出戻り採用が増えている理由や成功の秘訣は? プロの意見・出戻り社員の本音を紹介
「出戻り採用」とは、一度会社を退職した人を再度雇用することです。近年、慢性的な人材不足や、採用現場での意識の変化から注目を集め、新たな採用手法として、取り入れられるケースが増加傾向にあります。
そんな出戻り採用の実態について、中途採用市場に精通したプロや、実際に出戻りを経験した方々に語ってもらいました。
「出戻り採用」とは
今回は、株式会社マイナビにて、出戻り採用活動などにつながるアルムナイ(退職者)採用ネットワーク形成サービス「YELLoop(エーループ)」の開発・運営を担当し、日々多くの会社の人事担当者とも交流のある山本さん・小野さんに、出戻り採用の定義や現状などについて教えていただきました。
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山本 篤矢さん 株式会社マイナビ 新領域開発室 BusinessCreation統括部 BusinessAcceleration1部 部長
マイナビに新卒入社以来一貫して、営業・企画職といった立ち位置で10年以上HR領域に従事しており、YELLoopに関しては創業期から、立ち上げメンバーとして携わる。開発当初より今日に至るまで、約500社の人事担当者に対し、ヒアリングを継続。現在は営業・マーケティング・カスタマーサクセス・開発の側面から、トータルでサービスの運営にあたっている。
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小野 栄大さん 新領域開発室 BusinessCreation統括部 BusinessAcceleration1部 BusinessAcceleration3課 課長
前職を含めてHR領域でのキャリアを重ねており、マイナビでは新卒採用・中途採用の両軸から採用についての見識を深めてきた。現在はYELLoopの営業責任者として、1カ月に30社以上の人事担当者と打ち合わせの場を持ち、日々現場の生の声に触れながら、アルムナイ採用に関するコンサルティングを行う。
「出戻り採用」の意味・定義
人材業界で「出戻り採用」とは「いったん会社を退職した社員を、再度採用する」という意味を持ちます。この時、退職理由は、転職や育児・介護などさまざまなものを含みます。
小野さん:会社を辞めた人が、社内に残っている人と個人的につながっていて、そこから紹介を受けて戻ってくるというパターンを指すことが、比較的多いですね。
山本さん:過去在籍していたといっても、無条件で採用するのではなく、採用選考を行うことが基本です。場合によっては、不採用のケースも当然あります。
「出戻り採用」の言い換えは「アルムナイ採用」など
「出戻る」という言葉には「外に出たけど、後悔して戻ってきた」「前回と変わらない状態で元に戻る」のような印象を持つ人もいるため、別の言葉に言い換えることもあります。
小野さん:会社によって、「カムバック採用」「アルムナイ採用」などさまざまな呼び方があります。ただし「アルムナイ」は、人事領域では一度企業を離れた者、OB・OGを指す言葉で、「再雇用」そのものというよりは、退職者と接点を持ち続けることに重きを置くニュアンスになります。
関連記事:アルムナイの意味は?人材難のこれからを勝ち抜くアルムナイについて
出戻り採用の現状
次に、出戻り採用の現状について教えてもらいました。
出戻り採用は年々増加傾向にある
年々増加しているといわれる、出戻り採用。それはデータにも表れており、2024年1月~12月の間に、正社員の中途社員募集において利用した採用サービス・手法について株式会社マイナビが1500社に実施したアンケート(※1)では、18.7%の企業が「アルムナイ採用」と回答。2021年の同アンケートの15.3%と比較して3.4%増加しています。
2024年1月の別の調査では、「現在実施している」が40.9%、「現在は実施してないが、今後検討している」が28.3%と、70%近くが前向きというデータもあります。
山本さん:2021年とか、2022年頃でしょうか。実は当初は、「出戻り=裏切り者と思っている人も多いのでは?」みたいな声も、人事部の方々の口から聞いていたんです。「一度辞めた人を呼び戻して大丈夫かな?」というような……。あとは、現場の採用担当者はやりたいと思っていても、上層部の方々が悲観的なケースもありました。
