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コロナ禍3年目~2023年卒・24年卒の学生生活と就職・就活観は?

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今まさに就職活動が始まっている2023年卒・24年卒には、これまでの年次とは異なる大きな特徴があります。それは、大学入学当初から今まで、ほぼ一貫して「コロナ禍」の中にあったということです。

大学生活の途中でコロナ禍に入った21年卒・22年卒とその考え方や行動には変化があるのでしょうか。
今回は、多くの学生や大学関係者と接しながらキャリアについてアドバイスをしているマイナビ副編集長の大塚 祐宜に話を聞きながら、その実態についてひも解いていきます。

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― 今日はよろしくお願いいたします。ちょうど1年ほど前の記事では、WEB対応が間に合わず苦慮している大学も多いと伺いましたが、1年たってその状況は変わりましたか?


大塚: はい、大きく変わりました。WEBで授業や就職ガイダンスが問題なくできるような大学が増えたのはもちろん、理系学部の実験・研究活動など実地での対応が必要な学部学科については登校できるようになったところも多いですね。

― WEB化に苦慮している状態から、WEB・対面を交えて授業できる体制になったわけですね。


大塚: WEB・対面の割合は各大学の方針が前提となりますが、教員によっても調整ができたり、学生がWEB・対面で選べるハイフレックス授業※のような体制を取ったりしている大学もあります。

また、部活動などの課外活動も再開し始めています。ただし、飲み会や合宿など感染リスクの高い催しはコロナ前のようにはできませんし、大会が中止になったという競技もあります。
大学の公認ではないサークルなどでは廃部や休部になった話も聞いています。

※ハイフレックス授業:同じ授業を対面とWEBの双方で受講でき、学生自身が選択できる方法。

― そういう状況だと、相変わらず「ガクチカ」は不足している学生が多いと見ていいのでしょうか?


大塚: はい、そういう面もありますが、21年卒・22年卒とは若干状況が違います。というのも、23年卒以降の学生は大学入学当初からコロナ禍にありました。いわゆる「普通の大学生活」を送れていませんし、もともと期待もしにくい環境ですので、学生たちのマインドや動きがそもそも違うんです。
21年卒・22年卒は途中でコロナ禍に入り、「予定していたような活動ができずにガクチカ不足に陥った」という面がありますが、23年卒以降はそういった先輩たちの姿も見ていますし、情報も得ています。最初からサークル活動などを通じたガクチカづくりにこだわっていない面があるでしょう。

― というと、具体的にどのような活動をしているのでしょうか。


大塚: アルバイトやインターンシップを利用している学生が多いと思います。特にインターンシップは、この1年間で企業側もWEB開催に慣れましたし、感染防止対策を講じた対面のインターンシップも増えてきました。

サークル活動などの代わりとして、積極的にインターンシップに参加してガクチカを形成している学生もいますね。

― 1年前に取材した際には「ガクチカをつくることができないのは仕方ないので、卒業見込みを獲得しているだけでも評価すべき」というお話を伺いました。今は同様の状況ではないということですね。


大塚: そうですね。コロナ禍にあっても過去2年間とは違い、準備や対策ができているはずの学年として見た方が良いと思います。

ただし、学業は引き続き見極めのポイントとして重視していった方が良いでしょう。学生が課外活動で取り組めることが少ないという状況に変わりはありませんし、授業に真面目に向き合う学生も多いですね。

― 学生も今の状況を受け入れているということでしょうか。


大塚: 学生の話を聞いていると、不安がないわけではありませんが、ある意味で「悟り」のような心境になっているように感じます。自分の置かれている状況は受け入れた上で、「この中でなんとかしよう」と思っているようですね。

みんなが同じ状況に置かれ、社会もコロナ禍に対応した中で、どう活動するかは個人次第です。
どのような準備、活動をしてきたのかは見極めの中で聞いていくと良いと思います。

― 手元の資料では、学生のキャリアセンター利用率が少し下がっているという情報があります。1年前の取材では、「徐々に平年並みに戻っている」ということでしたが、この変化の理由は何だと思われますか?


