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実は中小企業にとっても強みになる! 学生に人気の「初期配属確約型の採用」にはどんなメリットがある?

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人材不足が加速する中、各企業はそれぞれの努力でさまざまな採用手法を活用して人材確保のための努力をしています。
そんな中でも、学生からの人気が高まっているのが、「初期配属確約型の採用」です。

新入社員がどの勤務地や職種に配属されるかが分からないことを揶揄(やゆ)した「配属ガチャ」・「勤務地ガチャ」という言葉にも表れているように、初期配属に不安がある学生も少なくありません。初期配属確約型の採用は最初の配属が入社までに確約されることで、特に職種や勤務地にこだわって就職先を探している学生に人気があり、多くの企業で導入されています。

しかし、採用担当者の方には「そんなことができるのは、社内の部署も採用人数も豊富な企業だけ…」と諦めていらっしゃる方もいるのではないでしょうか?

実は、初期配属確約型の採用は会社規模を問わず、中でも中小企業で強みを発揮する採用手法なのです。その理由を探ってみましょう。

初期配属確約型の採用手法が増えている理由は「学生の志向の変化」にある

— 今日はよろしくお願いします。まず、初期配属確約型の採用を取り巻く学生、企業の現状について聞かせてください。


佐伯:はい。私は大手企業の採用支援に携わって10年近くたちますが、初期配属確約型の採用手法を導入している企業は増加傾向にあります。

その背景には、企業側の変化、そしてその変化に反応するように学生側の志向も変化したことがあります。

まず、近年は新卒採用をする大手企業を中心に、展開するビジネスが多様化してきています。それに伴って旧来の「新卒一括・総合職採用」で新入社員を適職に振り分けるよりも、最初から展開している個々のビジネスの性質に応じた能力を持った学生を採用し、配属した方が効率良く人員配置ができるようになってきました。

そこで取り入れられたのが、初期配属確約型の採用手法です。
専門性のある学生を、その専門性が活かせる部門・部署に配属するために採用することで、ビジネスの多様化に対応しました。

そして学生側も、そのような動きに対応するように就職に対する志向がより明確になり、「○○の会社に入りたい」ではなく、「○○の仕事がしたい」というように変化していっています。

例えば、かつては「総合商社を目指す学生」であれば、五大商社のどこかに就職したい、という志向で就職活動を行っていました。ですが今では、「〇〇に関わる仕事がしたい、それがどの商社であれば最短距離で実現できそうか」という志向に変わってきています。

そういった学生の志向の変化を受け、採用競争力確保のために企業側が初期配属確約型の採用という形で対応している、というのが実情です。

— なるほど。学生がそこまで志望を細かく決定できる理由はなんでしょうか?

佐伯:理由としては大きく2つあります。

1つは、一部の理系学生が自身の専攻分野を社会に出てからも生かしたいと考えて就職活動をしているからです。これは以前からある動きですね。
初期配属確約型の採用という言葉こそありませんでしたが、これまでも企業が大学の研究室とのコネクションを活用して行う採用活動や、「研究職」や「開発職」として理系向けに総合職と分けた採用活動を行ってきました。

そしてもう1つが、インターンシップの浸透による影響です。
学生は3年生の夏頃にはおおまかに志望業界を絞り、その中からいくつかのインターンシップに参加します。

そこで得た就業体験をもとに、自分の適性がある職種や希望する職種、さらには自分に合った社風を知って就職活動に入るため、文理を問わず志望職種を細かく設定した就職活動を行う学生が増えてきているのです。

実際、インターンシップで職種や社風を理解し、それらに魅力を感じた学生がそのままインターンシップ先の企業に就職を希望して内定を獲得するというパターンは多くなっています。

学生が求める「心理的安全性」が中小企業での初期配属確約型の採用を有利に

— 採用競争力確保のために初期配属確約型の採用が重要であることが分かりましたが、日本企業の大半を占める中小企業でそれを行うのは難しいと考えている方も多いと思います。


佐伯:そうお考えになることは理解できますが、実は中小企業にとってもチャンスであると考えています。

学生が初期配属確約型の採用を求める心理の根底には、心理的安全性への欲求があります。総合職で就職し、どこに配属されるか分からない状態を学生は「配属ガチャ」と表現します。この言葉は心理的安全性が確保されていない不安の表出と捉えていいでしょう。

一方で、学生は1つの職種だけに長く留まることにも不安を覚えます。ライフステージの変化、社会状況の変化などに応じてキャリアパスを柔軟に変えていきたいとも考えているのです。

わがままな願いのようですが、その両方をかなえられるのが「初期配属確約型の採用」です。企業から確約されるのはあくまでも採用された直後の最初の配属だけで、その後には自身の希望や状況の変化に応じた異動が可能であることが、学生にとって非常に強い心理的安全性につながると考えます。

— それと中小企業の強みがどのようにつながってくるのでしょうか?


