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採用の現場から見る「人材要件」のリアル

新卒採用サポネットでは今回、「人材要件」を特集しています。自社に必要な人材像を明確にし、かつ、事業戦略と深くリンクした配置、育成計画を立てるためには必要不可欠です。

とはいえ… 実際に人材要件を定義し、運用するとなると大仕事。必要なのは分かっていても、なかなか手を付けられないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回はマイナビで人材要件を提案する立場の営業から、自社の新卒採用と人材要件を考える人事の立場へとポジションチェンジした谷本健次と、マイナビの中でも人材要件に精通したプロフェッショナルである山根由起子に話を聞いてみました。

谷本健次
人事統括本部 採用1部 部長

2007年に毎⽇コミュニケーションズ(現:マイナビ)⼊社。就職情報事業本部の営業として、新卒採用事業に関わり、08年から9年間、大手企業を担当し、年間を通した採用広報・採用戦略に携わってきた。
19年に人事統括本部へ異動し、主に自社の新卒採用全般を担当している。

山根由起子
教育研修事業部 営業統括部 東京企画2部 部長

2013年にマイナビ入社以来、大手企業の採用や育成に関するコンサルティング業務に携わる。
扱うサービスの幅は、人材要件の策定、調査、インターンシップコンテンツの開発、各種トレーニング・研修、人事制度などの設計、タレントマネジメントまで幅広い。

新卒採用の要は「見極め」。プロジェクトメンバーが共有できる指標が必要と実感

― 谷本さん、山根さん、今日はよろしくお願いします。まず、谷本さんに伺います。かつては営業、そして現在は人事として「人材要件」の重要性はどのようなものだと考えていますか?

谷本: はい。新卒採用はポテンシャル採用、つまり即戦力ではなく入社後の成長を期待しての採用となります。今の実力ではなく、将来の実力を期待し、見極めて採用するわけです。

つまり、「今、目の前にいる人」を評価するのではなく、未来を含めた可能性を見る必要があるわけですが、それだけに人事と現場の間、採用担当者一人ひとりの間で意見が食い違ってしまうことがあります。これは、営業として担当した企業でも、自社(マイナビ)でも発生しやすいですね。

だからこそ、言語化された見極めの要件、つまり「人材要件」が必要になってくると考えています。

― そのことを実感した事例などはありますか?

谷本: はい。私が営業だった頃に担当した企業の例をお話しさせてください。その会社は創業以来成長を続けて社員が50名ほどになり、初めて新卒採用を行うこととなりました。

採用がうまくいき、最終の社長面接までフローが進んだところで「優秀でいい子が来ているが、これでいいのだろうか」とご相談を受けたんです。つまり、いい子すぎるんじゃないか、と。

そこで私が提案したのが、日本エス・エイチ・エルの人材適性テストを全社員で受検し、今足りない人材像を浮かび上がらせることでした。すると、社長はバイタリティと問題解決能力に秀でた人材で、まさに経営者向きだったのですが、社員は同調性が高く積極性が低めな、いわゆる「イエスマン」ばかりだったことが分かったのです。

つまり、これまで社長の強力なけん引力で成長してきた同社は、無意識のうちに今いる社員たちと同質の人材を選んでいたわけです。
しかし、10年後、20年後を見据えるとこれでいいわけがない。社長の勘は当たっていたということですね。

そこで、人材要件を精緻に定めて必要な人材像を明確にしていくことになりました。社長にNoが言えるような人材も必要なんじゃないか、とはいえ組織になじまない人材では意味がない… あらゆる側面から検討し、作り上げた人材要件の力が発揮され、いまでは社員数300名を超えています。

― つまり、不文律的に「なんとなく今いる社員と同質の人材を採る」という採用方針から抜け出し、事業の成長を見据えて策定した人材要件によって成長を遂げた、ということですね。

谷本: はい。もちろんそれだけが成長要因ではないはずですが、理由の一つとして挙げてもいいと思います。

繰り返しになってしまいますが、日本の新卒採用はポテンシャル採用です。そのポテンシャルを見極めるための基準を目的を持って定め、共有できる指標として「人材要件」が重要であることが分かる事例として、人事の仕事をしている今でも時々思い返します。

人材要件は毎年見直すべき! その理由は?

