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「組織と個人が成長する稼ぎ方改革~働き方改革に成功した組織の好事例~」【賃上げと業績アップシンポジウム 2025】(レポート#3)

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  • 講師:越川 慎司(こしかわ しんじ)氏

    日本企業や外資ベンチャーなどを経て2005年にマイクロソフト米国本社へ入社。その後、日本マイクロソフトの役員としてExcelやPowerPointなどの事業責任者を務める。2017年には週休3日・複業を実践する会社を設立し、800社以上の働き方改革を支援。企業向けオンライン講座の受講者満足度は平均96%、行動に移す受講者は95%以上。著書は8年で32冊 『世界の一流は「休日」に何をしているのか』など累計124万部。NHK、TBS、テレビ東京、PIVOT、NewsPicksやReHacQなどメディア出演多数。



「稼げる改革」が強い組織を育て、生産性を格段に向上させる

コンサルタントとして815社・のべ17万人を支援した実績から見えた結論は、「働き方改革」は目的ではなく手段であるということです。最終的なゴールは改革を通して生産性を向上し、稼げる企業になること。つまり売上アップと従業員の「働きがい(職場に承認や評価、達成感や自由などモチベーションを高める要素があること)」の両立だということです。

中堅・中小企業の経営者の約8割が働き方改革は目的が不明確だと感じているというデータがありますが、目的と手段を履き違えてしまうと、制度だけの改革を進めても生産性があがりません。“稼げる企業になるため”という目的を見失わなければ、働き方改革の成功率が3.5倍にもなることがわかっています。

このセミナーでは、これまで数多く手がけた企業改革の経験を踏まえ、稼げる組織、働きがいがある会社に進化させるアイディアをご紹介します。

1)トップ5%の企業のリーダーは口角があがっている!?

これまで支援した企業の全データをAIで解析したところ、成功している組織のリーダーに共通する行動が128件見つかりました。その中で注目したのが意外にも「うなずき」の深さです。トップ5%の企業のリーダーは「うなずき」が4.5~6センチ深い。成功する組織はハード面よりもソフト面の改革が大事だといわれますが、うまく回る組織のリーダーは大きくうなずき、共感を共有するもの。情報ではなく、まずは共感を共有できる関係性を作ることが生産性をあげるために必要だということがわかりました。

例えば社内会議ですが、中堅・中小企業は社内会議が多くて長い、そういった会議では約4割の人が内職をしているという調査もあります。同じ部屋にいても、感情を共有できる関係性を作らないと、情報は流れません。今や上司や顧客がイニシアティブを握る時代ではない、ビジネスの解決策を顧客と従業員全員で探る時代です。そのためには人を肯定するアクションが大事だということがわかっています。つまり、優秀なリーダーは反対意見にもうなずくということ。反応と決定を区別し、まず相手を受け入れる姿勢を見せることが重要です。さらに「うなずき」はトラブル対応で威力を発揮します。初動20分が勝負になり、それを逃すと対応時間は2~3倍になると言われるトラブル対応ですが、トラブルの初期段階で部下がリーダーに報告を上げれば、大事に至らずに済む可能性は大きい。

データによれば、優秀なリーダーは一週間に平均4.5回「今ちょっといいですか」と言われています。いつも口角があがっていて、話しかけやすいことはもはやリーダーの必須条件。稼げる組織になるには良好な関係性の構築、ソフト面の改革が不可欠です。

2)時短や育休など「働きやすさ」を追求するだけでは離職率は下がらない

意外なことに「働きやすさ(負担軽減、働く人の多様性に対応するための制度上の優遇措置)」だけを追求している企業は離職率を改善できない。従業員満足度を上げるには、社員の不平不満不快を排除するだけでは不十分。必要なのは働きがいの強化です。いわば「ときめき」を増強する、「これがしたい」とか「これをやってよかった」「嬉しい」というプラスの感情が湧く職場づくりをすること。そうした働きがいの改革に取り組んでいる企業は、稼ぎ方改革の成功率が2.8倍になることもわかっています。

あるデータ※1によると、働きがいがある人とない人では時間あたりの生産性が約3割高い。残業をしなくても営業成績が良い、アイディアが豊富で創造性が高いなどです。近年、精神的な不調で休養を必要とする人が増えていますが、ストレスを減らし心理的安全性を高める上でも、実は「働きやすさ」だけではなく「働きがい」が重要です。

もちろん「働きやすさ」も考慮する必要はあります。介護や育児をしながら仕事をしている場合など、働きやすくすることで多様な方が労働参加するためには大事なこと。しかし、稼ぎ方改革は、「働きやすさ」を考慮した労働時間の長短や多様性に対応する待遇制度のことだけではなく、働く人のやる気を高める「働きがい」の改革があってこそだと考えます。

※1)「ウェルビーイング」研究の前野隆司教授(慶應義塾大学大学院)の調査データ

3)「働きがい」の高め方

「働きがい」を高める方法ですが、弊社が支援した企業で働くのべ約17万人のデータをAIに読み込ませた結果、日本で働く方の9割は承認・達成・自由の3つに「ときめき」を感じているという結果が出ています。働きがいがある社員は、労働生産性が高く、創造性があり、休まない上に、離職しないことが様々な調査で明らかになっています。

部下の「働きがい」がなにか、それは組織の成長にとって大事な情報ですが、訊きだすにはコツがあります。返報性の法則を利用してまず上司が部下に「私の働きがいは〇〇」と伝えることです。上司が語った上で部下に尋ねた場合、8割の人が回答したいうデータが出ています。その結果、承認型の人は認める、達成型であれば目標設定を示すといったように、それぞれに対応する態度を示すことで、従業員にやりがいを感じてもらえるということです。