それが、ここ1~2年くらいは、すごく現場の空気感が変わってきたな、という実感がありますね。だんだん出戻り採用やアルムナイ採用を導入する会社が多くなってきて、事例が増えたり、メディアで取り上げられたりする内に、「うちもやらなくちゃ」という雰囲気になってきたようです。
小野さん:実際、最近はYELLoopに対するお客さまからの問い合わせも増えてきていますね。それだけ、この新しい採用方法についての、世間の注目度が高まってきたのかなと思います。
転職者側の意見としても、「過去退職した会社に戻りたい(出戻り転職したい)」と思った経験有無を1005人にアンケート(※3)したところ、32.9%の人が「ある」と回答しました。
このように、出戻り採用やアルムナイ採用のニーズは増え続けており、今後、よりポピュラーな方法になっていくと考えられます。
- <出典>
- (※1)株式会社マイナビ 中途採用状況調査 2025年版(2024年実績)
- (※2)マイナビ 中途採用・転職活動の定点調査(2024年1月)
- (※3)マイナビ 中途採用・転職活動の定点調査(2024年6月)
出戻り採用が増える理由・背景
出戻り採用が増えている理由としては、少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少し続けていることが関連しているといえます。
山本さん:人手不足から、各社の人材獲得競争が激しくなっている中で、出戻り採用制度は人材不足解消の一つの糸口として注目されているのではないでしょうか。
あとは、転職エージェントの手数料や求人媒体への広告費用に比べて、比較的安価に運用できるので、採用コストは抑えたいけれど人材の質は落としたくない、という企業側のニーズにフィットする点もあるでしょう。
小野さん:確かに「質」という意味では、出戻り社員であればその会社での就業経験があるので、企業としては十分な業務遂行能力があることが分かっていますからね。
加えて、本人も必要とされているスキルや仕事内容などを理解して応募しているため、双方でミスマッチが起こりづらいという面もあります。
さらに、制度を取り入れる官公庁や地方自治体が出てきたというのも、後押しとしては大きいです。「公的機関がやっているのなら、確かだろう」という印象があるのかもしれません。
出戻り採用のメリット
採用後のミスマッチが少なく社員の質が担保できるといった事柄以外にも、出戻り採用にはさまざまなメリットがあります。
山本さん:自社を退職後に、別の企業で働いていたアルムナイの場合は、そこで得た新たなスキルや価値観といったお土産を持って再入社してくれる可能性があります。
また、出戻り採用には、退職者に寛容・柔軟な姿勢など、会社のイメージアップにつながる一面もあります。例えば妊娠・出産・育児や介護などで退職せざるを得なかった方を再雇用する姿勢は「女性も活躍しやすい会社」「従業員のワークライフバランスを大切にしている」といったアピールになり得るでしょう。
小野さん:それ以外にも、実際に人事の方から「出戻り社員の定着率が高い」という話をよく聞きますね。一度辞めた上で戻ってくるということで、基本的にそれなりの覚悟を持った方や、愛社精神がある方が多いんだと思います。あとは、会社の雰囲気や人間関係をよく分かった上で入社するわけですから、入社後のギャップが少ない、というのもあるんでしょうね。
山本さん:そうですね。それにスキルがあるので、育成の時間や手間、費用があまりかからず、即戦力として活躍してもらいやすいので助かる、という声も多いです。出戻り採用であれば、今、人手不足なところに、すぐに適応してもらえるので。
小野さん:それは現場にとって大きいですよね。なかなか、丁寧に育てられる余裕がない、という企業が多いと思うので……。そういう意味では、システムなどのツール関連や、基本的な社内ルールのインプットが最小限で済むのも、メリットですね。
例えば営業でいうと、営業スキルや自社の商材についての知識はもちろん必要なんですけれど、それ以外にもメーラーは何を使っているか・見積書はどのシステムでどう作成するか・この案件の経緯は誰に聞くべきかなどを理解してもらうのって、結構大変なんですよね。
