採用ノウハウに関する新卒採用コラム・記事のご紹介です。

マイナビ 採用ノウハウに関する新卒採用コラム・記事のご紹介です。

マイナビ採用・研修担当者のための新卒採用支援情報サイト】

リテンションの極意は「心」―インターンシップの効果を最大化する学生とのコミュニケーションとは?

野口 健介さん

ついに2022年卒採用のインターンシップが本格化してきました。夏インターンシップ真っ最中の方、秋冬インターンシップに向けての準備を進めている方、皆さんの状況はさまざまだと思います。

いずれにせよ、これから始まるエントリー期間、企業説明会、そして選考開始の時期に向けて学生と密なコミュニケーションを取りながら選考母集団の拡大に向けて施策を練っているところなのではないでしょうか。

しかし、22卒は選考フローのほとんどがオンライン化することが予想されるため、これまで効果を発揮してきたリクルーターや個別面談などの施策がしにくい環境です。

そこで活用したいのが「リテンション」という考え方。
顧客の維持・育成を目的としたマーケティング手法を指すことの多いワードですが、その核は「顧客(ターゲット)との良好な関係構築」にあります。これは学生との関係構築が重要になる採用活動でも同じことですよね。

今回の記事では、日本リテンション・マーケティング協会の理事、野口健介さんにお話を伺いながら、採用活動、特にインターンシップの場面で活用できる「リテンション」について詳しくお伝えしていきます。

プロフィール
野口 健介さん
日本リテンション・マーケティング協会 理事

外資系マーケティング会社を経て1995年にダイレクトマーケティング専門エージェンシーに入社。それ以来、多くのクライアントのマーケティング支援を経験し、株式会社電通ワンダーマン代表取締役社長(2012〜15年)、株式会社コアフォース代表取締役社長(16年)を歴任。また14年には顧客育成、維持の市場形成のための一般社団法人日本リテンション・マーケティング協会の設立を主導し、理事に就任(現職)。17年、キックマーケティング社を創業して代表に就任(現職)。18年より株式会社ミシェル執行役員(現職)。

マーケティング用語としての「リテンション」

― 野口さん、今日はよろしくお願いします。まず、基本的なところで「リテンション」という言葉についてご説明いただいていいですか?

野口さん: はい、よろしくお願いします。最近、コロナ禍で多くの業界がダメージを受けるなか、改めて「リテンションマーケティング」というキーワードが注目されていますね。

簡単に言うなら「顧客の維持・育成を目的として企業と顧客が良好な関係性を構築するためのマーケティング」です。
ただ、一部ではこれを狭く解釈して「初回購入後のフォロー的なマーケティング施策」と捉えられている現状もあります。メールマガジンに登録してもらうとか、次の購入に使えるクーポンを発行するとかですね。

狭義ではこれもリテンションマーケティングと言えるのかもしれませんが、私たちは「購入前・購入時・購入後の全フェーズにおいて良好な関係構築を目指した活動」の全体を指してリテンションマーケティングと呼んでいます。

― なるほど。世間のイメージよりもかなり大きな枠組みを持った言葉ですね。

野口さん: はい。私たちの協会としては、リテンションマーケティングを単なる手法論とは捉えていません。ご縁のあったお客さまと良好な関係を構築するための気持ち、心といってもいいかもしれませんね。

いま注目されるリテンションマーケティング

― 先ほど、コロナ禍でリテンションマーケティングが注目されているというお話がありましたが、もう少し長いスパンで見ても注目度が上がってきていますよね。

野口さん:そうですね。高度経済成長期には、プロダクトアウトの発想で「いい製品を出せばビジネスが成立する」という時代もありました。が、今のような経済低成長時代にはカスタマーイン(顧客一人ひとりのニーズに応じた商品・サービスの提供)の発想に切り替えないと商売が成り立たない、ということが背景にあると思います。

その点では、採用市場でも同じことが言えるかもしれません。
先ほど申し上げた、経済低成長時代というのは要するに、「小さくなった消費を多くの企業が取り合っている」状況と言い換えられます。

これを採用市場に置き換えると、「少数の学生を多くの企業が取り合っている」となり、少子化で学生が減っているので現状に合致しますね。こう考えると、リテンションマーケティングの考え方が採用に生かせる可能性はありそうです。

― なるほど。先ほど、リテンションマーケティングは手法ではなく「気持ちや心」という言葉がありました。とはいえ、実践するにあたっては具体的なアクションに置き換わっていくと思いますが…。 どう捉えればよいのでしょうか。

