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選ばれる企業になるために
採用にマーケティング視点を取り入れる最初の一歩

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マイナビが実施した「2026年卒企業新卒予定調査」によると、採用業務の見直しについて、約78%の企業が「昨年よりも厳しくなる」と回答しています。

出典:マイナビ2026年卒企業新卒採用予定調査

その背景には、学生のエントリー社数が減少傾向にあり慎重さが増す一方で、採用競争に参入する企業は増加しているという現実があります。つまり、パイが縮小する中で、競争は激しくなるばかりです。「とにかく多くの母集団を集めて選考を進める」という従来型の採用スタイルだけでは、成果を上げにくくなってきています。

そこで注目したいのが、自社のターゲットや強みを明確にし、学生の動向やメディアに応じて広報を行う『マーケティングの考え方』を採用活動に取り入れるアプローチです。

母集団の質を高めるためにどのように自社の強みを見いだし、広報活動に落とし込んでいくのか。今回は、マーケティング視点での新卒採用サポートを専門に行う、株式会社十三夜の山下涼介さんにお話を伺いました。

\採用難・定着難の解決に!採用マーケティングトライアルBOOK/

  • 山下 涼介 さん 株式会社十三夜 代表取締役

    専門商社、採用支援事業会社、SNSマーケティング会社などを経て、2024年に株式会社十三夜を設立。HR領域のコンサルティング・マーケティング支援などを幅広く手掛けている。

なぜ今、採用にマーケティング視点が必要なのか?

— 多くの企業が新卒採用に苦戦する中、新たな「勝ち筋」を探しています。まずは、従来の採用手法が通用しなくなってきている背景についてお聞かせください。

山下さん: 理由は大きく2つあります。1つは、いわゆる「売り手市場」の影響です。

これは単に採用競争が激しくなったというだけではなく、「定着」の重要性が増したという側面も見逃せません。人材の流動性が高まる中で、自社で長く活躍できる学生(新入社員)を採用する必要があるのです。

もう一つが、学生が就職先を決める際の接点や手法の多様化です。これまではほとんどの学生が、合同説明会や就職サイトで企業を発見し、一定の志向が合えば応募してくれていました。そのため、多くの企業が母集団の数の確保に力を入れていたと思います。

しかし現在、学生は、SNSや口コミサイトなどさまざまな情報に常時触れています。さらに就活のスタイルも多様化し、ダイレクトリクルーティング(スカウト)、新卒紹介(エージェント利用)などの利用も広がり始めています。

こうした状況の中で、母集団の数を確保し続けていくことには限界があると言えるでしょう。 だからこそ、質の高い母集団を集め、彼らとの相互理解を通した「マッチング」がますます重要になっています。

— つまり、市場環境の変化によって「定着重視」の採用が求められるようになったこと、そして学生の就活スタイルが多様化し、情報の接点や志向にも変化が生じていること。これらの要因が、採用においてもマーケティング的な視点を持つことの重要性につながっているのですね。

山下さん: そのとおりです。マーケティングといっても、堅苦しいものではありません。接点の多様化や学生の志向の変化に対応しながら、自社に合った学生をどのようにして見つけ、選ばれていくかを探っていくことこそが、採用におけるマーケティング活動であると思います。

「解像度」を上げて採用を成功に導く

— 実際に、どのようにして採用にマーケティングを取り入れていけば良いのでしょうか。

山下さん: まずは「学生」「競合」「自社」を深く理解し、どんな学生に、どのような強みを伝えていくべきかを探っていきましょう。これは一般的なマーケティング領域で「3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析」と呼ばれる、基本的な概念です。1つずつ解説していきましょう。

学生を理解する

山下さん: まずは「学生」そのものの解像度を上げることが大切です。先ほどもお話ししたように、学生の志向は多様化しています。採用活動ではその多様化した価値観を持つ学生に対し理解しやすく、自社の魅力を感じてもらいやすいコミュニケーションを取ることが求められます。

学生が就職活動の中でどんな情報に触れ、何を考え、どんな行動をしているかを把握するには、セミナーや統計データからの情報収集だけでなく、一次情報に触れることが大切です。学生との会話やアンケート、キャリアセンターとの情報交換などを通じて学生の志向や行動を読み解いていきましょう。

