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地方で伸びている企業はこれをやっている!──中小企業の採用を変える「情報発信」の力

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人材不足の時代、特に地方企業では「人が来ない」「採用できない」と悩む声が後を絶ちません。しかし、そこで立ち止まっているだけでは何も変わりません。

今回は、地方・中小企業の採用支援を多数手掛けるマルゴト株式会社の今啓亮さんに、地方企業が採用を成功させるための視点と工夫について、実例を交えて伺いました


  • 今 啓亮氏_プロフィール写真
  • 今 啓亮(こん・けいすけ) さん マルゴト株式会社 代表取締役

    “まるごと人事”という月額制の採用代行を運営。ベンチャーで3年勤務した後、カンボジアで起業し2年で会社譲渡。東京でマルゴト株式会社を設立。2019年1月は社員2名で、現在は全員フルリモート社員で190名に成長中。22年に東京から札幌に本社移転。自身も札幌在住。著書『中途採用の定石』


なぜ地方企業の採用は難しいのか?―3つの根本課題から読み解く

若手人材の絶対数の減少と都市部への流出

— 地方企業の中途採用がうまくいかない背景には、どんな課題があるのでしょうか?

今さん:大きく3つの課題があります。

  • 若手人材の減少と都市部への流出

  • 給与や待遇の格差

  • 採用体制のリソース(人員)不足


です。まず1つ目から解説しましょう。

— はい。ぜひお願いします。

今さん:若手人材の減少は全国的な傾向ですが、地方ではそこに加えて都市部への流出が止まりません。特に経験者の若手が地方に残るケースは本当に少なくなっています。

また、地方の高校や専門学校を卒業した若手が、そのまま地元企業に就職するケースが減っていて、「未経験の若手なら来てくれると思っていたが、それも難しくなっている」という採用担当者の声も多いですね。

中には地元志向の学生もいるのですが、多くは就職活動の段階で「都会で働くことが前提」になってしまっていて、そもそも地方企業が比較対象にすらなっていないこともよくあります。

広がる給与や待遇面の格差

— では、2つ目の「給与や待遇の格差」についてはどうでしょうか。確かに、首都圏と比較すると地方が負けやすいポイントではあると思います。

今さん:そうですね。例えば、私が住んでいる札幌市は北海道で最も大きな都市ですが、それでも東京とは大きな差があります。東京で年収600万円の人が、札幌では400万円くらいになってしまうイメージです。

これは構造的なもので、地方の企業努力で埋められる範囲を超えています。そもそも地方の経済が「低単価の案件を低賃金の人材で回す」ことで成り立っているため、給与だけを即座に引き上げることは現実的に難しいんです。

— なるほど。ただし、その分生活にかかるコストも下がりますよね?

今さん:はい。家賃や食費が安い、通勤時間も短い、保育園に入りやすいなど、「お金以外の豊かさ」があるのは、地方の特徴ですね。そこをうまくアピールできれば、待遇差を乗り越えて採用ができることもあります。

採用現場のリソース不足

— ありがとうございます。では最後、3つ目の課題は何でしょうか。

今さん:採用体制の整備が進まない、という点です

これは特に深刻で、本来は専任担当者を置くべきで、採用に苦戦している企業ほど採用リソースを確保することができず、総務や経理が兼任していたり、社長が直接やっていたりします。

そもそも年間の採用人数が数人程度のため、「そこに1人を専任で割くのはコスト的に難しい」という背景もあるでしょう。

しかし、専任担当者がいないために採用の知見が不足したまま発信や面接を行い、結果として時間や手間が無駄になるケースがよくあります。

特に発信にまつわるリソース不足が深刻です。

人手と知識が不足していて、企業の魅力が求職者に伝わらずに人材の獲得が難航しているケースや、情報発信の必要性や重要性を経営層が理解していないため、まったく人手が割かれず発信を行えていないケースも見られます。


制約の中で、採用広報は何ができるのか、何をすべきか?

まずは「情報発信」が大事

— さまざまな課題がある地方企業の発信(採用広報)ですが、効果的な施策はありますか?

