マイナビ採用・研修担当者のための新卒採用支援情報サイト】

03-6267-4577 企業様専用 : 受付時間 平日10時~17時

地方創生をけん引する企業への就職

今回のコラムのテーマは「地方創生をけん引する企業への就職」です。Uターンから派生した言葉に「Iターン」(大都市でもなく自分の地元でもない地方で職に就くこと)がありますが、これは長野県の元参議院議員の小山峰男さんという方が考案した言葉だそうです(出典:ウィキペディア「Iターン」より)。先日、長野県にあるテレビ局、テレビ信州の方から「東京の大学生に地元の企業を見学してもらうというイベントを取材するのですが、Iターン就職が増えているというデータはありませんか」という問い合わせを頂きました。残念ながらご希望に沿うデータを用意できなかったのですが、「各地方の地元企業への就職を東京の学生にアピールする」という活動を応援するため、「地方(=東京以外)に本社のある企業への就職」というテーマを追求してみたいと思いました。

使用するデータは「2017年卒マイナビ内定者意識調査(調査期間:2016年6月22日~7月18日)」です。この中の「すでに入社予定先の企業を決めている」学生の「入社予定先の本社所在地」をもとに、「東京(=東京に本社のある企業に入社予定)」と「東京以外(=東京以外に本社のある企業に入社予定)」に分けて、その違いを分析します。さらに「東京以外」を10地区「北海道」「東北」「関東(東京除く)」「甲信越」「東海」「北陸」「関西」「中国」「四国」「九州」に分け、各地区の特色を分析します。また、同調査の「卒業高校所在地の都道府県(=地元)」と「入社予定先本社所在地の都道府県」が一致する学生を『地元就職予定』と定義します。「Iターン就職」は「東京以外に本社がある企業に『地元就職予定』でない学生が就職した場合」と考えます。これらを踏まえて分析を進めていきます。

なお、「地元就職」に関する考察としては、以前、法政大学キャリアデザイン学部の田澤実准教授に「出身高校・卒業大学・希望勤務地と地元志向」というコラムをご執筆いただきました。また「2016年度(2017年卒)新卒採用・就職戦線総括」のP44でも「今年の内々定保有者の『地元就職予定』状況」と題したレポートを掲載しております。これは「卒業高校所在地区」を軸にした分析です。これらも合わせてご覧頂ければと思います。

学生の入社予定先本社所在地の分布と『地元就職予定』割合

まずは「学生の入社予定先本社所在地の地区別分布」です。入社予定先を決めている学生2,920名のうち「入社予定先の本社所在地」が「東京」の学生は44.8%を占めています。このコラムのテーマである「地方(=東京以外)に本社のある企業への就職」に該当する学生は残りの55.2%です。各地区の分布は下図の通りとなっています。

図1 学生の入社予定先本社所在地の地区別分布
01honsha2

次に『地元就職予定』の学生の割合(=出身高校都道府県が入社予定先本社所在地都道府県と一致する学生の割合)を見ていきます。入社予定先の本社所在地が「東京」の学生の『地元就職予定』の割合は20.1%で、約8割は他の道府県出身であることが分かります。一方、入社予定先の本社所在地が「東京以外」の学生の『地元就職予定』の割合は51.1%と半数を超えています。地区別に見ていくと、最も『地元就職予定』の割合が高いのは、入社予定先の本社所在地が北海道地区(77.2%)のケースで、甲信越地区(76.3%)、北陸地区(74.6%)がこれに続いています。最初に述べた通り「Iターン就職」を「東京以外に本社がある企業に『地元就職予定』でない学生が就職した場合」と考えると、北海道地区、甲信越地区、北陸地区に本社のある企業に就職する学生の「Iターン就職」の割合は相対的に低いと言えます。

図2 入社予定先本社所在地区別・『地元就職予定』割合
02_jimotoshushoku

入社予定先本社所在地区別の従業員規模の内訳

続いて、入社予定先企業の従業員規模別の内訳を「学生の入社予定先の本社所在地」の地区で分析します。「従業員5,000人以上の企業に入社予定の学生の割合」は、入社予定先の本社所在地が「東京」の学生では29.8%であるのに対し、「東京以外」の学生では12.3%と半分以下です。地区別では、四国地区(0.0%)、東北地区(3.3%)、中国地区(3.9%)で特に低くなっています。一方「従業員100人未満の企業に入社予定の学生の割合」は、入社予定先の本社所在地が「東京」の学生では4.4%であるのに対し、「東京以外」の学生では9.2%です。地区別では北海道地区(15.8%)、九州地区(12.3%)、四国地区(12.2%)で特に高くなっています。以上のことから、東京以外の地区では新卒学生の就職先において中堅・中小企業の占める割合が比較的高いと言えます。

図3 入社予定先本社所在地区別・従業員規模別の内訳
03_jugyoinkibo

地区ごとの特徴的な業種と本社所在地域別ランキング

今度は、入社予定先企業の業種の内訳について「学生の入社予定先の本社所在地」の地区で分析したとき、特に特徴的なものについて取り上げていきます。入社予定先として割合が高い業種は、入社予定先の本社所在地が「東京」の学生と「東京以外」の学生で、下表のとおり大きな違いがありました。

