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【研究会報告|第3回】採用課題に必要な打ち手は何かー新卒採用を改善する問いと検証の考え方

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「母集団形成がうまくいかない」「選考辞退が多い」「内定承諾率が上がらない」。

採用担当者であれば、一度はこうした課題に直面したことがあるのではないでしょうか。しかし、その課題の原因を本当に説明できるでしょうか。そして、その原因を検証したうえで施策を実行できているでしょうか。

マイナビ総合研究所 では「採用課題とは何か」を改めて問い直す研究会を立ち上げています。
第1回研究会では、新卒採用を取り巻く課題を洗い出し、第2回研究会ではそれらを「接点」「訴求」「認識」のズレとして構造化しました。課題を個別の事象ではなく、採用プロセス全体の中で捉え直したことで、多くの企業が抱える悩みには共通の構造が存在することが見えてきました。第3回研究会では、さらに一歩踏み込み、「その課題をどのように検証し、改善へつなげるのか」をテーマに議論を行いました。

今回の研究会では、活躍人材分析、仮説検証型とデータ駆動型の分析アプローチ、AI面接や生成AIの活用、求職者側のAI利用など、多様なテーマが扱われましたが、研究会全体を通じて見えてきたのは一つの共通した視点でした。

研究会での議論を通じて共有されたのは、採用課題の改善に必要なのは施策を増やすことではなく、まず課題を「検証可能な問い」に変えることだという考え方です。

  • HRBuddy佐藤様のプロフィール写真
  • 佐藤 優介 様 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任教員
    一般社団法人HR Buddy研究所 代表理事

    大学卒業後、アクセンチュア株式会社に新卒入社し、戦略コンサルタントとして中期経営戦略立案やデータ分析などのプロジェクトに従事。その後人事部に異動し中途採用、新卒採用の責任者、人事戦略や人事システム導入を担当。また慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科にて博士号を取得(SDM学)。

  • HRBuddy宮川様のプロフィール写真
  • 宮川 祥子 様 お茶の水女子大学大学院 博士後期課程
    一般社団法人HR Buddy研究所 主任研究員

    大学卒業後、IT企業に入社しシステムコンサルタント業務に従事。その後お茶の水女子大学大学院に進学し、組織文化や価値観における個人と組織の適合性とモチベーションやコラボレーションの関連に関する研究に取り組む。1on1研修などのセミナーにも登壇。

  • HRBuddy増原様のプロフィール写真
  • 増原 広成 様 昭和女子大学 グローバルビジネス学部 専任講師
    一般社団法人HR Buddy研究所 研究員

    大学卒業後、一橋大学大学院経済学研究科修士課程を修了し同学科博士課程を修了(経済学)。NIRA総合研究開発機構研究員を経て現在は昭和女子大学の専任講師として従事。

「辞退が多い」は、まだ課題ではない

研究会では参加企業からさまざまな悩みが共有されました。

  • 応募が集まらない
  • 選考辞退が増えている
  • 内定承諾率が低い
  • 採用活動に工数をかけているが成果が見えない
  • 活躍人材が採用できているのか分からない

いずれも採用現場では頻繁に聞かれる悩みです。しかし研究会では興味深い指摘がありました。
それは「辞退が多い」は課題ではなく現象であるという考え方です。
例えば選考辞退率が高い場合、多くの企業はすぐに打ち手を考えます。

  • 面談回数を増やそう
  • フォローを強化しよう
  • 面接官の教育をしよう

しかし、その前に確認すべきことがあります。本当に辞退の原因はそこにあるのでしょうか。もしかすると、

  • 説明会に参加していない学生だけが辞退している
  • 特定媒体経由の応募者だけ歩留まりが低い
  • 選考前の期待値形成と実態にギャップがある

のかもしれません。同じ「辞退率が高い」という現象であっても、原因によって打ち手はまったく異なります。だからこそ、「辞退が多い」という現象をそのまま課題として受け止めるのではなく、

  • 誰が辞退しているのか
  • どのフェーズで辞退しているのか
  • なぜ辞退しているのか

という問いへ変換する必要があります。参加企業との対話から見えてきたのは、多くの企業が施策不足に悩んでいるのではなく、「何を検証すべきか」が曖昧な状態にあるということでした。

第3回研究会で見えた共通課題 施策より先に「何を検証するか」

研究会では各社からさまざまな仮説が共有されました。
例えば、

  • 理系学生への訴求が不足しているのではないか
  • インターンシップ参加経験が承諾率へ影響しているのではないか
  • 特定媒体経由の応募者は辞退しやすいのではないか
  • 面接官ごとの差が歩留まりに影響しているのではないか

