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【研究会報告|第2回】新卒採用のボトルネックは何か―構造的に諸課題を紐解く【マイナビ総合研究所】

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マイナビ総合研究所では、「採用課題とは何か」を改めて捉え直すための研究会を発足しています。
第1回目 の研究会では、全国の採用担当者約2,000名および求職者(学生)約1,000名を対象とした調査データおよび研究会参加企業の現場の声をもとに、新卒採用プロセスにおけるフェーズごとの課題について整理しました。第2回目となる今回は、追加分析の結果や、課題を整理した一枚絵(全体構造図)を作成、参加企業と議論を深めながら採用課題の背景にある構造について紐解いてまいります。

  • HRBuddy佐藤様のプロフィール写真
  • 佐藤 優介 様 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任教員
    一般社団法人HR Buddy研究所 代表理事

    大学卒業後、アクセンチュア株式会社に新卒入社し、戦略コンサルタントとして中期経営戦略立案やデータ分析などのプロジェクトに従事。その後人事部に異動し中途採用、新卒採用の責任者、人事戦略や人事システム導入を担当。また慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科にて博士号を取得(SDM学)。

  • HRBuddy宮川様のプロフィール写真
  • 宮川 祥子 様 お茶の水女子大学大学院 博士後期課程
    一般社団法人HR Buddy研究所 主任研究員

    大学卒業後、IT企業に入社しシステムコンサルタント業務に従事。その後お茶の水女子大学大学院に進学し、組織文化や価値観における個人と組織の適合性とモチベーションやコラボレーションの関連に関する研究に取り組む。1on1研修などのセミナーにも登壇。

  • HRBuddy増原様のプロフィール写真
  • 増原 広成 様 昭和女子大学 グローバルビジネス学部 専任講師
    一般社団法人HR Buddy研究所 研究員

    大学卒業後、一橋大学大学院経済学研究科修士課程を修了し同学科博士課程を修了(経済学)。NIRA総合研究開発機構研究員を経て現在は昭和女子大学の専任講師として従事。

追加分析データと議論から見えてきた違和感

分析を行った結果、参加企業との議論を通じていくつか象徴的な違和感が浮かび上がりました。明らかになったのは「同じ施策でも効果が一様ではない」という点です。
採用フェーズごとによくある事例を3つ取り上げ紐解いていきます。

1.エントリーフェーズ

エントリーフェーズにおいては、働く人やOBOGの雰囲気を伝えることが有効に働くケースと、効果が限定的となるケースが確認されました。
求職者(学生)が仕事内容を具体的にイメージしにくい場合には、働く人やOBOGの雰囲気が「自分に合いそう」と感じられることが企業理解の入り口となり、企業への関心を高める要因となります。一方、仕事内容を具体的にイメージしやすい場合には、学生は自身が持つ業種や仕事に対するイメージをもとに企業理解を進める傾向があります。しかし、そのイメージは必ずしも実態を反映しているとは限らず、雰囲気の訴求だけでは認識の補正や理解の深化につながらず効果も限定的となってしまいます。そのため、仕事内容や事業内容など、実態を具体的に伝える情報発信が重要であることが示されました。

2.選考フェーズ

選考フェーズにおける柔軟な働き方に関する訴求も、期待度が過度に高まることでズレを感じやすく辞退につながる可能性も示唆されました。選考中または内定後の面談や交流場面にて当初の説明と異なる情報に触れることで、働き方や制度の運用条件や部署ごとの違いに対する不安が生じる場合があります。採用プロセス全体を通じて、情報に一貫性を持たせること、運用実態まで説明することが重要となります。

3.エントリーフェーズ/内定承諾フェーズ

やりがいや働きがいを採用プロセスの中で伝える企業も多いと思われます。今回の分析により、エントリー段階でまだ会社への理解度や愛着が少ない段階においては、やりがいや働きがいの訴求が敬遠される可能性がある点が見出されました。一方で企業理解度がある程度進んでいる内定承諾フェーズにおいてはやりがいや働きがいの訴求が承諾を後押しする要因であることも見出されました。