― 人材要件の重要性が非常に分かりやすい事例だったと思います。ありがとうございます。とはいえ、人材要件は「一度作って終わり」というものでもありませんよね。お二人の立場から見て、見直しのタイミングはどのくらいが適切だとお考えですか?

山根:ご相談を受ける立場からすると、中期経営計画の策定と合わせて、というパターンが多いようです。経営の方向性や現状の問題点が明確になるので、それに合わせて必要な人材も変わる、ということですね。また、採用人数を見直すタイミングで人材要件も見直す場合もあります。谷本さん、実感としてどうですか?

谷本: そうですね。確かにそういったタイミングで人材要件の見直しを考えやすいと思いますが、今人事として人材要件を運用する立場から言えば、毎年見直すべきものだと思っています。

山根: たしかに、「ご相談を頂きやすい時期」はありますが、実際にはどんどん変化する外部環境に合わせて毎年見直すのがいいのかもしれませんね。

谷本: そうなんです。実際に変更ができるのは数年ごとというのが現実かもしれませんが、昨年度の採用実績を基に確認作業は必要です。必要な人材が明確になった上で、「その人材が本当に採用できたのか?」「学生の傾向と食い違いはないか?」というところは見続けるべきだと実感しています。

山根: 実際に人材要件に定めた人材が採用できたのかどうか、という振り返りは意外と行われていない企業も多いんじゃないでしょうか。

創造的思考・状況適応能力・問題解決思考など、多くの企業が人材要件に定めるコンピテンシー項目がありますが、それだけでは社名を変えればどの会社にも通用してしまいますし、そもそもこれらの項目だけを見ているとレッドオーシャンで採用できていない可能性もあります。

ですので、自社に適応して活躍できる人材を採用するには、ビジョンへの共感やカルチャーフィットといった非定量的な要素もしっかりと言葉に落とし込むことが大切です。

そういった点においても毎年違っている学生の傾向とも照らし合わせて、毎年見直すべきというのは正しいのだと思います。

ここだけの話、マイナビの人材要件って?

― ここで、実際にマイナビの人材要件を策定・運用されている谷本さんから具体的なお話を伺えると読者の参考になると思いますが、いかがでしょうか。

谷本: 先ほど山根さんからカルチャーフィットという話がありましたが、マイナビでも重視している項目です。

カルチャーフィットは人柄も関わってくるため、非定量的で人材要件との相性が悪いと考えていらっしゃる方もいますが、実はそうではありません。最初にお話ししたとおり、社員の持っている特性はテストで定量化できますし、それを基に採用時に適性テストを行うことで他の項目と同様に明確に定義することが可能です。

新卒社員に求めるべき資質の一つとして、「論理的思考力」や「問題解決能力」など数値化しやすい項目と同列に考えることができますし、そうするべきでしょう。でないと、入社してからマイナビになじめず退職してしまいます。それは、会社としても新卒社員本人としても望んでいないことなので。

なので、カルチャーフィットを含めてさまざまな要素を言語化して人材要件に落とし込んでいます。

― 上層部からの意向なども含めて、ということでしょうか。

谷本:それもありますが、経営層から明確に言語化された人材要件が出てくることを期待するのではなく、経営層や現場とよく話して、人事が明確にしていくべきところでしょう。

マイナビでいえば、トップダウンの指示ではなく社員一人ひとりの主体性から生まれる自由な発想によって会社が動いているという特徴がありますので、そういったカルチャーになじむ主体性、自己完結性は重視します。

他には、5年10年とマイナビで働くにあたって、その目的意識をはっきり持っていることは重要です。売り上げを上げたい、表彰で賞を獲りたい、というだけではやはり長続きしませんから、仕事を通じて何をかなえたいのかという目的意識を重点的に聞いています。こういった、長く働く上でお互いにメリットのある関係性を築くことを考えて人材要件を定めることは重要なんじゃないでしょうか。

毎年変わる学生の資質 それに対応するためには?

― マイナビでは、今年の採用人数は何名でしょうか。先ほど、学生の傾向が毎年違っているという話がありましたが、その点ではどうですか?

