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問題は給与ではない:優秀な人材を惹きつけ、繁栄する企業文化を構築する方法

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『The problem isn’t their paycheck』は、アメリカで金融証券会社を経営する著者のグラント・ボトマ氏が、従業員のモチベーションを上げるのは給与ではなく、自由、承認、目的という3つの基本的な要素にあると説きます。
優秀な人材が自発的に能力を発揮できる職場をどう作るか、本書のなかから要点を紹介します。

リーダーは思考を変えて3つの要素に注目する

まず、リーダーは給与の高さを従業員のモチベーションを上げる手段にすることから抜け出し、3つの新しい要素に注目するよう思考を変える必要があります。

  • 自由:チームメンバーを信頼して時間の使い方を任せます。
  • 承認:従業員が自分の行動が正しいと自信を持てるようにフィードバックを与え続けます。
  • 目的:チーム全体で一つの目的を持ち続けます。

「給与の高さを従業員のモチベーションにしてしまうと、イニシアチブを取り、顧客に素晴らしい体験を与えるために必要なことを進んで実行できる自発的な社員が生まれない」というのがボトマ氏の主張です。できるだけ少ない労力で働いて給料をもらい続けようとする従業員が増えてしまいます。
誰にとってもお金は必要です。

しかし、それは最も重要なモチベーションではありません。給与の高さよりも、自由や承認されること、そして目的を持つことが従業員のやる気につながります。
給与の高さを魅力に人材を集めると、そこに集まる従業員は、もっと高い給与を目指して別の仕事を探すようになり、人材が定着しにくくなります。このサイクルは雇用主にとってよいものではありません。そして従業員にとっても実はあまりよくないことなのです。

給与の高さでモチベーションを上げていくと、組織の中に利己主義な文化が生まれます。しかし、自由、承認、目的を通じてモチベーションを上げるなら、革新的でイニシアチブを取り、顧客に最高な体験を提供するために必要なことを自発的に提供できるチームをつくることができるでしょう。

自由を尊重して従業員の自発的なメンタルをつくる

従業員に職場での自由を与えることは、雇用主が利用されるということではありません。自由を尊重すれば、仕事を成し遂げるために前向きな気持ちで取り組む人が集まる素晴らしいチームを持つことがきます。
もしリーダーが従業員を信用できないのであれば、それは従業員ではなくリーダーに問題があります。なぜなら、信用できる人を採用したはずだからです。

スケジュール管理、休憩、休暇、勤務時間外の人づきあいなど、職場での時間の使い方を、従業員一人ひとりに任せましょう。そうすれば自発的なメンタルが育ち、生産性の高いチームに成長します。自由を与えられた従業員の問題解決能力は期待以上になります。

必要以上に干渉する言葉を使わない

上司が部下の業務に強い監督・干渉を行うマイクロマネジメントは、従業員のやる気を失わせる可能性があります。必要以上に細かいところまで干渉する言葉が出ていないか注意しましょう。

  • 「これを行ったのは今日ですか?」
  • 「この仕事は、こうしなければいけません。」
  • 「私だったら、そんな風にはしないですね。」
  • 「私がやるので、もういいです。資料を貸してください。」

承認することで自信を持つことにつながる

人は自分のことを承認されることで自信を持ちます。そして自信を持てば自分の意思で動けるようになります。
従業員が良い仕事をしたときには、その場でどんどん声をかけて肯定的に褒めたり感謝を伝えたりしましょう(肯定的な承認)。
仕事に問題が起きたとき、時には否定的に指摘をすることも必要です(否定的な承認)。

それは軌道修正や従業員の責任の所在を明らかにするために使われますが、肯定と否定のバランスが重要です。
日ごろから褒められたり感謝を伝えられたりしている従業員なら、指摘されることにも耐えられます。しかし指摘されることばかりが続くのはよくありません。
そして、肯定的な承認でも否定的な承認でも、承認はその場で与えられるべきです。査定の時期まで保留にしてはいけません。
実際に職場でどのような承認が行われるのか、ボトマ氏は9つのステップで解説します。

Step1 承認する機会を増やす

すべての電話、すべてのやりとりで、毎日なにかしら従業員が良いことをします。そこで「よくできましたね。」「いい仕事をしましたね。」と褒める言葉を繰り返し伝えます。ほかにも、チームの今までの実績データを集めたり、チームメンバーについてポジティブなことを書き出してみたりすることで、承認できることを集めましょう。そして機会があるごとに、「この前の○○はよくできましたね。」とか「この前、こんないいことをしたと聞きましたよ。」というように、承認します。

Step2 意識的に承認する

考えているだけで終わらせず意識的に実行すること。リーダーがオフィスの中を歩き回り、15分、30分ほど部下と交流しながら承認する時間をとれるよう定期スケジュールに組み込んでおくといいでしょう。