山本さん:そういった細かい部分や、言語化が難しい部分も、周囲がしっかりフォローしていけるのがベストですが、人手が足りなさ過ぎて難しい、という場合もありますからね。そんな時にアルムナイ社員が戻ってきてくれたら、現場はすごく助かりますよね。
同じ部署に戻る場合はもちろん、たとえ別の部署に配属されたとしても、会社の共通システムや枠組み、カルチャーみたいなところは理解しているわけなので、やはりメリットは大きいですよね。
出戻り採用のデメリット
一方で、出戻り採用を行う際には、既存社員に不公平感を抱かせないように注意する必要があります。
山本さん:例えばずっと頑張り続けてきた既存社員と待遇が同じ、またはむしろ出戻り社員の方が好待遇といった場合、不満が出る可能性があります。
その他、「退職してもまた帰ってくることができる」という安易な誤解が生じてしまうと、人材流出につながってしまうので、注意が必要ですね。
小野さん:既存社員に配慮しながら就業規則や採用ルールを整えたり、社内外に制度を周知したりするには、少なからず手間がかかるので、そこをデメリットと感じる企業もあるかもしれませんね。だからこそ、アルムナイ(退職者)ネットワークにまつわる専門サービスを活用して、社内の労力を抑えるのも一つの選択肢といえるでしょう。
YELLoop(エーループ)なら、退職者ネットワークの構築から再雇用支援まで、専門知識を活かしたサービスで社内負担を最小限に。
出戻り採用を成功させるためのポイント・注意点
ここからは、出戻り採用制度の設計を検討している人事部の方向けに、成功のポイントや、念頭に置いておきたい注意点を解説します。
採用チャネルの中でも出戻り採用について、位置づけや求める効果を考える
中途社員の採用チャネルには、転職求人サイトへの広告掲載や採用イベントへの出展など、さまざまなものがあります。その中でも「出戻り採用」という方法をとるならば、どのような位置づけ・方針で進め、どのくらいの期待値を置くのかは、あらかじめ整理しておいた方がいいでしょう。
山本さん:目的や目標を定める他、単に採用窓口を用意しておいて、退職者側からのアクションを待つのか、それとも退職者と双方向で連絡を取れるアルムナイ(退職者)ネットワークサービスを利用し、継続的にコミュニケーションを取っていくのかなどを決めておく必要があります。
特に念頭に置いてほしいのは、出戻り採用やアルムナイ採用制度に関しては、単年での成果は期待し過ぎず、長期的なスパンで考えた方がいい、ということ。
例えば、YELLoopを活用したアルムナイネットワークの場合、30~40人程度の退職者をプールすると、大体のケースで、およそ1年に1人の採用につながっています。初期は退職者にリーチし、登録者を集める期間にして、アルムナイの登録が一定水準を超えたタイミングで、実際に採用につなげる、というような考え方が現実的でしょう。
小野さん:加えて、出戻り採用は、どちらかというと「量より質の手法」ということも覚えておいてほしいです。会社の規模にもよりますが、退職者の数には限りがあるので、大量採用できるわけではありません。
一方で即戦力人材はもちろん、転職市場にはいないような、自社に必要なニッチなスキルを持つ人も、退職者の中にはいるはずなんです。
再雇用のルールを明確化する
出戻り採用制度では、希望者であれば誰でも復職できるということではなく、退職理由・在職期間・離職期間など、ある程度の再雇用の条件を設けるのも大事です。
山本さん:既存社員に不公平感を抱かせないような、納得感のある制度であることが必要です。「コネではなく、しっかり選考している」「会社にとってメリットをもたらしてくれる優秀な人材であるからこそ再雇用する」といった点をアピールしましょう。
また、出戻り社員の待遇においては、社内に残って頑張り続けてきた既存社員と同等、あるいはより良くする場合は、その理由をきちんと説明ができるかもキーとなります。透明性のあるルールにすることが、既存社員はもちろん、出戻り社員本人にとっても、働くモチベーションを保つために大切です。
すぐにまた退職する可能性がある人かは慎重に判断
一度退職した方の採用を検討する際は、通常の中途採用と同様に、書類選考や面接において、慎重な見極めも必要です。
