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【初めての新卒採用】企業に打つ手はあるのか? 内定・内々定辞退対策

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この記事では、「初めて」または「久しぶり」の新卒採用活動を実施される企業の方に向けて、内定・内々定辞退対策について現在の採用市場のトレンドを踏まえながら丁寧に解説していきます。

内定辞退とは、候補者が内定を承諾した後に、候補者側の都合によって内定を辞退をすることを指します。
候補者は、企業から内定をもらったからといって、必ずしもその企業に入社しなければならないという義務はなく、内定を辞退することができます。
採用担当者の仕事をしているとしばしば直面するのが、この学生からの「内定辞退」です。

まず、市場環境について解説します。
若干の微減はありますが、大学卒業学生数が横ばいなのに対して企業の採用意欲が高まっていることから、いまの採用市場は学生優位な「売り手市場」となっています。
大学生の内定保有社数は、直近では2021年卒の1.87社を底に上昇傾向です。
23年卒も6月時点ですでに2社以上の内定を持っていたということは、最終的に「内定辞退」されてしまう企業が半数以上存在していることを示唆します。

このような市場環境の中、各企業は採用予定人数を確保するため早期に学生を取り込もうと、内々定出しの時期を早める傾向が顕著となっています。
23年卒学生の採用活動を例にとると、一般的な選考開始時期である6月以降の内々定出しはむしろ少数派で、4月が最も多いという結果です。

企業の採用担当者の方にお話を伺うと、今の学生のキャリア観・就業観に対する戸惑いの声が多く聞かれます。

<参考記事>

新卒採用担当者緊急座談会 「Z世代とのコミュニケーション方法に悩みはありますか?」―【特集】対求職者コミュニケーション 第2回


キャリア観・就業観という点では、こちらの記事でマイナビの研修事業を担当している樋口友美が「配属ガチャを嫌う傾向」について言及していました。

「配属ガチャ」とは、その後の配属がはっきりしない総合職の配属決定スキームを指した言葉です。この言葉自体が、配属が分からない状態での内定受諾を嫌がる学生の心理が表れています。
そして、配属決定には内定辞退とも強い関係があります。

このグラフは、HUMAN CAPITALサポネットが独自に行った調査の結果をもとに、「配属通知時期」と「内定者に対して実際に入社した人数の割合(以降、入社率)」の相関を示したものです。

最も入社率が高いのは「内定通知前」に配属を決定しているパターンで、他の項目を見るとおおむね「配属決定は早ければ早いほど、入社率が高い」ことが分かります。つまり、内々定・内定辞退をされにくいということです。

企業にはそれぞれの事情もあるため、すぐに配属決定を早めることは難しいと思いますが、できるだけ早い配属決定は内々定・内定辞退を避ける強力な要因となり得ます。

ではなぜ、学生は「配属ガチャ」を嫌がり、配属決定が早いほど入社率が高まるのでしょうか。

前出の樋口は、今の学生は「入社した会社でゆっくりとキャリアを積み上げよう」という思考ではなく、「場合によってはフィールドを変えて自分のキャリアを実現していこう」という志向を持っていることが理由ではないかと分析しています。

早めに配属先が分かり、なおかつそれが自分の希望したものである場合、他の企業を断って入社を決めるという行動を起こすのは自然なことと言えるかもしれません。

その傾向に合わせて、新卒でも「ジョブ型」の求人を出す企業も出てきました。
しかしながら大切なのは、選考フローを「ジョブ型」「総合職」と分けるのではなく、いずれの場合でも、学生が就く可能性のあるポジションについて明確に、詳細に説明するRJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事の情報開示)です。学生が本当に求めているもの、つまり「キャリアの明確化」を通じて、安心感につなげていくことが重要であると言えるでしょう。

<参考記事>
新卒採用トレンドワード ~最近よく聞く「ジョブ型採用」とは?~

「入社前研修」その最新トレンドと、押さえるべきZ世代の就業観とは

ここまで、市場環境の解説と、学生に選ばれる企業になるために気を付けたいポイントについて解説してきました。

最初に数字で示したように、23年卒の学生は「2.25社」の内定を持っていました。企業側の採用意欲の高まりから、24年卒以降はさらに多くなる恐れも十分にあります。つまり、どれだけ対策をしても半分の企業は内々定・内定辞退はされてしまうということです。

では、どのようなときに学生は「内々定・内定辞退」をしてしまうのでしょうか。それを知っておくことで、さらに内々定・内定辞退を事前に防ぐことができるかもしれません。

学生が内々定・内定辞退をしてしまう理由ついて、学生向けの就活アドバイスも行っている株式会社Strobolightsの代表・羽田啓一郎さんは、大きく2つの理由に分類されると話しています。

1つが「より志望度の高い企業から内定をもらった」こと。この理由で辞退された場合、企業がその内々定・内定辞退を防ぐことについては「不可能」とおっしゃっています。
採用担当者や、それまでその学生と交流してきたメンターを通じて辞退理由をヒアリングし、次年度の採用活動に活かすようにしましょう。

そしてもう1つの理由は、「なんとなく、その企業に就職していいのかどうかが分からない」というものです。
羽田さんが紹介してくださったエピソードが分かりやすいと思います。