谷本: 400名採用しました。例年と比較すると、総じて素直で集団意識が高い一方で、相対的に創造力は若干低いかもしれませんね。ただ、単純な指示をするのではなく、理由まで説明することで納得して動いてくれるタイプだと思います。

とはいえ、一人ひとりの個性はもちろんありますので、現場の上司には適性テストの結果や評価シートを渡して育成の参考にしてもらっています。

― 育成まで見据えて新入社員のデータを現場に提供するというのは、ある意味で理想の形に近いような気がしますが、どうでしょう。

山根: 自社のことではありますが、多くの企業の採用をお手伝いしている私から見ても素晴らしいと思いますね。

大手企業では、採用人数も多いため採用と育成で別チームが担当していることも多いように思います。でも、本来は採用した人材をどのように育成するのか、どんなキャリア、成長曲線を描かせるのか、どの部門での活躍が期待されるのか、など…育成まで見据えた採用が理想だと思います。

採用と育成に一本串を通すという意味では、タレントマネジメントシステムなどで、採用時のデータを含むさまざまなデータを管理し、人材開発・組織開発に活用している企業も増えてきているように思います。データを蓄積し、活用していくことで、入社後も各ポジションで求められる要件にマッチした、スピーディーな人材開発も期待できます。マイナビでもcrexta(クレクタ)というタレントマネジメントシステムを提供していますが、業界や企業規模を問わずにご相談があります。

「採って終わり」や「来た人を育成するだけ」のようなことが起こりにくくなることで、人材要件を実効性を持って運用することが可能になるのではないでしょうか。

谷本: 本当にそうですね。学生は人間なので、性格や人柄が一人ひとり違うのはもちろん、年度ごとの特徴みたいなものがあるんです。当然、採用のためのコミュニケーションも変わるし、育成方法も変わります。それを考えるための指針として、採用と育成を一気通貫で捉えることの重要性は、身にしみていますね。

また、新卒社員の育成は現場にもかなり頼りますから、きちんとデータを共有して育成方針を一緒に考えるくらいの姿勢が必要だと思います。 <

未来の採用をどう考えるか

― では最後に。人材要件を持つことで数年先までの採用計画・採用実績に違いは生まれてくると思いますか?

谷本: ある調査データによると、企業生存率は10年後に7割、20年後には5割とあります。それだけ、企業が存続し続けることは厳しいものなんです。退出してしまう理由はさまざまですが、生き残っていくためには経営資源の一つである人材の活用は企業の規模や業種に関わらず必要条件と言えます。 さらに少子高齢化・労働人口の減少など、決して避けられない未来があるなか、本当に必要な人材を採用できるかどうかは企業の存続に関わる問題になるでしょう。

そのとき、何年もかけて見直しを続けてきた人材要件があるかないか。これは大きな分かれ目ではないでしょうか。

山根: その状況になったとき、今いる社員はどうなっているのか? そのときに幹部クラスになっているであろう社員にはどんな人がいるのか? ということも合わせて見ていくべきですね。

定期的なアセスメントで精緻に社員を分析し、データベース化しておくこともいいですし、社員数が少ないなら全社員でディスカッションをして未来の会社像を考える機会を持つこともいいでしょう。

谷本: そうですね。人材要件は要するに「これからの会社に必要なのはどんな人材か?」を考えることです。となれば、今の会社の状況をまずは知っておく必要があります。マイナビでもそのあたりは仕組み化して会社の状況を把握していますが、そういった施策と併せて人材要件を考えるべき、というのが私の考えです。

山根: 人材要件の内容に裏付けもできますしね。実際に運用するにあたっては、経営層から現場まで、全てが人材要件に納得感を持っていることが重要だと思います。

― 今日はありがとうございました!

人材要件は事業の要

実際にマイナビで人材要件を策定・運用している立場からの話には説得力がありました。

マイナビが重視する学生の資質はもちろんありながらも、毎年変わっていく学生の傾向に合わせたチューニングをしていかないと「人材要件は持っているのに、そのとおりの学生が採用できない」というジレンマに陥ってしまいます。

労働人口が減っていくこれからはなおさらで、谷本さんと山根さんが持っている危機感は人事に関わる者だけでなく、事業に関わる全ての人が考えるべきことなのでしょう。

この記事が、皆さんの人材要件の策定、そして実効性のある運用に役立つことができれば何よりです。