2027年卒採用の見直しポイントを市場動向から考えるセミナーレポート
本記事は、2026年4月に開催した「2027年卒 新卒採用市場動向報告会」にてお話しした内容をもとに構成しています。
「市場動向報告会」は、株式会社マイナビが例年4月・7月に開催している、新卒採用市場や学生動向の変化を解説するセミナーです。例年、多くの企業の人事担当の方にご予約いただいており、採用戦略を考える上での情報収集の場としてご活用いただいています。
新卒採用市場の変化が加速する中、多くの企業が選考途中の離脱や内定辞退に悩んでいます。本記事では、約600社の採用変革を支援してきた河本英之氏(シーズアンドグロース株式会社)のセミナー内容をもとに、2027年卒採用をいまから立て直すための実践的なポイントを解説します。
2027年卒採用の現状と課題
選考は「企業が選ぶ場」から「相互に見極め合う場」へ
人口減少が続く日本では、売り手市場の傾向が今後も継続すると見られています。かつて「企業が学生を選ぶ」一方的な構図だった選考は、いまや企業と学生がお互いに見極め合う双方向の場に変わっています。
学生が「つまずく」3つの場面
多くの企業が、「エントリーしたのに説明会に来ない」「説明会には来たのに選考に進まない」「選考途中で離脱してしまう」「内定を出しても承諾せずに保留・辞退される」といった悩みを抱えています。これらはいずれも、候補者にとって「バッドCX」が生まれているサインです。CXは「Customer
Experience」、つまり顧客(候補者)体験の略です。
本記事では、こうした悩みを抱える企業がすべきことを、CX改善という観点から明らかにしていきます。
バッドCXが起こる原因と良いCX設計
なぜバッドCXが生まれるのか
バッドCXの根本原因は、担当者や選考フェーズによって対応の質やメッセージがばら付くことにあります。AさんとBさんで言っていることが違う、フェーズが変わるたびに話の内容がブレる——こうした一貫性のなさが学生を混乱させ、志望度の低下や選考離脱を招いています。
採用活動を「点」ではなく「線」で捉える
一貫性のある選考体験とは、採用活動の各接点(エントリー→説明会→面接→内定後)をバラバラな「点」としてではなく、つながった「線」として設計することです。全ての接点において学生の充足感・満足度を上回る体験を提供し続けることが目標になります。
ここで重要なのは、「全部伝えること」ではありません。各フェーズにいる学生が何を知りたがっているか、何に不安を感じているかを正確に捉え、その段階で必要な情報を的確に提供することが、志望度の醸成と離脱防止につながります。
人間が一度に吸収できる情報量には限りがあります。伝えすぎてお腹いっぱいにしてしまわないよう、情報の取捨選択を意識することもポイントです。
良いCX設計のためのフレームワーク:候補者ジャーニー
良いCXを設計するには、採用活動の中で学生の理想的な態度変容を描くことが出発点となります。
「こんな企業があるんだ」という認知から始まり、興味・理解・共感を経て選考に踏み出し、「自分に合うのはこの会社だ」という確信、「内定を承諾しよう」という決断、「社会人になる準備ができた」という覚悟へと至る一連の変化を「候補者ジャーニー」と呼びます。
この流れを念頭に置き、接点ごとに適切な体験を提供することが、選考プロセスにおける不安・不満の早期解消につながります。
この候補者ジャーニーを考える上では、逆算の発想が重要です。「最終的にどういう承諾理由で入社してほしいか」というゴールから逆算して、各フェーズで何をどこまで伝えるべきかを決めていきます。
積み上げ式で考えると、どうしても各施策に言いたいことを詰め込みすぎてしまい、結果的に学生の企業理解が進まないということになりがちです。一つひとつの施策に対して上がってくる、また上がってきてほしい学生アンケートの回答や感想を想像するところから始めてみましょう。
例えば中堅IT企業A社では、採用コミュニケーションマップを整備し、会社の魅力や強みだけでなく、「リアルな厳しさ」も訴求することで、入社後に働く覚悟の醸成につなげました。また、企業・仕事内容への深い理解と社会人としての考え方の習得を促すことで、不安の払拭(ふっしょく)や入社後ギャップの縮小にも成功しています。
選考フェーズごとの有効な改善策
