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新入社員の早期離職を防ぐ1on1の極意。現場と人事が連携し“本音”を引き出すコツとは?

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昨今、多くの企業が頭を悩ませているのが、新入社員や若手社員の「早期離職」です。その対策として「1on1(個別面談)」を導入する企業が増えていますが、現場からは「業務報告だけで終わってしまう」「本音が引き出せない」といった悩みも多く聞かれます。

マイナビで長年、採用・組織開発のコンサルティングに従事してきた田口弘毅は、この点について「まず、相手を『個』として見て、人間同士の関係性をつくることが大事」と話します。Z世代の価値観を踏まえた1on1の本来の役割や、離職の予兆を察知するための具体的な働き掛け、人事と現場が連携するためのポイントを詳しく伺いました。

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  • 株式会社マイナビ 田口弘毅のポートレート写真
  • 田口 弘毅(たぐち こうき) 株式会社マイナビ
    キャリアデザイン事業本部教育研修事業部HR推進統括部

    2010年にマイナビに入社後、採用・人材開発・組織開発のコンサルティング業務に一貫して従事。現在は事業部人事、営業推進、マーケティングの責任者を務める傍ら、コラム執筆やセミナー登壇・講演活動を行っている。

1on1は「管理」ではなく「成長」のための手段

オフィスでノートパソコンを前に、笑顔で話しながら指を立てて説明する女性と、向かいに座る女性の打ち合わせ風景

— 今日はよろしくお願いします。まず、新入社員における1on1には、どのような役割や効果が期待できるのでしょうか。

田口: 1on1は、高頻度な対話を通じた「人材開発の手段」であり、部下の成長に主眼を置くものです。実はこの「高頻度」というのが重要なポイントで、短くても良いので1~2週間に1回程度が推奨されます。しかし、多くの企業では月に1回、四半期に1回程度になっている場合が多いのではないでしょうか。

— 週に1回は確かに多いですね……。なぜ、これほど「高頻度」である必要があるのでしょうか?

田口: 一つは、大きな時代変化です。今のビジネス環境はスピード感が早く、情報のアップデートも激しい。昔のように「上司の背中を見て盗め」というマネジメントでは、新人が背中を見ている間に状況が変わってしまいます。

だからこそ、業務相談はもちろん、小さな悩みや不満も話せる関係をつくることが重要です。それが、新人が行き詰まっているポイントを見つけるヒントになります。

そんな「心理的安全性」は、テクニックよりも「接触頻度」によって構築されていくことが分かっています。だからこそ、頻度が重要なんですね。

— しかし、忙しい現場の上司が頻度を確保するのは容易ではありません。

田口: そうですね。本来、1on1は評価面談とは別物として時間を確保すべきですが、リソースは限られています。あえて会議室に入らずとも、「営業同行の車中」や「ランチの時間」を活用したりするのも一つの手段です。

特に新入社員は組織になじむための「オンボーディング」が重要な時期。形式にこだわりすぎず、「特に何もなくても話す機会がある」という状態をつくることが、離職予防やキャリア形成に好影響を与えます。

「Z世代」というラベルに頼らず、相手の解像度を高める

— 新入社員との1on1で陥りやすい「落とし穴」はありますか?

田口: 新人の場合、一緒に過ごしてきた時間が短いため、相手への「解像度(人柄や価値観の理解)」が低くなりがちです。ここを飛ばしてアドバイスをしようとしたり、業務の話ばかりに終始したりするのが典型的な機能不全のケースです。

また、Z世代に対して、「タイパ重視」「現実主義」といった世間一般のラベルを当てはめてしまうのも危険です。個に向き合っているようで、実は相手を均質化して見てしまっています。「1on1」なのに、目の前の個人を見られていない状況は避けなければなりません。

— 本音を引き出すために、上司はどのような姿勢で臨むべきでしょうか。

田口: 重要なのは、上司側からの「積極的な自己開示」です。部下は、上司が開示した量以上のものは開示しにくいでしょう。特に新入社員にとって、上司は「神様」のように見えるほどパワーバランスの差があります。その差を自覚し、まずは上司から心を開く必要があります。

— 具体的に、どのようなことを話せば良いのでしょうか。

田口: 例えば「自分が新人の頃にしてしまった失敗」や、「今、自分自身が仕事で頑張っていること」、あるいは「休日の意外な過ごし方」など、人間味のある部分を見せるのが効果的です。上司も一人の人間であり、新人同様に、考えたり迷ったり日々挑戦しながら働いていることを見せることで、新人のガードが下がり、相互理解の第1ステップが始まります。

離職の予兆を察知する「点数化」と「行動の変化」への着目

— 早期退職のリスクを察知するために、効果的な対話のネタや実施のポイントはありますか?