競合の打ち出し方をひも解く

山下さん: 続いて、採用上の競合に当たる企業の打ち出し方にも目を向けてみましょう。

特に重要なのは、「学生にとって競合他社がどう映っているか」という視点です。就職サイトやパンフレット、合同説明会のブースなどを通じて、各社がどのような強みをアピールしているのかを観察してみてください。

競合企業は自社と似た学生像をターゲットとしている可能性が高いですね。「どんな情報を、どんな表現で、どのタイミングで伝えているか」を見ることで、その採用戦略が見えてきます。そして、自社が取るべき方針も明確になっていくでしょう。

もちろん、競合企業のやり方をそのまままねするわけではありません。例えば競合企業が「成長環境」を強く打ち出しており、自社ではそれに対抗しづらいと感じる場合は、「安定性」や「教育制度の充実」といった別の魅力を前面に出すことで、戦略的な差別化が可能になります。

自社の魅力とアプローチを見極める

山下さん: 最後に、「自社」の打ち出し方を見直してみましょう。日々、採用活動の中で自社の魅力をPRしているつもりでも、改めて採用市場の中で自社がどのように見られているのかを分析したことがある企業は意外と少ないのではないでしょうか。

まずは学生からどのように「見られているか」を知ることです。内定者・辞退者のインタビューを通じてなぜ内定を受諾したのか、あるいは辞退したのかを丁寧に聞いていくことで、自社の強み・弱みをより具体的に把握することができます。

例えば「環境に配慮した事業を展開していること」が自社の魅力だと考えていても、実際には学生は「勤務環境の良さ」に引かれて内定受諾していた、などのすれ違いはよくあることです。こうした自社と学生の間にある「強み・弱み」の認識の違いを把握することで、どんな学生にどのような魅力を伝えることが有効なのかが見えてきます。

— マーケティングと聞くと少し遠い世界のような気がしてしまいますが、こうして一つずつ見ていけば「当然やるべきこと」だと実感できますね。

山下さん: そのとおりです。マーケティングの基本は、今ある環境の中でいかにターゲットから選ばれるかを考えるところから始まります。採用市場を正しく把握し、学生の視点に立って自社を見つめ直すことが大切です。

「伝え方」を設計する 誰に・何を・どう届けるか

— 学生へ訴求すべきことが見えたところで、それをどのように伝えていくかも重要ですね。

山下さん: 訴求点が決まっても、受け取る学生は就職活動の中で状況も志向も変化していきます。「どんな学生に・どんな価値(情報)を・どのタッチポイントで伝えるか」も考えていかなければなりません。

例えば、先ほどの分析によって、アピールすべき強みが「人間関係の良さ」であると分かったとします。

しかし、接点によって「伝え方」は変わります。同じ学生であっても就職活動の序盤と選考中では視点が異なりますし、意外と見落とされがちなのが、「媒体に接するときの学生のモードの違い」です。

— モードの違いとは、どのようなものでしょうか?

山下さん: それぞれの媒体を使っているときの心持ちのようなものでしょうか。例えば、「ナビサイトを見ているとき」と「SNSを見ているとき」では、学生が潜在的に求めている情報の種類は異なります。

人間関係の良さを伝えたいとき、ナビサイトでは「制度として1on1があること」や「平均勤続年数」などのデータに基づいた情報が学生の納得感を深めるかもしれませんが、SNSでは「社員同士が笑顔で話す日常の短い動画」のような、感覚的に伝わるコンテンツの方がより強い説得力を持つこともあるでしょう。

この設計がズレてしまうと、せっかくの強みも伝わらないのです。

— ナビサイトだけに自社情報を掲載することと比べると、大きく手間が増える印象です。

山下さん: そのとおりですね。ただ、最初にお話ししたように現在の市場環境や、学生の就活スタイルの多様化を考えれば、このように学生の立場に立って細分化されたアプローチを設計することが、採用成功への鍵となります。

ただし、最初から「設計どおりに成功する」と考えないことも重要です。マーケティングの本質は「仮説→実践→検証」のサイクルを繰り返しながら、徐々に改善していくことにあります。