今さん:何よりもまず、「情報発信の量」が絶対的に足りていません。応募者が集まらない理由が、「そもそも会社が知られていない」という場合がほとんどですね。ですので、まずはブログやnote、SNSでも何でもいいので、“顔が見える発信”をすることが第一歩です。

「人」にフォーカスした発信を

— 「顔が見える発信」ですか。発信する内容についてはどうでしょうか。

今さん:そうですね。特にUIJターンの求職者は、「この会社で働いているのはどんな人か」「どんな思いで働いているのか」といった情報を欲しています。なので、「人」にフォーカスした発信を行うのが定石です。

ブログなどは、社長が書くと効果的ですよ。地方の中小企業は社長のスタンスや意向が経営全体に反映されやすいので、その思いやビジョンを語ることで他社と差別化できます。

結果、企業の本質や温度感がより伝わりやすくなるので、共感を得る力も高まるでしょう。

— 情報発信を上手に活用した地方企業の成功事例はありますか。

今さん:はい。札幌のある介護企業では、社内報をそのままWebで公開していて、社員紹介や日常の様子まで外部に届けています。応募者がその空気感に共感して応募し、入社後のミスマッチも減ったそうです。

「来てもらう」のを待つよりも、「出向いて会う」

— 会社について、事業内容や企業情報だけでなく、「空気感」まで含めて多くの人に知ってもらう機会を持つことが大切ということですね。

今さん:そうです。

そして、そういった情報は対面でのコミュニケーションでより強く伝わります。

なので、大手人材会社などが都市部で開催する合同説明会に参加するのもお勧めです。求職者はわざわざその土地に出向く必要がないので参加のハードルも低く、なおかつUIJターン就職の志望度の高い方が参加しています。「思っていたより雰囲気が良かった」「話してみたら安心できた」という感想を持たれることも多いので、ぜひ求職者と直接触れ合う機会を活用してみてください。


「環境がいい」だけではない 差別化する「発信の視点」とは?

その土地や企業にしかない魅力とは

— 地方企業がUIJターン人材を獲得する際には、よく「環境がいい」「自然が豊か」などの表現が使われますが、それだけでは差別化できないという課題もあると思います。環境の魅力に加えて、何を訴求していくべきでしょうか。

今さん:おっしゃるとおり、自然や環境の良さはどの企業も言っています。「四季のうつろいが美しく、自然が豊かです」といった言葉では、他の地域との差別化にはつながりません。だからこそ、企業独自の魅力や、その地域で働くことの意味、そして成長性を伝える必要があります。

例えば、「この地域で何が起きているか」「どんな将来性があるか」といった視点は非常に重要です。再開発や新幹線の開通、工業団地の新設など、地域全体としての変化は、将来の暮らしや働き方にポジティブな影響を与える材料になります。

併せて企業自身の挑戦や変革、成長意欲も打ち出すべきです。地域に根差しながらも、EC展開やDX導入などに取り組んでいる企業であれば、その動き自体が“地方にいながら挑戦できる環境”の証明になりますし、そうした企業のビジョンや人の魅力は、求職者にとって強い引きになります。

「暮らしのイメージ」を伝えられるように

— その地域や企業の「独自性」を伝えることが重要ですね。

今さん:はい。そこで働くことのメリットを具体的に伝えてあげましょう。

また、UIJターンを考えている方々は、仕事だけでなく「暮らしのイメージ」も重視しています。例えば、「徒歩10分の場所に温泉がある」「保育園にすんなり入れた」「週末は家族で海辺を散歩」といった具体的なエピソードは、実感を伴って伝えることができます。生活のしやすさは、給与水準では測れない価値を感じてもらえる要素です。

他に、自治体の住宅補助や移住支援制度なども、福利厚生と同じように伝えることが大事です。「自治体から移住手当で月5万円が支給される」といった制度があれば、積極的に発信すると、暮らしやすさ・働きやすさの裏付けになる情報として有効です。

「攻めの採用戦略」──「合う人」を探すより、「合う組織」をつくろう

柔軟なポジションの提示で候補者の可能性を引き出す

— 情報発信の観点以外にも、何か取り組める施策はありますか?