佐伯:最初に、学生はインターンシップを通じて職種と社風に魅力を感じて入社を決めることが多い、とお話ししました。

中小企業であれば、事業部や部署にかかわらず社内全体に共通するカルチャーがある、つまり社風が浸透していることが多いと思います。

なので、学生が自分に合っていると感じた「社風」は維持したまま、部署を変えながら柔軟なキャリアパスを歩みやすいのです。

これは心理的安全性の面で、中小企業ならではの強みにつながっていくでしょう。

中小企業での初期配属確約型の採用はインターンシップが重要

— 中小企業だからこそ「部署ごと」だけでなく、その後のキャリアも見据えた「企業そのもの」の魅力を学生の入社動機にすることができるわけですね。


佐伯:はい。ですから、中小企業で初期配属確約型の採用を行う場合には、インターンシップが非常に重要になってきます。

職種の魅力や適性を発見してもらうための職業体験はもちろん、併せて社内の人材流動性が高い中小企業ならではのキャリアパスの豊富さを知ってもらうようにしましょう。

例えば、初期配属の希望を「営業職」としている場合、インターンシップでは入社後一貫して営業部門で働いている人から、仕事の魅力ややりがい、難しさを学生に伝える交流機会をつくるのはもちろん大切です。

その一方で、ライフステージの変化などで営業からバックオフィス業務へと異動した人、学生時代の専門性を活かして研究開発部門へと異動した人など、営業を軸にしたさまざまなキャリアパスを持つ人を現場から呼び、話をしてもらうと良いでしょう。

加えて、一緒に昼食を食べたり、執務スペースの見学といった工夫を通じて、社風や社員の雰囲気についてもしっかりと印象に残るようにしましょう。

そうすることで、キャリアパスの柔軟性と会社全体の社風や社員の雰囲気を知るきっかけをつくることができるため、学生の満足度も上がり、結果的にはインターンシップを通じてミスマッチを防ぐことができるようになると思います。

— しかし、そういった交流機会と合わせて、職場体験も行うということですよね。中小企業にとって採用担当者はもちろん、現場の負担が大きい方法にも思えます。


佐伯:はい。しかしそれは大企業も同じです。

とある企業では昨年から5日間の職場体験が伴う事務系の職場体験インターンシップを初めて開催しましたが、現場の負担を考慮して、人事・採用・労務・法務・知財・情報システム部門などから受け入れを開始しました。

その結果、現場での受け入れに必要なノウハウを収集できたり、人事がフォローすべき内容が見えてきたようです。

— 人事労務などから受け入れていくのは、採用担当部署がまずは責任を取れるという意味でも始めやすい方法かもしれません。


佐伯:そう思います。それに、人事は文系学生に人気の職種でもあり、参加学生の応募も集めやすいでしょう。職種柄、会社全体を見渡せるというのも学生と企業の双方にとってメリットになります。

学生側にとっては、全体を見ることで事業への理解を深められるという点で非常に学びが深いですし、企業側にとっては学生が全体を見ることで他部門に興味を抱き、初期配属確約型の採用では不人気になりやすい部門にも適性と興味のある学生を配属できる可能性につながります。

まずは採用担当者と距離の近い部署から試して、自社で職場体験インターンシップを行う上で必要な準備、配慮、ノウハウを収集することがお勧めです。

初期配属確約型の採用で、現場が採用に積極的になれる

— ここまでお話を伺っていると、インターンシップを軸とした初期配属確約型の採用手法の導入・検討は現実味があるように思えます。


佐伯:簡単であるとは思いませんが、日本独自のジョブ型採用=初期配属確約型の採用手法であり、学生のポテンシャルを見ながら初期配属だけを確約し、その後の働きぶりや適性を見て異動も可能というのは、日本の新卒採用慣行に合っています。

それに、初期配属確約型の採用だと、「現場が採用に積極的になれる」という大きなメリットもあります。これも、採用担当者が孤軍奮闘で現場と経営に挟まれながら採用活動をすることになりがちな中小企業にとっては大きなメリットではないでしょうか。

— では最後に、そのメリットについて詳しくお聞かせください。

佐伯:ここまでお話ししてきたように、初期配属確約型の採用にはインターンシップによる職場体験と社風の実感がキーになってきます。

その2つを効果的に実施しようとすると、自然と学生は採用予定部署のメンバーと深い交流機会を持つことになりますので、現場側も「ぜひこの学生がほしい」という思いを持つことが当然あるわけです。

すると、現場は「なんとかこの学生を採用できないか」と自発的に動き始めます。具体的には、インターンシップ後のフォローを採用担当者に代わって行うような動きや、入社後にどう教育するかを検討し始めるような流れが生まれ始めるのです。

もちろん、そういった過程を経て採用した学生は職種も社風も理解していますので、現場でも受け入れがしやすく、交流期間を通じて育成方針もある程度検討できます。

実際、初期配属確約型の採用手法を導入している企業の場合、採用担当者の仕事は学生のポテンシャルを見てコース選定を手伝うことがメインとなっていることも多いようです。

あとは受け入れ部署で学生を見極め、採用したいと思えば積極的に働き掛けてくれます。

初期配属確約型の採用は、学生にとってはもちろん、企業にとってもその大小にかかわらずメリットの大きい採用手法と言えるでしょう。

中小企業の採用競争力確保の一手へ

初期配属確約型の採用は、社内にたくさんの部門・部署を持ち、多くの学生を受け入れる体力のある大企業向けの施策だとお考えになっていた方も多いのではないでしょうか。筆者もインタビュー前には同じ印象を抱いていました。

しかし、「学生の心理的安全性を確保し、相互理解の上でミスマッチをなくしたい」という根底にある狙いに目を向ければ、実は中小企業でも行いやすい施策であると言えるでしょう。

人材不足の時代が到来しています。自社の採用競争力確保のため、ぜひ初期配属確約型の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/12/26
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