山本さん:通常の採用工程と比べて比較的少ないとはいえ、コストをかけて採用して、せっかく業務の引き継ぎをしても、前回の退職理由が今回の状況にも当てはまってしまう場合、すぐにまた辞めてしまうかもしれません。例えば、人間関係が嫌で退職したのに、同じチームに配属される場合などが当てはまるでしょう。
退職から長い時間が経っていて、かつ自らキャッチアップする姿勢がない人、当時のやり方や退職前の立場などに固執する人の場合も、現状とのギャップに耐えられずに退職する恐れがあります。
小野さん:そういったことが続くと、出戻り社員全体に対して、ネガティブな印象を持ってしまう既存社員が増える可能性があるため、注意が必要です。なぜまたこの会社で働きたいのかをヒアリングし、それが納得感のあるものかどうかも、採用の判断に役立ててください。
さまざまな人が「働きやすい」と思える環境を整備する
例えば育児を理由に一度退職した社員の場合、子どもが大きくなって復職できる余裕ができたとはいえ、フルタイムだと難しい、という場合もあるでしょう。そんな時、時短勤務や、またはリモートワークなど多様な選択肢があると、復職へのハードルが下がります。
小野さん:たとえいきなり大きな制度改革ができなくとも、少しずつでも人事制度を改善していくことは、「社員のために変わってくれる会社である」という印象を、社員や退職者に与えることができます。
あとは、社員一人一人がお互いのライフワークバランスを尊重し合い、助け合える雰囲気やカルチャーを養うことも大切です。出戻り採用をはじめとして、「人事採用」の効果を最大化させるためには、人事部のみならず、受け入れ部署や会社全体の理解と協力が必要不可欠なんです。
制度をつくるだけではなく社内外に周知して活用を促す
せっかく制度を整えても、知られていない・使ってもらえないのでは意味がありません。まずは社内に広報し、上がってきた疑問に対してスムーズに回答できる体制を整備することもポイントです。
小野さん:退職した社員にも周知が必要なので、社内ポータルだけではなく、既に退職済みの人に向けてアナウンスする場合は、取得している退職者情報の活用に加え、採用ホームページやプレリリースの活用、在籍社員から知人の退職者への案内などを行っていくといいでしょう。
山本さん:連絡の頻度としては、月に1回程度は何かしらの情報を届けるといいと思っています。この時、基本的に内容はニュースリリースや最近の社内の様子、同窓会の案内とか、再入社に関係ないことでいいんです。「懐かしいな」「あの会社で過ごした時間は、まるで青春だったな」などと思ってもらい、そういうのが積み重なって、いざ転職を考えた時に思い出してもらえたら成功です。
逆にしつこすぎると嫌がられて登録解除されてしまう恐れもあり、再入社にまつわる案内は半年に一回くらいがちょうどいいのではないかと思います。
YELLoop(エーループ)なら、アルムナイに向けて、どんな情報発信を行うべきか、どんな情報が効果的か、などは専門知識が豊富なカスタマーサクセス部門が徹底サポートいたします。運用負担を最小限に、アルムナイとの接点を増やしていきませんか?
実際どうなの? 出戻り社員の本音を紹介
ここからは、実際に出戻り入社を経験した方々にインタビュー。当時を振り返って、出戻り入社に至った経緯や、現在、出戻り社員として働く上で感じていることなどを語ってもらいました。
出戻り経験者の皆さんのプロフィール
・沢井 友理奈さん(仮名)
2005年に新卒入社し、約4年間、就職情報媒体の広告営業職に従事。営業職以外の職種に転向するために転職したものの、転職先にて第一子の育休復帰後に退職。約7年半後に再入社し、営業事務などとして勤務した後、現在は二児を育てながら、人材紹介にまつわる部署で、営業職・管理職を務める。・高木 智治さん(仮名)
2014年に新卒入社し、約9年間、自社WEBメディアにおける企画営業や、クライアントのオウンドメディア支援を担当。コンサルティング会社への転職を経て、約2年半後に再入社。再びクライアントのオウンドメディア支援業務を行い、現在は新規事業開発を担う。・稲葉 眞未さん
2016年に中途入社し、約5年間、採用イベントの企画運営や自社WEBサイト管理業務に従事。20代最後のタイミングで、採用担当職にチャレンジしてみたいと思い、転職。約2年の間に2社でキャリアを積んだ後、再入社し、現在は自社WEBメディアにおける広告制作職として勤務。
なぜ一度退職し、そして出戻りに入社をすることになったのでしょうか?
