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2024年卒学生は特別? その傾向と、内定辞退を抑制する選考プロセスでの対応ポイントとは

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大学生活の前半2年間はコロナ禍にあり、昨年からゆっくりと対面授業へと戻っていった2024年卒。
その世代特性も踏まえた選考プロセスにおける対応について、多くの企業、学生と交流を持ちながら採用コンサルティングを行っている羽田啓一郎さんにお話を伺いました。

― 羽田さん、今日はよろしくお願いします。まず、24年卒学生の特徴について、日々学生とコミュニケーションを取られている立場からお聞かせください。


羽田さん:まず大前提として「24年卒学生は特別」だということを知っておいてください。コロナ禍以前の世代はもちろん、23年卒にも25年卒にもない、24年卒には独特の特徴があります。
一言で言って、24年卒学生は「経験不足」という印象です。

私が運営している就活生のコミュニティから、私の下に日々、就活に関する相談が届くのですが、例えばこんな質問がありました。
「リクルーターの方から喫茶店で会おうと言われています。何を注文したらいいのでしょうか?」
必要以上に食事を注文したり、お酒を注文したりすることを避ければ問題ないはずですが、それが判断できないんですね。

― 確かに大人の目線からだと、「好きにすればいいじゃないか」と思ってしまいますが…… そういった質問が出る背景をどのように見ていらっしゃいますか?


羽田さん:24年卒学生は大学生活の前半2年間がコロナ禍にあり、授業における教員や先輩などを含めた大人との交流や、サークル活動、アルバイトといった「大学生の通過儀礼」を経験していない人が一定数います。
そのため、例えば友達とお茶をすること一つをとっても、ファストフード店でセットを頼んでおしゃべりするといった高校時代の経験の延長線上にとどまっていたりします。

そうなると、大人と一緒の場でどう振る舞えばいいのかが分からない。そういった背景があると思います。

― なるほど。その影響はほかにどのような面に見られますか?


羽田さん:「先輩や大人、同級生との交流が少ない」ということは、他者との交流を経て「こういう時に自分は頑張れる」「こういう人といるときに楽しく感じる」といった判断軸の確立が難しいということです。
そのため、いわゆる「就活の軸」といえるものを持っていないことがあり得ます。
結果として、企業から内定を得ても、「本当にその企業に自分が入りたいのかがよく分からない」という状態になってしまう人が少なからず見受けられるのです。

― 内定辞退という観点で考えると、これまで採用担当者の経験と勘で「この学生は間違いなく来てくれる」「この学生は本当のところはうちの会社に入社したくないんじゃないか」と察知していたような方法が通用しないということですか?

羽田さん:そういう面は確かにありそうですね。入社を決意するだけの判断軸がないから、採用担当者の目から見ると「どこかフワフワしている」「入社意欲があるのかないのかが分からない」と感じ、つかみどころがないように見えるかもしれません。

― ではここから具体的に、24年卒学生の選考プロセスにおいてどのような点に気を付ければ内定辞退を抑制できるのかを伺いたいと思います。
まず、「本エントリーから筆記・適性テスト」のフェーズにおける対策をお聞かせください。


羽田さん:この時点でできることは少ないと思います。「いかに本エントリーをしてもらうか」は採用担当者にとって重要な課題になると思いますが、それは例年どおりですね。

ただ、24年卒に限らず、「100人の母集団があれば2人に内定が出せる」というような確率論の採用はそろそろ考え直してもいいかもしれません。

― 興味深い論点です。詳しく聞かせてください。


羽田さん:少しでもマーケティングに触れている方であれば、「ペルソナ」の重要性を分かっているはずですが、採用においてその認識はまだまだ希薄だと感じます。だから、確率論で採用を考えてしまうし、母集団の獲得に偏重した戦略を取ってしまうことにもつながります。
母集団が重要でないとは思いませんが、そこにこだわりすぎると、学生を大きなくくりで大ざっぱに認識してしまいがちになるのは問題だと考えます。
学生は一人ひとり違います。特に今の若い世代はSNSの影響もあって、個別化がとても進んでいる。文系・理系、体育会系・文化系、といったような大きなくくりだけでは理解しにくくなっているし、自分たちがそういった「大きなくくり」で捉えられることに拒否感を示したりもします。

― 確かに、HUMAN CAPITALサポネットで実施した座談会などでも、24年卒の学生から「自分のことを理解してくれている」「自分のことを認めてくれている」という感覚が企業への志望度に強く影響したという話がたびたび聞かれます。


羽田さん:はい。これまでもそういった思考を持つ学生はもちろんいたのですが、24年卒学生はコロナで課外活動ができなかったせいか、自分以外の外部環境に対するアンテナが他世代と比べて弱い印象です。
そんな彼ら・彼女らの感覚からすると、「企業と自分との1対1」や「採用担当者と自分との1対1」の関係性でコミュニケーションを取っています。そのため「自分は数百人、数千人もいる『選考母集団』の1人なんだ」という認識は、そのまま企業への失望につながりかねないんですね。
それを防ぐ意味でも、「確率論一辺倒の戦略を取らない」といった選択肢も一考の余地があるのではないでしょうか。

― では続いて、選考の中期から後期に当たる「面接・グループワーク」から「人事・リクルーター面談」のフェーズにおいて、内定辞退抑制のために企業ができることについてお聞かせください。まず、面接はいかがでしょうか?

