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AIの恩恵を受けられるのはどんな人?―AI時代に「アドバンテージ」を得るための手がかり

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AIを仕事に取り入れることが一般的になりつつある今、「どう使えば成果につながるのか」と悩む人も多いのではないでしょうか。同じようにAIを使っていても、それを大きな成果につなげる人もいれば、単なる効率化で終わる人もいます。その違いはどこにあるのでしょうか。 本記事では、先行研究をもとに、AI時代に仕事でアドバンテージを得るための考え方と実践のヒントを解説します。

  • グロービス経営大学院 准教授松井孝憲様のプロフィール写真
  • 松井孝憲 様 グロービス経営大学院 准教授

    一橋大学卒業、早稲田大学大学院修了後、コンサルティングファームにて人事・人材開発および新規事業立案等のプロジェクトに従事。その後、NPO法人二枚目の名刺に参画し、常務理事として社会人とNPOの協働プロジェクトを運営統括する。現在、グロービス経営大学院での教員・研究活動と並行して、KIBOW社会投資ファンドで社会起業家へのベンチャー投資を行う。研究領域は組織行動論および人的資源管理論。特に越境学習、チームワーク等が専門。主な論文「事業創造における越境チームの協働形成メカニズム」(2025年『組織科学』)、「異業種チームにおける トランザクティブ・メモリー・システムの発達メカニズム」(2025年『経営行動科学』)。経営行動科学学会 編集委員(運営担当)

  • マイナビ総合研究所 所長 小笠原 洋平
  • 小笠原 洋平 マイナビ総合研究所 所長

    2004年4月大学卒業後、毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)に入社。
    キャリアナビ事業部(現転職情報事業本部)にて、中途採用に関するコンサルティング営業に従事。 その後、2009年から研修企画部(現教育研修事業部)へ異動し、人材開発・組織開発に関するコンサルティング営業に従事。
    また、新組織の立ち上げ(営業部門、人材開発部門、営業支援部門、事業開発部門)、教育体系構築、事業責任者なども経験。
    2025年4月から、新たにシンクタンク事業の責任者として立ち上げに携わる。

はじめに

「AIを上手く活用してパフォーマンスを上げたい」。そんな声は、ビジネスパーソンの間で日に日に大きくなっています。一方、巷ではさまざまなAIの活用方法が紹介されており、「結局、どんな風にAIを使えばいいのか?」という点については、まとまった考え方を提示する必要がありそうです。

AIを活用することが当たり前になっていく時代の中で、どのように活用している人が他者よりも「アドバンテージ」を得られるのでしょうか。この点について、参考となるのが、Callら(2025)の研究です。

AIがもたらす2つの効果

Callらは、AIがビジネスパーソンにもたらす影響について、2つの効果を提示しています。1つは、「底上げ」の効果です。この効果は、AIがスキルの低い労働者のパフォーマンスを劇的に改善し、平均的なレベルまで引き上げる(スキルを平準化する)ことを示しています。例えば、議事録の作成や、データの取りまとめ・グラフ化など、手元の作業をすぐに終えられるのは、誰にとっても大きな恩恵です。
もう1つは、「スターの加速」の効果です。こちらは、もともと高い能力を持つ「スター社員」が、自身の能力を何倍にも増幅させる「レバレッジ(てこ)」としてAIを活用することを示しています。「スター社員」は元々高い専門知識(ドメイン知識)を持っているため、AIが出した回答の「筋の良さ」を瞬時に見抜き、さらに高度な問いを投げかけることができるのです。これを通じて、彼らは自身の能力を増幅させるための装置としてAIを活用し、他の人には生み出せない成果を生み出すのです。

用語補足:「スター社員」とは:本記事における「スター社員」は、単純な「ハイパフォーマー(ある時点での高業績者)」を指しません。自身の持つ専門知識や能力、技術、社内外の人脈といったリソースを活用して業務をやり遂げ、目に見える業務成果を継続して生み出せるような人材のことを「スター社員」 と表しています。

AIは格差をもたらすのか?

特にCallらは、2つの効果のうち後者の「スターの加速」効果を重視します。なぜなら、スター社員は、AIが持っていない「社内の人脈」や「実行力」を持っています。そのため、AIが生み出した優れたアイデアについて、誰を巻き込めば実現できるかを知っているため、アイデアを「利益」に変えるスピードが圧倒的に速いのです。
従来、成果は組織やチームの中に分散されがちでしたが、AI時代は「誰がそのAIを動かし、最終判断をしたか」という個人の貢献が可視化されやすくなります。その結果、スター社員は組織に対してより強い交渉力を持ち、高い報酬や自由を勝ち取るようになるというのです。この「元々のスターほど、ますます多くのアドバンテージを得られる」という状況を、CallらはAIの「マタイ効果」と呼んでいます。

用語補足:「マタイ効果」とは:「持てる者はさらに与えられ、持たざる者はその持ち物までも取り上げられる」という聖書の一節(マタイによる福音書)に由来し、社会学者ロバート・K・マートンが提唱した概念のこと。つまり、すでに優位にある個人・集団・組織がさらに有利な状況を獲得し、劣位にある側との格差が拡大することを指します。