沢井さん:退職したのは、当時は会社の規模がまだ小さく、営業以外の職種がほとんどない中で、ハードな働き方を見直したいと考えたためです。営業以外の職種を求めて、転職しました。
しかし時代柄もあったのか、転職先では第一子の育休復帰後に降格を言い渡され、モヤモヤしながら働いていました。
そんな時、私の様子を知った元上司から「また一緒に働かない?」と声を掛けてもらったんです。そして、面談・面接などを通して「この会社の人たちは、『母』というフィルターを通さずに、私自身を見てくれる」と感じ、出戻りを決意しました。元々、会社のカルチャーが自分に合うと分かっていたのも、大きな後押しとなりましたね。
高木さん:私は今の会社に新卒で入社しており、毎日充実してはいたのですが、30歳の節目を前に「一度外の世界も見た方がいいのでは」と思い、転職しました。
転職先はコンサルティング会社で、クライアントの課題解決に尽力しました。ただプロジェクトワークとなるため、毎回共に働くメンバーが異なり、互いに得手・不得手が分からない状態で、一から関係性を構築する必要があって……。個人的に効率の悪さを感じていました。
また、そこでは多少時間をかけてでも、少しの失敗もない状態で仕事を進めるスタイルが求められていたんですが、私にはそれまでのように、トライアンドエラーを繰り返しながら、スピード感を持って仕事をする方が合っていると気付いたんです。
そんな中で、元上司に再転職を検討していることを伝えた際に、出戻り採用の制度を教えてもらい、他社と並行して、選考を受けることになりました。
稲葉さん:実は私も、20代最後のタイミングで自分の将来を考えた時に、漠然とした不安を感じて……。当時、クライアントの採用担当の方とお会いする機会が多かったのですが、いろいろ整理するうちに、自分自身が採用担当者として働いてみたいと思い、キャリアチェンジのために転職しました。
新しい仕事は、もちろんやりがいのあるものではあったのですが、働くうちに、「私は仕事内容よりも、誰と働くかを重視するタイプだ」「スペシャリストよりも、幅広い業務に挑戦できるゼネラリストが向いている」と気付いたんです。
この時点で4社での勤務を経験していた私は、共に働く人のカルチャーや働き方が最も合うのが今の会社だったと認識しました。その後、人づてで再入社の話を伺い、選考に挑戦した流れです。
「再入社して良かった」と感じたことはありますか?
沢井さん:私の場合はブランクが長かったので、もちろん仕組みなどの部分では多くの変化がありましたが、驚くほどに、会社としての根っこの価値観やカルチャーは変わっていなくて。雰囲気や、仕事にすぐになじむことができて助かりました。やはり新しい会社に転職する場合は、こうもスムーズにはいかないかな、と思います。
また、出戻り当初は時短の営業事務として働いていたのですが、第二子の育休復帰後に、私の希望でフルタイムの営業として再チャレンジさせてもらえたのも、この会社ならではかな、と。結果として、また夢中になって楽しく営業の仕事ができ、実績を上げられた時は「出戻りを受け入れてくれた恩返しができた」とうれしく思いました。
高木さん:私は再入社して配属されたのが、退職時と同じ部署でした。一緒に働く仲間の人となりや得意なことを既に知っていて、相手も私について理解してくれているので、人間関係・仕事のしやすさの両方において、非常にありがたかったです。
あとは、一度会社を離れて他社を経験したことで、俯瞰的に物事を見られるようになり、その上で戻ってきたからこそ、自分が会社にどう貢献できるのかについて解像度が上がった気がします。一度目の在籍時より、今の方が、働く上での自分の軸を意識できるようになったと思います。
稲葉さん:私の場合は、退職時とは異なる部署・職種での再入社でしたが、それでもやはりカルチャーがマッチしており、すぐに環境になじめたのはもちろん、他社にいた時よりもいきいきと働けていると感じます。こういった点は会社の中にいる時はなかなか分からず、離れてみたからこそ気付けた、という感じがありますね。
再入社前に不安だったこと・再入社してから戸惑ったことはありますか?
