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異文化マネージメントに欠かせないカルチュラル・インテリジェンス

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ビジネスのグローバル化が加速し、他国の人たちと仕事をする機会も増えています。このような時代に、リーダーの素質として欠かせないのが、異なる文化を理解し多様性のあるチームを上手にまとめる力です。その能力をカルチュラル・インテリジェンス(CQ)といいます。カルチュラル・インテリジェンスの長年の研究者として知られ、これまでにも複数の異文化マネージメントに関する書籍を出版しているデビッド・リバーモア博士の著書「Leading With Cultural Intelligence」は、カルチュラル・インテリジェンスについての最新リサーチ、ケーススタディ、そして費用対効果の検証など、様々なトピックから詳しく解説されています。

特に、カルチュラル・インテリジェンスを身につけるための4つのステップを理解することは、職場で異文化理解の問題に悩んでいる人や、自分のカルチュラル・インテリジェンスのレベルを上げたい人に大いに役立つでしょう。分かりやすい英語で書かれている本書は、海外赴任を控えている人や海外出張が多い人のハンドブックとしてもおすすめです。

カルチュラル・インテリジェンスとはなにか?

カルチュラル・インテリジェンスとは、国や民族、組織特有の文化を越えて上手にコミュニケーションを図る能力です。この能力には個人差がありますが、住んでいた場所、働いていた場所、勉強をしていた場所などの環境とは関係ありません。海外生活が長くてもカルチュラル・インテリジェンスが低い人もいれば、海外に行ったことがなくてもカルチュラル・インテリジェンスが高い人もいます。そして、トレーニングをすれば誰でも能力を向上させることができます。

カルチュラル・インテリジェンスがなぜ必要なのか?

現在、異文化コミュニケーションのトレーニングが盛んにおこなわれ、参考資料や理論もたくさんありますが、文化の違いに対応できないことが原因でグローバル企業の7割が失敗をしているといいます。それは、異文化コミュニケーションに対するアプローチの多くが、単純すぎて多様な環境にあっていなかったり、極端すぎて実現不可能だったりするせいです。一方、カルチュラル・インテリジェンスのモデルは、70以上の国の4万人を超える専門家の研究を起源としています。そして自分とは違う文化の規範や価値、慣習を細かく覚えるというだけではありません。リーダーが持つべき全体的な視点と、色々な異文化のシチュエーションで効果的なリーダーシップを発揮する方法を身につけることができます。例えば、自分の文化と違う環境では、人々の行動や物の見方を奇妙に感じることがあるかもしれません。そのようなときにカルチュラル・インテリジェンスが身についていれば、何が違うのか深く考え、理解し、戦略を立て、よい方向に調整することができます。

カルチュラル・インテリジェンスの4つのステップ

カルチュラル・インテリジェンスは次の4つの機能から成り立ちます。リバーモア博士は、この4つの機能をカルチュラル・インテリジェンス向上のためのステップと考え、日常的に繰り返すことを勧めています。異文化の問題に直面するときに、このステップは必ずしも順序通りになるわけではありません。またカルチュラル・インテリジェンスには、決まった方向というのもありません。しかし、初めのうちはこの順序で考えるようにするとイメージしやすいでしょう。

カルチュラル・インテリジェンスは変化する能力です。日々の業務のなかでステップを繰り返すことで、形を変え成長していきます。

  • CQ Drive(モチベーション)異文化について興味や理解したいと思う気持ちを持つ
  • CQ Knowledge(認知)異文化間で起こる問題と、文化の違いを理解する
  • CQ Strategy(メタ認知)文化的に多様性のある体験を戦略的に計画し作り出す
  • CQ Action(行動)言語的、非言語的な面で異文化に対応し、効果的で柔軟なリーダーシップを実行する

1.CQ Drive「異文化に興味を持つ心」

CQ Driveは、異文化間に起こる問題への興味、自信、意欲を示します。文化が違う環境で、仕事に伴う課題や対立を乗り越えるための自信と意欲があるかどうかは、とても大切です。例えば、企業でどんなに力を入れて異文化コミュニケーションの研修を実施しても、参加者が異文化間の問題に興味がなく、ただの義務として参加しているのであれば意味がありません。異文化マネージメントができる優れたリーダーになる人は、異文化に興味のある人です。

CQ Driveを向上させるためにできること

オンラインでImplicit Association Test(潜在的連合テスト:IAT)を受けてみましょう。このテストでは本人が自覚できない潜在的な態度を調べることができ、無意識のバイアスを見つけ出します。そして異文化の環境で食べたことのないものを勧められたら嫌がらずに食べてみること。このような日常的なことも相手の文化を理解するうえで重要なポイントです。もし異文化プロジェクトに興味が持てないときには、自分の好きなものと組み合わせてみるといいかもしれません。スポーツが好きな人なら、それぞれの文化で人気のあるスポーツを調べてみるといいでしょう。これはアートや音楽にも応用できます。

2.CQ Knowledge「異文化に対する知識」

CQ Knowledgeは、文化への一般的な理解を示します。広く信仰されている宗教のこと、男女の文化的な役割、経済、ビジネス、法律、政治のシステムなどを知っておくことで、その文化のなかで働くときの自信につながります。CQ Knowledgeは、多くの異文化理解へのアプローチで重視されている大切な要素ですが、ほかの3つの機能と合わせて考えることが大切です。知識の習得だけに偏ると、リーダーシップから離れてしまい、潜在的に有害なものとなることがあります。

