理系採用は“夏の接触”がカギ。多極化する学生動向と、中小企業が勝つための母集団形成ステップを解説
理系学生の採用は、文系職とは異なる打ち手が必要になる領域です。マイナビの調査では、2026年3月1日時点で内々定を保有している27年卒の学生は、全体で約46%、理系に絞ると56.5%に上り、さらに4月になると理系の内々定保有率は約80%に達します。
つまり、就職活動解禁前のいわゆる「インターンシップ&キャリア形成期間」にどれだけ学生と接点を持てるかが、採用の成否を大きく左右する可能性が高いということです。
本記事では、マイナビで数多くの企業の理系採用を支援してきた清水悠右に、近年の理系学生の動向と、中小企業や新規参入企業が押さえるべき工夫を聞いていきます。
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理系学生の就職活動の肝は「研究室コミュニティ」
— 「文系と理系で、採用の打ち手を分けて考えるべき」とよく聞きます。その背景はどのようなものでしょうか。
清水:
理系学生の就職活動の大きな特徴が、大学や研究室といったコミュニティの存在です。
理系の学生は、学部の段階から大学に通う時間が長く、授業も多い。その分、研究室を介した縦のつながりが、文系よりもかなり強くなります。
— そのつながりは、就職活動にどう影響しますか。
清水: OB・OGがどこに就職しているのか、就職活動をどう進めたのか。そういった「成功モデル」や体験談を、身近な人から常に聞ける環境にあるんです。
最終的にどの企業を受けるか、志望順位をどう付けるかの判断軸を、自分の研究室や学校の中でつくり上げていく。ここが、文系学生との一番大きな違いだと感じています。
— ということは、企業側は「OB・OGが研究室で語っているリアル」と同じ解像度で、自社のリアルを学生に届けないと、情報量で見劣りしてしまうわけですね。
清水: そのとおりです。だからこそ、この後お話しする「社員との接点機会」が、理系採用ではとても重要になってきます。
「早期化」のみならず、「多様化」「多極化」する学生の動き
— 最近の理系学生の動きは、これまでと比べてどう変わっていますか。
清水: 採用市場でよく聞かれる「早期化」ですが、実際には単純に早まっているというよりも、「多様化」「多極化」が進んでいると捉える方が実態に近いかもしれません。
— もう少し具体的に教えてください。
清水: 例えば夏のインターンシップ一つとっても、5日間のプログラムにあまり調べずに参加する学生もいれば、複数社のオープン・カンパニーを比較した上で、より理解を深めたい企業に絞って参加する学生もいます。同じ「夏に動いている学生」でも、人によって温度感が全然違うんです。
実際、夏のうちに5~10社参加する学生もいれば、文系も含めると30社近く回る学生もいて、逆にほとんど参加していない学生もいる。1社の中で2つのプログラムに参加する学生もいるので、私たちが統計として捉えている以上に動いている層と、まったく動いていない層が、はっきり分かれているのではないかと思います。
なので、統計情報などだけをもとにして、「面として」マーケットを捉えることには危険もあります。もっと細かな粒度で見ていくべきですね。
— 具体的に企業側は学生をどんな粒度で捉えるべきでしょうか。
清水: 理想は一人ひとりの動きを見ることですが、現実的には難しいでしょう。
専攻分野、地域、学校群といったある程度のくくりでペルソナを置いた上で、採用上の競合となる可能性の高い「ロールモデル企業」の動向を押さえていく、というのが現実解だと考えています。
大手とバッティングするのであれば、大手のスケジュールに合わせて真っ向勝負するのか、大手の選考が終わった後に丁寧に向き合うのか。戦い方の選択肢が分かれてきます。
— 「面でマーケットを捉える」ことのリスクはどこにありますか。
清水: 私たちが「面」で全体像をお話しすると、ほぼ必ずお客さまから「うちはちょっと違うんだよね」というお声が返ってきます。地域・業種・規模で実態がそれだけ違うということです。
だからこそ、面で語ろうとせず、自社と条件の近い具体的なロールモデル企業を見つけて、その動きを参考にする方が、結果的に外しにくい打ち手につながります。
プレ期間にやるべきは、「リソース」と「武器」の棚卸し
— では、理系採用をこれから始める、あるいは久しぶりに本気でやろうという企業は、何から手を付けるべきでしょうか。
清水: 最初に確認していただきたいのは、「インターンシップ&キャリア形成期間に自社として学生に何を提供できるか」というリソース面です。
特に理系採用では、インターンシップ&キャリア形成期間の重要性が高いんです。3月1日時点で全体の46%、理系では56%の学生がすでに内々定を持っている。4月になると理系は約80%まで上がります。
— 3月の段階で理系の半数を超えるんですね。
清水: はい。ですから企業さまには、「3月時点でまだ約50%の学生が内々定を保有していない状況の中、その学生層との接点づくりを重視するのか、それともインターンシップ&キャリア形成期間から認知形成に取り組むのか」を意識して動いていただきたいのです。
