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求職者・人事担当者・現場従業員は何を重視しているのか ー因子分析から見る採用活動における認識の違いー

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「立場が違えば、見える景色も異なる。」これは新卒採用においてもしばしば語られる一般論です。しかし、「誰が」「どのような場面で」「何を重視しているのか」、さらに、それぞれの間にどのような認識の違いがあるのかについては、十分に明らかになっているとはいえません。

そこで、マイナビ総合研究所では、2026年3月に実施した調査データを用い、求職者、人事担当者、説明会・面談・面接などの採用活動に関わる現場従業員という三者の回答を分析しました。設問ごとの単純な比較にとどまらず、因子分析を用いることで、回答の背後にある価値観やスキルに対する認識を整理しています。

分析の結果、求職者、人事担当者、現場従業員(採用活動に参加する従業員)の間には、価値観やスキルに対する認識の違いがみられました。こうした違いは、誰かの理解や準備が不足していることを示すものではなく、三者が異なる立場から採用活動を捉えていることによって生じていると考えられます。本稿では、その特徴を整理し、採用コミュニケーションで起こり得るすれ違いを検討したうえで、二者をつなぐ人事担当者の役割を考察します。

調査概要と分析方法

今回の分析には、別途結果概要を公開している調査の回答データを用いました。調査は、求職者、人事担当者、現場従業員を対象に同一時期に実施しています。各設問は回答者の立場に応じて表現を調整しているため、以下では設問の対応関係を確認したうえで結果を読み解きます。

調査対象と設問の対応

因子分析を用いる意義

本分析では、複数の設問への回答パターンから、背後にある共通の考え方や認識を整理する「因子分析」を用いています。個々の選択肢を別々に見るだけでなく、複数の項目に共通するまとまりを捉えることで、三者が何を重視しているのかを比較しやすくします。

三者の立場の整理

調査結果を読み解く際には、回答者が採用活動のどの立場から回答しているのかを踏まえる必要があります。そこで本稿では、求職者・人事担当者・現場従業員の三者について、それぞれの役割と関心事項を改めて簡単に整理してから分析結果を読み解きます。尚これは一般的な採用における立場や視点を言語化したもので、採用に関するすべてを定義するものではありません。

  • 求職者:
    選考を受ける立場として、自分が何を大切にし、どのように働きたいかという視点から採用活動を捉えています。
  • 人事担当者:
    採用人数の確保に加え、求職者の能力や将来性、適切な配属、入社後の定着・活躍、受け入れ部門との調整など、複数の目標や検討事項を持ちながら採用活動に臨んでいます。
  • 現場従業員:
    人事担当者から依頼を受け、説明会、面談、面接などに関わる立場です。現場の仕事に詳しく、採用の判断も現場をイメージしたものになりやすいことが特徴です。入社後には新入社員の上司や先輩になる可能性があります。

因子分析結果

1.労働に関する価値観

以下では、まず価値観に関する因子と三者の平均値を示し、続いてスキルに関する因子と平均値を確認します。そのうえで、両者の結果を採用実務の観点から考察します。
まず、価値観に関する設問について探索的因子分析を行い、回答の背後にある共通のまとまりを整理しました。その結果、価値観は次の4つの因子に分けられました。

価値観4因子説明
平均値の見方

次に、設問の選択肢を得点化し、因子ごとの平均値を算出しました。回答は7段階に分かれています。

調査設問7段階

中央値は4点であり、4因子の平均値はいずれも4点を上回りました。このことから、各因子は全体として「どちらかといえば重視されている」傾向にあると考えられます。
ただし、この平均値だけから回答者個人の重視度や回答のばらつきまで判断することはできません。

価値観因子平均値

以下では、因子ごとの平均値を三者間で比較し、相対的に高い、または低い傾向を整理します。ここで示すのは記述統計上の傾向であり、平均値の差が統計的に有意であることを意味するものではありません。

