【学生座談会】企業はいかにして学生の気持ちをつなぎ止めるべきか? 電話連絡、プレゼント、フィードバック、座談会…… ホンネではどう思っている?
近年の大学生の就職活動の傾向として、「早期化」と「厳選化」の2つが挙げられます。大学3年生の春からインターンシップに参加するなど、就職活動の開始時期が早まっていることに加え、選考を受ける企業を絞り、厳選する傾向も強まっているのです。
となると、企業の採用担当者としては、「一度接点を持った学生の気持ち・記憶をいかにつなぎ止めるか」が重要です。電話をかけたり、粗品を送ったり、インターンシップでのフィードバックや個別面談を手厚くしたり……と、さまざまな施策を行っている企業も多いでしょう。
しかし一方で、「いろいろやっているけれど、手応えがいまいち……」とお悩みの担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、企業側からの「つなぎ止め施策」について、学生が「ホンネで」どう思っているのかを明らかにする座談会を開催。そしてアドバイザーとして、学生の就職活動支援や企業への採用コンサルティングを行っている、株式会社Strobolights 代表取締役社長の羽田啓一郎さんをお迎えしました。
中には耳の痛い話もあるかもしれませんが、効果的なつなぎ止め施策を検討するに当たっての有益な声が満載です。ぜひご一読ください。
<座談会参加者>
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Aさん(女性)
私立大学・文系。金融業界で内定承諾済み
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Bさん(女性)
国公立大学・文系。飲食業界で内定承諾済み
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Cさん(男性)
私立大学・文系。製造業界で内定承諾済み
<アドバイザー>
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羽田 啓一郎 さん 株式会社Strobolights 代表取締役社長 立命館大学産業社会学部 客員教授
立命館大学卒業後、株式会社毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)に入社。
大手企業の新卒採用支援を行った後、政府の有識者会議委員や学生向けキャリア支援プロジェクト「MY FUTURE CAMPUS」「キャリア甲子園」などをゼロから立ち上げた後、2020年に独立。大学講師や学生向けコミュニティや学生ビジコン運営、企業の採用コンサル、執筆業なども行う。
テーマ1:企業からの電話連絡、どう思う?
— 皆さん、今日はよろしくお願いします。匿名座談会ですので、ぜひホンネを聞かせてください。まずは「電話連絡」についてです。インターンシップ後や選考前後には、多くの企業から電話がかかってくると思いますが、率直にどう思われましたか?
Aさん: あるスタートアップ企業から、30回以上も電話がかかってきたことがありました。その企業は電話が多いことで、友人たちの間でも有名でした。選考開始が早いため、面接の練習目的で多くの学生が選考を受けていたんです。
みんなで一緒にいるとき、一人に電話がかかってくると、「またあの会社だよ(笑)」なんて笑い話にすらなっていました。あまりにもしつこくて迷惑でしたし、必死すぎて「そんなに人が足りていないのかな?」「ブラック企業なのかな?」とも思いました。とにかく印象が悪かったですね。
— それは…… 企業の担当者の方が聞いたらショックでしょうね。しかし、確かに頻繁な電話は迷惑ととられても仕方ないかもしれません。
Aさん: 数は多くなくても、とあるメーカーから20時半ごろに電話がかかってきたときには「こんな時間まで働いてるの……?」と、率直に怖くなりました。こちらも、私の中では「ブラック企業」に認定してしまいましたね。
— 早めに連絡しようという気持ちではあったと思うのですが、確かに20時半は一般的に仕事をしている時間ではないですね。他のお二人、電話についてはどうですか?
Bさん: 企業の方にも都合があると思うので、必要な電話なら、よほど頻繁でない限り全然OKです。しかし、会社説明会やインターンシップの勧誘電話を何度もかけてこられると、「参加を渋っている時点で察してほしい」とは思ってしまいます。基本的にはそっとしておいてほしいですね。
Cさん: そっとしておいてほしいという気持ちは、すごく理解できます。電話って予告なしにいきなりかかってくるので、個人的には基本的に迷惑な連絡手段だと思っているんです。なので僕は、かかってきた電話はAI応答(※)で一律に一次対応して、こちらからかけ直す理由があれば折り返していました。
※電話のAI応答:人間の代わりにAIが電話に出て、相手の用件を聞きテキストにまとめてくれる機能。現在、多くのスマートフォンが対応している。
— 具体的には、どんな場合に折り返していましたか?
Cさん: スケジュール変更など、直接お話する必要があると感じた場合です。それ以外はAIが書き起こしてくれたテキストを読み、興味のあるインターンシップや説明会の案内なら、ネットから申し込んでいました。
【羽田さんから一言】
Cさんの言うとおり、学生にとって電話は、必ずしも歓迎される連絡手段ではないことが多いようです。
選考結果の連絡やスケジュール変更など、早めに学生に伝えるべき内容であれば電話連絡も良いでしょう。しかし、頻繁な電話は避けた方が無難です。
特に、インターンシップ前から選考初期にかけては、学生側の志望度がそれほど高くない場合も多いため、「今、この学生からどう思われているか(志望度は高いか、低いか)」を客観的に把握する必要があります。
また、Aさんの例にあったように、あまりにもしつこく電話をかける会社は、学生の間で話題となり、企業への印象が損なわれてしまうこともありますので、注意しましょう。
テーマ2:個別面談や個別フィードバックについてどう思う?