参加企業からも「良いことを言っているのになぜか離脱される」「制度を強く打ち出すほど違和感が出る」といった声が出ておりました。
ここから言えることは、伝え方とタイミングが重要であるという点です。 自社の業界や職場によって、採用フェーズによって、訴求内容の効き方は変わってきます。「誰に・どの段階で・何を伝えるか」の設計が重要です。

課題の構造を整理する

データと現場の議論を踏まえると、各社で感じている課題や違和感は個別の事象ではなく共通した構造の中で生まれていることが明らかになってきました。一見別々の課題に見えますが、「接点」「訴求」「認識」のいずれかで発生したズレとして捉えることができます。さらに、それぞれのズレは独立して存在するのではなく、前工程で生じたズレが後工程で顕在化するという連鎖構造になっていることも見えてきました。
そこで研究会では、採用課題の背景にある共通構造を整理し、一枚絵(全体構造図)として可視化しました。

一枚絵(全体構造図)の図

1.エントリー(応募前)

接点(チャネル)を増やし認知を高めること、働いている人や雰囲気、成長可能性について自社の仕事内容に応じた訴求を行うことが応募数の増加に寄与すると言えそうです。一方で働き方など期待を高める訴求は注意が必要となります。

2.選考

求職者との接点において、AI面接や各種適性検査、課題提出など、負担に感じられやすい選考手法を実施する場合は、その目的や意図を求職者(学生)に分かりやすく伝えることが重要です。また選考を通じて仕事理解が深まるよう、「評価の場」とするだけでなく魅力を語るなど「双方向にとって理解が深まる場」として設計することが辞退の低減につながる可能性も示されました。一方で、エントリー時とのストーリーが異なるとズレを生じ、選考辞退につながる可能性があるため、注意が必要です。

3.内定承諾

接点として自社HPなどを改めて内定承諾時に導線に入れることでストーリー性のある企業像の形成につながることも確認されました。また働き方、制度などについて運用実態まで伝えること、社会的認知度(社会への貢献度など)を訴求することも効果的と言えます。この段階においても選考時からのストーリーと乖離させず、一貫した情報提供を行うことが重要と言えそうです。

4.入社後

入社後意欲の低下を防ぐためにも、接点として交流や面談機会を設けることや、その際に改めて仕事内容ややりがい、社会への貢献を訴求していくことがポイントであることが確認されました。

参加企業からも「最後で辞退されるが、原因はもっと前なのではないか」という発言も複数出ており、改めて採用プロセス全体での構造設計から捉え直す必要性が確認されました。 初期接点で方向性を作り、選考で具体的な情報を積み重ね、最終的に納得感を形成するという印象を段階的に補強していく設計が重要と言えそうです。さらに、この構造の中で発生するズレに着目することで、自社で起きている課題をより具体的に見立てることができます。

例えば、

  • 応募は集まるが辞退が多い
    → 訴求や期待値のズレ
  • 応募自体が集まらない
    → 接点のズレ
  • 入社後のギャップが大きい
    → 認識のズレ

といったように、自社で起きている現象を「どのズレか」という視点で整理することができます。

ズレ整理の図

構造から考える実務への示唆

研究会では現場への落とし込みについてもいくつかの観点で議論されました。
採用プロセスにおける「接点」「訴求」「認識」のズレを防ぐために、特に重要だと考えられたポイントは次の5つです。

1.初期接点を設計すること:接点のズレを防ぐ
自社の業界や職種特性を踏まえて、どんな接点をどこで持つのか、誰が接して何を伝えるのかという印象設計が重要であることが明らかになりました。

2.仕事内容を具体化すること:訴求のズレを防ぐ
抽象的な訴求は求職者(学生)の期待値を過度に上げることにもつながります。実態を可視化し具体的に伝えていく必要があります。

