
2022年卒の夏インターンシップがようやく落ち着いたという方も多いと思いますが、一息つく間もなく秋冬インターンシップの広報時期になりました。コロナ禍によってオンライン化を余儀なくされ、例年とは違うスケジュールへの対応やコンテンツ開発で忙しいなか、効果的に学生を集めるにはどうしたらいいのでしょうか。
インターンシップで提供するコンテンツの質や、採用広報全体を見渡した上での戦略性、ターゲットとする学生へのアプローチ方法など、さまざまな視点がありますが、まずは身近なところから工夫してみるのも一手です。
今回は、高い技術力でファシリティ、メカトロニクスなど幅広い事業を展開している株式会社マイスターエンジニアリングと、コピーライターの北道高(きた・みちたか)さんご協力の下、インターンシップの魅力を伝えるコピーライティングについてお伝えしていきます。

- 株式会社マイスターエンジニアリング
- 人財開発部 採用グループ グループ長
藤本卓さん

- コピーライター / 株式会社Fanclub 代表
- 北 道高さん
福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。これまでにANAグループや日清製粉グループなど、企業の新卒採用広報のクリエイティブを中心に企業の仲間づくり、ファンづくりを幅広く支援する。採用とクリエイティブのより良い関係を考えるメディア「サイとクリ」をこの春からスタート。
まずは「3つの基本」を確認しよう
北さんによると、インターンシップの広報をするにあたり、まず確認しておくべき項目は3つあるそうです。
- 1.ターゲット学生の属性
- 2.インターンシップコンテンツのセールスポイント
- 3.自社のセールスポイント
これらを明確にした上で、インターンシップの広報を考えてみましょう。
今回は、マイスターエンジニアリングが22年卒を対象にオンラインで実施予定のインターンシップを例にとります。
1.ターゲット学生の属性
メーカー技術部門や技術系企業を目指す理系学生
2.インターンシップのコンテンツ・セールスポイント
毎年、オフラインで実施してきて学生にも好評の「実践型インターンシップ」というコンセプトを引き継いでオンライン化。特にフィールドエンジニア向けに体験キットを自宅に送付するコンテンツに自信あり。
3.自社のセールスポイント
他の派遣会社とは異なり、トップメーカーから業務そのものを請け負う「技術請負」の割合が高く、企業が抱える課題に対して自社内の技術開発力で解決していくスタイルが主な事業形態であること。
この上で、北さんがマイスターエンジニアリングのインターンシップ募集ページのコピーライティングをどう考えたのか、伺ってみましょう。
学生がインターンシップを選ぶ場面を想像する
今回、北さんがマイスターエンジニアリングのインターンシップ募集ページのコピーライティングを考えるにあたって最初に行ったのが「学生視点でページを見てみる」ことでした。
では、お二人の話を伺ってみましょう。
北さん:
マイナビのインターンシップ情報が掲載されているページに入ってみると、御社のページが表示されるのは数ページ進んだ後でした。
そこまでに多くの情報を学生は見ています。つまり、マイスターエンジニアリングの情報に到達するまでに「決め手」に出会っていないか、または複数のインターンシップを比較検討したいのかもしれません。そんな学生にアピールするんだ、ということを念頭に置いて今回のコピーライティングを行いました。
と語って提案された内容が以下のようなものです。

