中小企業のメンタルヘルス対策に使える助成金とおすすめサービス
セルフケア
労働者自身が自分で行うケアです。ストレスが溜まっていないかを定期的に確認し、ストレスケアを自分で行うことで、メンタルの不調を事前に予防。事業者も、さまざまなセルフケアを紹介するなどして労働者のセルフケアを支援します。
ラインによるケア
事業場の管理監督者が配下の労働者に対して行うメンタルケアのことです。職場の労働環境や部下の相談に対応し、働きやすい環境を整えることで、職場全体のストレスを解消する方向に働きかけます。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医や保健スタッフによるケアです。産業医や保健スタッフと契約をして、事業場内で労働者や管理監督者の支援を行います。人事労務担当者も労働者や管理監督者、保健スタッフの間に立って調整をしたり、メンタルヘルス対策の企画立案を行ったりといった形でケアを支援します。
事業場外資源によるケア
事業場外のメンタルヘルスクリニックなど専門機関の支援を受ける形のケアです。事業場外とのネットワークを構築し支援を行います。
メンタル不調に陥ると、注意力が散漫になりなかなか仕事に集中できなかったり、ミスが多発して業務に支障をきたしたりします。仕事でミスをすると、自分を責めてさらにストレスがかかり、メンタル不調がひどくなって最悪は休職、退職に追い込まれる労働者も多い点が、メンタル不調の危険な点です。
また、企業活動の中枢を担う中間管理職は、ストレスがかかりやすい立場であり、管理監督者を務める前に、自身がメンタル不調に陥る可能性があります。役職者が休職や退職になると、企業としては大打撃です。
特に小規模事業場において従業員の休職や退職は、事業の運営に大きな影響を与えます。1人退職者が出ると、現在の人手不足の情勢では代替え要員の確保が難しく、ほかの従業員への業務負担の増加から職場環境が悪化する可能性があります。従業員の退職が相継げば、企業の存続そのものに影響を与える可能性があるのです。
メンタル不調は、誰にでも起こり得る状態であり、周囲が不調に気づいて早めにフォローできるかどうかで、健康な状態に復帰できる時期に大きな差が出ます。また、メンタルヘルス対策を積極的に行うことで、メンタル不調を起こしかけていた従業員を早期にフォローすることが可能です。
これは、政府が推進する「働き方改革」にも共通することが窺えます。働き方改革の目的の1つに「長時間労働の是正」があります。長時間労働はメンタル不調に陥る可能性があり、長時間労働が改善することで、メンタル不調の予防に繋がります。従業員が働きやすい職場で健康に働くことが、企業の組織活性化や業績向上をもたらすのです。ワーク・ライフ・バランスの推進は、従業員にとってのストレスの軽減と深い関係があるのです。
また、従業員は健康な状態を保ちやすくなることで、仕事にも意欲的に取り組めるようになるでしょう。ひいては、生産性が向上するという結果に繋がるのです。
従業員が元気で活気のある企業は、当然ながら業績もアップしやすい環境を醸成できます。業績がアップすれば、企業イメージも良くなり、「さらに事業を発展させていける」という好循環が期待できるでしょう。
ワーク・ライフ・バランス推進が業績アップに繋がると言われるのはこのためです。家族と過ごす時間や趣味の時間を大切にしたいという従業員の希望もあるでしょう。「プライベートでのスキルの向上や心身のリフレッシュにより仕事上でのパフォーマンスが向上し、仕事の成果が上がる」この好循環が、企業にとっても生産性の向上をもたらすことになります。
短時間で効率よく仕事が行えるようになれば、企業にとっても時間外労働の減少・人件費の軽減効果が生まれます。短時間で業務が行えれば、従業員もますますプライベートに時間を使えるようになります。心身共に健康を維持するメンタルヘルス対策にはこのようなメリットがあるのです。
少子高齢化の影響で、労働者人口はこれからますます減少し、若者の採用が簡単にいかない時代になりつつあります。特に、中小企業にとって現在働いている従業員は、貴重な労働力であり、少しでも長く勤めてもらうことが重要です。