3.若手の成長機会を見える化すること:訴求のズレを防ぐ
入社後の働く姿を具体的にイメージしてもらうために、若手社員の仕事内容や役割、任されている業務範囲や仕事のやりがいを伝えることの重要性も確認されました。

4.制度は見せ方が重要である:訴求のズレを防ぐ
制度は期待とのギャップが辞退につながる可能性が高い訴求点です。「制度を充実させているにもかかわらず辞退が多い場合」、それは制度そのものではなく、訴求タイミングや前後フェーズでの説明とのズレが影響している可能性があり、見直す必要があるかもしれません。

5.ストーリーに一貫性を持たせること:認識のズレを防ぐ
フェーズごとのズレを防ぐためにも伝えるストーリーには一貫性が非常に重要になります。

今回の一枚絵(全体構造図)は単なる整理ではなく自社の採用課題を診断するための一つの視点として活用できます。自社の採用プロセスを振り返りながら、各フェーズで「どのような接点を設計しているか」「何を訴求しているか」「求職者(学生)との認識にズレは生じていないか」という視点で見直してみてはいかがでしょうか。本当に見直すべきポイントや優先して取り組むべき課題が見えてくると思われます。
自社に当てはめて検討する際は、以下3つの問いから考えてみるとよいかもしれません。

私たちは、採用したい人材と適切な接点を持てているだろうか

私たちは、各フェーズで本当に伝えるべき情報を届けらえているだろうか

私たちが伝えている内容は候補者にその通りに受け止められているだろうか

まずは「接点」「訴求」「認識のズレ」の観点から見立てることが重要です。

AI面接・AI活用に関する現状と活用度合い

研究会では、採用プロセスの構造に加え、近年活用が広がっているAI面接やAI活用についても意見交換が行われました。
議事録や動画分析など、精度向上のサポートとして使用している企業、書類選考時の評価のばらつきを防ぐために使用している企業など企業によって導入場面や目的は異なりますが、活用が進んでいる状況が伺えます。学生からやや敬遠されがちな手法を選考に用いることで一定のハードルを設けることにもつながるのではないかという意見も示されました。AIを取り入れることで、今まで見逃していた優秀層の採用に繋がったという意見も出ており、何のために取り入れるか明確にすることで活かせる選考手法になるのかもしれません。
また、AIを活用した選考手法についても、候補者に導入目的や評価方法が十分に伝わらなければ、新たな認識のズレを生む可能性があるという意見が挙がりました。

今後に向けて

第2回研究会では、採用課題を「ズレの連鎖としての構造」として捉える視点が共有されました。自社の採用課題はどのフェーズでどのズレが表れているでしょうか。また解決するためにどのような接点を持ち、どんな訴求をすべきでしょうか。この視点をもつことが次の一手を考える出発点になります。

しかし、すべてのズレを同時に解消することは現実的ではありません。
では、最初に着手すべきズレはどこなのでしょうか。
次回は、本研究会で整理した構造を踏まえながら、優先的に解消すべき課題と、現代の新卒採用で求められる具体的な打ち手について議論していきます。

編集後記

第2回研究会を通じて強く感じたのは、採用における課題の多くが「施策の優劣」ではなく、「設計の一貫性」に起因しているという点です。参加企業の議論においても、チャネル選定やAI活用、制度訴求の在り方など、個別テーマでは意見が分かれる一方で、「候補者にどう伝わっているか」という視点の重要性は共通していました。つまり、採用は企業側の意図だけでは完結せず、受け手の体験まで含めて設計する必要があります。次回第3回は、こうした構造理解を踏まえ、では具体的にどのような打ち手が有効なのか、「新・新卒採用プロセス」に求められる実践策を深掘りしていきます。

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  • 人材採用・育成 更新日:2026/08/03
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