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志望度を上げるグループワークとは?
4ステップで解説【フレームワーク事例あり】

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選考やインターンシップで頻繁に行われている「グループワーク(※1)」。読者の皆さんも実際にプログラムに組み込み、実施されていることかと思います。

そんな中、グループワークを通して学生に自社を理解してもらうことで、志望度を上げたいと願う方も多いのではないでしょうか。
マイナビの学生向け調査でも「入社予定先企業を決めたポイントは?」という質問で、「採用選考・面接の内容が良かった」と答えた学生は6割以上(※2)でした。

そこで今回は、多くの企業に採用コンサルティングを提供しているシーズアンドグロース株式会社の代表、河本英之さんにどのような「グループワーク」を実施すれば学生の志望度を上げることができるのか、お話を伺いました。

※1 本稿では「学生が議論することそのもの、その議論を見て資質を判断することが目的」であるものをグループディスカッション、「学生が議論の結果を発表し、それをもとに資質を判断することが目的」であるものをグループワークとしています。

― 今日はよろしくお願いします。河本さんは多くの企業から採用についてご相談を受ける立場ですが、グループワークについてはどのようなお悩みが多いのでしょうか?


河本さん:率直に、効果が出ないというご相談ですね。この場合、効果というのは「グループワークを通じて学生の志望度を上げること」です。

グループワークは多くの企業が導入していますし、学生からも人気の高いコンテンツですが、それを通じて志望度が高くならないということは、学生にとっても効果の薄いものだったという可能性があります。

― 逆に言えば、効果のあるグループワークなら志望度の向上も見込めるということでしょうか。


河本さん:はい。しっかりと設計をし、学生が主体的に取り組んで真剣に考え、企業側からのフィードバックでサプライズを感じることができれば、志望度の向上が見込めます。

ポイントは「INPUT(企業からの課題提示) → THINK(学生同士の議論) → OUTPUT(学生の発表) → INPUT(企業からの回答)」と、INPUTで挟むサンドイッチ構造のグループワークを実施することです。

― 通常、グループワークといえば、最後は「フィードバック」で終わることが多いと思います。それとは違うものなのでしょうか。


河本さん:はい。フィードバックの要素も含んでいますが、重要なのは「企業側が、学生を上回る回答をする」ということです。
そうすることで、学生は「実際に企業で働いている人はここまで考えているのか!」「この企業の考え方がとても理解できた!」と驚きを得ることができ、学びを得たことにより成長を実感します。そして、それが志望度の向上につながっていくのです。

― なるほど。となると、プログラムの設計が何より大切になってきますね。どのような考え方で組み立てればいいでしょうか?


河本さん:最初のINPUT(企業側からの課題提示)では、学生の中で不公平が出ないよう、グループワーク内だけで完結する情報を提供するようにしてください。でないと、知識のある学生や地頭のいい学生が議論を主導することになり、全員が公平な状態ではなく、全体としての満足度は下がってしまいます。

また、回答に至るまでに必要な情報の7割を与え、3割は考えさせるというバランスも大切です。企業によっては「ほとんど答え」のようなINPUTをしてしまう場合もあるようですが、それでは最後のINPUT(企業側からの回答)での感動が薄れるばかりか、学生にとって学習効果が薄くなってしまいます。

なおかつ、THINK(学生同志の議論)で多様な意見が出てくるように、難しすぎず簡単すぎもしない難易度設計も必要です。難しすぎて学生が黙ってしまったり、簡単すぎて集中力が散漫になってしまったりしないようにしましょう。

そして最後のINPUT(企業側からの回答)では、必ず学生の予想を上回る回答を用意しましょう。ここが最も重要です。
学生からどんな回答が出てくるかを想像しながらグループワーク全体を設計するといいですね。

― 「学生の回答を上回る」にはどうしたらいいのでしょうか?

河本さん:この後グループワークの類型を3つに分けて解説しますが、前提として「企業としての判断」や「個人としての判断」を軸にするのがいいでしょう。
企業としての判断にはさまざまなバックグラウンドがあり、その全てを想像するのは難しいはずです。
個人としての判断も同じです。キャリアの中でどのような転機があり、どのように行動したのか。そのことを完全に予想することはできないでしょう。

仮に絶対解のある課題だった場合、学生の「解」が合っていたとしても、そのバックグラウンドには企業や個人それぞれに独自のものがあります。そのストーリーを、最初にお伝えしたような「サプライズ」とするのです。

― いま「絶対解のある課題」という言葉がありました。ほかにどのような課題の類型があるのでしょうか?


