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「タイパ」重視のピンポイント就活が台頭。早期接触と見極めで勝機をつかむ

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「タイパ」重視のピンポイント就活が台頭。早期接触と見極めで勝機をつかむ

2026年卒以降、就職活動のスタイルが変化の兆しを見せています。「まずは広く浅くエントリーして、絞り込みながら活動を進めていく」従来のスタイルから、「早い段階で数社に絞って深く研究し、納得の1社から内定を得たら早期に活動を終える」スタイルに移行しつつあるのです。

この「ピンポイント就活」とも呼ばれる新たなスタイルの背景には、学生の「コスパ・タイパ(時間対効果)」を重視する志向の強まりがあると考えられます。

本記事では、企業の採用支援を多く手掛けるシーズアンドグロース株式会社の代表取締役河本英之氏に、学生の心理変容の背景と、企業が取るべき「見極め」の技術、そして入社後の定着までを見据えた新時代の採用戦略について、詳しく伺いました。

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  • シーズアンドグロース株式会社 代表取締役 河本英之さんのポートレート写真
  • 河本 英之 さん シーズアンドグロース株式会社 代表取締役

    2005年、株式会社リンクアンドモチベーション入社。その後、同社の人事を担当し、08年に全社MVPを獲得。10年に採用コンサルティング・育成コンサルティングを専門とするシーズアンドグロース株式会社を創業し、現職。

コスパ・タイパ重視が加速させる「ピンポイント就活」の正体

— 昨今、学生の就職活動スタイルが「ピンポイント就活」へと変化しているといわれていますが、現場ではどのような変化を感じていますか。

河本さん: これまでの就職活動は、「20社ほど受けて2〜3社から内定を獲得し、その中から最終的な1社を選ぶ」という形が主流でした。しかし、今は「深く狭く」探して、満足度の高い1社から内定を得たら終了するスタイルが増えています。

背景には、「コスパ・タイパ」意識があるでしょう。今の学生は、就職活動をある種の「義務」のように捉えている側面があり、早く終わらせられるならそれに越したことはないと思っている傾向があるようです。

— 就職活動そのものを効率化したい、という心理ですね。

河本さん: 「自分にとって100点満点の会社はどうせ見つからないから、ダラダラ探し続けるのは時間の無駄」「70〜80点の納得感があれば十分」と考える。だからこそ、インターンシップなどを通じて早い段階で接点を持った企業の中から、受ける企業を早期に決めてしまおうとする学生が多いようです。

企業側からすれば、採用広報解禁となる3月になっても、採用したい学生が想定よりも集まらない、という現象が起きています。

内定者の「フラグ」を見極める――ピンポイント就活生を特定する3つのポイント

— 学生が「この1社(自社)で決める」と思っているのか、まだ活動を続けるのかを見極めるのは非常に難しいと感じますが、何か指標はありますか。

河本さん: 私は企業さまへのご支援の中で、学生が「ピンポイント就活で終わるか(自社で内定受諾するか)」を見極める3つの質問をお伝えしています。

内定者の意思決定を見極める質問1:「内定承諾理由は何ですか?」

「社風が良くて」のような、どの企業にも当てはまりそうな理由が挙がった場合は、活動を継続している可能性も考えられます。
逆に、自社にしか当てはまらない、具体的な理由を挙げた場合はポジティブなフラグとして受け取れます。

内定者の意思決定を見極める質問2:「当社で内定承諾したことについて、周りはどのような反応ですか?」

親や大学の担当教員、友人などに、自社の内定を受諾したと伝えた際の反応がどうだったかを聞いてみます。本気で内定受諾をしていない場合、周りには伝えていないことが多いので、口ごもってしまう学生が多いんです。

ここで具体的な言葉が出てくれば、ポジティブなフラグとして受け取ることができます。

内定者の意思決定を見極める質問3:「辞退していた企業の人事の方は何とおっしゃっていましたか?」

辞退した企業の担当者の反応を聞くと、やはりまだ継続している学生は回答が濁ります。「応援してくれました」とか「残念がっていました」などと具体的に言える子は、本当に区切りを付けている可能性が高いですね。

企業に求められる「学生視点」のマーケティングと懸念払拭(ふっしょく)

— なるほど。一律のフォローではなく、その見極めに合わせた「個別戦略」が必要なのですね。

河本さん: そのとおりです。これらの質問から「入社可能性」を見極め、可能性の低い学生についてはその理由を推測して内容別に対応するといいでしょう。

シーズアンドグロース株式会社 代表取締役 河本英之さんのポートレート写真

もし就職活動継続の可能性が高い学生がいた場合、その理由として考えられるのは、大きく2つです。「(他に候補があるわけではないが)本当にこの会社に入っていいのかが不安」というパターンと、「競合他社とまだ迷っている」というパターンです。