羽田さん:誤解を恐れずに言えば、24年卒学生は他の世代と比べても「打たれ弱さ」があるなと感じます。
しかしそれは、経験を積んだ上での打たれ弱さと違い、単に「打たれる経験に恵まれなかった」ことからくるものなので、ネガティブに受け取らないであげてほしいですね。
入社して仕事に向き合うことで自然と環境にもまれて打たれ強さが身についてくる学生も、そうでない学生も、これまでどおりにいると思います。
その意味では、より「ポテンシャル」を重視した面接が必要です。そして、そのポテンシャルを引き出す質問も意識した方がいいですね。

― ポテンシャルを引き出す質問とは?


羽田さん:対話型の面接がお勧めです。これまでのように「あなたは、危機に直面したときどのように行動しますか?」というような抽象的な質問ではなく、これまで経験したことについて話を引き出していき、具体的な状況において「あなたはそのとき、どう考えて、どう行動しましたか?」と、答えるためのヒントを与えて誘導していくようなイメージです。
最初にお話ししたように、24年卒の学生は大人との交流機会が少ないことから萎縮したり、そうでなくても質問の意図するところを自分なりに咀嚼してうまく話すことができないということもあります。そもそも経験の絶対量が他の世代と比べて少ないため、ポテンシャルを知るために「引き出してあげる」必要があるのです。
面接を担当する社員は戸惑うこともあると思います。採用担当の方が率先して面接の方向性をリードしてあげてください。

― 人事面談やリクルーター面談についてはいかがでしょうか。


羽田さん:ここまでの話で何となく察しがついているかもしれませんが、重要なのはとにかく「フィードバック」と「個別対応」です。
企業の選考そのものを自身の成長機会と捉える傾向がここ数年顕著に出てきましたが、24年卒は特にフィードバックを強く求めています。
企業側の視点から言えば、面接前後の人事やリクルーターとの面談などの機会で積極的に、丁寧なフィードバックを与えることで、学生側は「自分のことを分かってくれている・知ってくれている」と感じることができ、志望度向上につなげることができるはずです。

― 「自分のことを分かってくれている」、ひいては「評価してくれている」と学生が最も強く感じるポイントが「合格通知」「内定通知」だと思います。ここにも何かポイントがありますでしょうか。


羽田さん:内定通知のタイミングで企業が学生の志望度を上げるような施策は、かなり難しいと思います。第1志望の企業から内定が出れば、第2志望以降の内定はどうやっても辞退されてしまうことは避けられないと思います。
ただ、あえて言うなら合格通知、内定通知に関しては、とにかく「早く」がポイントです。面接の翌日に次の面接の案内があったらうれしいというのは想像できるのではないでしょうか。これが、24年卒学生にとっては特に重要です。
冒頭でお話ししたコミュニティでは、こんな質問もありました。
「面接を受けたのですが、もう1週間も連絡がありません。これは落ちたということでしょうか?」
1次、2次といった初期の面接は学生の人数が多いこともあり、選考後の連絡に1週間くらいは普通にかかってもおかしくない、と思われるかもしれませんが、それは大人の見方。
先ほどもお話ししたように、「1対1」の関係で自分と企業を捉えているとすれば、そのような質問が出てきても違和感はありません。
「友達からLINEが1週間も返ってこないけれど、嫌われているのかな」
というのと感覚としては似ていると言えるかもしれません。

― なるほど。そう考えている学生に対して「早く合格通知を出す」は確かに有効に思われますね。では逆に、内定辞退を防ぐという観点で避けた方がいいことはありますか?


羽田さん:オワハラ(※)ですね。これに尽きます。
先ほど、内定通知時期に志望度を上げることはできないと言いましたが、下げるのは簡単です。オワハラがあれば一発で下がります。
実際、オワハラを受けたという相談はよく寄せられます。どこまでをオワハラと捉えるかという観点、また企業側にもやむを得ない事情があることは重々承知しているつもりではありますが、その上で、内定通知から内定受諾期限まで、少なくとも1ヵ月は見てあげてほしいですね。

※ オワハラ:「就活終われハラスメント」の略。内定を出した学生に対し他企業の選考を全て辞退するように依頼・強要するなど、学生側の事情をくまずに就活を終わらせる圧力を企業側が掛けること。

― 1ヵ月というと、早期選考などでもない限り長く感じる企業もあるかもしれません。


羽田さん:はい。実際によく聞かれるのが「1週間後」です。しかしながら、学生としても定年までい続けるつもりはないという前提があったとしても、人生の大きな岐路であることには変わりなく、その決断に1週間は短いということは理解してあげてください。
オワハラはしない、内定受諾まで1ヵ月は待つ。これらを守ることができれば、少なくとも志望度が下がるということはありません。

― 今日はありがとうございました!

今回のインタビューでは、選考初期と内定出しの時期に企業ができることは少なく、面接・面談フェーズに注力すべきであることが分かりました。

高校の卒業式や大学の入学式もままならず、コロナ禍以前の学生にあったキャンパスライフなども十分には過ごせないままに就活の時期を迎えた24年卒学生。彼ら・彼女らの経験値の少なさは社会環境によるもので、本人たちの責任によるものではありません。
これまでの学生とは対応の方法が違うので戸惑うかもしれませんが、一人ひとりとしっかりと向き合うことで良い採用活動にしていただければと思います。

HUMAN CAPITALサポネットでは、内定辞退対策や選考対策について多くの記事を発信しています。ぜひ他の記事も参考に、採用活動にお役立てください!
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/06/20
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