CQ Knowledgeを向上させるためにできること

まず、自分の文化を「普通」の基準にする自民族中心主義をやめます。そして外国語を学びましょう。経済、結婚観、家族観、教育、法律、政治、宗教、芸術という6つの基本的な文化システムを学ぶことも役に立つでしょう。

3.CQ Strategy「異文化問題を乗り越える戦略を立てる力」

戦略的に文化を超える能力がCQ Strategyです。例えば、自分の心やほかの人の心に何が起きているのか冷静に観察するために時間をかけることができるでしょうか? この能力があれば、これまでに得た知識を引き出し、それを使って異文化問題を解決する計画を立てることができるようになります。そして結果が期待に見合うものか、または修正が必要かどうかを判断するのにも役立ちます。

CQ Strategyを向上させるためにできること

CQ Knowledgeで得た知識を元に、異文化間のプロジェクトや相互作用を起こす場面を計画してみましょう。海外出張に行くときでも、どうしたら文化を越えて取引がうまくいくか、他国のスタッフと、どういったコミュニケーションを取ればいいかという点に時間をかけます。計画や戦略を立てたら、一歩下がって熟考してみること。そこで気づきがあれば、よりよい意思決定ができます。異文化を持つ仕事のパートナーに意見を聞いてみることも大切です。そして、計画を実行した後には、仮定していたことと計画が正しかったか振り返ります。

4.CQ Action「これまでのステップを行動に移す力」

今までに挙げた3つの能力の結果となるCQ Actionは、異文化間で起きるさまざまな状況で適切に行動するリーダーの能力です。単に異文化を受け入れるのではなく、異文化に適応したほうがいいときと、適応しないほうがいいときを見極める判断力が重視されます。

カルチュラル・インテリジェンスが高い人は、どの行動に有効性があるのかを判断することができます。そして、その判断に基づいて行動できます。

CQ Actionを向上させるためにできること

行動を起こすときには、言葉選びを慎重にすること。文化によって、気をつけなければいけない話題、お願いのしかた、謝り方、ほめ方が違います。そして非言語のアクションにも気をつけなければなりません。相手との距離感(コンフォートゾーンの違い)、体に触れること、会議で座る場所や仕草などに気を使う文化もあります。異文化間のリーダーシップでは「交渉」を意識します。日常的に異文化間でWin-Winのポイントを見つけるだけでなく、どこで譲り、どこで譲らないか考えるようにしましょう。

カルチュラル・インテリジェンスの費用対効果

カルチュラル・インテリジェンスの高いリーダーを採用することや育てることは企業にとってプラスになります。リーダーのカルチュラル・インテリジェンスが高ければ異文化の環境下で任務を遂行できる確率が高くなるため当然のことと言えるでしょう。そのほかにも次のようなことが期待でき費用対効果を望めます。

  • 国籍チームのパフォーマンスが上がる
  • 国内外の、文化的に多様性のあるマーケットへ事業を拡大できる
  • 多様性の問題に悩む時間が減り、スピードと能率が上がる
  • 海外勤務者の創造性が発揮されやすい
  • 多様性を理解できるリーダーがいることで雇用主としての魅力が増す

採用活動におけるカルチュラル・インテリジェンス

リバーモア博士によれば、カルチュラル・インテリジェンスが高いリーダーは、異文化の環境下で仕事をするときに燃え尽きにくいといいます。そして複数の研究でカルチュラル・インテリジェンスと、国境を越えて働くときのスタミナ、エネルギー、創造性との関わりが証明されています。この結果は、特に毎月のように違う国で仕事をする、海外出張が多いポジションに顕著です。海外出張や海外赴任が多いポジションの採用をするときには、採用試験で候補者にカルチュラル・インテリジェンスの4つの機能が備わっているか確認するとよいでしょう。

もう一つ、リバーモア博士は大変重要なことを述べています。それは、カルチュラル・インテリジェンスが人事部のリーダーにとって欠かせない能力であるということです。様々な職種を分析し、そのポジションにあった人を組織内や採用活動で見つけてくることや、パフォーマンスレビューをすること、従業員のための研修を計画する、キャリアプランニングの提案をするといった人事部の仕事は、カルチュラル・インテリジェンスが高くなければ上手くできません。

誰にでも身につけられるカルチュラル・インテリジェンス

Drive、Knowledge、Strategy、Actionというカルチュラル・インテリジェンスの4つのステップは、異文化間に起こるどのような場面にも生かすことができます。そして、性格的にカルチュラル・インテリジェンスが高い人と低い人はいますが、努力をすれば誰にでも伸ばせる能力です。グローバルな職場での円滑なコミュニケーションのためにカルチュラル・インテリジェンスを身につけてみてはいかがでしょうか?

Leading with Cultural Intelligence: The Real Secret to Success
著者 David Livermore
出版社AMACOM(HarperCollins Leadership) (第2版2015/04/08)
ISBN: 9780814449172

  • 労務・制度 更新日:2022/06/14
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