前者の場合はその不安を払拭(ふっしょく)できるようなイベント(座談会など)を、後者の学生には他社との違いを明確にする面談などを、というようにカスタマイズすることが求められます。

これまでのように全員を集めた内定者研修で一律にモチベーションや就社意欲を高めようとしても、今の学生には響きにくい傾向にあります。

— 学生の心に刺さるアプローチをするために、企業は何をすべきでしょうか。

河本さん: 自分たちの魅力を一方的にアピールする「加点」だけでなく、学生が抱く「懸念」を先回りしてつぶす「減点防止」の視点が不可欠です。

今の学生は、少しでも将来に不安を感じればすぐに離れてしまう傾向があります。「この業界は将来性がないのでは?」「入社後にミスマッチが起きるのでは?」といった懸念に対し、誠実な情報を言語化して提供できるかが勝負です。

— 自社の「懸念点」を正確に把握するのは難しいようにも感じます。

河本さん: そこはマーケティングの発想です。自社の1〜2年目の若手社員に、「受ける時に何が不安だったか」をヒアリングする。あるいは、内定者や学生に直接「うちのホームページを見て、どこが分かりにくい・不安と思った?」と聞くのも手です。

企業側は自社の弱点を見抜くことが難しい傾向がありますが、学生はそこを敏感に察知します。言語化能力を磨き、自社の魅力と懸念の両面を適切に伝える努力が、結果として70〜80点の満足度を100点に近づけるクロージングにつながります。

部分売り手市場を生き抜く「ポテンシャル採用」と外部リソースの活用

— 一方で、ここまで議題にしてきた「ピンポイント就活」ができる学生と、そうではなく就職活動に苦労している学生に二極化しているという話も聞きます。そのような二極化が進む中で、今後の採用戦略の展望を教えてください。

河本さん: はい。いわゆる「部分売り手市場」という考え方ですね。

これからは「自社の要求を全て備えた100点の学生」だけを狙うのはますます難しくなります。なぜなら、その層は多くの企業が求めるので、「ピンポイント就活」で早々に他社の内定を受諾してしまっている可能性が高いからです。

シーズアンドグロース株式会社 代表取締役 河本英之さんのポートレート写真

そこで重要なのが、採用基準のうち、「先天的なもの(育成できないもの)」と「後天的なもの(育成できるもの)」を切り分けることです。

最初から完成された「スーパーマン」を求めるのではなく、入社後に教育できる要素は後天的なものとして捉え、多少ハードルを下げてでもポテンシャルのある層を確保し、育てていく。この「育てる採用」へのシフトが必要です。

— そのためには、一人ひとりに向き合う時間とパワーが必要になりますね。

河本さん: おっしゃるとおり、個別対応の重要性は増すばかりです。

しかし、多くの企業ではマンパワーが足りないのが現実です。RPO(採用業務アウトソーシング)サービスなどをうまく使いながら、事務的な作業や母集団形成を効率化することが重要になります。

それによって生まれた時間を、学生との深いコミュニケーションや、内定者ごとの個別カルテ作成といった「人間にしかできない、心のグリップ」に充てる。これが、ピンポイント就活時代の勝ち筋になると確信しています。

「狭く深く」の就職活動に対応できる企業へ

学生の価値観が「タイパ重視」へと大きくシフトする中、企業側も従来の一律的なアプローチを根本から見直さなければならないタイミングに来ています。

今回の取材を通じて浮き彫りになったのは、学生の不安や懸念を先回りして解消する「マーケティング的視点」の重要性です。

自社の魅力を一方的に語る「加点」の姿勢だけでなく、学生が抱く微細な違和感を言語化し、一つひとつ丁寧に取り除いていく。その誠実な対話こそが、ピンポイント就活を行う学生の「納得感」を醸成し、内定承諾への最後のひと押しとなるのです。

また、市場の二極化が進む「部分売り手市場」においては、完成された100点満点の人材を追うだけでなく、入社後に育成可能な要素を見極める「育てる採用」への転換も欠かせません。

採用競争が激化する中で、事務的な作業はアウトソーシングなどの外部リソースを賢く活用して効率化し、そこで生み出した貴重な時間を、一人ひとりの学生と深く向き合う「人間にしかできないコミュニケーション」に充てること。

それこそが、変化する就職活動トレンドの中で自社に最適な人材を確保し、入社後の活躍までを支援するための、最も本質的な戦略と言えるのではないでしょうか。

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  • 人材採用・育成 更新日:2026/03/10
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