河本さん:はい。課題の難易度設計や学生の志向によって選択することのできる方法がいくつかあります。

まずは「絶対解があるか、ないか」。
あくまでも傾向ですが、「理系は絶対解のあるものを好み、文系は絶対解のないものを好む」という特徴があります。
なので、自社の採用ターゲットやそのグループワークに参加している学生の質を見て考えましょう。

次に、課題の基本設計として、「Which、 Why、 What」の3種類があります。
Whichが一番簡単で、選択肢から回答を選ぶものです。
企業側からの回答では、その選択肢の裏にあったストーリーを話します。

Whyは企業の価値観を理解してもらうワークに向いています。「弊社では○○に対して、□□のような判断をしました。なぜだと思いますか?」と理由を考えさせるワークになります。
それそのものが回答になってしまわないように、INPUT(企業側からの課題提示)のバランスを考える必要がありますが、企業理解を深めるという意味では非常に有効です。

最後に、Whatは「何をしたか」などを考えさせるワークです。
Whyよりも難易度が高く、具体的な回答を考えることができますが、いろいろな回答が出てきた後、なんらかの判断軸で絞ることも含めて時間を要します。
企業側からの回答では、Whatの裏にあるWhyを話すといいでしょう。

つまり、難易度の順で並べると、「What> Why > Which」となります。ワークそのものにかかる時間も難易度に比例しますので、選考の中で行うグループワークのように時間が限られていれば「Which」を、インターンシップの中で行うグループワークのように比較的時間があるなら「WhyかWhatを」と選んでみてください。

企業の全体像を捉えてもらう:企業理解ワーク


― ではここから、グループワークの3つの類型について伺いたいと思います。まずは「企業理解」を目的としたものについて内容を教えてください。


河本さん:はい。企業理解ワークは「What」か「Which」を考えるワークとして設計できるため、合同会社説明会や個別説明会などの短時間で実施可能な点がメリットです。流れとしては、以下のようになります。

INPUT(企業側からの課題提示):展開しているビジネス、保有しているリソースなど企業の全体像が見える情報をシート化して学生に渡す。

THINK(学生の議論):企業の強みや求める人材像などの設問を用意し、情報シートから情報を読み取って回答を考える。

OUTPUT(学生の発表):上記の議論をまとめて回答を発表。

INPUT(企業側からの回答):発表を受けて、まずは回答を提示。その理由を詳細に語ることで企業理解が深まる。

河本さん:企業側の姿勢としては、「こちらが一方的に魅力を伝える場ではなく、一緒に考える場にしたい」と学生に伝えるといいでしょう。学生が自分の頭で自社のことを考えてくれるので、企業理解が短い時間でぐっと深まります。

同業との差別化を図る:価値観理解ワーク


河本さん:次に「価値観理解ワーク」です。これは、プロジェクトストーリーをもとにして、「どんな判断をしたのか」というWhat、Which、「なぜそのような判断をしたのか」というWhyなど、いろいろなパターンが可能なワークです。

ストーリーの視点は、ベンチャー企業であれば創業者にしてもいいですし、企業としての大きな視点から見ても、実際にプロジェクトに関わったハイパフォーマーの視点から見てもいいと思います。

流れとしては、以下のようになります。

INPUT(企業側からの課題提示):企業を代表するプロジェクトをストーリーとして用意する。

THINK(学生同志の議論):ストーリーとしてプロジェクトを追体験しながら、ターニングポイントにおいてどのような判断をしたのかを考える。

OUTPUT(学生の発表):上記の議論をまとめて回答を発表。

INPUT(企業側からの回答):発表を受けて、まずは回答を提示。実際にどのような判断をどのような理由でしたのかまでを伝える。プロジェクトの当事者に語ってもらっても良い。

河本さん:非常に深い企業理解が得られるので、同業他社との差別化に悩んでいる企業にもおすすめです。

理由としては、学生の目からは同業他社と同じ事業判断をしているように見えても、実際にはそれぞれの企業が持っているリソースは異なり、判断の理由もまた異なるからです。「見えているものは似ていても、その理由は全然違う」ということを通じて、学生は深い企業理解を得ることができます。

短い時間で行いたい場合は、「Which」で回答できるように課題を調整するとうまくいきます。

入社後の姿を想像する:キャリアイメージワーク


河本さん:最後が「キャリアイメージワーク」です。今の学生は入社後のキャリアをできるだけリアルに想像したいという欲求がありますが、なかなか文字や写真だけで伝えるのは難しいので、実際の社員をモデルとして「Which」で選んでもらうというワークです。
流れとしては、以下のようになります。

INPUT(企業側からの課題提示):社員3〜4名のキャリアをストーリーとしてまとめて提示。

THINK(学生同志の議論):ストーリーを読みながら自分がなりたい姿はどれなのかを考える。

OUTPUT(学生の発表):上記をグループ内で共有する。

INPUT(企業側からの回答):それぞれの社員がどのような立場(ゼネラリスト、スペシャリスト、マネジメントなど)なのかを提示し、キャリアストーリーの詳細を改めて語る。

河本さん:学生にいくつかのキャリアストーリーから「自分がなりたい姿」を選んでもらう内容ですが、なぜそれを選んだのか、その理由を本人によく考えてもらうことが重要です。
そうすることで、入社後のキャリアをより具体的に想像することができます。それが志望度の向上につながるのです。
また、このグループワークに参加した学生が実際に選考に参加した場合、面談などで学生自身が選んだタイプの社員をアサインするとより効果があるでしょう。

― 具体的で分かりやすかったですね。ありがとうございました!

人気コンテンツであるだけに、「なんとなく」で実施してしまいがちなグループワークも、こうして精緻に設計すれば学生の志望度向上に寄与する可能性を持っています。

企業理解、価値観理解、キャリア理解と3つの類型に、Which、What、Whyの3つの課題プランを組み合わせることで御社の採用戦略に合ったグループワークが実施できるはずです。ぜひ今後の採用にお役立てください!
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/06/28
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