大塚: キャリアセンターの利用率が下がると、就職活動に対する意欲や危機感の低下を考えてしまいますが、一概にそうとは言えない状況であると思います。

主な理由は「キャリアに関する関心の早期化」にあります。3年生、4年生になり、主に選考対策のために足を運ぶのではなく、1年生、2年生でも将来のことを意識してキャリアセンターに足を運ぶようになっているんです。

ここには、学生のキャリア観の変化があります。就職活動が単にみんなと同じであることや、一般的に有名という理由で就職先を見つけるのではなく、「自分に合った人生をどう設計するか」というより大きな視点に立ったものに変化しつつあるのです。また、一度しかない新卒採用という機会で失敗したくないという思いも強いでしょう。
インターンシップについても「自分に合った仕事や働き方を探すため」「将来に役立つ力や知識を手に入れるため」という考え方で早い時期から参加している学生が増えました。これも象徴的な出来事と言えるでしょう。
また、今の学生は就職活動においてWEBも含めて幅広く情報を収集しています。特に活動の初期において、以前ならキャリアセンターに確認していたような内容は、自分で調べられる学生も多いですね。一方で、面接練習などの具体的な対策は今でもキャリアセンターを頼る傾向です。状況や知りたいことに応じて、どこを活用するかを決めて動いている印象ですね。それは、就職ガイダンスを実施していても感じます。

― なるほど。大塚さんが就職ガイダンスなどで学生から受ける質問は具体的にどのようなものが多いですか?


大塚: 私の場合は、具体的なハウツーや答えを求める質問が多いですね。特に目立つのは、いつの時期のガイダンスでも就職活動のスケジュールについて聞かれることです。今何をやっていれば安心か、いつごろに何をやっていればいいのか、という内容です。
コロナとは別に世界的に不安定な社会情勢もある中で、去年と同じではなく、再び何かしらの変化があるのではないか?と心配している学生も多いのではないでしょうか。

― 先ほど学生生活はWEB・対面のハイフレックスも増えてきたという話を伺いましたが、就職活動はどうでしょうか?


大塚: インターンシップや選考はWEBがすっかり定着し、このままスタンダードになっていくのではないかと思います。
企業側・学生側の双方にとって負担が少なく、またWEBでの情報提供や見極めに慣れてきたという面もあるでしょう。

ただし、この点も21年卒・22年卒と今では若干、状況が異なります。これまでは授業も就職活動も全てWEBだったのに対し、23年卒・24年卒は登校も増えています。大学で対面の授業を受け、空きコマを利用して学内からWEBの説明会を受けるというように、時間を無駄なく使う学生もいます。
一方で、発言や作業が必要となるインターンシップについては「移動などのスキマ時間を有効活用して参加」というような時間の使い方は難しくなっていますね。

― 取材で学生の話を聞くと、WEBインターンシップは確かに時間と移動の節約はできるが、体験としては対面が優れているという声も聞かれました。一部が対面に回帰していく流れもありそうですか?


大塚: インターンシップに2回以上参加している学生だと、対面の価値を見いだしているケースは多いでしょう。1回WEBで参加することによって、おおよその勝手が分かるからです。企業側にとっても「社内の雰囲気」のような情緒的な情報を伝えられることから、入社意欲の高い学生などを対象に回帰する可能性もあるかもしれません。
ただ、学生の場合は就職活動初期にインターンシップに参加していないと、対面の価値には気付きにくいかもしれませんね。

― 最後に、企業側が今取るべきアクションについて教えてください。21年卒・22年卒では大学への働き掛けを控えた企業も多いと思いますが、その状況に変化はありましたか?


大塚: 企業側の動きでいうと、まだ感染リスクに関する会社の方針や採用方針を決め切れていないなどの理由で大学への働き掛けは控え目なところもあるようですが、声を掛けてほしいと思っている大学も多いようです。

― 大学側としては歓迎している状況なんですね。


大塚: はい。学内説明会や研究室訪問など、コロナ禍以前に行われていた活動が減ったままの状況を改善したいという話は聞きます。大学との関係をつくるチャンスです。ぜひ、企業側から積極的に連絡を取ってアプローチしてほしいと思います。
入学当初からコロナ禍にあった学生たちの志向は、コロナ禍以前の学生と異なるのはもちろん、21年卒・22年卒とも大きく異なることには驚きを覚えました。特に、学生がインターンシップに求めるものの変化は、これからインターンシップを設計・運営していく企業にとってヒントになることも多いのではないでしょうか。

そして、低学年からキャリアを考える志向を持つ学生が増えている傾向も、次年度以降の採用を考える上で大切なポイントです。

採用に直結する3年生・4年生だけでなく、25年卒・26年卒となる1年生・2年生のキャリア形成のサポートを念頭に置くことで、より学生のニーズに合った動きが可能になっていくでしょう。
  • Person 大塚 祐宜
    大塚 祐宜

    大塚 祐宜 株式会社マイナビ キャリアサポート企画部・部長(マイナビ副編集長)

    2009年に株式会社マイナビに入社。マイナビの広報業務を担当し、大学のキャリアセンターなど就職窓口に対し、就職支援に関わる企画提案を行うとともに、キャリアサポーターとして学内の就職ガイダンスなどに講師として登壇する。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/05/17
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