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配属先確約で採用はどう変わる? 住友商事「WILL選考」の導入とその手応え

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大卒者数の推移は横ばいながら、企業の新卒採用意欲は高まりをみせており、規模・知名度を問わず多くの企業が新卒採用に課題を感じています。

今回お話を伺った住友商事株式会社も、そのうちの1社。

総合商社といえば学生からの人気が高い業種の一つですが、一方でその事業領域の幅広さから「配属後にどのような仕事をすることになるのかが分からず不安」という学生の声もあったそうです。

そこで同社が導入したのが、配属先を確約する「WILL選考」と、従来型の入社時に配属を決める「OPEN選考」という2つの選考窓口を併用する新たな採用フロー。

学生が自らの志向にマッチした選考窓口を選択できるようにすることで、採用上の競合優位性を保持しつつ、新たな学生からの応募獲得、そして入社後の最適化を図っています。

「しかし、私たちはWILL選考・OPEN選考のどちらかに重きを置いているわけではありません。あくまでも学生の方々への選択肢として捉えていただき、ご自身に合う方を選んでもらいたい」

そう語るのは、同社で新卒採用を担当する齋藤 励さん。

本記事では「WILL選考」導入の背景や制度設計の工夫、現場支援の在り方、そして導入から見えてきた効果と課題まで、住友商事のリアルな実践を深掘りしていきます。

  • 住友商事 HR企画戦略部 齋藤励氏 立っているポートレート写真
  • 齋藤 励 さん 住友商事株式会社 HR企画戦略部

    2023年、同社に新卒入社。新卒採用業務を担当しながら、25年度より社内外におけるブランド戦略を企画・実行するエンプロイヤーブランディングも兼務。

住友商事の「WILL選考」とは 制度の概要と三者のメリット

— 「WILL選考」は、内定の段階で配属先が確定する部門別採用の仕組みですね。制度の概要を教えてください。

齋藤さん: はい。当社はSBU(Strategic Business Unit):戦略を一とする事業群を組織としたもの)単位でその事業内容が大きく異なります。

これまで当社の新卒採用は、どこに配属されるかが分からない状態で学生の応募を受け付けていましたが、WILL選考では、受け入れを募集しているSBUを選んで応募することができます。1次・2次面接まではOPEN選考と同様の選考ステップで進み、3次面接以降にWILL選考独自のステップとして、各SBUでの面接が行われます。

住友商事として求める人材要件を1次・2次で確認し、3次以降では各SBUとのフィットを重視した選考ができる仕組みです。

— この制度がもたらすメリットはどのような点でしょうか。

齋藤さん: 学生にとっては、入社前に配属が確定するため不安要素が減り、志望する分野で働ける安心感があります。SBU側にとっても、学生の希望を事前に把握した上で面接できるため、配属後のミスマッチを減らし、より適性に合った人材を採用しやすくなります。

また、会社全体としても特定の分野に強い興味・志のある学生との接点が生まれやすくなります。こうして多様な人材が集まることで、採用上の強み・成果につながると考えています。

変化する学生像にどう応える? 採用戦略の転換点

— 学生・現場・そして会社としてもメリットのある採用フローとのことですが、WILL選考を導入されるに至った最も大きな要因は何でしょうか?

齋藤さん: 一番大きな理由は、学生のキャリア観の多様化です。

従来は、配属は会社が決めるものという前提がありましたが、今は「自分のやりたいこと」を明確に持って就職活動に臨む学生も多く見られます。そうした学生のニーズに応えていくことで、結果として採用競争力の向上にもつながると考えました。

— 一方で、OPEN選考も継続されていますね。

齋藤さん: はい。そこが、この制度を考える上でのポイントでした。

大切なのは、キャリア観が明確な学生とだけ出会いたいわけではない、ということです。 WILL選考はあくまでも選択肢の一つであり、「やりたいことはまだ固まっていないけれど、総合商社のビジネスに興味がある」という学生も非常に重要です。実際、応募の半数以上はOPEN選考です。

キャリア観にかかわらず、当社で活躍できる可能性のある人材を多く受け入れるためにも、WILL選考とOPEN選考を併用することに意義を感じています。

住友商事 HR企画戦略部 齋藤励氏 オフィスで座っている写真

「ポテンシャル採用でありながら、現場とのマッチングを図る」 制度設計の難しさと現在地

— WILL選考の制度を設計する上で、どのような点が難しかったのでしょうか。

齋藤さん: どこまでを共通ステップにして、どこからWILL選考独自のステップに分岐させるかという点は議論が重ねられました。

全社最適の視点で学生を見る工程と、個別最適で現場とマッチする人材を見極める工程のバランスが求められるからです。

すでにお伝えしたように、現在は3次面接以降で分岐するフローを採用していますが、「より突き抜けた志向・能力を持った学生を採用したい」といった新たな要件が浮かび上がってきたら変更する可能性もあります。

— 現在運用されている選考過程の詳細はどのようになっているのでしょうか。

齋藤さん: WILL選考の3次面接以降では各SBUの組織長とHRBP(Human Resource Buisiness Partner: 経営陣に向け人事戦略を助言する人事機能)が中心となって面接を行います。