といったものです。

特徴的だったのは、参加企業が仮説の正しさを主張するのではなく、「その仮説をどう検証できるか」を議論していたことでした。採用活動では成功事例に目が向きがちです。しかし、他社で成果が出た施策が自社でも成果を上げるとは限りません。重要なのは施策そのものではなく、自社課題の真因を特定することです。研究会で共有された共通認識は、施策を増やす前に、検証すべき問いを明確にすることでした。採用改善は施策の量ではなく、問いの質によって左右されるのかもしれません。

問いを解き明かす2つの分析アプローチ

研究会では、問いを解き明かす方法として「仮説検証型」と「データ駆動型」の2つのアプローチが紹介されました。

(4)分析図

仮説検証型の分析

仮説検証型は、すでに問いが存在している場合に有効です。例えば、「説明会に参加していない学生は辞退率が高いのではないか」「インターンシップ非参加者は辞退率が高いのではないか」「特定チャネル経由の学生は承諾率が高いのではないか」といった仮説を立て、その妥当性をデータやヒアリングによって検証していきます。

例えば「説明会に参加していない学生は辞退率が高いのではないか」という仮説がある場合、

  • 承諾者と辞退者の比較調査
  • インタビュー調査
  • セグメント分析
  • プロセス分析

などによって検証を行います。仮説があるため、結果を施策につなげやすいことが特徴です。

データ駆動型の分析

一方で、そもそも何が課題なのか分からないというケースもあります。その場合に有効なのが明確な仮説を置く前に、まず手元にあるデータから特徴を探るデータ駆動型の分析です。
例えば、

  • 歩留まり分析
  • 選考辞退の規定因分析
  • 内定辞退の規定因分析
  • 承諾の規定因分析

などを行いながら、課題そのものを探します。データ駆動型の分析では、想定していなかった課題が見える場合があります。全体では問題がないように見えても、特定媒体経由の応募者だけ辞退率が高い、ある職種だけ内定承諾率が低い、説明会非参加者だけ企業理解度が低い、といった構造が浮かび上がる可能性があります。

データ駆動型で見えてきた特徴をもとに新たな仮説を立て、そこから仮説検証型へ移行することもできます。研究会では、分析とは答えを出すためだけではなく、問いを発見するためにも存在するという考え方が共有されました。分析はあくまで意思決定のための手段です。課題がある程度見えているなら仮説検証型を、課題そのものが曖昧ならデータ駆動型を選ぶ。重要なのは分析手法の高度さではなく、自社の課題に合わせて使い分けることなのです。

活躍人材分析の落とし穴

研究会で特に印象的だったのは、採用データと入社後活躍をどのように接続するかという議論です。参加企業からは、採用時の評価や選考データを入社後の活躍と結びつけたいものの、実務上は難しいという声が上がりました。

多くの企業では、「今活躍している人の特徴を分析しよう」と考えます。一見すると合理的です。しかし、研究会では、実際に分析してみると「評価が高い人=上司の指示を確実に遂行できる人」といった特徴が見えてきたという議論もありました。

もちろん、指示を正確に遂行できることは重要です。しかし、企業が将来必要としているのは、自ら課題を発見する人、新しい事業をつくる人、変化を起こせる人かもしれません。

研究会では現在の評価制度で高く評価される人と、将来必要な人材が一致するとは限らないのではないかという意見があがりました。

ここで重要なのは、採用データと入社後評価をつなぐこと自体ではありません。

その前に、何をもって「活躍」と定義するのかを明確にすることです。

入社後何年目の評価を見るのか。どの評価指標を使うのか。職種・配属・等級ごとに分けて見る必要があるのか。現在の活躍人材を見るのか、将来の人材像から逆算するのか。

こうした前提が曖昧なまま分析を行うと、採用基準を誤ってしまう可能性があります。

実際に研究会では、活躍人材分析に取り組んだものの、「分析結果に違和感があった」という意見も寄せられました。評価上位者を分析したところ、真面目さや実行力といった特徴が見えてきた一方で、企業として今後求めていきたい挑戦性や変革志向までは十分に捉えられていなかったためです。

参加者からは、「現在の評価制度で評価されている人材」と「将来の事業を担ってほしい人材」は必ずしも一致しないのではないか、という問題提起もありました。

AI面接を導入すれば解決するのか

研究会では、AI面接やAIチャットボットなど、採用プロセスにおけるAI活用についても活発な議論が行われました。共有された事例では、問い合わせ対応の効率化、評価の均質化、企業理解の促進、相互理解の支援など、AI活用の目的は多様でした。

AI面接のメリットとしては、

  • 評価の均質化
  • 面接官ごとの差の低減
  • 工数削減
  • 比較のしやすさ

などが挙げられます。一方で議論は、「AI面接は良いのか悪いのか」という単純な話にはなりませんでした。論点となったのは、面接は何のために存在するのかという問いです。ある企業では、面接=見極めでした。別の企業では、面接=企業理解や志望度形成でした。面接の役割が違えば、AI面接への評価も変わります。むしろ議論を通じて共有されたのは、AI面接の成否を決めるのはAIそのものではなく、採用プロセス設計であるということでした。