① エントリー → 説明会参加
エントリー後にサンクスメールがない、日程案内が遅れるといった対応の薄さが、学生の不信感につながっている恐れがあります。エントリーから説明会参加への移行率は70%程度が一つの目安で、それを下回っている場合は改善の余地があるかもしれません。
説明会に来ない学生は大きく3層に分かれます。単純に失念している「忘れてしまっている層」、他社を優先して後回しにしている「今じゃなくていいと思っている層」、すでに気持ちが冷めている「志望度が低下している層」です。
最も注力すべきなのは、中間の「今じゃなくていいと思っている層」です。忘れている層はリマインドで動きます。そして、志望度が低下している層への強いアプローチは逆効果になりかねません。中間層を動かすには、「今参加する目的」を与えることがカギになります。
具体的なアプローチとしては、「残り〇枠」といった残席情報による緊急感の訴求や、「2026年卒内定者の〇割は4月に説明会参加」といった先輩の動き方の発信、就職活動全体の動向情報の共有などが有効です。また、「〇〇大学のあなたへ」といった個別メッセージや個別面談の提案、社内イベント紹介など企業の素顔が伝わる情報発信も効果的です。
ただし残席情報については、虚偽の発信をしてしまった場合、不信感につながるリスクがあるため注意が必要です。いずれのアプローチも、自社のマンパワーに応じて効果を検証しながら取り組むことが前提になります。
② 説明会参加 → 選考参加
説明会が企業目線の一方通行になっており、学生が求める情報を提供できていないケースが多く見られます。
こうした課題への改善策の一つが、業界理解イベントと説明会の同時開催です。業界理解や企業研究など、学生が就職活動に直接生かせるコンテンツと説明会をセットで開催することで、参加の敷居を下げられます。「その企業だけを深く知りたいわけではないが、業界には興味がある」という層の取り込みにも有効です。
もう一つの改善策は、面接官プロフィールの事前公開です。次の選考で会う面接官の氏名・役職・趣味などをあらかじめ公開することで、学生の緊張感を和らげ、選考参加への移行率を高められます。
役職者との面接は特に緊張を生みやすいため、人物像が見えるだけで安心感は大きく変わります。
③ 面接参加 → 次回面接
企業が「学生を選ぶ側」という態度を取ることで、学生が対等な目線を感じられなくなるのが課題です。相互に見極め合う時代においては、面接官からの情報提供や学生への関心が志望度を左右します。
改善策として有効なのが、合否連絡時に選考のフィードバックをすることです。ただし、全員に異なるフィードバックをするのは、リソース的にも大変だと思います。
そこでお勧めしたいのが、フィードバックポイントの一覧化です。学生のタイプ別にフィードバック(FB)内容をあらかじめ整理しておき、個別連絡の際に活用します。全担当者が一定基準でFBを提供できる上、学生に対して「自分のことをしっかり見てくれている、評価してくれている」という安心感や信頼感を与えることができます。
一方で、強みだけでなく弱みを指摘するフィードバックは、特に優秀層に刺さることがありますが、外すと逆効果になるため、慎重に使うことが必要です。
④ 内定(内々定) → 内定承諾
内定を承諾するか否かの主導権が、学生側に移った状態です。ここで何も手を打たないでいると、他社に決められてしまうリスクが高まります。
改善策として有効なのが先輩社員面談ですが、企業側が一方的にセッティングするだけでは効果が薄いのが実態です。学生が「目的を持って参加できる」設計が重要になります。
例えば、「不安払拭(ふっしょく)のため」「〇〇について聞くため」など、面談の目的を学生に明確に伝えること、複数の先輩社員候補から学生自身に選ばせること、事前に質問を考えてくるよう促すことが効果を高めます。先輩社員が意気込んで来ても、学生側に目的意識がなければ、双方にとって無駄な時間になりかねません。
CX改善ポイントの見極め方
自社のどこに課題があるかを判断するために、3つの指標を活用することをお勧めします。
① 選考ステップごとの歩留まり調査
各選考フェーズで合格した学生が次に進んだ割合をATSなどで分析し、前年度と比較するものです。例えば、エントリーから説明会参加への移行率が70%を下回っている場合や、合格者の次ステップへの移行率が80%を切っている場合は、何らかの問題があると考えて良いでしょう。
