの人がテレワークによってキャリアを諦めず生き生きと働けるよう、今後も私たちの活動を通じてテレワークの価値を伝えていけたらと考えています。

  • $タイトル$
  • 株式会社キャリア・マム
    代表取締役
    堤 香苗さん

    神戸女学院高等学部、早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。大学在学中よりフリーアナウンサーとしてTV・ラジオのDJ、パーソナリティとして活躍。結婚や出産に関わらず、仕事と家庭のどちらも大切に自分らしく働きたい女性たちの活躍の場を提供することを志し、株式会社キャリア・マムを設立。女性の再就労支援実績が認められ、受賞歴多数。
    「女性のキャリアと社会をつなぐ」を経営理念とし、ライフイベントを機に離職した女性たちの再就業や起業といった新しい働き方を推進しています。

  • 労務・制度 更新日:2024/02/07
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