※本インターンシップの募集はすでに終了しています
北さん:
まずはタイトルです。今回、御社のインターンシップは複数のコースに分かれていますが、その中でも画的に引きがあり、内容的にもアピールしやすい「フィールドエンジニアコース」を強く打ち出すことにしました。
藤本さん:
なるほど。ご提案前のものは「【WEBオンライン】体験型コース/1日間」とあるだけでしたが、内容とアピールポイントが分かりやすくなりますね。
北さん:
はい。オンラインであること、1日であることは後に続くテキストを読めば分かる情報です。タイトルと地域や開催時期などのスペックしか表示されない一覧ページに掲載するにはもったいないですね。ここで「おっ、なんだろう?」と興味を引くことを狙っています。
藤本さん:
コロナ禍で、オンライン開催であることは学生へのアピールになると思いますが、伝えなくてもOKですか?
北さん:
それは「【自宅に体験キットが届く】」とあることから、読み取ってもらえると思います。とにかく、短いテキストに学生の興味を引く情報を入れることにこだわりました。
あとは、御社のアピールポイントの一つでもある「社内転職」で自分に向いた仕事を選べるという点もタイトルの中に盛り込んでいます。
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採用を担当されている皆さんは、常に多くの情報をウェブ上でアップデートし続けなくてはいけないので、ついつい自社の情報ページばかりを見てしまうことが多いのではないでしょうか?
学生の気持ちになって、多くのインターンシップ情報が並ぶ一覧ページで、いかに興味を引くかという考え方は、意外と盲点かもしれませんね。
自社のセールスポイントをしっかりと伝える
続いて北さんから提案があったのは、画像とコース紹介文。
多くのインターンシップ情報の中から自社のページに来てくれた学生が最初に目にする部分です。ここにはどんなポイントがあるのでしょうか。
北さん:
これはマイナビの仕様なので仕方ありませんが、画像はかなり小さく表示されてしまいますので、アピール力の高いものを採用した方がいいでしょう。今回の場合は、タイトルにも採用した「体験キット」ですね。
藤本さん:今もその画像を使用しています。確かにこれは、視覚に訴える力がありますよね。
北さん:
はい。複数の人物がいる写真や社屋の写真よりも、こういった「体験できる内容」が一目で伝わる物がいいと思います。これはなんだろう、と期待感を抱いてもらい、さらに説明を読んでもらうために。
北さん:
そして、続く詳細テキストでは、まず「あいさつ」と「会社の自己紹介」をしています。
会社概要は別のタブに入ってはいるのですが、そこを見てくれる学生がどのくらいいるか…。せっかく書けるスペースがありますので、この中で短く・分かりやすく、セールスポイントを打ち出せるといいでしょう。
藤本さん:
なるほど…。会社概要のタブがあるので、ここで会社の紹介を書くイメージはありませんでした。確かに、確実に見てもらえる場所でアピールした方がいいですね。
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タイトル、画像、そしてテキスト。ここまでが「キャッチ」となる部分です。一覧ページからタイトルに引かれた学生がページを開いてくれたら、それを逃さずに詳細まで読んでもらうこと。そして、会社概要などタブ(ページ)を移動しないと見てもらえない部分から、特に重要なものは入れ込んでしまうのがいいようですね。
概要テキストも「コピーライティング」を意識して
最後に、就業体験内容が入る「概要」の部分。ここは、事実を淡々と重ねて書いてしまいがちな部分だと思いますが、北さんによると、やはり「コピーライティング」を意識したテキストづくりが重要なようです。
北さん:
最後に、就業体験内容の部分です。ここも、読んでいる学生が自分ごと化して魅力的に感じるよう、工夫してみました。

※それぞれ一部を抜粋して例示しています
藤本さん:
キャッチのテキストを入れることで、どんな学生にお勧めなのか分かりやすくなりましたね。
北さん:
はい、そこを目指しました。御社がターゲットとされている理系の学生、中でも自分の進む分野を完全には決めきれていない方にとって、業務範囲の広い御社はとても魅力的です。学生に「自分の興味を見つけることのできるインターンシップ」だと思ってもらえれば、きっと応募してくれるだろうと考えました。
藤本さん:
いいですね。やりたいことがたくさんあって絞り切れていない学生なら、このテキストには引かれるかもしれません。
北さん:
まず1行目の短いテキストを読む、その中で気になるものがあれば詳細なテキストも読む。こういう動きを想定し、就業体験内容の部分にもコピーライティングを施しています。
藤本さん:
ありがとうございます。勉強になりますね。採用担当者は1年を通じて次から次へと学生に対して情報を提供しているので、なかなかこうして見直す機会もなく…。今後はご提案いただいた内容を踏まえて、情報発信をしていこうと思います。
北さん:
お役に立てて何よりです。ありがとうございました。
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最後に、ここまでの提案にあったポイントをまとめてみました。
この表をもとに、御社のインターンシップ広報も、まずはできるところから改善して効果を上げていきましょう!
学生の動きを読み、魅力を効率的に伝える
北さんの提案は、まず学生の気持ちになってページを見た上で、ターゲット層にきちんと魅力が伝わるコピーライティングを行うというものでした。
ご存知の方も多いかと思いますが、「ファネル」というマーケティング用語があります。日本語では「漏斗」を指す言葉で、消費者の行動をいくつかの段階に分け、各段階で適切なアプローチをすることで目的を達成する、という考え方です。

※編集部にて作図
上記は「パーチェスファネル」と呼ばれる、消費者が購入に至るまでの行動を示した図です。これをインターンシップ応募に置き換えると、図の右のテキストのようになります。
この各段階を意識して、そのときに学生が何を考え、どこを重視しているのか。このことをきちんと考え、テキストや画像を選定していくことが重要なんですね。
皆さんも、学生の気持ち、自社の魅力を十分に理解した上で改めてインターンシップ募集の内容を見直してみてはいかがでしょうか。きっと、これまで以上の効果が得られることでしょう。