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「フィードバック」だけじゃない! 学生も企業も満足できる持続可能なインターンシップに向けて

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本格的な選考に加え、夏インターンシップの準備も採用担当者の方にとっては重要なミッションとなっていると思います。

今や就職活動をする学生の約8割※が参加しているほど、インターンシップやワンデー仕事体験は当たり前のものとなりました。
インターンシップは学生の就業観・キャリア観涵養(かんよう)のために行われる「教育プログラム」ですが、HUMAN CAPITALサポネットで実施した過去の学生座談会などからも明らかなように、その満足度と企業への志望意欲の関連についても無視できません。

そこで今回は、インターンシップで学生満足度を上げるための施策について、多摩大学准教授の初見 康行先生にお話を伺いました。

― 初見先生、今日はよろしくお願いします。近年、インターンシップの重要度は増すばかりですが、現状の問題点はどのようなものがあるとお考えですか?


初見先生:はい。まず、就業体験を含むインターンシップが学生・企業にとって有意義な活動であることは間違いありません。しかしながら、これだけ一般化してくると、「他の企業もやっているから、うちもインターンシップをやらなければ」といった理由で開かれるインターンシップが少なからずあるのは、現状ある課題のひとつだと思います。

採用戦略においてインターンシップの存在感は確かに大きいのですが、その本義はあくまでも「就業観・キャリア観の涵養(かんよう)」にあります。
しかし、これまで単なる会社説明会に「インターンシップ」の看板を掛けただけ…というものも少なくありませんでした。学生の学びに資する内容になっているかどうか、まずは振り返っていただきたいですね。

一方、学生側も「他の学生が行っているから」「どうやら今はそういう時期らしいから」というだけの理由でインターンシップに参加することも少なくありません。インターンシップが一般化してきたことは良いことですが、誰もが参加する活動になったからこそ、学生も企業もその目的を改めて確認する必要があるのではないでしょうか。

― そのような環境で、インターンシップの学生満足度を向上させるために企業には何ができますか?


初見先生:インターンシップにおいて最も重要なのは、「プログラム(就業体験の内容)」です。

その上で、プログラムの効果を高めるためには「事前学習」と「事後学習」を両方行うことが有効であると分かっています。

「事後学習」は、よくいわれる「フィードバック」のことです。インターンシップでの学生の活動内容を企業の視点から評価し、今後の就職活動や学生生活に役立つアドバイスを提供するものですね。一般には、インターンシップに参加したメンター社員や人事の方などが行っていると思います。

― フィードバックの重要性はよく聞かれますし、学生座談会などでもフィードバックの良し悪しがインターンシップ全体の満足度に直結している傾向は見て取れますね。


初見先生:はい。そして、その事後学習(フィードバック)の効果をより高めるのが「事前学習」です。

先ほど、学生も「なんとなく」や「とりあえず」でインターンシップに参加してしまっているという話をしましたが、その状態ではどのようなインターンシップも学生にとっての学びは少ないものになってしまいます。目的がないので当然ですね。

そこで、事前学習では「このインターンシップに参加する意味・目的とは何か」「インターンシップで何を学びたいのか」を明確にしてあげるといいでしょう。

― 具体的な方法をぜひ教えてください。


初見先生:問いかけて言語化させることが重要です。例えば「目標設定シート」のようなものを配布して、「このインターンシップを通じて自分は何を学びたいと思っているのか」「インターンシップの中でどのようなことを達成したいのか」を書いてもらうのも良いと思います。

なんとなく参加してしまった学生に目的意識をはっきりしてもらうことで積極性を高めることができますし、フィードバック(事後学習)も目標設定シートをもとにして「シートにはこう書いてあったけれど、結果はどうだった?」などと目線を合わせて話していくことができるため、企業にとってもメリットがあります。
また、言語化することでインターンシップでの経験がしっかりと記憶されるので、採用への好影響を期待する場合にも有効です。

ポイントは、評価をもとに「対話」をすることです。フィードバックは単に評価を学生に伝えることではありません。対話を通して、インターンシップだけでなく、就職活動や今後の大学生活の過ごし方まで対話することができれば、学生の満足感もおのずと上がっていくのではないでしょうか。

― 2022年12月の三省合意改正(※)により、インターンシップの定義が明確化されたことに加え、これまで「インターンシップ」と称されていたようなイベント、学生のキャリア形成支援活動(4類型)の「オープンカンパニー」に当たるものに低学年の参加が見込まれることになりました。
この流れは、企業としてインターンシップの満足度を考える上でどのような影響がありそうでしょうか?