まずは小さな打ち手から試し、反応を見てみましょう。例えば会社説明会での反応、参加者の属性の変化、辞退理由の変化などです。

すると、「社員の生の声が反応が良い」「説明会参加者が採用したい人材像に近づいてきた」「内定承諾理由が“待遇”から“社風”に変わってきた」などの情報が集まり、「響くポイント」や「伝わり切っていない情報」が見えてきます。

— それらをもとに戦略を変えていくわけですね。

山下さん: そのとおりです。そうしたサイクルを繰り返すことで、成果を確実なものにしていき、採用力を底上げしていくことができます。

見えない成果と向き合うこと

— いま伺った「検証」は、施策に対する反応を見るものでした。通常、採用業務では「選考参加率」や「内定承諾率」を成果として捉え、それらの改善を図ります。設計が複雑化する中で、何が成果につながっているかが見えにくくなってしまうこともあるのではないでしょうか。

山下さん: そうですね。ここが難しいところであり、もどかしく感じられる部分だと思います。特に、学生への認知を目的とした新しい施策に挑戦するときは、具体的なアクションにどれだけつながったかが見えにくく、徒労感を覚えたり、上席の理解を得られなかったりする場面もあるかもしれません。

しかし、考えてみてください。普段の生活で一度も購入したことのない商品やブランドの広告が繰り返し表示されることがありますよね。「購入」だけを成果の指標にするのであれば、その広告は失敗といえますが、それでも続ける理由があるから、繰り返し表示されているわけです。

— そうですね。成果につながらないのであれば、広告費を使う理由がありません。

山下さん: それでも広告が続けられる理由は、「商品やブランドに、なんとなく好感を持ってもらうこと」や「名前だけでも覚えてもらうこと」が、成果につながる重要なステップと捉えられているからです。

これは採用におけるマーケティングでも同じです。すぐには選考参加率に影響を与えない施策かもしれませんが、学生の中で「なんとなく面白そうな企業だ」とか「なんか雰囲気のいい会社だな」とか、そういった印象を抱いてもらうことができれば良い。そういう指標の持ち方も大切になってきます。

— しかし、そのような指標を測ることは難しくないでしょうか。

山下さん: 難しいというより、「数字に表れにくい」と捉える方が正確かもしれません。しかしそれは「数字には表れないが、確実に存在している成果」なのです。たとえ応募が就職サイトや採用ホームページからであったとしても、学生がどこかでその企業を目にしていたことが意思決定に影響している場面は少なくありません。

仮説、実施、検証のサイクルを繰り返しながら、こうした「数字に表れにくい成果」を信じて積み重ねていくと、1年後、2年後には他社との差は大きく開いていくでしょう。

— 採用担当者としては、なかなかつらい道のりのようにも思えます。

山下さん: そうですね。だからこそ、一人で抱え込まないことが大切です。外部のパートナーを頼ってもいいですし、社内の他部署を巻き込んでも良いでしょう。同じ視点で考え、見えない成果を一緒に積み重ねていく仲間がいれば、続けられることもあるはずです。

採用市場は、今後ますます厳しさを増していくでしょう。その中で、他社に差を付けて採用力を高めていくためにも、ぜひ挑戦してみてください。

まずはできることから「マーケティング視点」を

採用活動にマーケティングの視点を導入する。一見すると新しい取り組みのように思えますが、実際には「学生の行動や状況に合わせて適切に情報を提供する」という、採用活動における基礎的な考え方そのものです。

その上で、「選考参加など直接的な成果につながらない施策も試してみる」「数字に表れにくい成果を捉える」「成果をもとに検証と改善を繰り返す」という、少し新しい視点を加えれば、それは立派なマーケティング活動と言えるでしょう。

まずは、

  • 内定承諾者・辞退者になぜその選択をしたのかを聞いてみる
  • 競合他社のナビサイトやパンフレットを「学生視点」で見てみる
  • 自社がどのような印象を持たれているのか、出会った学生に聞いてみる

といった、小さなアクションから始めてみるのはいかがでしょうか。

情報があふれる今の時代に「学生に選ばれる企業」になるためには、こうした地道な積み重ねこそが力を発揮するはずです。資料では、具体的な採用マーケティングのフレームとアクションを例とともにご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

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  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2025/08/04
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