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富士通はなぜ「リアル」にこだわるのか。【前編】ジョブ型採用におけるRJP実践論

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総合研究所推進室では、「組織定着」をテーマに、オンボーディングやリアリティ・ショック(入社後のギャップ)に関する研究を行っています。(研究詳細はこちらから)今回、その解決策の一つである「RJP(Realistic Job Preview)」が実際の採用現場でどのように機能しているのかを探究するため、富士通株式会社を訪問しました。

入社後に「思っていた仕事と違った」「想像していた職場と違った」と感じる――。こうしたミスマッチは、企業にとっても、働く個人にとっても、できる限り避けたい事態です。仕事の専門性が高まり、働き方やキャリアの選択肢が広がる中で、入社前後の認識のずれは、より起こりやすくなっています。

そのギャップを小さくする考え方として注目されているのが、仕事や職場の「現実」を事前に伝えるRJPです。富士通では、ジョブ型人材マネジメントへの転換を進める中で、新卒採用においてもRJPを重要な考え方として位置づけ、職務内容に関する情報の開示、現場社員との対話、そしてインターンシップを通じて、段階的に「仕事の解像度」を上げる設計を進めてきました。
前編では、富士通が採用活動の中にどのようにRJPを組み込み、実装してきたのかについて、人材採用センター長の大平将一氏に話を伺います。

  • 富士通株式会社 大平将一氏のプロフィール写真
  • 大平将一 様 富士通株式会社 人材採用センター長

    1996年に富士通株式会社に入社以来、人事処遇制度企画、グローバルタレントマネジメント立上げ、HRビジネスパートナー、グループ会社人事、米国人事駐在など様々な人事領域を経験し、2023年4月より現職。ビジネスパートナーとしての経験も活かしながら富士通グループの新卒採用・キャリア採用の変革に取り組む。

パーパスを起点に、人材ポートフォリオの構築へ。ジョブ型採用の転換点

Q1:富士通ではジョブ型人材マネジメントを重視されていますが、その考え方は新卒採用にどのように反映され、その中でRJPはどのような役割を果たしているのでしょうか。

大平: 富士通では2020年に「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを定めましたが、このパーパスの実現に向けて、事業だけではなく人材マネジメントのあり方も大きく見直してきました。
パーパス実現のために、まずは人事としてどういう姿を目指したいかを考え、次の3つをありたい姿として定めました。1つ目が「全ての社員が魅力的な仕事に挑戦」、2つ目が「多様・多才な人材がグローバルに協働」、そして「全ての社員が常に学び成長し続ける」の3つです。これらのありたい姿を実現するために、人材マネジメントのフルモデルチェンジというかたちでジョブ型人材マネジメントへの転換を進めてきました。

Jobベースの人材マネジメントへの転換の図
提供:富士通株式会社

管理職から一般社員へと段階的に導入を進めてきましたが、新卒採用については、最後まで従来型の仕組みが残っていたのが実情です。しかし、事業がスピーディーに変化をし続ける中で、年間何百人という「数のコミット(採用計画)」ありきの採用から、必要な職務(ジョブ)を担う人材を通年でフレキシブルに採用する形へ転換しました。事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオの構築に向けて必要な即戦力性の高い人材を機動的に獲得していく。そうしたジョブ型採用を行う以上、「どんな仕事を担ってもらうのか」を事前にきちんと伝えなければ、本人にとっても会社にとっても不幸な結果になりかねません。

富士通株式会社 大原将一様の写真

加えて、最近の学生の皆さんは「仕事を通じて成長したい」という意欲を強く持っているように思います。そうした想いに応えるためにも、早くから高いレベルの仕事に挑戦できる機会をつくり、学歴ではなく「就く仕事」に見合った処遇を用意する。そう打ち出すことで、高いモチベーションを持つ方に入社していただきたいという狙いもあります。
一貫性のあるジョブ型人材マネジメントの“ラストピース”として、ジョブをベースとした新卒採用に転換していく中で、採用の入口の段階からリアルな仕事の実態を共有するとともに、できるだけ実際に経験してもらったうえでお互いにマッチングを図ることが重要だと強く意識するようになりました。

募集要項から動画まで。「仕事の解像度」を高める多層的なアプローチ

Q2:インターンシップを含めた広報活動において、RJPをどのように設計しているのでしょうか。

大平: 特定の一つの施策でRJPを実現しているというよりも、広報・選考プロセス全体を通じて、段階的に情報の解像度を上げていくイメージを持っています。

まず入口になるのが、有償インターンシップの募集要項です。本年は、数百のテーマで募集を行っており、それぞれのテーマごとに、組織や業務内容、役割だけでなく、身に付くスキルや求められるレベル感まで、できるだけ具体的に記載しています。