※ 三省合意改正:産学が連携してインターンシップのあり方を再定義し、厚生労働省・文部科学省・経済産業省の三省が合意したもの。こちらの記事で詳しく解説しています。

初見先生:まず、学生の視点から見ればこれはいいことですよね。低学年のうちからさまざまな職業・職場を見て、学びやキャリアについて時間をかけて考えることができるようになります。

一方、これまでインターンシップは就職活動を控えた3年生以上の学生が対象とされてきたため、企業から見ると母集団形成の一環とも捉えられたわけなのですが、その要素は就業体験参加の低学年化によって小さくなるでしょう。

― これまで教育目的としてインターンシップを開催しつつ、企業としては志望度の向上やエントリーなど採用に直結するメリットも感じていましたが、今後それが薄くなるのではないかということですね。


初見先生:そういうことです。インターンシップに代表されるキャリア形成活動が低学年化すると、採用担当者は新たな課題にぶつかるでしょう。採用につながりにくくなるため、社内の協力が得られない、リソースが足りない、成果が測定できないといった影響が出るのではないかと予想しています。それは結果として学生の満足度低下にもつながるかもしれません。

しかし、やはりインターンシップを学生にとっていい学びの機会にしていただきたい。そこで、ご提案したいのがインターンシップを「企業の組織開発」につなげるという考え方です。

― ぜひ具体的にお聞かせください。


初見先生:先ほどもご説明したように、インターンシップの満足度を高めるには「事前学習」「事後学習(フィードバック)」が欠かせません。これは、対象の学年にかかわらず同じです。

しかし、それを実行するために必要な企業側の労力は決して小さなものではないのも事実です。採用への好影響を期待しにくいのであれば、協力を得るのも難しいでしょう。

一方で「事前学習」と「事後学習(フィードバック)」を行うのに必要な能力は、マネジメントの能力に近いものがあります。目標設定をし、その達成度合いを見て、アドバイスをする。まさにマネージャーに求められる能力ですよね。

― 確かにそうですね。


初見先生:なので、若手の社員に担当してもらうことで、遠からず必要になるマネジメント能力を鍛える場として考えていただくといいと思います。それであれば、人事としても積極的に低学年から参加できる「オープンカンパニー」や「インターンシップ」を行う理由になりますし、現場からの協力もある程度得られやすくなるのではないでしょうか。

結果として「学生も企業も満足するインターンシップ」になると思います。
その観点から、これまでの「学生が選ぶインターンシップアワード(現:キャリアデザインプログラムアワード)」で文部科学大臣賞を受賞した大東文化大学や北九州市立大学のインターンシップは参考になると思います。

― そのお話をぜひ聞かせてください。


初見先生:はい。両校のインターンシップで特に顕著な特徴が見られたのが、「フィードバックのループ」があったことです。

企業から学生へのフィードバックはもちろんありましたし、それは多くの企業が実施しているでしょう。しかし、この事例では「学生から企業へのフィードバック」もありました。
つまり、インターンシップを通じて企業が学ぶ仕組みがうまく取り入れられていたのです。

インターンシップは企業側の労力が非常に大きいため、「学生のためにインターンシップをやろう」という気持ちだけでは、いつか行き詰まってしまう可能性が高いと考えます。そのため、このように企業にとってもメリットのある内容にするために、仕組みとして取り入れてしまうというのはとても有効な手段だと思いました。

これからの人事に求められるのは、採用プラスアルファの意義・目的を創造してインターンシップに組み込んでいく力だと思います。

学生にとってはもちろん、企業にとってもいいインターンシップにするため、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

― 今日はありがとうございました!

企業の採用戦略においてインターンシップはすでに欠かせないものとなっていますが、それを取り巻く環境は大きく変化しています。
そのうちのひとつが、インタビューの中でも触れられた「三省合意改正」による定義の明確化です。

これは学生にとってインターンシップをより良いキャリア教育の場とするために考えられたものですが、初見先生のアイデアを参考にすれば企業にとっても成長機会となり得ます。

学生だけではなく、企業にとっても成長機会となるインターンシップ設計をすることで、無理なく続けられるものになり、それが結果として学生にとって良い学びの機会を増やすことにつながれば何よりです。

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  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/07/31
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