先日、2023年卒の学生と話した際のエピソードが参考になるかもしれません。彼は就職活動でIT系ばかり受けていたので、率直にその理由を聞いてみたんです。
でも、明確な答えは彼の中にもない。ただ、IT系の業界はこれから伸びるだろうという印象だけなんですね。自分の中に判断軸がないので、強い志望動機も持てないのです。

つまり「入社する確固たる理由がないから、なんとなく他社に行ってしまう」ということです。採用担当者としては悔しい理由ですよね。

しかし、1つ目の理由と違い、こちらなら対策が可能だとも羽田さんはおっしゃっています。それは「入社する理由をつくってあげること」です。

そのための打ち手として代表的なのが「若手社員との交流機会をつくること」。リクルーターやOB・OGといった学生と立場の近い社員と積極的に交流機会をつくり、入社した後の自分の姿をリアルに想像させ、入社の理由(意欲)を醸成することが重要なのだそうです。

また、もう一歩踏み込みんだ施策として、内定者時代からメンターを付けるという方法も有効です。
実例として、株式会社マイナビでは自社の新卒採用に「採用担当制」を導入しています。10〜20名の内定者を採用担当者が「担任」として受け持ち、メンターのように入社までをサポートしています。

<参考記事>
学生心理からひも解く「内定辞退」―採用側が事前にできることとは?

確かな成果があるから続けられる マイナビ流「採用担当制」とは? ―【連載】内定者と深くつながる研修・コミュニケーションのキモ 第2回


人との交流を活かした入社意欲の醸成には、もう1つの方法があります。採用担当者が行うことの多い「内定者面談」です。
この手法について、数々の企業に採用コンサルティングを提供している株式会社人材研究所の代表・曽和利光さんは、「内々定・内定通知後すぐにやるのが鉄則」と語っています。

人は、大きな意思決定をした後に悩む傾向があります。結婚が決まってから深く悩んでしまうマリッジブルーがまさにそうですが、それになぞらえて「内定ブルー」という言葉もあるくらいです。

内定出しのタイミングではまだ他社の選考が進んでいたり、他社の内々定・内定を持っていて悩んでいたりします。または、他社に内定辞退の連絡をしたら強く説得され、改めて悩んでしまうということもありますね。

そんな悩みの多い時期に放置しておくと、気持ちが揺れ動いてしまって内定辞退を招くことになります。なので「とにかく早く」が鉄則なんです。

目安としては「1週間以内」が理想とのこと。
内定者面談の中で他社の選考状況などをヒアリングし、その学生に入社してほしいという気持ちをしっかりと伝えましょう。

ただし、決してやってはいけないのが「オワハラ」です。

「この場で他社に内定辞退の連絡をしてもらえますか」
「内定を出すので承諾書にサインしてください」

このように、就活を終わらせることを強要することを「オワハラ(就活終わらせろハラスメント)」といいます。
これに直面した学生は強いストレスを感じるばかりか、後からSNSで拡散されてしまうことも十分にあり得ます。その場合、影響は1人の学生を採用できないということにはとどまらず、企業イメージ全体の毀損(きそん)にもつながりかねません。
大前提として判断は学生に任せつつ、「どれだけあなたに入社してほしいのか」を真っ向から伝えるようにしましょう。

<参考記事>
新卒採用の正念場! 内定者面談で内定辞退を防ぐための「3つのポイント」


ここまで、内々定・内定辞退を避けるために企業が学生に対してどのように働き掛けることができるのか、参考記事をもとに解説してきました。

しかし、内々定・内定辞退対策にはもう1つ重要なポイントがあります。それが、内定者同士のつながりです。
入社したら同期となる仲間でもある内定者同士のリレーションを深めることで、仲間意識を醸成し入社意欲を高めることができます。

この手法についても、前出の曽和さんがいくつかのポイントを示してくださいました。

その1つが「少人数のグループで行うこと」です。コロナ禍も落ち着きを見せ、24卒では内定者全員を集めての懇親会を開こうと計画している方もいらっしゃるかもしれませんが、気を付けたい“内定者同士のトラブル”についてエピソードを交えて解説しています。

実際にあった話なのですが、内定者を一堂に集めて立食形式の懇親会を開催した企業がありました。
特にグルーピングなどはせずに、自由にみんなで話してくださいね、という会でしたが、採用担当者の知らないところで内定者同士のちょっとしたイザコザがあったそうです。

その報告を受けて、担当者から内定者へ後日連絡をしてみても返事がない。メールも返ってこないし、電話も出てくれない。
すると数日後に「社風が合わない」という理由で内定辞退の連絡が来てしまったそうです。

当然ながら、学生は「会社」という場がどのようなものなのか知りません。それまでの就活を通じて得た限定的な知識から類推するしかなく、1つの出来事によって会社全体に対する誤解を生みかねません。

そのため、トラブルを防ぐためには採用担当者がリクルーターや面接官などの意見を参考にしながら、パーソナリティの合いそうな内定者同士を集めた小さなグループで懇親会を開くことの方が有効だとおっしゃっていました。

最後に、内定者研修について解説します。

もちろん、内定者研修の本来の意義はビジネスマナーや事業の理解など入社後の仕事をスムーズに始められるようサポートすることにありますが、それを通じて内定者が抱える不安を取り除くという効果も期待できます。
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2023/10/19
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