— 続いて、「個別面談・個別フィードバック」についてです。これは企業側の十分なリソースも必要であるため、ある意味で「本気度の高い」アプローチでもあります。皆さん、ご経験はありますか?
Cさん: 多くのインターンシップでは、最終日に成果の発表を行います。その内容について企業目線でしっかりとフィードバックしてくれるのは、率直にとても助かりました。学生である私の目線では気付けない欠点や、良い点を指摘してもらえるのは、とても参考になります。
特に、個別でフィードバックを送ってもらえると、「100人のうちの1人」ではなく、「たった一人の僕」として認識してもらえてるんだ、とうれしい気持ちになりますね。
Aさん: 私も同じです。とあるメーカーで40分ほどの個別フィードバックを受けたことがありますが、そこで「提案力」を評価されたことで、自信が持てました。本選考でもその提案力を生かすことができ、とても有意義でしたね。
— ちなみにお二人は、その手厚いフィードバックをもらった企業の内定は受諾しましたか?
Cさん: いいえ。ただ、深い自己分析のきっかけと自信を頂けたので、今でも感謝しています。
Aさん: 私も他の企業で内定を受諾しましたが、Cさんと同じように感謝の気持ちがありますね。
— なるほど……。Bさん、いかがでしょうか?
Bさん: 定期的に個別面談を実施してくれた企業がありました。自社を売り込むこともなく、ただ就職活動のこと、キャリアのこと、将来のことなど親身になって相談に乗っていただき、孤独な就職活動の中で心の支えになりました。
私の場合、最終的にその企業の内定を受諾しました。もともと私は、事業内容や待遇よりも、「誰と一緒に働くか」を重視して就職活動を進めていたんです。面談でお世話になった方や、その過程でお会いした社員の方を見て、「ここなら楽しく働けそうだ」と確信できたのが決め手です。
— 親身に相談に乗ってもらったことで、社風や社員の雰囲気が伝わった好例ですね。
【羽田さんから一言】
Aさん、Cさんの例からも分かるように、必ず内定受諾につながるとまでは言えないものの、個別面談・個別フィードバックはつなぎ止めに有効であることは間違いありません。
ただし、面談やフィードバックを行う採用担当者・リクルーター個人の技量が試される施策でもあるため、担当社員の見極めが重要です。
また、Bさんのように「人間関係」を重視して就職活動をしている学生は、決して少なくありません。その場合には、こうしたフィードバックが内定につながる可能性は非常に高いですね。リソースはかかりますが、「この人こそは」と思えた場合には、ぜひ実施したい施策の一つです。
テーマ3:プレゼントについて、どう思う?
— 次のテーマは「プレゼント」です。自社に対して好印象を持ってもらうことを目的として行われることが多いですね。何か受け取った経験のある方はいらっしゃいますか?
Aさん: 選考を受けたお菓子メーカーから自社製品の詰め合わせを頂いたり、メーカーから化粧品を頂いたりしました。「こんな製品も作ってるんだ」と勉強になることもあるし、なにより率直に「うれしいな」とは思いますね。
Cさん: 交通系企業から、インターンシップ参加者へのお礼という形で、旅行に招待してもらったことがあります。特別な体験ができて、僕も素直にうれしかったですね。
Bさん: 食品メーカーから自社製品を頂いたり、選考中に食事会に招いていただいたりしました。焼肉をごちそうしてもらったので、私もやっぱり素直にうれしかったですね。
— しかし皆さんの口ぶりからすると、志望度に影響したということではなさそうですね?
Aさん: はい。「プレゼントを頂いたから志望度が上がった」ということはありません。
Cさん: 僕もです。ただ、旅行に招待していただいた企業の選考は落ちたので、「ここまでしてくれたのに落とすんだ?」という驚きはありました(笑)。
ただ、それで印象が悪くなったということはなく、むしろその企業が運営している交通機関を積極的に使うようになりました。好印象で終われたのは良かったかもしれません。
Bさん:
お二人と同様です。食事会に招いていただいた企業で内定を受諾していますが、食事会そのものが意思決定に関与したわけではありません。
先ほども話したように、その企業は手厚い個別面談を定期的にしてくださっていました。なので、もともと好感度が高かったところに、「さらにうれしいことがあった」という程度の受け止めでした。
— うれしいが、意思決定には無関係。これがプレゼント施策の実態のようですね。
【羽田さんから一言】
特にBtoC企業では、選考を受けた学生はエンドクライアント(消費者)でもありますので、サンプリングの一環と捉えれば、悪い施策ではないと思います。三人が口をそろえて言っているように、多くの学生は素直に「うれしい」と受け取ってくれるでしょう。
また、Cさんの例から分かるように、選考結果によって悪印象を持たれる可能性を最小限に抑える効果もあります。
ただし、これも三人が同意見であるように、選考参加や内定受諾といった意思決定を促す施策にはなりません。なので、特に渡せるようなものがないBtoB企業は、無理してプレゼントをする必要もないでしょう。
テーマ4:座談会って、どう思う?