沢井さん:「一度辞めたのに、どんな顔をして戻ればいいかな」という、照れくささみたいなものはありました。でも当時の知り合いも多く、「おかえり!」と温かく声を掛けてもらえたので、とても心強かったです。
再入社してから戸惑ったこととしては、会社の規模が大きくなり、一つの案件に関わる人も多くなっていたところ。進め方やルールが複雑になっていて、慣れるまでは苦労しました。
ただその中で、謙虚でいようと常に心掛けていましたね。ささいなことでも、癖で昔のやり方になってしまわないよう、意識的に今のやり方にアップデートするようにしました。あとは、昔の後輩だからといって、自分より上の立場の人に、ついタメ口を使わないように、など。出戻りだからこそ、周囲の人や会社への敬意が、より大切だと思います。
高木さん:私も、出戻り採用が徐々に浸透してきているとはいえ「一度辞めた人間を、どの程度受け入れてくれるだろう」と不安でした。しかし、かつての同僚はもちろん、初対面の方々も温かく迎え入れてくださり、とても安心したのを覚えています。
困ったのは、以前はなかった新しいシステムやツールに慣れるまでが大変だったこと。マニュアルを読んだり、誰かに聞いたりして解決できたのですが、そういった環境が整っていなければ、もっと苦労したと思います。
ただこれは通常の転職の場合も同様ですし、むしろ出戻りの場合は、使い慣れているものを引き続き使うことも多いので、そこまで気にしなくても大丈夫かな、と思います。
稲葉さん:私の場合はそれまでに既に4社で働き、また今回は出戻りということもあったので、「また失敗したらどうしよう」という思いがありました。しかし入社前の面談を通して、不安を払しょくできました。入社してからも、周りの方々が温かく受け入れてくれたおかげで、のびのびと楽しく働けています。
当時と異なる部署に配属されたこともあり、システム面やルールの違いには戸惑ったのですが、これも先輩方が優しく、丁寧に教えてくださったので助かりました。出戻りでも転職でも、特に最初は周囲の方々のサポートがないと、大変だろうなと思います。
出戻り採用制度を行う会社に期待することはありますか?
沢井さん:私は「ゆるくつながっていられること」が本人と会社にとって価値があるのではないかと思います。
自分を振り返ってみても「ベストな働き方は、その時々で変わる」という実感があります。結婚・出産・親の介護・転勤など、人生が予想外の方向に進むことも珍しくありませんよね。
退職当初は人生の状況と合わなかった会社でも、数年後はどうなっているか分からないと思います。そんな時も関係が途切れずにいると、また縁がつながることもあるんだな、と。
私と元上司の時は、そのつながりが属人的なものでしたが、仕組み化されていくとさらにいいのではないかと思います。
ただし「出戻りすることが前提」「次の会社が合わなければ戻ればいい」という雰囲気が蔓延してしまうのは、生産性が下がる気がしています。双方が必要性の検討を重ねた上で、きちんと選考を経て再入社するのが理想ですね。
実際に私のケースでは、出戻りでもちゃんと複数回の面接があり、筋を通して戻ってきていると言える状況だったので、安心感がありました。
高木さん:私が感じたのは、社会的に、出戻り採用の認知度がもっと高まれば、より退職者が戻ってきやすい雰囲気になりそうだという点ですね。実は私自身、この会社に出戻り採用の制度があるとは知らず、退職後に元上司から聞いて初めて知りました。在籍時から知れていたら、より選択肢が広がったのではないでしょうか。特に、出戻り社員の体験談などのコンテンツがあるといいと感じました。
あとは、出戻り前提でなくとも、アルムナイ(退職者)のコミュニティがあれば、退職者と企業がゆるくつながることが実現できそうですよね。
稲葉さん:私も同じく、出戻り採用の制度の存在について知らなくて、後から偶然知ることができた状態なので、もう少し認知度が高まればいいと思います。
アルムナイコミュニティについては、私が会社を離れている当時はなかったのではないかと思います。もしあったら、ぜひ入っておきたかったですね。
その他、社内で出戻り社員同士の集まりなどあれば、ぜひ参加してみたいです。皆さん、転職先や復帰後の配属部署などはバラバラだと思うので、どのような経験をされたのかを情報共有できるような場があったらいいなと思いました。
出戻り採用のリアルを知ってみんなにメリットのある制度設計を目指そう
最近、注目を集めている出戻り採用制度。その理由には慢性的な人材不足や採用ブランディングの向上などがあるようです。
今回お話をお伺いしたYELLoopのお二人によると、出戻り採用やアルムナイ採用の制度を取り入れた企業のほとんどは、一定の成果が出ているとのことでした。最初は抵抗があったとしても、そういった事例を聞いて、徐々に担当者や現場の意識が変化していくということもあるようです。
また、実際に出戻り入社を経験した人からは、「戻る時は緊張したが、温かく迎え入れてくれて安心した」「しっかりと採用選考をしてくれたので、堂々といられた」「退職当時は制度について知らず、後で偶然知った」といったリアルな声を聞くことができました。
今回紹介したメリットやデメリット、注意点などに着目しながら、企業・出戻り社員・既存社員のみんなにメリットのある制度や体制づくりを目指していきましょう。
```- 人材採用・育成 更新日:2025/09/24
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