生成AI導入者における生成AI及び職場環境の捉え方とAI活用度の関係分析【分析報告】マイナビ総合研究所
近年、生成AIの普及が進んでおり、内閣府(※1)は目指す社会像として「人とAIの協働」を掲げています。そこで、マイナビ総合研究所では、労働環境における生成AIの導入実態を把握するため、「導入する企業(導入担当者)」と、「導入後に活用する側(従業員)」の2つの視点に分けて調査を実施しました。
前回公表した分析報告では、従業員を対象に、生成AIの捉え方と利用頻度との関係性を分析しました。本稿ではその続編として、生成AIを導入する企業(以降、「導入担当者」と表現します)の回答に焦点を当て、社内における生成AI活用をどのように高めていくことができるのかについて、分析結果を報告します。
この調査に関して単純集計等を含んだ調査報告書のダウンロードができるページはこちらにございます。
働き方と生成AIに関する定点調査 -人とAIの共創社会はどのようにして成るか-|マイナビ 総合研究所推進室
※1 人工知能基本計画 ~「信頼できるAI」による「日本再起」~ (内閣府 令和7年12月23日)
導入担当者における生成AIの捉え方は「万能」・「疑念」・「補佐」の3指標で表せる
前回の分析報告では、従業員個人を対象として、生成AIをどのように捉えているかについて因子分析を行いました。その結果、生成AIの捉え方は、「万能」「疑念」「補佐」という、3つの指標から整理できることを示しました。
今回、導入担当者の回答についても因子分析を行ったところ、従業員の場合と同様に、生成AIの捉え方は「万能」「疑念」「補佐」の3指標で整理できることが明らかになりました。
生成AI活用に関わる職場環境は「組織実装整備度」として整理できる
次に、導入担当者の回答をもとに、生成AIに関する職場の環境について分析します。本調査では、生成AIを活用していくうえでの職場環境について、導入目的の浸透、利用ルールの明確化、業務フローへの組み込み、支援体制、ガバナンス、評価制度への接続、従業員不安への対応、文化的受容性といった項目を尋ねました。
これらの回答を分析したところ、それぞれの項目が互いに関連し合いながら、1つのまとまりとして機能していることが確認されました。そこで本稿では、「企業内の生成AIを取り巻く環境がどの程度整備されているか」を、「組織実装整備度」という指標でまとめています。
ここで示されているのは、生成AIの活用が、「利用を推奨しているか」といった単一の要素によって左右されるものではないという点です。前述した、職場環境に関する様々な項目は、相互に関連し合いながら一体となって機能しています。生成AI活用における職場環境は、こうした項目が総合的にどの程度整備されているか、すなわち「現場が安心して、かつルールに基づいて活用できる状態がどの程度設計されているか」によって規定されると捉えることができます。
今回の分析では、「組織実装整備度」が生成AI活用度(※2)に影響を与えることが確認されました。この詳細は次章で解説します。
※2 調査では、「現時点での自社内の生成AIの活用度合いを教えてください。」という設問を設定し、「1」(全く活用していない)~「10」(これ以上ないくらい活用している)の10段階評価で回答を得ました。
導入担当者における生成AIの捉え方・「組織実装整備度」・社内における生成AIの活用度の関係
これまでの章で、導入担当者における生成AIに対する捉え方は「万能」「疑念」「補佐」の3指標で整理できること、また、生成AIを取り巻く職場環境については「組織実装整備度」として捉えられることを示しました。では、これらの指標は、社内における生成AIの活用度とどのような関係にあるのでしょうか。導入担当者の回答をもとに、「組織実装整備度」と生成AI活用度との関係について分析したところ、以下の構造が認められました。
1. 「組織実装整備度」の向上が、生成AI活用度に直結する
今回の分析において、「組織実装整備度」が生成AI活用度に非常に大きな影響を与えていることが確認されました。すなわち、導入目的や利用ルールの明確化、支援体制やガバナンスの設定といった各種整備が整っている企業ほど、社内で生成AIが活用されているという傾向が見られます。
この結果は、生成AI活用を進めるうえで、導入担当者が生成AIをどう捉えているか以上に、組織としてどのような環境を設計しているかが重要であることを示しています。社内の生成AI活用度を高めるためには、まずは生成AI利用に対する多角的な整備を進めることが、最も効果の大きい取り組みであると言えるでしょう。
2. 導入担当者における生成AIの捉え方を介した、「組織実装整備度」と生成AI活用度の関係性
