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キャリアデザインプログラムアワード大賞受賞企業に聞く 採用にも効果のあったキャリア教育特化型インターンシップとは 

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企業が学生に就業体験とキャリア教育の機会を提供するインターンシップは、学生の参加割合も年々伸びており、企業もそれに呼応するように多く実施されています。

充実したプログラムで学生の満足度を上げるためには採用担当者だけでなく社内に広く協力を求めることが必要となってきますが、日常業務に加えてインターンシップへの協力を取り付けるのはなかなか難しいものです。

そこで今回は、シュークリーム専門店「ビアードパパ」をはじめとしたスイーツブランドを展開する株式会社DAY TO LIFE(旧・株式会社麦の穂)が実施したインターンシップについてお話を伺いました。

同社では、社員236名(当時)のうち32名の社員が関わり、なんと65名の学生を受け入れたとのこと。どのように社内の協力を仰ぎ、「キャリアデザインプログラムアワード2023※」の大賞を受賞するほど満足度の高い内容に仕上げたのでしょうか。

※キャリアデザインプログラムアワードとは
学生の社会的・職業的自立に貢献したインターンシップやキャリア形成支援に係る取組を表彰するアワードです。本アワードを通じて学生の職業観涵養を促進する効果的な取組を周知することで、プログラムの質的向上および実施企業数の増加を実現し、学生と企業のより精度の高いマッチングを目指します。

― この度は「キャリアデザインプログラムアワード2023」の大賞受賞、まことにおめでとうございます。まずは御社が実施されたインターンシップの内容をお聞かせください。


上田さん:はい。弊社はシュークリーム専門店の「ビアードパパ」に代表されるスイーツショップの運営がおもな事業なので、まずは「店舗を知る」ことから始め、だんだんと領域を広げながら仕事を理解していただく内容でインターンシップを構成しました。

具体的には、夏のインターンシップで店舗運営の実務から始まり、その経験を経て商品開発、マーケティングを学んで頂いた後、秋インターンシップでDX戦略、海外マーケティングと新業態プロデュースに挑戦していただくという内容です。夏秋合わせて計7日間のプログラムとなります。

また、それだけではなく事前の課題整理とフィードバック、その後のフォローアップも含めた構成とすることで、学生が自身を知り、自分に必要なキャリアデザインを考えるきっかけ作りができるということが最大のポイントです。

― 御社の考える「キャリアデザイン」とはどのようなものなのでしょうか?


上田さん:自己理解と仕事理解の両立です。今の就活では、情報が過多であったり売り手市場化が進んでいたりといった様々な理由から、学生がなんとなく「大手志向」に流れて大手企業に評価されるように自己理解を歪めてしまいやすいという傾向があると考えています。

しかし、それでは自分にとって「本当にやりたいこと」を見つけるのは難しい。そのため、キャリア教育をベースとした職業体験(実務)により、「自己理解と仕事理解を同時に進める」ということを基本コンセプトとしました。各部署の職業体験(実務)に触れながら、社会人と交流し、リフレクション(内省)をしながら、自身のキャリアプランを作成していきます。

そうすることで、自分にとって重要な価値観は何なのか、その価値観に照らしたとき、求めるべき仕事はどのようなものなのかを理解することができ、それが学生にとって必要な「キャリアデザインスキル」を身につけることに繋がるのではないかと考えています。インターンシップを終えた後には、「本当にやりたいこと」「なりたい自分」が見えてくるように、全体プログラムを設計しています。

― 御社の場合は、学生がインターンシップを通じて自社の仕事内容を理解し、その結果として志望度が上がることを期待する、ということではないのでしょうか?


上田さん:もちろん、結果として弊社への志望度が上がることは嬉しく思います。しかし、それ以上に参加してくれた学生がキャリアデザインスキルをきちんと身につけ、これからの人生をよりその人らしく生きていくことの手助けをしたいという思いが強いですね。

― 素晴らしいお考えですが、自社の採用に繋がらないとなると社内の協力を取り付けるのは難しそうに思いますが…。


上田さん:弊社にとってプラスになる部分はたくさんあります。学生からたくさんのものを学ばせて頂いて、Win-Winの関係を実現できているんです。

なぜそれが実現するのかというと、たとえば弊社には、経営上の大きな課題が2つあります。
1つが、女性社員が30代前半までに辞めてしまうケースが多いという現実。業態の特性上、一部は仕方のない面もあるのですが女性の多い職場であるにも関わらず、女性が辞めていってしまうことが多いんです。理由はライフステージの変化やパートナーの転勤などさまざまですが、当社で長く働き続け、キャリアアップを目指す女性社員が少ないというのは経営上の大きな課題であることは確かでした。

もう1つは、主要業態である「ビアードパパ」は20年以上続いている弊社にとっても大切なブランドではあるのですが、「ブランドが生まれた当時のお客様が長期顧客になってくださっている反面、新規顧客へのアプローチは大きな課題となっています。永続性の面から、次の世代にも愛されるブランドにならないといけません。

この2つの課題について、学生からの意見をもとに社内で改善を図っていて、実際に効果も出ています。

― なるほど。1つずつお聞かせください。まずは女性社員の離職問題についてはインターンシップを通じてどのような改善が見られましたか?


