せっかく求職者から応募が来ても、面接や内定を辞退されていませんか？
中途採用を行っている介護法人の採用担当者からは、ほかに「面接日程が決まらない」「連絡がとれない」「面接当日にドタキャンされる」といった悩みもよく聞かれます。これらは、応募後の求職者への対応を変えれば解決できることが少なくありません。
今回は、応募後の選考フローのなかでも着目したい「応募から面接までの日数」「面接設定率」「面接の無断キャンセル率」「内定通知までの日数」「内定辞退率」の5つのポイントに着目。求職者への対応のヒントとなる調査結果と課題解決のための対策を、ポイント別に解説します。

マイナビの調査によると、中途採用における医療・福祉・介護業界の「応募から面接日までの平均日数」は、WEB・対面のいずれの場合も10日程度。多くの介護法人は、応募から1週間以内に面接を設定していると考えられます。
※出典：マイナビ「中途採用状況調査2023年版（2022年実績）」

また、転職者に選考フローのなかで「入社決定に強く影響したこと」を尋ねた調査では、「会社・業務についての説明がある」「入社の希望を聞いてくれる」（ともに28.5％）に続いて多かったのが「応募・面接後の返信や対応が早い」（28.0％）でした。この結果からは、応募後の返信や対応が早いほど応募者に与える印象が良くなり、面接につながる可能性も高くなると予想できます。
※出典：マイナビ「転職動向調査2023年版（2022年実績）」

応募から面接までの日数が長いと、そのぶん応募者を待たせることになるため、応募者の興味が、より面接設定のスピードが早い他法人に移ってしまうリスクが高まります。現状で面接設定が1週間以上先になることが多い介護法人には、面接設定のスピードを早める工夫や努力が求められます。

では、面接設定のスピードを早めて、応募から面接日までの日数を短くするにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、3つの対策を紹介します。

■応募日に求職者に連絡をいれる
求職者から応募があったら、その日のうちに電話かメールで連絡をしましょう。できればその際に、面接の予約を取り付けるとよいでしょう。連絡が早いほど、面接を早めに設定しやすくなります。応募日に連絡ができない場合は、3日以内を目安に、できる限り早めに連絡しましょう。

■電話ヒアリングでスクリーニングを行う
中途採用で書類選考を行う介護法人は少数派なので、応募者に書類の提出を求めると、辞退が多くなるおそれがあります。加えて、工程が多くなる分、書類選考を実施していない法人と比べると面接設定のスピードが遅くなってしまいます。
そこで書類選考の代わりに、電話で連絡した際に、数分程度のヒアリングを実施することをおすすめします。電話ヒアリングでは、経歴やスキルといった基本情報のほか、給与、休日などの条件の希望があるかどうかを確認して、その情報をもとに、面接前のスクリーニング（ふるい分け）を行いましょう。

■複数人の採用体制にする
面接は、応募から1週間以内に設定するのが理想です。そのためには、複数名の採用チームを組んで対応すると良いでしょう。
介護業界では、施設長などがほかの業務と兼務しながら、1人で採用活動を担っているケースが多く見られます。しかし1人体制だと、1日中面接の予定が入っていたり、ほかの業務で手が離せなかったりして、応募者への対応スピードが遅くなりがちです。
応募者に迅速に連絡・対応するには、最低でも2人以上の体制が求められます。

応募者のうち面接の予約が確定した人の割合を「面接設定率」といいます。マイナビの調査では、医療・福祉・介護業界の面接設定率は、65.2％と、全業界でもっとも高いことがわかっています。
※出典：マイナビ「中途採用状況調査2023年版（2022年実績）」

考えられる要因は2点あります。
1点目は、介護業界の中途採用では、書類選考を行う法人が少ないためです。
2点目は、採用の難易度が高い業種であるがゆえに、人材紹介の利用率が高いためです。面接設定率が高い業界だからこそ、応募者を取りこぼすことなく面接までつなげることが重要です。

では、面接設定率を高めるにはどうすればよいのでしょうか。カギとなるのは、面接の案内と日程調整のために送るメールの文面です。
日程調整のメール文面は、法人側から複数の候補日をあげて応募者に○を記入してもらう「日程提示型」と、応募者に都合のつく日を何日かあげてもらう「候補日ヒアリング型」の2種類に大きく分けられます。
簡単に両者のメリットをあげると、応募者側の入力の手間が少ないのは「日程提示型」で、法人側の手間を省けるのは「候補日ヒアリング型」です。スマートフォンで返信する応募者が多いことを考えると、より返信につながりやすいのは「日程提示型」といえるでしょう。
「応募者を逃さないためのフォローマニュアル（以下、応募者フォローマニュアル）」には、「日程提示型」「候補日ヒアリング型」それぞれのテンプレートを掲載しています。見比べたうえで、自法人に合う文面を選びましょう。