「導入担当者における生成AIの捉え方」を介した分析結果を見ると、「組織実装整備度」が高まるほど、導入担当者における「万能」指標も上昇する傾向が確認されました。ただし、この「万能」指標は、社内における生成AI活用度に対しては、影響が限定的でした。
一方で、「組織実装整備度」が高まるほど、導入担当者の「疑念」指標は低下し、それに伴って社内での生成AI活用度が高まる傾向が見られました。この結果は、生成AIを無制限に活用しようとするのではなく、リスクや統制を意識しながら導入を進めている組織ほど、結果として活用度合いが高い可能性を示唆しています。
また、「組織実装整備度」が進むほど、「補佐」指標が低下し、それに応じて生成AI活用度も低下する関係が確認されました。「組織実装整備度」が向上すると、導入担当者の立場では、リスク面での懸念が和らぎ、「あれもこれも」と生成AI利用の場面を想起しやすくなる一方で、その結果、従業員の立場からは、どの業務にどのように生成AIを活用すればよいのかがわかりにくくなっている可能性があります。したがって、「組織実装整備度」を促進することが最も大切ではありますが、整備内容の背景や具体例の共有を同時に行っていくことも必要だと考えられます。
総評
導入担当者を対象とした分析から得られた、特に重要な知見は、次の2点です。
1点目は、生成AIを取り巻く職場環境が、「組織実装整備度」として1つの指標に整理できるという点です。
導入目的や用途の共有、利用ルールの明確化、ガバナンスや評価制度との接続といったものは、相互に関連し合いながら一体的に機能していることが確認されました。つまり、生成AI利用に関する様々な整備がどの程度総合的に整っているかが、導入担当者において、職場環境を捉える軸となっていることが示されています。
2点目は、社内における生成AI活用度を左右する最大の要因が、この「組織実装整備度」であるという点です。
分析の結果、生成AIに対する捉え方の違いよりも、組織として実装に関する整備がどの程度進んでいるかが、社内での活用度と最も強く関係していることが確認されました。すなわち、生成AI活用を進めるうえでは、導入担当者が目的やルール、支援体制を含めた環境設計をいかに整えているかが要であると捉えることができます。
本稿では、生成AI導入を担う企業側、すなわち導入担当者の回答に焦点を当てて分析を行いました。ただし、調査全体では、生成AI活用に関して、導入担当者と従業員で認識の違いが存在することも確認されています。そこで次回は、この認識の違いに着目した分析を行っていく予定です。
調査概要
| 調査目的 | 企業における生成的AIの導入と活用における「導入側」と「利用側」における利活用度や認識のギャップについて実態を把握すること。 |
|---|---|
| 調査方法 | インターネットリサーチ |
| 調査期間 | 2025年12月~2026年1月 |
| 調査回収期間 | 全国 |
| 調査対象者 | 調査対象①:【導入する企業側として】日系民間企業において生成AIツールの導入や利用に関与する部門に所属する正社員 調査対象②:【従業員(生成AIの実質利用者)側として】日系民間企業において働く①以外の正社員 |
| 有効回答者数 | 企業側回答者:1,000名 従業員側回答者:4,000名 ※今回の分析対象は企業側1,000名分の回答のみである。 |
編集後記
生成AI活用の推進というと、「利用を後押しするメッセージを積極的に発信すること」や、「使う側である従業員個人のAIスキルを向上させること」、「導入するAIツールを選別すること」といったものに目が向きがちです。しかし、本稿の分析からは、それ以前に、導入担当者が活用を支える整備を総合的に進めることの重要性が示されています。とはいえ、整備は多岐にわたり、何から手を付けるべきか迷うことも少なくないと思います。
そこで、
- 「組織実装整備度」の各設問に回答し、自社における整備の達成·実行の度合いを確認する
- 1.の結果をもとに、未達成または実行できていないものを抽出し、設問の点数が高い順に並び替え、着手すべき整備の優先順位を明確にする
このように段階的に整理していくことで、数の多い整備項目についても、取り組みやすくなるのではないでしょうか。本稿が、社内における生成AI活用促進に向けた、次の一手を考えるうえでの手掛かりになれば幸いです。
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- 調査・データ 更新日:2026/05/22
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