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採用基準のつくり方―求める人材の見極め方と雇用ミスマッチを防ぐ方法

採用基準のつくり方


新卒採用では、現場で求められる適正な人材を面接官が見極めるために「採用基準」を設け、会社としての共通認識を持つことが大切です。この採用基準が適切に設定できるかどうかが、採用成功のカギといっても過言ではありません。ここでは、求める人材を見極められる、新卒の採用基準のつくり方をご紹介しましょう。

採用基準をつくる必要性

新卒の採用活動で採用基準を設けるのは、以下のような理由があるからです。

公平・公正に選考するため

中途採用と違い、新卒採用では学生のスキルや経歴で判断するのは難しいものです。新卒で重視されるのは、コミュニケーション能力や主体性、協調性、やる気(チャレンジ精神)、そして将来性などでしょう。いずれも数値で測れるものではないため、面接官の主観で合否を決めることになりかねません。

そこで、「会社としてどんな人材を求めているか」という共通認識を持たせるのに必要なのが、採用基準です。求める人物像を明確にした採用基準を設けることで、面接官の目線を合わせやすくなり、どの面接官がどの学生と面接しても公平かつ公正な選考ができるようになります。また、学生一人ひとりの判断に要する時間も短縮でき、採用活動の効率化にも貢献します。

雇用のミスマッチを防ぐ

せっかく採用しても、「イメージと違った」「社風が合わない」などの理由で早期離職する新入社員は、少なからずいます。早期離職者が多い企業は、もしかすると採用基準に問題があるのかもしれません。学生の価値観や能力といった定性的な評価をあいまいに採用した方などは、こうした問題が起きやすくなります。

自社の雰囲気にふさわしい人材か、定着しそうな人かという点も、採用基準に必要な要素です。その基準がしっかり確立されていれば、採用後のミスマッチを防ぐことにもつながります。

採用基準をつくるメリット

このように採用基準を設けることで、自社が本当に必要な人材を獲得しやすくなり、また、雇用のミスマッチを防ぐことにもつながります。つまり、企業にとって「効率的な採用活動ができるようになる」のが採用基準をつくるメリットといえるでしょう。

弊社が2018年11月に調査した「2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」において、新卒採用一人あたりにかかる費用は約53.4万円という結果でした。これだけの費用をかけて採用したにもかかわらず、雇用のミスマッチが理由で早期離職することになれば、この費用が無駄になってしまいます。採用基準を設けるのは、こうした非効率な採用活動から脱却することも目的の一つです。明確な基準を設定して早期離職者の少ない体制を確立できれば、採用活動を効率よく進められるでしょう。

採用基準をつくるには、時間と手間がかかります。採用担当者が他の業務と兼任である場合や初めて新卒採用を実施するという場合は、採用基準をつくるために労力をかけられないというところも多いのではないでしょうか。とはいえ、定着率の高い優秀な人材を獲得していかなければ、企業の成長は見込めません。採用基準を設けず漠然と採用活動を続けていると、本当に必要な人材を逃してしまうおそれがあります。特に、人手が足りず悩んでいる小規模な会社やスタートアップ企業ほど、はじめに明確な採用基準を設定することが重要です。

採用基準をつくる前に

採用基準をつくるには、社内の各部署と調整して、しっかり準備をしたうえで進める必要があります。ここで、採用基準をつくるために必要な準備を紹介しましょう。

各部署へのヒアリング

まずは、「会社がどんな人材を求めているか」という情報を集めることから始めます。経営陣や各部署のマネージャへのヒアリングはもちろん、現場で働く人たちからも声を集めましょう。本当に必要な人材をよく知るのは、誰よりも現場の人間です。その声を疎かにすると、雇用のミスマッチが生じやすくなります。

ただ、現場で「どんな人に入社してほしいか」と聞くと、「良い人が欲しい」とあいまいに回答されることがあるかもしれません。できるだけ具体的な要件を聞き出すようにしましょう。

また、特に新卒採用の場合は、求める価値観をヒアリングすることもポイントの一つです。たとえば、チームで進める業務が多い部署や社内イベントの多い企業に、「一人でもくもくと仕事を進めたい」「社内イベントなどに参加したくない」という価値観を持った新卒社員が入社しても、ミスマッチなのは明白です。会社や部署の価値観に近しい学生を選ぶことで、定着率を高めることにもつながります。また、会社や部署の将来を見越してヒアリングすることも重要です。たとえば、海外進出を見据えている部署であれば英語が話せる新卒社員を求めるでしょう。今後の事業展開を踏まえたうえで、求められるスキルや能力を見極めることが大切です。

なお、必要な人員数を決めるときは「本当に人員が足りないのか」をチェックすることも大切です。忙しいのは人手が足りないのではなく、仕事のやり方に問題があるケースも考えられます。そうした現場の実態調査も兼ねてヒアリングを進めましょう。

コンピテンシーの明確化

コンピテンシーを一言で表すと、「高業績者のモデルケース」です。できる人の仕事に対する考え方や行動特性から、理想の人材に必要な要件を洗い出していく作業が、コンピテンシーの作成になります。仕事ができる人の評価は部署や役職によっても異なりますし、会社の制度や風土によっても違いますので、会社ごと、部署ごとにコンピテンシーを明確に作成する必要があります。