野口さん: 実際にあった、とある会員制サービスの事例をお話ししましょう。

会員制サービスは、もちろん会員数が業績に直結するので「解約」を食い止めたいわけですね。そのとき、重要なのがコールセンターです。解約の手続きのため電話をされた顧客を水際で食い止める役割があります。

もちろん、そのためのマニュアルがあるわけですが、それでも「止められないオペレーター」と「止められるオペレーター」がいたそうです。そこで両者の通話記録を確認してみると、前者はマニュアルに沿って「解約の理由」を伺い、きちんと対応している。一方、後者は解約を申し込んだ顧客に対して「なぜご契約いただいたのですか?」と、解約ではなく「契約の理由」を聞いていたことがわかったんです。

つまり、契約していただいたのに期待を下回ってしまった理由を伺っているんですね。これが、顧客の心に響いたのでしょう。また、「そういったことがご不満であれば、このようなサービスがありますのでご利用になってみては?」と提案し、解約を思いとどまっていただくこともできていました。

マニュアルにはない内容ですが、これが効果を上げていたんですね。

― つまり、解約の電話をしてきた顧客の思いに寄り添っていた、ということですね。

野口さん: そのとおりです。こういった対応を経ても解約する顧客はもちろんいますが、その場合にも再契約率が高いというデータもあります。つまり、最後の瞬間まで顧客の目線に立ち、顧客が契約時に抱いていた期待を忘れずにいていただくこと。泥臭いようですが、これがマーケティング的にも効果を上げるのです。

採用市場で生かせるリテンションマーケティングの考え方

― 採用市場の話に移すと、インターンシップに応募してくれた学生を抽選で落としてしまう場面に置き換えられるかなと思いました。この場合、学生が応募時に抱く期待は「業界研究」や、それを通じた「自己成長」ですね。

野口さん: そういうときこそ、先ほどのコールセンターの例のように「相手の期待」を大切にしましょう。学生さんが期待していることをかなえるコンテンツを配信してあげるなどですね。

― では、実際にインターンシップに参加してもらったり、会社説明会に参加してもらったりといった場面ではどうでしょうか?

野口さん: 実際に学生さんと接触する場面ということですね。それも実に重要です。そういった場面でも好感を持ってもらって、最終的な目的(選考への応募など)につなげていく、というのがリテンションマーケティングの考え方になります。

ある海外電機メーカーに、面白い調査資料があります。
冷蔵庫を購入した消費者にアンケートをとって自社のイメージについて聞き、それを決定づけた要素を調査したそうです。

製品の品質、価格、デザイン… 多くの方はそういったところを想像されますが、実は「配達員の作業・接客態度」が会社全体のイメージ像に大きく影響していたんですね。

つまり、人は本当にちょっとしたコト、つまり、ディテールによって大きくイメージを決定づけられることを示しています。

― インターンシップでいえば、開催の前後でメール対応する社員や現場で会場案内をする社員ということになりそうですね。

野口さん: そうですね。そして、最近の若者の傾向として自己完結性が高いというのが言えます。何か気になっても、質問することに「申し訳なさ」のようなものを抱いてしまい、検索して解決しようとしてしまうんです。見つからなければ、そこまで、となってしまいます。

なので、学生さんが好意的に捉えてくれそうなディテールは、積極的に発信した方がいいですよ。
待遇や福利厚生だけでなく、どんなスケジュールで仕事をしているのか、どんな社員がいるのか、休憩中はどう過ごすか、近くにこんなおいしいランチスポットがあるとか…。相手からは聞いてくれない、という前提で多方面の情報発信が重要です。

積極的な情報発信と、きめ細かいフォローで積み重ねたディテールが好感につながり、ひいてはリテンションマーケティングにおける良好な関係構築が実現するのだと思います。エントリーシートを提出するとき、最後に背中を押してくれるのは、そういったちょっとしたコトなんじゃないでしょうか。

― 大変ためになるお話でした。今日はありがとうございました!

野口さん: ありがとうございました。

気持ちのこもったディテールで好感を得ることが、成果につながる

野口さんのインタビューでは「ちょっとしたコト(=ディテール)」という言葉が随所で使われているのが印象的でした。

特に心に残ったのが、インタビューの終わりに仰った

「最後に背中を押してくれるのは、ちょっとしたコト」

という一言。
コロナ禍もあり、時間が飛ぶように過ぎていくなかでディテールを見直して情報発信をすることは簡単ではありませんが、だからこそ、大きな成果を上げるチャンスなのでしょう。

いま少しだけ立ち止まり、細かなところを再確認してみるのもいいのかもしれませんね。