② 候補者満足度指数(CSS)
選考後に「選考体験に満足しましたか?」などを、5段階評価でアンケート収集するものです。面接官別・選考段階別にスコアを比較することで、特定の担当者や選考過程に課題があるかどうかが見えてきます。
③ 候補者から見たお勧め度(cNPS)
「この会社の選考体験を、友人や知人に勧めたいと思いますか?」という質問に回答してもらう調査です。バッドCXの検出だけでなく、ファン化度合いを測ることを目的としています。選考で縁がなかった学生でも、「あの会社は受けてみる価値があった」と思ってもらえれば、リファラルや将来の中途採用にもつながっていきます。
現代の採用トレンド:「ピンポイント就活」とは
一斉エントリーから絞り込み型へ
近年のトレンドの一つが「ピンポイント就活」です。多数の企業に応募せず、数社に絞って選考を受け、狙った企業から内定を得たら就職活動を終了するスタイルを指します。特に理系学生や早期からキャリア教育を受けた学生に多く見られます。
ピンポイント就活の学生の特徴
ピンポイント就活をする学生は、受ける企業数こそ少ないものの、一社ごとに企業をよく調べています。その上で数社を比較検討し、内定先を選んでいます。そのため、最終選考まで前向きな姿勢を示していたにもかかわらず、またその後もしっかりとフォローしていたにもかかわらず内定辞退することがあります。それだけ自分の軸に従った意思決定をしているためです。
学生が内定承諾に当たって求めるフォロー
当社・シーズアンドグロースの調査によると、学生が承諾を決めるに当たって求めるフォローの1位は、「人事担当者との個別面談(22.8%)」、2位は「現場社員との少人数での対話機会(17.4%)」でした。全体の傾向として、個別・少人数のフォローへのニーズが強いことが分かります。
また、承諾した企業と辞退した企業のフォローの違いとして最も多く挙げられたのが、「自分のことを把握した上で対応してくれているかどうか(18.5%)」でした。
個々の学生の不安や疑問にどこまで寄り添えるかが、承諾を左右する大きな要因になっています。
効果的な内定者フォローのポイント:個別最適化×複数回実施
効果的な内定者フォローの要は、「個別最適化」と「複数回実施」の組み合わせです。個別最適化とは、学生の就活状況・志向性・不安に合ったフォローを行うこと、複数回実施とは理想として4回以上の定期的な接点を持つことを指します。
具体的な進め方として推奨するのが、内定者をタイプ別に分類することです。例えば「福利厚生を重視する軸の学生」「社風・組織風土を重視する軸の学生」「競合他社と迷っている学生」のように3〜5タイプに整理し、タイプごとに適したフォロー施策を設計します。
これを実践することで、複数回の接点を通じて、他社の選考状況に合わせた情報提供ができるようになり、内定承諾率の向上につながるでしょう。
また、翌年以降の採用計画の精度向上にも貢献します。辞退フラグや内定承諾の確度が把握できるため、「どの学生にパワーをかけてフォローすべきか」という優先順位の判断に役立つからです。限られたマンパワーをどこに集中させるかを見極められることは、採用担当者にとって大きなメリットです。
まとめ――一つひとつの接点を精査し、改善すればおのずと成果は出る
採用におけるCXとは、学生が企業に触れる全ての接点(エントリー→説明会→面接→内定後)で「一貫して良い体験」が提供されているかという視点です。
全てを一度に変える必要はありません。選考フェーズごとの歩留まりや候補者満足度を手掛かりに、CXが低下しているポイントから着手することが重要です。
企業規模や業界にかかわらず、戦略的に取り組めば必ず成果は出ます。「今から間に合う」という意識で、一つひとつの接点を見直していくことが、27年卒採用の立て直しにつながります。
本レポートでは、セミナー内容のポイントを抜粋してご紹介しています。
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- 人材採用・育成 更新日:2026/07/08
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