Step3 チーム全員が、自分の実績をリアルタイムで確認できるようにする

スコアボードやエクセルシートなどをつかい、担当している仕事の個人実績がどうなっているかリアルタイムで全員が分かるようにします。

Step4 貢献したことを承認して感謝を伝える

ボトマ氏は、いつでもサンキューカードを手元に置いて従業員へのお礼に使っています。また、社内ではSlack のチャンネルで、顧客からのポジティブコメントを社内共有したり、企業のSNSで、従業員の貢献を公開したりと、様々な方法で承認ができるように工夫しています。

Step5 チームメンバーをほかの人の前で承認する

人前で承認されることは効果があります。特に家族の前で従業員を褒める機会があれば積極的にするべきです。ボトマ氏は、従業員の子どもが職場に来たときにはいつでも、その子の親である従業員が素晴らしい仕事をしていると子どもに話すそうです。

Step6 素早くその場で承認する

仕事が上手くいかなかったときに否定的に指摘することも、肯定的に褒めたり感謝を伝えたりすることと同じように、素早くその場ですることが大切です。ただし否定的な承認を従業員が受け入れるためには、日ごろから肯定的な承認を受けている必要があります。

Step7 感情のコントロールをする

誰かが間違ったことをしたとき、否定的に反応するのは簡単ですが、軌道修正のためにはリーダーが感情を抑えなければなりません。対立が好きではなく、その場でフィードバックすることが苦手なリーダーと、激しい叱責で過ちに対応するリーダーは、どちらもよくありません。否定的な承認をするときには、うまく感情をコントロールしましょう。

Step8 肯定的な承認と否定的な承認のバランスをとる

否定的な承認ばかりが続かないように注意しましょう。肯定で自信をつけている人に、時々ネガティブな指摘をしても大丈夫です。一つネガティブな指摘をする前に5つのポジティブな承認をすることが大切です。

Step9 お祝いをする

承認は単なる言葉以上のものです。みんなで祝い、体験を通してチームの承認をしましょう。例えば3か月連続で目標を達成できたら、チーム全員でアイスクリーム屋に行くといったささやかなことでいいのです。リーダーは、そこでチームの功績を称えます。

目的がインパクトをつくる

全員が同じ目的を持つことは最も大きなインパクトを生み出します。それは組織の、外部、内部、哲学的な問題を解決することにも役立ちます。
企業が掲げる目的は、まず人生の目的につながらなければいけません。もっとも大切なことに対する感情をビジネスの目的に生かして問題を解決し、ほかの人に最大の影響を与える方法を考えることが大切です。

統一された目的は人々を結びつけます。そして、組織が出会う問題を解決する方向に導いてくれるのです。また企業が掲げた目的に賛同して、チームの一員になりたいと思う人も出てくるでしょう。

統一された目的の作りかた

統一された目的は次のように作ります。

顧客の持つ問題を特定する

(例:「外部の問題―顧客が抱える問題。「内面の問題-顧客が自分の問題についてどう感じているか。」、「哲学的問題―なぜ、外部の問題や内面の問題が起こっているのか。何が障壁なのか。」)

自分たちに、何ができるか考える

(例:Airbnbは「誰もが属する世界をつくる」、Kellogg’sは「家族が繁栄できるよう、健康にする」、Southwest航空は「人々に空を飛ぶ自由を与える」)

誰に奉仕するかを考える

(例:Airbnbは「世界」、Kellogg’sは「家族」、Southwest航空は「人々」)

結果がどうなるのか考える

(例:Airbnbは「帰属する」、Kellogg’s は「繁栄する」Southwest航空は「空を飛ぶとき自由になれる」)

統一された目的に全てを向ける

どうすれば、全員で統一された目的に向かうことができるでしょうか。そのポイントはリーダーにあります。

  • まず上司がやる
  • 自由と承認でチームをまとめる
  • チーム全員が目的に合っていることを確認する(まずは企業文化に合う人を雇う)
  • 絶対に全力で目的に向かう」

統一された目的に向かうメンバーをまとめるのは、リーダーの役割です。リーダーから率先して目的に向かいましょう。
そうすればチームもコミュニティに最適なサービスを提供できるようになります。企業の目的が「お金持ちになろう」だとしたら、それは利己的で人々を一つにまとめません。無私無欲の目的を持つ企業だけが使命を果たし、世界をより良い場所にすることができます。

給与よりも大切な要素で従業員のモチベーションを上げる

誰にとってもお金は必要です。給与を得ることが仕事をする大きな理由であることは間違いありません。しかし、給与を得るためだけに働いても長くは続かず人材が離れていってしまうというのが、本書の全体を通したメッセージです。
従業員のモチベーションを上げ、組織として結果を出すためには、自由、承認、目的という3つの基本的な要素を従業員に提供し、一人ひとりが自発的に活躍できる場所を育てていくことが大切です。

THE PROBLEM ISN'T THEIR PAYCHECK:HOW TO ATTRACT TOP TALENT AND BUILD A THRIVING COMPANY CULTURE
著者 Grant Botma
出版社Lioncrest Publishing (初版2019/11/08)
ISBN-10 : 1544505418
ISBN-13 : 978-1544505411

  • 経営・組織づくり 更新日:2022/06/29
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