スター社員の特徴と彼らがAIを使う効果の図

「一般的な社員」がAIの恩恵を得るための2ステップ

この知見を見ると「自分はスター社員じゃないし・・」と思う方がいるかもしれません。ただし、ここで見逃せないのが、AIの「底上げ」効果です。つまり、現在「スター」ではない私たちも、AIは効率的に一定以上の成果を出せるよう、支援してくれます。まず、この恩恵にあずかることはどんな人々にも価値があるはずです。

 その上で、「効率化」以上の活用の仕方を自分なりに見出すことが重要です。
Callらの知見を援用してその方法を検討すると

一般的な社員がAIの恩恵を得るための二つの方法の表

の2つが重要だと考えられます。

用語解説:オーケストレーターとは、業務における複数のプロセスやシステムを調整・統合する役割のことを指します。

①について説明します。これは、AIの回答について、その筋の良さを見極められるような「自分の得意領域」を持つことです。ここには、領域の知識に加えて「その領域のキーマンが誰なのか?」を知ることも含まれます。キーマンを知っていることで、「スター社員」と同じような、AIの生成したアイデアを実行に移す力が、あなたにも培われるからです。

②については、このキーマンを巻き込む方略を持っておくことです。AIは論理的な正解は出せますが、人の心を動かすことはできません。AIが導き出した戦略の「意味」を語り、周囲の人間を納得させ、組織を動かすことで、「スター社員」が実行しているような加速効果を得ることができます。

AIから「アドバンテージ」を引き出すためのアクション案

AIの活用の仕方には様々なものがあります。ただし、どんな人にも平等にアドバンテージをもたらすわけではないことをCallらの研究は示しています。そのため、みなさんも、AI活用の「正解」を知ろうとするのではなく、ご自身の能力ステージや目的に合わせた、使い方のステップを考えるというアプローチをとってみてはいかがでしょうか。ここでは、AIからアドバンテージを引き出すアクション案を2つご紹介します。

① 自分の苦手な作業・面倒くさいと感じる作業をオーケストレートしてみる

自分の苦手な作業ほど面倒くさく、やりにくさを感じるものです。そんな作業は、AIに任せられるよう、作業を「オーケストレート」してみましょう。やることはシンプルです。まず、苦手な作業について、具体的な手順を分解します。その分解した手順の中で、AIに任せられるものをピックアップして任せてみる。これだけです。
このアクションは、AIが苦手な作業を代替してくれることによる「底上げ」効果が期待できます。これは、どんな人も平等に受け取れる効果です。そして、重要なのがこのアクションには、スター社員がやっているような「オーケストレート」の要素が含まれていることです。「どの作業をAIに依頼し、どこは自分でやるのか」これを設計することは、スター社員のAI活用手法に近づく大きな一歩となります。

② あえて、自分の得意領域にAIを使ってみる

多くの方は、苦手分野や作業効率(底上げ)をAIに任せて終わりですが、ぜひ皆さんには自分の得意領域にAIを使ってみることをお薦めします。例えば、提案資料作成が得意な人は、あえてそれをAIに作らせてみる。あるいは、コーディングが得意な人はそれをAIに書かせてみる。そうすることで、皆さんは、AIに作業を依頼する人から、「AIのアウトプットを評価する人」になることができます。これがスター社員の思考方法に近づくことになります。
AIのアウトプットの筋が良いと判断できれば、さらに高度な成果を効率的に生み出す(すなわち、周囲に差をつける)機会になります。筋が悪いと判断した場合には、AIのアウトプットと自分の考えを比べながら、「どこが良くないのか」「自分ならどう考えるのか」を整理することで、自身の思考プロセスが明確になり、結果として自分の能力開発につながります。自分の得意領域では、皆さんならではのAIの活かし方が見えやすくなることでしょう。だからこそ、そんな領域でこそ、効率化に留まらない成果装置としてAIを使ってみてください。

AIを活用しつつ、これらを自分の成長の方針とすることで、AIの「アドバンテージ」は急激に大きくなるはずです。ぜひ、この記事が、皆さんのアドバンテージ増大のきっかけになればと思います。

本レポートは、株式会社マイナビと東京大学大学院 情報学環 山内祐平 研究室との共同研究における先行研究の調査・整理に基づくものです。

編集後記

AIを仕事に使うことが、少しずつ当たり前になってきました。
一方で、「結局どう使えばいいのか」「自分にとって何が変わるのか」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AIが仕事にもたらす影響を整理しながら、どんな使い方が皆さんのアドバンテージにつながりやすいのかを考えてきました。
作業を早く終わらせるだけでなく、自分の考えを深めたり、強みを活かしたりする場面でも、AIは使い方次第で力になってくれます。
AIはすべてを代わりにやってくれる存在ではありません。しかし、「何に時間を使うか」「どんな仕事を大事にしたいか」を考えるきっかけにはなります。
本記事が、AIとの付き合い方を見直すヒントになれば幸いです。

参考文献

Call, M. L., Jiang, K., & Idso, C. (2025). Star Advantage: Employee Value Creation and Capture in the Age of Artificial Intelligence. Human Resource Management, 65(1), 151-167.

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  • 人材採用・育成 更新日:2026/06/16
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