なお、メールには、1週間以内を目安に、必ず返信期日を記載しましょう。返信期日がないと、応募者側に「先に選考が進んでいる法人から面接日程を決めて、この法人にはあとで回答しよう」という心理が働くため、なかなか返信をもらえない場合があるからです。

せっかく面接の予約を取り付けても、無断キャンセルが発生すると、面接前に応募者を逃すことになります。福祉介護業界の面接無断キャンセル率は、11.9％。面接手法が「WEBのみ」の場合と比較すると、「WEBと対面」「対面のみ」のほうが、面接無断キャンセル率が低いことがわかっています。

※出典：マイナビ「中途採用状況調査2023年版（2022年実績）」

面接無断キャンセル率が20％を超えている法人は、面接前の案内方法などに何らかの問題があるかもしれません。

面接無断キャンセル率を下げるには、電話による面接前日のリマインドコールが有効です。採用担当者が応募者と直接話すことで、面接への参加意欲の向上につながります。電話に出た応募者に、改めて予約のお礼と面接日程を伝えたうえで参加の可否を聞くのが、リマインドコールの基本的な流れです。
応募者が電話に出ない場合の対応なども含めた詳細なトークスクリプト（基本対応をまとめた台本）は、下記「応募者フォローマニュアル」に掲載しています。リマインドコールを実施する際には参考にしてください。

業界全体における「面接から内定通知までの日数」の平均は、WEB面接の場合で9.0日、対面面接では8.7日です。一方、医療・福祉・介護業界における「内定通知までの日数」の平均は、WEB面接の場合で7.2日、対面面接では6.7日。介護業界では、他業界よりも、早く内定通知が出る傾向があることがわかります。

※出典：マイナビ「中途採用状況調査2023年版（2022年実績）」

考えられる主な理由は、介護業界では面接回数が少ない法人が多いことと、他業界以上に人手不足であることです。介護法人では、施設長など決裁権のある人が面接に入って、1回の面接で採用を決めるのが一般的です。また、すぐにでも人材がほしい法人が多いため、内定を早めに出す傾向があります。
内定が早く出ることは、本来は応募者にとっては喜ばしいことです。しかし、なかには「人気がない法人なのかもしれない」と、かえって不安に感じる応募者もいます。不安や誤解から内定辞退されるケースを防ぐためには、面接後のフォローに力を入れる必要があります。

応募者の不安を解消するには、面接後のフォローコールが有効です。面接の翌日に採用担当者が応募者に電話をかけ、面接の感想を聞いたうえで、希望する条件とのギャップや疑問点がなかったかを確認します。採用担当者と直接コミュニケーションをとることで、入職意欲が高まる効果も期待できます。
下記の「応募者フォローマニュアル」では、面接後フォローコールの基本対応とトーク内容をまとめたトークスクリプトを掲載しています。面接後のフォローコールを実施する際には参考にしてください。

医療・福祉・介護業界の内定辞退率は7.1%と、全体平均の7.9％と比べるとやや低めです。とはいえ、せっかく内定を出した応募者に辞退されるのは大きな損失なので、辞退を最小限にするための対策は欠かせません。

※出典：マイナビ「中途採用状況調査 2023年版（2022年実績）」

一方、転職者に「選考を辞退した理由」を尋ねた調査を見ると、もっとも多かったのが「給与が低かった」で、全体の約3割（29.0％）を占めています。

※出典：マイナビ「転職動向調査 2023年版（2022年実績）」
この調査結果からは、選考過程で、給与を中心とした条件面に不安や疑問を持つ応募者が多いことがうかがえます。

内定辞退を防ぐためには、前出の「（内定通知が早いことへの）不安解消のための対策」と同様に、面接後のフォローコールで、条件面を中心に応募者の不安を解消する必要があります。
面接後フォローコールを実施する際には、下記「応募者フォローマニュアル」に掲載されているトークスクリプトを参考にしてください。

さらに、必要に応じて内定通知を出す前後に条件面談を実施するのも効果的です。条件面談では、選考の評価ポイントや年収、配属部署などを提示することで、入職決定の後押しをします。

今回は、「応募から面接までの日数」「面接設定率」「面接の無断キャンセル率」「面接から内定通知までの日数」「内定辞退率」の5つのポイント別に、最新の調査結果や応募後対応の改善策を解説しました。
これらのポイントに着目して、各ポイントの対策を実践することで、応募後の課題や悩みは解消していくはずです。まずは複数名の採用チームを作って、体制を整えましょう。対策をまとめた「応募者フォローマニュアル」を、介護職採用にぜひお役立てください。