  • 労働条件重視:
    応募時、選考継続時、内定受諾時のすべてで求職者の得点が高く、現場従業員の得点が低い傾向がみられました。
  • 雰囲気・組織文化重視:
    すべての時点で求職者が高く、現場従業員が低い傾向がみられました。
  • 業務内容重視:
    すべての時点で求職者と人事担当者の平均値が比較的近く、現場従業員はそれよりやや低い傾向がみられました。
  • 勤務自由度重視:
    求職者の平均値はすべての時点で他の二者を上回りました。他の価値観因子と比べると、三者とも得点は相対的に低い結果となりました。

2.スキルに関する因子分析結果

価値観と同様に、スキルに関する設問群についても探索的因子分析を行いました。その結果、スキルは次の4因子に整理されました。なお、求職者には自身が保有している度合いを、人事担当者と現場従業員には新入社員の活躍に重要だと考える度合いを尋ねています。したがって、以下の数値は同一の問いへの回答ではなく、それぞれの立場からの認識を示すものとして扱います。

スキル4因子説明
平均値からみえる傾向

スキルの平均値についても設問をポイント化して平均値を算出しています。

スキル因子平均値

スキル4因子の平均値をみると、全体として求職者よりも人事担当者と現場従業員の値が高い傾向がみられました。人事担当者と現場従業員では、専門的基盤力を除く3因子がいずれも5点を上回った一方、求職者で5点を上回ったのは協働的行動能力のみでした。なお、求職者には自身が保有している度合いを、企業側には新入社員の活躍にとっての重要度を尋ねているため、以下は能力の高低ではなく、それぞれの立場からの認識として整理します。

  • 能動的関与能力:
    企業側では5点を上回る一方、求職者では4点台となり、4因子の中でも三者の値の開きが比較的大きくみられました。
  • 協働的行動能力:
    三者とも5点を上回り、4因子の中でそれぞれ最も高い値を示しました。
  • 適応的行動能力:
    能動的関与能力と同様に、企業側では5点を上回る一方、求職者では4点台となりました。
  • 専門的基盤力:
    三者とも4因子の中で最も低い値となり、三者間の平均値の開きは他の因子より小さくみられました。

結果から考えられること

ここからは、三者の立場の違いを踏まえ、平均値にみられた傾向が採用実務でどのようなすれ違いにつながり得るかを検討します。以下は調査結果から直接確認された事実ではなく、結果を手がかりにした実務上の仮説です。個別企業で同じ事象が生じているかどうかは、求職者への確認や現場へのヒアリングなどを通じて確かめる必要があります。

【価値観因子について】

1.労働条件―求職者が求める情報が、現場との接点で十分に語られない可能性

労働条件は、求職者の得点が高く、現場従業員の得点が低い因子です。そのため、求職者にとって重要な情報であっても、現場従業員との面談や面接では十分に語られない可能性があります。また、現場の実態を率直に説明したつもりでも、前提や背景の共有が不十分であれば、求職者に否定的な情報として受け取られることも考えられます。

例えば、「入社後は幅広い業務を担当してもらう」と説明した場合、本来は成長機会の多さや裁量の大きさを伝える意図であっても、その背景が十分に共有されなければ、「業務範囲が曖昧で負担が大きそう」と受け止められる可能性があります。

2.雰囲気・組織文化―採用過程で伝わる印象と、配属後の実態がずれる可能性

求職者は、採用過程で接した社員を「会社の代表」として捉え、その言動から組織全体を推測している可能性があります。そのため、採用担当者や面接官は、自身の振る舞いが企業イメージの形成に影響することを意識し、実態とかけ離れた過度な演出ではなく、現場のありのままの姿を伝えることが重要だと考えられます。

3.業務内容―「伝えたつもり」と「知りたかったこと」のずれが生じる可能性

現場従業員にとって「業務内容」とは、担当する仕事や業務範囲を指しているかもしれません。一方、求職者は仕事内容そのものだけでなく、その仕事を通じてどのように働くのか、どのような経験を積めるのかといった働くイメージまで含めて捉えている可能性があります。

そのため、面接や面談において「業務内容」を説明していても、説明する側と受け取る側で想定する範囲が異なり、「伝えたつもり」と「知りたかったこと」のずれが生じる可能性が考えられます。