また、参加企業からは、面接そのものが魅力付けの場になっているという意見も出されました。

評価の均質化を実現できたとしても、人との接点が減ることで企業理解や志望度形成に影響が出る可能性があります。だからこそ重要なのは、「AIを導入するか」ではなく、「AIによって失われる価値をどう補うか」なのです。

つまり、AI面接は単体で良い・悪いと判断するものではありません。

  • 評価の均質化に使うのか
  • 学生の自己理解を促すのか
  • 企業理解の補助に使うのか
  • 面接官の負担軽減に使うのか
  • フィードバック機会を増やすために使うのか

目的によって、導入すべきフェーズも、補うべき人的接点も変わります。

フィードバック設計が採用体験を変える

研究会ではAI活用と合わせて学生との相互理解をどのように深めるかについても議論が行われました。意外なほど大きなテーマとなったのがフィードバックです。多くの場合、採用におけるフィードバックというと不合格者への説明を想像します。しかし研究会で議論されたのは、合格者へのフィードバックの重要性でした。

候補者は、

  • なぜ評価されたのか
  • どの点を期待されているのか
  • 自分の強みは何だったのか

を知りたいと考えています。研究会でも、なぜ通過したのか分からない企業には魅力を感じなかったという学生の声が共有されました。AIによる客観的な評価には価値があります。しかし、人による説明だからこそ伝わる納得感もあります。研究会では、AIの客観性 × 人の納得感をどう設計するかが重要だという認識が共有されました。

求職者のAI利用は前提になる

研究会後半では、求職者側のAI利用についても議論が行われました。
現在の学生は、

  • エントリーシート(ES)作成
  • 自己分析
  • 面接練習
  • 学生時代に力を入れたこと(いわゆる「ガクチカ」)の整理

などにAIを活用しています。重要なのは、「AIを使ったかどうか」ではありません。むしろ企業に求められるのは、AIを使って作られた内容を本人がどこまで理解しているかを見ることです。AIによって文章力の差が縮まるほど、

  • なぜそう考えたのか
  • 何を学んだのか
  • 本人の言葉で説明できるか

が重要になります。AI時代の選考は、形式的なアウトプット評価から対話による理解へと変化していくのかもしれません。

AI活用の本質は「相互理解の高度化」

AIに関連する議論において注目すべき論点だったのは、AI活用の捉え方でした。紹介された事例に共通していたのは、AIで削減した時間を、

  • 質問会
  • 職場見学
  • 個別面談
  • 内定者フォロー

へ再投資していたことです。つまり、AIが人を代替するのではなく、AIが人との対話を豊かにするために活用されていました。

研究会での議論を整理すると、採用課題は施策不足ではなく問い不足であること、分析は仮説検証型とデータ駆動型を使い分ける必要があること、AI活用の目的は効率化ではなく相互理解の高度化にあるということでした。

採用改善は「問い」を作ることから始まる

今回の研究会で得られた最大の示唆は、採用改善は施策を増やすことではなく、問いを作ることから始まるということでした。現象を具体化し、対象を分け、検証指標を定める。そのプロセスによって初めて課題は検証可能になります。採用改善とは、施策を増やすことではなく、課題を問いに変え、問いを検証し、検証結果に基づいて施策を選ぶ活動である。研究会を通じて見えてきたのは、採用課題とは施策不足ではなく問い不足であるということでした。だからこそ、良い施策を探す前に良い問いを立てることが重要なのです。

では、自社の採用課題は本当に検証できているでしょうか。

研究会での議論を踏まえると、まずは次の観点を確認してみることが重要です。

✓ 辞退理由を推測で語っていないか

✓ 媒体ごとの承諾率を把握しているか

✓ 活躍人材の定義は明確か

✓ AI導入の目的を説明できるか

✓ 現在の施策は検証結果に基づいているか

今後に向けて

第3回研究会では、採用課題を構造として整理する段階から、各社固有の課題を検証可能な問いへ変換する段階へと議論が進みました。

今後は、各社のワークシートや提供可能なデータをもとに、企業別・職種別・プロセス別に分析を進めていく予定です。第1回・第2回で整理してきた「接点」「訴求」「認識」のズレを、次は実際のデータで検証し、優先的に取り組むべき課題と打ち手につなげていきます。

編集後記

今回印象的だったのは、参加企業が「どの施策を導入するか」ではなく、「自社の課題をどう捉えるか」を議論していたことです。採用課題を感覚で語るのではなく、問いに変え、データで検証し、施策につなげる。第3回研究会は、勘と経験に頼りがちだった採用改善を、検証可能なプロセスへ進めるための重要な転換点となりました。

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