コンピテンシーを作成するうえで大切なのは、仕事で評価される人が「何をしたか」よりも、「なぜその行動をしたか」という思考傾向のほうです。たとえば、営業で成績トップの人が「お客様先を毎日訪問していた」とします。コンピテンシーを作成する際は、その行動を評価するのではなく、「電話やメールだとコミュニケーションロスになるから、対面で話し合いたかった」など、毎日訪問した理由に注目します。そこから「目標を達成するためなら躊躇せず行動できる人」など、求める人材に必要な要件を導き出していくのです。こうして洗い出した要件を、経営層や事業部の意見とすりあわせ、コンピテンシーを作成していきます。

新卒採用の面接では、学生の成功体験を聞く機会もあるでしょう。その際、「なぜ、そのような行動をとったのか」を聞き出し、学生の思考傾向とコンピテンシーの要件を照会することで選考しやすくなります。

ペルソナを決める

ペルソナとは、より具体的な架空のターゲット像のことで、マーケティング業界ではよく使われる言葉です。新卒採用においては、自社が求める人材をできるだけわかりやすく具現化したペルソナを決めましょう。

たとえば、海外との商談が増えている企業であれば「幼少期に海外で暮らした経験から英語が好きで、TOEIC900点に挑戦中。将来は海外で活躍することも視野に入れて就職活動をしている」といったペルソナを設定できるでしょう。さらに、将来リーダーとして活躍できそうな人材を求めるのであれば「学生時代はサッカー部のキャプテンを務め、一人ひとりの選手にアドバイスをしたり、相手を分析して勝つための作戦を考案したりと、チームを円滑にまとめていた」というペルソナも設定できます。

このようにペルソナは、具体的なエピソードや価値観など求職者のターゲット像を想像しやすくまとめたもので、複数の面接官に共通認識を持たせるときに必要な概念です。

採用基準をつくる

つぎに、いよいよ実際の採用基準を作成していきます。

採用基準の評価項目を決める

これまで準備した内容を踏まえて、採用基準の評価項目を設定していきます。新卒採用では人間性や価値観を重視する傾向にあるため、コミュニケーション能力や主体性、行動力などの評価項目が大きなウエイトを占めるでしょう。それぞれの評価項目に、各部署にヒアリングした内容や、コンピテンシー、ペルソナなどの情報を一つひとつ落とし込んでいき、面接官が共通認識を持てる評価基準を策定していきます。以下は、新卒採用において一般的な評価項目です。

人材に偏りが出てしまう

上記とは逆に、紹介者の所属部署で募集する場合、似たようなタイプの人材が集まりやすくなることもあります。多様な個性の人材をそろえたほうが新しいアイデアを生み出したり、活発な議論ができたり、切磋琢磨できる環境がつくりやすくなりますので、上手にコントロールする必要が出てくるでしょう。

【評価項目1】コミュニケーション能力

コミュニケーション能力には、自分の考えを正しく伝えるのが得意な人もいれば、相手の求めるものを聞き出すのが上手な人もいます。相手と折衝するのが得意な人、協調性を重んじる人、リーダーとしてみんなをまとめるのが上手な人なども、コミュニケーション能力に長けた人材といえるでしょう。どのタイプが自社(または事業部)に必要な人材かを、準備段階で集めた情報を活用しながら評価基準を決めていきます。

【評価項目2】主体性・行動力

率先して物事に取り組める人、自ら判断して動ける人など、新卒採用では学生の主体性や行動力も重視される評価項目の一つです。主体性・行動力に長けた学生は成長スピードが速く、いずれ企業の発展にも大きく貢献することが期待されます。学生の成功体験から、この項目を判断することもあるでしょう。その際、コンピテンシーとの一致も評価基準になります。

【評価項目3】熱意(チャレンジ精神)

チャレンジ精神は、仕事に対する熱意を推し量る評価項目です。困難なことや経験したことのないことにも積極的に取り組もうとする成長意欲があれば、新しいプロジェクトや難しいプロジェクトでも果敢に挑戦してくれることが期待できます。学生の熱意を十二分に生かすには、会社に入って実行したい本人の意思を確認することも大切です。本人がやりたいことと、会社でできることが不一致だと雇用のミスマッチにつながる可能性があります。

このほかにも、協調性、誠実性、仕事への適正や価値観など、新卒採用の基準は企業や部署によっても異なるでしょう。これらの項目についても、コンピテンシーやペルソナなどをもとに評価基準を決めていきましょう。

現場の希望要件は丸呑みせず、優先順位を

求める要件を決める際、あれもこれもと挙げていけばキリがなくなります。仮に、その要件をすべて踏まえたペルソナを設計しても、100%当てはまる人材にめぐり会う可能性は、現実的にはかなり低いでしょう。要件が多いと、間口を狭めることになるのです。

要件がたくさんある場合は、優先順位をつけるのが有効です。たとえば、「MUST(必須)」の要件と「WANT(希望)」の要件に振り分け、まずはMUSTを満たす人だけをピックアップしていき、そのなかでWANTの要件を多く満たす人材を選んでいくという方法もあります。

まとめ

採用基準は、自社が求める人材をより的確に、より効率的に探すためのマニュアルのようなものです。これを作成するには、経営者をはじめ各部署の協力が大切で、社内の意見を聞いたうえで公平・公正であることも求められます。
また、すでに運用されている企業で「書類選考の通過率が悪い」「早期離職者が多い」という課題を抱えている場合は、採用基準の見直しを検討してみましょう。求める人物像の条件は明確になっているか、理想を追い過ぎていないかなど、基準を再確認することで、本当に必要な人材を獲得でき、定着率も高まるかもしれません。