田口: 対話のネタとして、モチベーションを「点数」で表してもらうのは有効であるといわれている上に、分かりやすいという点でも優れています。例えば、「10点満点だと今何点?」と聞き、その点数を付けた理由をポジティブ・ネガティブ両面から深掘りします。

例えば同じ「7点」の回答でも、いつも8点の子であれば「通常営業」ですが、いつも「10点です!」と元気良く答えていた子が7点と言ったら、それは完全な「黄色信号」です。そこで「何かあったな」と察知できれば、先回りのフォローが可能になります。

こうした「ベースライン」を知ることも、頻度によってかなえられる大きなポイントの一つです。

他にも、「この1週間にあった喜怒哀楽の話を聞かせて」と振ってみるのも一つの方法として考えられます。自然とポジティブ・ネガティブ両面の話が出てきやすくなります。

— 会話の内容以外で、予兆に気付く方法はありますか?

田口: 実は「運用の変化」にヒントが隠れています。例えば、1on1の予定登録をあえて部下側に任せてみる。いつも月曜日に入れていた子が入れ忘れるようになったり、リマインドが必要になったりしたら、それは「元気がない」「余裕がない」という非言語のサインかもしれません。

1on1は「相互理解や成長支援を目的とする“対話”」です。会話の内容だけでなく、こうした行動の変化からも不安の芽を拾い上げる意識を持ちましょう。

人事は1on1の“価値”を売る「現場の営業担当」であれ

チェックマークの描かれた木製ブロックが一列に並び、指でひとつのブロックをつまんで動かしている様子

— 現場での1on1を形骸化させないために、人事側はどのように支援すべきでしょうか。

田口: 人事は「制度を作って終わり」にするのではなく、現場に対する「営業担当」のような意識を持つと良いでしょう。現場が「なぜ1on1が必要なのか」を腹落ちしていない限り、どれだけ立派な1on1制度や1on1用フォーマットなどを作っても形骸化します。

まず人事に必要なのは、現場のマネジャーに「最近どうですか?」と積極的に足を運び、1on1を運用する上での「痛み(ボトルネック)」を吸い上げること。現場の苦労に寄り添い、「一緒に良い組織をつくっていこう」という並走者としての姿勢が求められます。

— 忙しい現場のマネジャーを動かすのは簡単ではありません。人事としてどう働き掛けるのが正解でしょうか。

田口: いきなり全社一律で制度を動かそうとせず、1on1に意欲的な部署から始めて成功事例をつくるのが近道です。

その部署で「1on1を始めてから新人の立ち上がりが早くなった」「コミュニケーションが円滑になった」などの成果が上がったら、それを社内に伝えていきましょう。

そうすれば、「1on1は部下のためだけでなく、マネジメントの効率を底上げし、結果として質も向上させるためのものだ」と理解してもらうことができ、他の部署からも手が挙がるかもしれません。

— 他にも人事が持つべき「武器」はありますか。

田口: サーベイなどのツールやテクノロジーを導入して「話のきっかけ」を提供したり、マネジャー向けの「面談スキル研修」を実施したりすることも有効です。

また、人事は採用時に新入社員と深く関わっているケースも多いかと思います。もし現場の1on1が機能不全に陥っているサインを感じたら、人事が「顔なじみ」として直接フォローに回る。これが離職防止の最終防衛ラインになることも少なくありません。人事が現場の痛みに寄り添い、粘り強く価値を伝え続けることが、組織全体の力を底上げする鍵になるはずです。

— 今日は非常に具体的で実践的なお話をありがとうございました!

1on1を機能させる「3つの極意」

今回の取材を通じて、1on1は単なる「面談という形式」ではなく、変化の激しい現代における「経営戦略としての対話」であるという側面が強く浮かび上がりました。

新入社員の早期離職を防ぎ、本音を引き出すための「1on1の極意」は以下の3点に集約されるようです。

1. テクニックよりも頻度

週に1回15分でも、定例の場を持つことで「いつでも相談できる」という安心感が醸成されます。会議室での実施にこだわらず、移動中やランチなどの隙間時間を活用し、業務報告ではない「目的意識のある雑談(対話)」を習慣化することが、離職の予兆を早期に察知する鍵となります。

2.上司側からの積極的な自己開示

「Z世代」というラベルで相手をくくるのではなく、上司が自らの失敗談や等身大の姿を見せることで、新入社員とのパワーバランスを和らげ、相手の「個」としての解像度を高めることができます。

3.人事は現場の伴走者であるべき

制度を作るだけでなく、運用の伴走も重要です。人事が現場の痛みに寄り添い、1on1の価値を粘り強く伝え続けることや、成功事例を横展開していくことが、結果として組織全体の定着率と生産性を引き上げる近道となります。

単に制度として運用するのではなく、目的意識を持って「高頻度に」行うこと。その体制を支えるのが、人事として重要な仕事になるのではないでしょうか。

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  • 人材採用・育成 更新日:2026/04/30
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