従業員がいきいきと働くことをアピールすることで企業のイメージアップに繋がり、採用募集が増え、人手不足解消にも繋がります。人手不足問題が深刻化している現代で、中小企業が生き残るためには人材の確保は欠かせません。
実際に、「メンタルヘルス推進5か年計画」を策定して、企業全体でメンタルヘルス対策に取り組む企業があります。従業員が働きやすい環境づくりに向けて、最終的に「職場で自律的にメンタルヘルス対策ができる」ことを定め、継続的なプランの作成から職場定着率向上の成果を上げている企業もあるのです。
特にパートや派遣労働者などは、契約期間に定めがある契約(有期労働契約)で働くことが多くあります。メンタル不調になった場合には契約を更新せずに退職することが多くあり、また、勤務年数が少ないと休職期間が短く職場復帰できないケースも多くあります。そこで、職場復帰を前提とした休職・復職制度に変更することで職場定着率向上に成功しているのです。
例えば、職場の人間関係が原因でメンタル不調に陥った場合などは、休職・復職後に新しい職場環境で人間関係をゼロからリセットし、心機一転やりがいを持って働くことができるようになります。職場環境が変わることで新たな気持ちで仕事をすることによりパフォーマンスも上がり、さらに新たな業務に挑戦しスキルアップに繋がるでしょう。
従業員が健康で勤続年数が長く、生き生きと働いている職場にしていくことは、採用活動にもプラスに働きます。就職活動をしている学生は、企業の社員の勤続年数や職場の様子を調べて、自分が働く会社として適しているかどうかをチェックしているためです。
「2019年卒マイナビ大学生就職意識調査」では、行きたくない会社として「暗い雰囲気の会社」を挙げている学生が31.8%います。メンタルヘルス対策がしっかりしていて活気のある会社は、学生から見ても「働きたい」と思える会社であり、採用活動がスムーズにできるポイントの一つといえるでしょう。
メンタルヘルス対策は、中小企業にとっても大きなメリットがあります。しかし、どうしても費用がかかるということも事実です。最初に説明したメンタルヘルスの「4つのケア」のうち、中小企業は保健スタッフによるケアと事業場外でのケアが手薄になる傾向があります。
毎年、厚生労働省が発表している「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、事業規模が小さくなるほどメンタルヘルス対策を実施している事業場数が減少しています。対策内容も保健スタッフによるケアと、事業場外でのケアになると割合が低くなっているという結果です。
これは、小規模の事業場ほど、メンタルヘルス対策の費用を確保することが困難だからと考えられます。ストレスチェックは労働者が50人未満の事業場には義務付けられていません。だからといって、メンタルヘルス対策を疎かにしていると、問題が起こったときには大変な事態に発展する可能性があります。従業員の退職だけではなく、健康障害の原因となった企業の責任、訴訟問題などさまざまなリスクが生じる可能性があるのです。
小規模事業場にとって何よりも重要なのは、メンタル不調を事前に予防するセルフケアと働きやすい環境を整えることで、職場全体のストレスを解消する方向に働きかけるラインによるケアにあります。事業場にとっても費用負担の少ない事前予防が中心とならざるを得ません。しかし、時には保険スタッフによるケアや事業場外のケアなど、専門家の支援を必要とすることもあるでしょう。
このため、政府は中小企業が保健スタッフによるケアと事業場外でのケアを取り入れやすくするよう、メンタルヘルスケア関連の助成金をいくつか用意しています。以下のURLより、まとまった情報が得られますのでご確認ください。
令和元年度版産業保健関係助成金
具体的に、助成金の内容について見ていきましょう。
50人未満の小規模事業場は、産業医活動などを行うとこの助成金を受け取れます。以下の3コースがありますが、いずれも中小企業では手薄となりがちなメンタルヘルス対策であり、職場での心のケアを推進する内容です。
- 産業医コース
- 保健師コース
- 直接健康相談環境整備コース
- 労務・制度 更新日:2020/08/26
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