その中で特に重視しているのが、まさに「志=WILL」の部分です。

— 「WILL選考」という名前にも表れていますね。なぜ「志」が重要なのでしょうか。

齋藤さん: WILL選考のステップは、選考の中で実際に一緒に仕事をするSBUのメンバーと対話しながらマッチングを図っていきますが、中途採用のように具体的な能力や実績を見ることはできません。あくまで学生が入社後に活躍できるか、ポテンシャルを見ることになります。

では、どのようなポイントで現場とのマッチングを測るか……と検討をした結果、浮かび上がったのが「WILL=志」でした。

なぜその事業を選んで応募したのか、その事業の中で何をしたいのか、将来どうなりたいのか…… といった学生の思いをひも解いていくことで、マッチングを図っています。

住友商事 HR企画戦略部 齋藤励氏 手を動かしている写真

現場と学生、両方に働き掛ける HRBPの連携と“理解促進”の仕組み

— 御社のWILL選考が始まったのは2年前ですね。現場への浸透、学生への周知など、現在まさに取り組まれている最中かと思います。

齋藤さん: そうですね。

まず、現場への浸透という点では、私たちHR企画戦略部とSBUメンバーとの架け橋として、HRBPが大きな役割を果たしています。

WILL選考はSBUが求める人材を新卒採用で獲得できるという明確なメリットがありますが、一方で新しい取り組みであるだけに、新たな現場負担も発生します。

そこで、現場にWILL選考のメリットを伝えたり、現場の視点からアドバイスをもらったりすることで、WILL選考に参加するSBUの拡大を図っているところです。

初めてのWILL選考で採用された学生が入社して、半年を過ぎました(※2025年10月取材時点)。今後は、実際にWILL選考に参加しているSBUからのフィードバックも含めて全社に周知することで、より深い理解を得られるのでは、と考えています。

— 学生向けの広報はどのように行っているのでしょうか。

齋藤さん: まずは当社がWILL選考を行っている、ということがしっかり伝わるように、さまざまなチャネルで発信しつつ、参加している各SBUの詳細情報に学生がアクセスできるように整備しています。

例えばSBUごとのPR動画制作、WILL選考参加前の座談会、OB・OG訪問プラットフォームの整備、職場体験型インターンシップを通じたより深い理解など、「本当に自分自身の志向とこのSBUがマッチしているか」を学生が確認できる機会を設けています。

これにより、WILL選考にメリットを感じた学生が応募してくれることを期待していますが、大切なのは「私の場合はOPEN選考が合っているな」とも判断してもらえるようにしておくことです。

キャリア実現の機会があることを広報しつつ、常に学生へ多様な選択肢を提示する。このことで、私たちが目指している「学生自身のキャリア実現」がかなうと考えています。

トライ&エラーをしながら、より良い制度にしたい 進化し続けるWILL選考

— まだ試行錯誤の中でもあると思いますが、現時点ではどのような成果を感じていますか。

齋藤さん: まず、応募者の多様性が明確に広がっています。

例えば、「不動産系」「IT系」など、これまでであれば総合商社ではなく専門の事業会社を志望していたであろう学生が、当社のWILL選考に応募してくるケースが増えました。

また、入社前から配属先が分かっていることで、準備期間を生かしたスムーズなオンボーディングも実現できているように感じます。

— 現場の意識にも変化はありましたか。

齋藤さん: 大きく変化したと思います。自分たちで採用した学生を育てていくという意識が芽生え、より自律的採用に取り組む空気ができてきています。

結果的に、本社人事の役割も「採用する」から、「現場が欲しい人を採れる環境を整える」へと変化しつつあると感じます。

— 一方で、まだ改善の余地もあるのでしょうか。

齋藤さん: はい。始まったばかりの取り組みなので、より良い解があるのでは……と考えている部分がいくつもあります。

例えば、すでに触れた「選考ステップの分岐タイミング」もそうですし、OPEN選考とWILL選考の実施時期をずらすことで現場負担を軽減し、より多くのSBUが参加しやすくする、ということもあり得るかもしれません。

今後もトライ&エラーを重ねて、より良い制度にしていきたいですね。

— 本日は意欲的な取り組みのお話を伺えて素晴らしい機会になりました。ありがとうございました!

住友商事 HR企画戦略部 齋藤励氏 手を使って説明している写真

WILL選考という「選択肢」が変えたもの

WILL選考は、単なる配属先確約の仕組みではありません。それは、学生と企業の双方が「何を求め、どう関わるか」を見つめ直すきっかけをもたらす制度です。

学生にとっては、事前に業務内容を理解し、志を持って自らのキャリアを選び取る機会となり、企業にとっては、現場と一体となった自律的な採用体制への転換点になります。

そして何より、WILL選考とOPEN選考という2つの選考を併用するという方針そのものが、同社の姿勢を物語っています。

学生の多様なキャリア観に寄り添う、というとWILL選考のような配属確約型選考に偏重しがちですが、OPEN選考を選ぶことも一つの「キャリア観」であると認めることが、変化する採用環境において新たな競争力につながっているのです。

制度としてはまだ発展途上。選考フローや広報施策、運用体制など、見直しや改善の余地はあると齋藤さんは語っていますが、「より良い制度に育てていく」という前向きな意思が、この取り組みの根幹にあるといえるでしょう。

「誰を採るか」だけでなく、「どのように採るか」を問い続ける住友商事の挑戦は、これからの採用の在り方に大きな示唆を与えてくれます。

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  • 人材採用・育成 更新日:2025/12/11
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