4.勤務自由度―求職者は企業側以上に勤務自由度を重視する

勤務自由度は、他の因子に比べると三者とも平均値が低い一方、求職者の平均値は一貫して企業側を上回りました。この結果から、勤務自由度を採用情報の中心に据える必要があるとはいえませんが、企業側が想定する以上に判断材料としている求職者がいる可能性はあります。

テレワークやフレックスタイム制度を伝える際には、制度の有無だけでなく、対象職種、利用頻度、配属後の運用実態まで具体的に示すなど、制度に対する過度な期待や誤解を防ぐ配慮が必要になるかもしれません。

【スキルに関する因子について】

スキル―企業が重視する能力と、求職者が保有していると感じる能力には共通点がみられる

スキルについては、求職者には自身が保有している度合いを、人事担当者と現場従業員には新入社員の活躍に重要だと考える度合いを尋ねています。そのため、数値の差をそのまま求職者の能力不足として捉えることはできません。

協働的行動能力は三者とも4因子の中で最も高く、専門的基盤力は三者とも最も低い結果となりました。厳密な順位づけはできないものの、企業側が新入社員の活躍に重要だと考えているスキルと、求職者が自身に備わっている(保有している)と認識しているスキルは、大きく異なる方向を向いているわけではないと考えられます。

ただし、こうした傾向の共通性は、三者がそれぞれのスキルについて、同じ意味や水準を想定していることまで示すものではない点だけ注意が必要です。

まとめ―認識の違いを、採用活動の設計に生かすために

今回の調査は、「立場が違えば考え方や捉え方も異なる」という一般論の解像度を高め、採用に関わる三者が、どの観点をどの程度重視しているのかを明らかにすることを目的としています。因子分析を用いることで、個別の選択肢だけでは捉えにくい、価値観やスキルに対する認識のまとまりを整理できました。

分析からは、求職者、人事担当者、現場従業員の平均値に違いがみられ、その現れ方は因子や採用の時点によって異なりました。重要なのは、この違いをなくすことではありません。違いがあることを前提として、求職者が必要とする情報、企業が伝えたい情報、現場が共有すべき実態をつなぐことが求められます。

そのため、人事担当者には、現場従業員と協働しながら、求職者に対して条件や魅力を伝えるだけでなく、現場で求められる行動や仕事の実態を具体的に示していくことが求められます。一方、現場従業員にも、仕事の実態や求める行動、入社後に育成できる範囲について、人事担当者と主体的に共有することが求められます。

その際には、仕事内容を求職者が理解できる具体さで伝えているか、「主体性」や「協調性」を自社で評価する行動に置き換えられているか、採用時に求める水準と入社後に育成できる範囲がつながっているかなどを確認することが重要です。同時に、求職者が何を重視し、どのような情報を判断材料としているのかを現場従業員に共有し、人事と現場の認識をすり合わせることも重要です。三者の視点をつなぐことは、採用段階での納得感を高め、入社後の戸惑いやすれ違いを減らす一助となる可能性があります。

編集後記

今回の分析で最も印象に残ったのは、数値の高低そのものより、三者が同じ言葉から想像している場面の違いでした。例えば「仕事内容」「働きやすさ」「主体性」は、いずれも採用の場でよく使われる言葉です。しかし、求職者はこれから働く自分を、人事担当者は採用や配置を、現場従業員は入社後の活躍を思い浮かべながら回答しています。言葉が同じであることを、理解も同じであることと取り違えない。この視点が、今回の結果を採用実務に生かす出発点になると感じました。
採用担当者が制度名や能力名を伝えるだけでなく、「この制度は現場でどのように使われているのか」「この会社が主体性として評価するのはどのような行動か」と問い直す。その積み重ねによって、求職者は判断に必要な情報を得やすくなり、現場も自社が求める人物像をより具体的に共有できます。三者の認識を完全にそろえるのではなく、違いを確認できる場をつくることが、すれ違いを減らす現実的な一歩になるのではないでしょうか。

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  • 調査・データ 更新日:2026/09/25
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