上田さん:今回、賞をいただいたインターンシップは椙山女学園大学との共催で、参加してくれた学生も多くは同大学でキャリア教育を受けている学生でしたので、弊社で女性社員が生き生きと、長く、充実した社会人生活を続けるにはどうすればいいか、など一緒に考えさせていただきました。

これが弊社の人事制度改革に繋がって、より多様性のあるキャリア形成ができる人事制度の元となりました。
学生にとっても、一緒に考えることで学生自身が実社会でのキャリアについて考えを深める良い機会になったと評価をもらっています。

― つづいて、ブランドの永続性についてはいかがでしょうか。


上田さん:インターンシップを通じて店舗での勤務やマーケティング業務を経験していただく中で、若い学生の目線からさまざまな意見をもらっています。SNSマーケティング1つをとっても、我々では思いつかないような若い感性から新しいアイディアをいただいていますし、新業態プロデュースの課程でも斬新なアイディアが生まれて大いに参考になっていますね。

そういった具体的な成果があるからこそ、社内の賛同を得られているという面は大いにあると思っています。

― たとえば実際に新業態を作ってみるとか、そういったアクションに繋がっているのでしょうか。


上田さん:学生の意見を聞いて参考にしながら我々(企業側)の実務に活かしていますが、今のところインターンシップから直接的に生まれた商品や新業態はありません。

たとえば「学生との共同開発商品」を期間限定で発売することは、もちろん不可能ではないと思います。しかし、安易にそういうことをすることが本当の学びには繋がらないと思うのです。

企業側が「学生のために」とお膳立てをして、ある意味で子ども扱いしたり、アピールに利用しようとしていたりする態度は学生に伝わってしまいます。あくまでも真剣に、企業側も一緒に課題に取り組むという姿勢を持つからこそ学びに繋がるのだと信じています。

― お話を伺っていると、学生と非常に真摯に向き合っているという印象を受けます。どのようなコミュニケーションをとっているのでしょうか?


上田さん:キャリアデザインを考えるインターンシップなので、1年目は事前学習としてグループワークで自分がこれまで歩んできた人生、そしてこれからのキャリアについて話し合いながら考えてもらう時間をとっていました。

しかし、どうも学生の本音が出ていない感じが拭えなかったんです。しかし、私たちとの1 on 1に切り替わると、本音が出始めました。
そこで気付いたのです。これまでの人生、キャリアの展望というのは非常にプライベートな情報なんですよね。会ったばかりの人たちの前で発表できるようなものではないのです。

なので、翌年からは事前学習で「麦野穂すずさん」という、キャリア観に乏しい学生のペルソナを立て、その子がどうしたら上手にキャリアデザインができるかを考えるように切り替えました。
すると、ペルソナというクッションを入れることで学生も素直に本音が出せるようになったんです。これはとても良い効果があったと思います。

その上でインターンシップに入り、事後学習(フィードバック)では私たちと1 on 1で話す時間もとっています。
その頃にはこちらも学生のキャラクターやパーソナリティを把握しているので、とても実のある良い時間になるんです。

― 段階を踏むことが大切、ということでしょうか。


上田さん:そうです。いきなり踏み込まず、まずはペルソナを通じて考えてもらい、インターンシップの中で関係性が構築できてから改めてしっかりと向き合う。信頼関係の構築を先にしないと、なかなか本音では話し合えません。
これが良いコミュニケーションをとるためのポイントだと思います。

また、採用のためにやっているわけではないとはいえ、今年も3名の方がインターンシップから選考に進んで入社することになりました。
そういった方々はもう入社するころには、よく知り合った関係なので、入社後の定着もスムーズなんです。

取材を受けていただいた上田さんは、株式会社DAY TO LIFEが「日本でいちばん 人が育つ企業」を本気で目指している、と取材の中で語っていらっしゃいました。
それだけ社員の成長を後押しする姿勢があるからこそ、学生にも同じように接し、結果として学生と企業がWin-Winの関係を築けているということには、大きな意味があるように思います。

記事の中では詳細に触れられなかった同社のインターンシッププログラムについては、ぜひキャリアデザインプログラムアワードのWEBサイトをご覧ください。きっと、御社のインターンシップの参考になると思います。

https://internship-award.jp/report/interview/2023_muginoho_program/

第7回キャリアデザインプログラムアワード 応募受付中
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/11/08
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