— 続いては、座談会です。インターンシップから選考までの日数が空いてしまう期間や、選考中、内定出しから受諾期限までの間など、学生の心をつなぎ止めるために行われることが多いですね。皆さん、座談会についてはどう思われますか?
Bさん: 私は「どんな人と働くか」を重視する就職活動をしていたので、座談会は重要なイベントでした。
それだけに、いかにも「社員同士の仲がいい会社ですよ〜」という演出が行われているような、「台本のある雑談」みたいなことをする座談会は無意味に感じてしまいましたね。
「結局私たちは『お客さん』に過ぎず、『将来の同僚』とは思われていないんだな」と、むしろ壁を感じてしまいました。
Cさん: 分かります。座談会に参加している学生は、基本的には「あなたたち(企業)と仲間になりたい」と考えているのに、むしろ壁を感じる座談会が多いと思いました。
とある食品メーカーで、学生からの質問に、「まぁ、学生さんなので分からないのは仕方ないけれど……」と前置きして話し始めた方がいて、志望度がガクンと下がって選考辞退したことがあります。
Aさん: 私は情報収集目的で座談会に参加していて、基本的には好印象でした。とあるオンライン座談会では、ブレイクアウトルームでざっくばらんな会話ができたりして、その企業の実態を知ることもできました。
あとは、「若手以外の社員」のいる座談会も有意義だと感じました。多くの座談会では私たちと年齢の近い社員の方だけが登壇されますが、長期的なキャリアの築き方、長く働ける理由などを知るには物足りないからです。
— いろいろと「企業側のホンネ」を知る機会として有効活用されていたのですね。
Cさん: 僕は全くそういう思いにはなれませんでした。企業との接触機会は基本的に全て「選考」であると考えていたので、残業時間やワークライフバランスなどの質問は、結局できずじまいでしたね。いつも「誰か残業時間について聞いてくれ〜」と思いながら参加していました(笑)。
— 座談会といえば定番の施策ですが、思った以上にその受け止め方は多様であることが分かりました。
【羽田さんから一言】
座談会で学生からの質問が出ないと悩んでいる企業は多いですが、その背景には「志望度がまだ高くないこと」などが影響している場合もあります。
インターンシップ後や選考前ではなく、選考の途中に行えば志望度の高い学生が集まるため、有意義な場になると思います。
また、Cさんが言うように、「座談会も選考の場である」と考えている学生は少なくありません。せめて採用担当者は同席するのを控え、できるだけフリーな雰囲気をつくり出してください。
その上で、あえて座談会をつくり込みすぎず、多少のリスクは許容しながら素を見せる場として提供するのが良いでしょう。
— 今日は皆さん、ありがとうございました!
“つなぎ止め施策”に求められる視点とは
今回の座談会を通して浮かび上がったのは、学生が企業からのアプローチを基本的には“うれしい”と受け止めつつも、それが必ずしも志望度や内定受諾に直結するわけではないという冷静な視点でした。
電話、プレゼント、フィードバック、座談会——いずれの施策も、重要なのは「何をしたか」ではなく、「どう受け取られたか」です。つまり、施策の先に「どのような印象を形成したいのか」を考える必要があります。
その観点で印象的なのは、「フィードバックを通じて自信が付いた」「面談の中で人間関係の魅力を感じた」など、施策が自己理解や感情的な納得感につながったケースです。学生にとっての“納得”が醸成されれば、その企業に対する良い記憶として残り続けます。
また、現代の学生は、企業とのやり取りを積極的に友人間で共有し合う文化の中にいます。一人の学生との接点が、結果的に集団への“レピュテーション形成”につながる構造は、企業にとってリスクでもあり、機会でもあります。
就職活動の中で企業と過ごした時間や受け取った言葉が、たとえ志望度を変えなかったとしても、その学生の未来にとって価値あるものであれば、それこそが「企業の信頼」につながり、それこそが「選ばれる企業」への近道となります。
内定受諾率や選考歩留まりにとらわれすぎず、良い関係を築くこと。結局のところ、これこそが「つなぎ止め」の極意なのかもしれません。
●インターンシップについて詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。
- 三省合意改正で何が変わった?2025年卒からの「インターンシップ」とは
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- 学生座談会│学生にとっての「良いインターンシップ」とは? 志望度向上につながるインターンシップの作り方
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