有償インターンシップの募集要項の項目一覧
画像は富士通株式会社インターンシップサイト掲出データにおける、ある1テーマの紹介のために公開されている情報の種類についてマイナビが作成したもの。

また、対話の場もアップデートしています。従来の大学別のOB・OG訪問だけでなく、オンライン上で希望する職務や組織の社員を探して、個別に話を聞ける仕組みを整えました。出身大学に関係なく、興味のある組織やジョブの社員と直接話すことで、より具体的に働くイメージを持てるようにしています。
そのうえで、職場紹介の記事や動画を通じて、働く人の雰囲気や仕事の進め方といった要素も伝えています。採用オウンドメディア「#REAL」やnoteでの職場紹介記事、動画投稿サイトでの社員の一日密着動画など、複数のチャネルを活用しています。
また、当社の採用サイトでは「My purpose(マイパーパス)」として、若手からベテランまで幅広い年代の社員が、自身の志や仕事への想いを語るコンテンツも発信しています。
文字情報に加えて、現場の空気感や仕事の温度感まで含めて伝えることで、学生の皆さんが仕事を立体的にイメージできるようにしています。

「仕事の厳しさ」は学生を遠ざけるか。現場で見える覚悟と本気

Q3:仕事の厳しさや大変な部分は、どのように伝えていますか。
厳しい現実を見せることで、学生が離れてしまう懸念はないのでしょうか。

大平: 会社説明会やイベントの段階から、人事が前に出て話すというよりも、できるだけ現場の社員が中心になって話す形にしています。その際、「良い話だけをしなくていい」ということは、あらかじめ伝えています。
実際の仕事では、地道で大変な調整が必要な場面もありますし、簡単に成果が出るわけではありません。そうした点も含めて話してもらうことで、学生自身が「自分がこの仕事を担うとしたらどうか」という視点で考えやすくなると感じています。ポジティブな面とネガティブな面を切り分けるのではなく、仕事の現実としてそのまま伝えることが重要です。

これはインターンシップの現場でも同様です。実際に現場に入ると、大学の研究とは違う「ビジネスの厳しさ」に直面します。「お客様の要望」や「コスト」、「納期」といった要件の中で成果を出す経験を通じて、自分に足りないものを理解し、意識を高めてくれています。

「厳しいことを言うと学生が離れてしまうのでは」という懸念があるかもしれませんが、実際には逆です。学生からは「本気で仕事をしてみたい、その厳しさを体感したいから富士通の有償インターンシップを選んだ」という声も届いており、リアルな仕事経験が意欲ある学生を惹きつける要因になっていると感じます。リアルな仕事のおもしろさや厳しさを感じた上で「ここで働きたい」と選んでくれる学生の意志は、非常に固いと感じています。

「学生扱いしない」受け入れ体制。誓約書から始まる「社員」としての契約

Q4:そうした「リアル」を体験してもらうために、インターンシップの受け入れ体制や仕組みとして工夫されている点はありますか。

大平: インターンシップは、単なる職場見学や疑似体験ではなく、「有償インターンシップ」として学生を社員として雇用し、給与をお支払いしたうえで、実際のビジネスの現場に入ってもらっています。

その際、就業規則の適用や、機密情報の保持に関する誓約書を提出してもらったうえで受け入れています。こうした前提があるからこそ、お客様との商談を含め、実際の仕事のリアルな部分まで経験してもらうことができます。「学生だから」と情報を制限するのではなく、雇用契約を結んだ「一人の社員」として迎え入れ、必要な情報を共有して共に仕事をするというスタンスです。

また、受け入れ体制としても、学生一人ひとりに若手のメンター社員がつくだけでなく、担当マネージャーもつきます。現場の第一線で働く先輩と、組織をマネジメントする上司、それぞれの立場・視点からフィードバックを行うことで、仕事の多面的な理解や、学生自身の気づきを促すようにしています。

富士通株式会社 大平将一様の写真

当社ではインターンシップ参加学生に限らずリモートワークを活用していますが、その分、メンター社員と学生の間で頻繁に1on1のミーティングを行う等、認識のズレや不安が生じないよう各受入れ職場で丁寧にフォローしています。

加えて、学生の皆さんにとっては、自分が大学や大学院で研究してきたことが、どのように社会に実装されていくのかを実感できる機会にもなっていると感じています。研究しているテーマが、実際のビジネスの中でどの工程に活かされ、どのようにお客様や社会に届けられていくのかを体感できる。そうした経験を通じて、「自分の学びが社会の役に立っている」と実感できることは、学生にとっても非常に大きな意味があるのではないかと思います。

(後編へ続く)

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  • 人材採用・育成 更新日:2026/01/30
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