今さん:はい。採用を「組織改革」の一環として捉え、戦略的に設計していく手法です。例えば、面接を通じてポジションを一緒に考える「オープンポジション」という手法なら、既存の役職や業務と候補者がピタッとマッチングしなくても、その人の経歴に合わせて業務を設計していくことが可能です。

関連記事:オープンポジションとは?中途採用におけるメリットと採用戦略の立て方

— その方法なら、求職者の方のこれまでのスキルや経験を、十分に発揮してもらえそうですね。

今さん:はい。人材の流動化が進むいま、「来る人に合わせて組織を変える」柔軟性は、大きな競争力になります。特に複数事業を展開している企業では、柔軟な配置が可能ですし、新たな視点が思いもよらぬ展開を生むこともあります。

ある企業では、ECやマーケティングに強い人材の採用に合わせてEC部門を新設し、既存の販路とは異なるチャンネルで売り上げを拡大することができました。

また、上昇志向のある人材には、社長直轄の新規事業や全社改革プロジェクトを任せるケースも見られます。

裁量やスピード感を求める人材にとって、意思決定が早く、自分の影響力を感じやすい環境は非常に魅力的です。さらに、そうした意欲ある人材が加わることで、既存社員にも良い刺激が生まれ、社内全体の成長意欲や挑戦マインドを高める効果も期待できます。

地方の中小企業では「上を目指したい」と考える人が少ないことも多いため、外から新しい風を入れることが、組織風土の変化にもつながっていきます。

まずは副業・兼業人材との協業から始めて新たな挑戦を

— 求職者の「スキル」だけでなく、「働き方」に合わせた人材採用もあると伺いました。

今さん:はい。副業・兼業人材の活用も注目されています

実は今、「副業をしたい人」の方が「副業を募集している企業」よりも多く、一般的な転職市場とは需給バランスが逆転しているので、募集すれば手が挙がる状態です。

とある山形の観光関連企業では、副業人材に新規事業のアイデアを出してもらう試みを行っていました。それが成功してどんどん新しい事業を立ち上げ、業績も上向いたと聞いています。

この事例では、最初は週1回のオンラインミーティングから始まった関わりが、年に1回、観光がてら本社に来てもらって…とだんだん関わりを密にしていった結果、その方が移住されて、最終的に正社員になったそうです。

こうした「まずは一緒にやってみる」という関係から始められるのが副業人材のメリットで、相互理解を深めながら業務委託や正社員に移行するケースも増えています。

地方だからこそ描ける成長のストーリーで魅力を伝える

— 最後に、地方企業のキャリアパスとしての魅力はどこにあるとお考えですか?

今さん:地方企業は「安定感」が非常に強みですね。創業50年、100年といった老舗企業も少なくなく、地域で着実に信頼を築き、長年にわたり安定した経営を続けているケースも多くあります。

つまり、財務体質や経営基盤がしっかりしており、東京のスタートアップやベンチャーのように変化の激しい環境とは異なる、“落ち着いて腰を据えて働ける場”を求める人にとっては大きな魅力です。

一方で、DXや事業承継などの変革フェーズにある企業も多く、新しい視点を持った人材の活躍余地も広がっています。例えば、東京でWeb広告やEC、DXなどのスキルを磨いた人が、地方でその知見を生かすといったケースも増えています。都市部でのインプットを、地方でダイレクトにアウトプットできる挑戦環境が魅力的に映る場合もあるでしょう。

また、成長意欲のある人にとっては、地方企業は“やりたいことを形にできる”チャンスの宝庫。大手企業であれば数年かかるような提案や制度改革も、地方ではスピーディーに実現できる可能性があります。実際、「社長の右腕」として事業の根幹に関わるポジションに抜擢(ばってき)されるようなキャリアアップの事例も多くあります。

安定基盤の上で挑戦できる──それが地方企業の大きな強みではないでしょうか

「情報発信」こそが、人材との出会いの起点

採用における都市部の企業と地方企業の差は、「情報発信量」によって生まれていると言えます。地方企業の多くが、限られたリソースの中で十分に情報発信できていない現状もある一方で、求職者にとっては、情報の「量」と「質」こそが安心材料になります。

地道な発信や柔軟なポジション設計、地域資源の活用を重ねていくことで、地方企業でも“選ばれる企業”になることは十分可能です。まずは手間を惜しまず、発信を始める。すべてはそこから動き出すのだと思います


  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2025/07/30
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