5日間のインターンシップを組めるのか、1〜2日の仕事体験を先輩社員の協力で実施できるのか、それともオープン・カンパニー型でやるのか。まずは「自社にできること」をテーブルに並べることがスタートになります。
— 次に整理すべきは何でしょうか。
清水: 自社の「魅力」の棚卸しです。
ここで大事なのは、「絶対にここが他社より優れている」と言える唯一無二の強みを探そうとしないことです。「同業のあの会社と同じくらい、うちもいいよね」と言える材料がいくつかあれば十分。むしろ、自社を語れる名刺代わりの情報をどれだけそろえられるかの方が重要です。
学生は最終的に「雰囲気が合うか」「自分に合うか」「働くイメージが湧くかどうか」で意思決定していくので、企業側はその判断材料となる情報をなるべく多く提示する必要があります。
— 自社の魅力を棚卸ししたいけれど、自分たちでは見えにくいという企業も多いと思います。
清水: 私がよくお伝えしている方法は2つです。
1つは、生成AI(ChatGPTなど)に自社のことを聞いてみる方法。昨今の学生の多くが、企業研究に生成AIを利用しています。生成AIに自社について聞くことで、学生からどのように見られているかを知ることができるわけです。もし違和感のある記述があれば、学生に対してそこを解きほぐすようなコミュニケーションを行うのが良いでしょう。
もう1つは、会社の歴史を振り返ること。長く続いてきた会社には、必ず経営判断や事業転換の積み重ねがあって、そこに社風や強みのヒントが隠れています。過去から現在に至るまでの情報を整理していくと、「自社ってこういう会社なんじゃないか」という糸口が見えてくることはよくあります。
中小企業でも必ず仕込みたい「社員との接点」
— リソースもマンパワーも限られる中小企業にとって、現実的に何が有効打になりますか。
清水: 採用担当者の皆さまには、「社員と接点を持てる機会を、必ず一つはご用意ください」とお伝えしています。
座談会、リクルーター、選考の途中で先輩社員に話を聞ける場……形式は何でも構いません。先ほどお話ししたとおり、「社員との接点機会」が、理系採用ではとても重要だからです。
そういった点においては、現場社員の巻き込みが欠かせません。他にも、例えば学校訪問を採用担当者以外の社員に分担してもらう、社長や役員に「理系採用の難しさ」を共有して、登壇や面接の同席に協力してもらう、といった工夫も有効です。
よくお客さまと整理させていただくのは、事業面の強みと人、組織面の強みです。前者で言えば、「なぜこの会社はおさまに選ばれているのか」「なぜ黒字経営が長く続いているのか」といった理由の整理。後者は、「離職率が低い」「若手が生き生き働いている」「研修が手厚い」といった特長です。
これらを言語化し、社員自身の口から伝えていただくこと。結局のところ、これが理系採用の成功要因になっていきます。
— 実際に、中小企業で理系採用がうまくいっている事例はありますか。
清水: 私が担当していた企業さまで、印象的だったところがあります。500名規模の建設会社で、決して大企業ではありませんが、毎年安定して理系学生を採用されています。
ポイントは、現場社員の協力を会社全体で取り付けていること。インターンシップの受け入れ、面接への同席、先輩社員の情報発信まで、現場が「採用は会社全体の仕事」という姿勢で関わっています。
5日間のインターンシップをはじめとした取り組みを通じて、結果として複数名の採用・入社につながっているのも、この「現場巻き込み」が土台になっています。
総じて理系採用は、特定の魔法のような打ち手があるわけではなく、地道な準備の積み重ねが効いてくる領域です。中小企業であっても、自社らしさを丁寧に言語化していけば、必ず戦いどころは見つかります。
そのためにまず必要なのは、「自社のリソースを棚卸しした上で、武器を整理し、社員との接点機会を仕込む」という土台です。マイナビはこの土台づくりからご一緒できますので、結果的に最短距離で成果に近づけると考えています。理系採用に挑戦しようかを迷っている段階でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。
地道な「土台づくり」こそ、理系採用の最短距離
理系学生の意思決定は、研究室という濃密なコミュニティの中で育まれます。
先輩の体験談が判断軸を形作る以上、企業側に求められるのは、「それを上回る、現場社員のリアル」をいかに学生の手元まで届けるか、という接点設計です。
まずは自社で提供できる「接点機会」を棚卸しし、次に自社の魅力を分析した上で、「やれるだけのことをやる」という、ある種の泥臭さが理系採用を成功に導きます。
今後ますます人気の高まりが予測される理系学生。その採用計画に少しでもプラスになれば幸いです。
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- 人材採用・育成 更新日:2026/07/27
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