さらに、働きがい3種(承認・達成・自由)では順番が重要。達成することにやりがいを感じるタイプの人は、収入増よりも目標達成のプライオリティが高い。働いている人の調査では、6割が今日の行動目標がないと回答しています。達成感を与えるためには、上司が対話の中で職務責任をもとに行動目標を設定する。

例えば…

  • 営業→提案件数の目標設定を増やす

  • 経理→助成金使ってDXをすすめExcelの処理時間を20%減らす


  • こうした行動目標をあらゆる部門、の上司や部下が共有し、実行すること。達成したら全員で承認し合い、認めた部下には裁量権を渡す。承認→達成→自由、このサイクルが回っていくことで、働きがいを感じて自走する社員が多くなり、より稼げる組織として成長を続けていく、という好循環を生むと考えられます。

    4)20代30代は「学び方改革」で定着率アップ

    実は20代30代の若手は内心「働き方改革」に抵抗している傾向があります。匿名アンケートで約12000人に調査をしたところ、残業したい人が4割。理由をみると時間外労働手当て目的は第3位。2位は仕事が終わらないため、1位はスキルアップの時間がほしい、でした。上司や先輩社員に業務について教えてほしい、資格を取りたいなど、意欲があるのに退社しなければならない。成長機会の喪失は若手の転職理由のトップ3にあがっています。

    成長を望む社員にスキルアップを目的とする勉強をしてもらう場合、事業に関係がある範囲であれば、各々自分がやりたいことをやってもらうのが得策です。中堅・中小企業18社で2年半かけて研修を自己選択型に改修したところ、行動意欲度が高まり、離職率の低下につながりました。

    また、研修には時間が必要ですが、多忙な業務と併行して時間を確保するために、忙しさの要因を解明する必要があります。AIで前出の約17万人のデータで検証したところ、金曜日の午後3時に内省=振り返りをするとよい、という結果が出ました。15分のカレンダーや手帖をみて日々の活動を振り返る時間をとる、その間は会議をせず、資料も作らずメールも見ない。こうした振り返り実践で無駄な時間が1割減少。生み出された時間を研修や新規事業開発にあてることで、労働時間が減ったのに離職率が下がり、逆に売り上げが上がるという成果を上げました。

    5)会議を変える5つのアクションで時間が生まれる

    なにより時間を生み出すために見直すべきは会議。中堅・中小企業約220社で会議改革のための5つのアクションを実行しました。プログラム実施前は、労働時間の約4割が社内会議で、会議の約6割がアジェンダなしで無軌道なため内職率は約4割という状況でしたが、決定会議は決定者のみ、会議規模の縮小、社内会議の資料を簡素化、議事録はITツールを使うなど、無駄な会議をやめ、質量ともに改善。その分の時間を新規事業や研修に回してなお余剰時間が出る、という事業の効率化が実現しています。まず時間を生み出す改革を優先した結果です。さらに効率化を進めるなら、社内メールも廃止に。働き方改革を推進している中堅・中小企業約6割がビジネスチャットにシフトしています。相手に電話をかけるタイミングがわかりやすく効率がよく時短につながります。

    6)時間がない中小企業の経営者こそ、AIを使いこなす時代

    DXといえば、すぐ活用できるのが生成AI(ChatGPT等)です。補助金・助成金の対象となるケースがあるので積極的に活用すべきだと考えます。特に経営者は、事務作業や書類作成などに貴重な時間を割かず、効率化をすすめ、経営の本丸に取り組むべきです。生成AIの活用例を以下にあげます。

    【AI活用の例】

    文書作成が簡単
    指示をすれば業界別に調整した顧客用商談資料やパンフレットをネット上の情報を精査しながら短時間で自動生成。

    指示がチャットでカンタン
    資料などをパワーポイントで作成するのは数時間かかるが、AIを使えばわずかな時間でデザインが完了する。修正箇所があれば、チャット形式で入力するだけ。

    動画のプレゼン資料も簡単に編集できる
    プレゼン資料はPowerPointから動画に移行し始めています。30秒の紹介動画を作る場合も、SNSの動画を基に会社の資料動画を数分で作成できる。作成した動画を配信すれば、会社PRの動画もSNSにカンタンに流せるようになり、顧客開拓にもつながるが、機密情報や著作権、個人情報の取り扱いには注意が必要

    作業はAIに振って、人間はすべきことを決定する、こうした役割分担は今後どんどん進みます。AI活用や会議を効率化することで時間を作り、トップは社員のスキルアップや新規事業開拓にエネルギーを使うこと。ツール導入費・運用費は国や地域の補助金や助成金の対象になる場合もあります。

    改革は挑戦というよりも実験だと考えて、まずはやってみる。経営者や決裁権がある方が新しいこと、事業にプラスになりそうなことは試して、現場にも意見を聞いて検証し、自社に合うなら調整・継続する。“まず試そう”という軽やかな行動力が、稼げる企業になるための第一歩だと確信しています。

      【まとめ】
    • 意識より先に行動を変える

    • 行動を起こすことで、業績が伸びて、意識が変わる

    • 新しいことは試してみて、結果が良ければ続けよう

    • 改革は挑戦よりも実験と考える

    • 行動→検証→調整の積み重ねで「稼ぎ方改革」に成功する


    • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

      HUMAN CAPITALサポネット編集部

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    • 経営・組織づくり 更新日:2025/10/17
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