図4 入社予定先として割合の高い業種・入社予定先本社所在地が「東京」「東京以外」で比較
04_gyoshu_junni このうち入社予定先の本社所在地が「東京以外」の学生について、地区別に業種の内訳の特徴を見ていきます。最も割合が高い「銀行・証券・信金・労金・信組」は、中国地区(23.5%)、甲信越地区(17.1%)、東北地区(16.7%)で特に高い割合です。また、2番目に割合の高い「食品・農林・水産」は、中国地区(17.6%)、東北地区(13.3%)、九州地区(10.7%)で高くなっています。他の業種で特徴的だったのは、東海地区における「自動車・輸送用機器」の割合の高さ(東京以外 6.7% → 東海 20.1%)です。
こういった業種が、特定の地区で入社予定先として高い割合になる理由について考えたとき、関連がありそうなのが「2017年卒マイナビ大学生就職企業人気ランキング」(調査期間:2016年3月1日~4月20日、日本経済新聞社と共同で実施)の「本社所在地域別ランキング」です。これは「北海道」「東北」「東海・北陸」「関西」「中国・四国」「九州・沖縄」のそれぞれの地域に本社のある企業に対する就職活動中の学生の人気ランキングです。 この「本社所在地域別ランキング」と「入社予定先企業の業種の地区別内訳」を見比べたとき、特に強い関連がありそうなのが、東海地区の「自動車・輸送用機器・自動車部品」と中国地区の「食品・農林・水産」です。

図5 入社予定先本社所在地区別・業種の内訳(特徴的な業種を抜粋)
05_gyoshu
図6 本社所在地域別企業人気ランキング・東海・北陸/中国・四国
06rank3
東海・北陸地域に本社所在地のある企業のランキングでは、トップ30に「自動車・輸送用機器」の企業が8社ランクインしています(1位 トヨタ自動車、3位 デンソー、4位 アイシン・エィ・ダブリュ、5位 アイシン精機、10位 豊田自動織機、19位 ヤマハ発動機、23位 スズキ、24位 トヨタ紡織)。本社所在地はヤマハ発動機とスズキが「静岡県」、他は「愛知県」と、すべて東海地域です。ランク外の31位から50位にも、さらに3社の「愛知県」に本社のある「自動車・輸送用機器」の企業がランクインしています。

中国・四国地域に本社所在地のある企業のランキングでは、トップ30に「食品・農林・水産」の企業が6社ランクインしています(2位 オハヨー乳業、3位 カバヤ食品、4位 アヲハタ、5位 山田養蜂場グループ、6位 オタフクソース、11位 アンデルセングループ)。本社所在地はオハヨー乳業、カバヤ食品、山田養蜂場グループが「岡山県」、アヲハタ、オタフクソース、アンデルセングループが「広島県」で、すべて中国地域です。ランク外の31位から50位にも、さらに2社の「岡山県」に本社がある「食品・農林・水産」の企業がランクインしています。

これら2つのケースについては、その地域の「人気企業」が多くある「業種」が就職のけん引役になっていると推察されます。多くの学生は企業の本社所在地を知りません。そんな中、全国的に知名度がある「地域に根差した優良企業」が積極的に新卒採用PRを行うことで、就職活動中の学生の人気を獲得し、「地方に本社のある企業」に目を向けるきっかけとなったのではと思います。

なお、「銀行・証券・信金・労金・信組」についても、東北地域のランキングで15社、中国・四国地域のランキングで中国地域に本社のある企業が7社と多数ランクインしています。これらについては地域に根ざした金融機関が就職をけん引していると言えるでしょう。

入社予定先本社所在地区別の企業選択の理由

最後に「地方に本社のある企業」に入社予定の学生の企業選択の理由について特徴を調べてみました。「企業属性(2つ選択)」の「やりたい仕事がある(ありそう)」の割合は、入社予定先の本社所在地が「東京」の学生は45.6%、「東京以外」の学生は45.5%とほぼ同じでした。地区別では、四国地区(31.7%)、中国地区(40.2%)、九州地区(40.2%)、で特に低くなっています。四国地区、中国地区、九州地区では「やりたい仕事」の創出が地方に学生を呼び込むための課題の1つなのではと思われます。「社風が良い・よさそう(全体 32.3%)」については、入社予定先の本社所在地が「東京」の学生は29.0%なのに対し「東京以外」の学生は35.0%と高い割合でした。地区別では四国地区が43.9%と目立って高く、次が関東地区(東京除く)(39.3%)、関西地区(36.2%)です。

図7 入社予定先本社所在地区別・企業選択の理由・企業属性(2つ選択)
「やりたい仕事がある(ありそう)」「社風が良い・よさそう」の割合

07_zokusei
「人物(2つ選択)」で差が出たのは「社長・役員の印象が良かった」で、「東京」が20.5%に対し「東京以外」は29.2%でした。中国地区(40.2%)、甲信越地区(35.5%)、九州地区(35.2%)で高い割合で、これらの地区には「魅力的な社長・役員」の方が多いのではと想像されます。中堅・中小企業に入社する割合が高いので社長や役員の方に直接会う機会が比較的多いのでしょう。「先輩社員(OB・OG)の印象が良かった(東京 33.6%、東京以外 33.2%)については、四国地区(46.3%)で非常に高く、東北地区(40.0%)、中国地区(38.2%)、九州地区(36.1%)でも高い割合でした。

図8 入社予定先本社所在地区別・企業選択の理由・人物(2つ選択)
「社長・役員の印象が良かった」「先輩社員(OB・OG)の印象が良かった」の割合

08_jinbutu
魅力的な社長や役員の講演で社風の良さをアピールし、仕事のやりがいについては先輩社員を通じて伝えていく。基本的なことではありますが、こういったことが地方の企業への就職につながるひとつの戦略であると言えそうです。

このコラムをPDFで印刷する