経営と人材をつなげるビジネスメディア

MENU CLOSE
1 s_saiyo_s01_s20250919115952 column_saiyo c_internshipc_knowhowc_shinsotsusaiyoauthor_organization_saponet

インターンシップを“成長の場”に変える、採用担当者のためのコーチング入門

/news/news_file/file/thumbnail_s-column-275.webp 1

多くの学生がインターンシップを通じて企業との最初の接点をつくっている昨今、企業にとってもその重要性は高まる一方です。

そのインターンシップにおいて、学生の満足度を左右する要素の一つが「フィードバック」。フィードバックによって成長実感や新たな気付きを得ることが、そのままインターンシップの満足度に直結することはデータによっても示唆されています。

インターンシップ・仕事体験の応募や申し込みをするにあたり、重視することを表したグラフ
出典:マイナビ2027年卒大学生キャリア意向調査4月<インターンシップ・キャリア形成活動>

では一体、学生にとって「良いフィードバック」とはどのようなものなのでしょうか。

学生のキャリア形成活動について研究されている実践女子大学 人間社会学部の初見康行先生は、「学生が自ら気付きを得られるように支援する“コーチング”が一つの鍵となる」と語ります。このことについて、初見先生に詳しくお話を伺いました。

  • 実践女子大学 人間社会学部 准教授の初見康行さんの写真
  • 初見 康行 さん 実践女子大学 人間社会学部 准教授

    同志社大学文学部卒。企業にて法人営業、人事業務に従事。2017年、一橋大学大学院商学研究科にて博士(商学)取得。2024年より現職。専門は人的資源管理。主著に「若年者の早期離職」(中央経済社)、「人材投資のジレンマ」(日本経済新聞出版)など。

コーチングとティーチングの違いは「答えを教えない」こと

— インターンシップにおけるフィードバックには「コーチング」の考え方が有効とのことですが、コーチングとは具体的にどのようなものでしょうか?

初見先生: はい。まずはコーチングと対になる「ティーチング」について知ると、理解しやすいと思います。

ティーチングは、高校までの授業をイメージしていただくと分かりやすいですね。教壇に先生が立って「これが正しいやり方ですよ」「この知識を覚えてください」と伝えるようなやり方です。

つまり「答えを教える」のがティーチングです。知識を効率よく伝えるには非常に有効な方法となります。インターンシップなどの採用の現場においても、「業界知識」や「仕事に関する知識」を学生に身に付けてもらいたいという場面では有効です。

一方、「コーチング」は、ティーチングとは逆に「答えを教えない」のが一つの特徴です。

— 答えを教えない…。つまり学生に「考えさせる」ような方法でしょうか?

初見先生: そのとおりです。コーチングは、フラットな関係性の中で行われる対話的なコミュニケーションが軸にあります。

例えば、「ダイエットをしたい」と考えている方をサポートするとします。このとき「このような食事と運動を続けていけば、3カ月で10キロ減量できます」と教えるのが、ティーチングです。

しかし、これでは知識として効果のあるダイエットの方法は理解できても、実際に実践できる人は少ないのではないでしょうか。なぜなら、理解ができることと、行動に移すことは別の問題だからです。

実際にダイエットという目的をかなえるためには、「なぜダイエットをしたいのか?」「ダイエットが成功したら生活や気持ちはどう変わるのか?」と問い掛けながら、本人自身でダイエットに対するモチベーションを発見し、高めていくことを促す必要があります。これが、コーチングの手法です。

「こうすればダイエットが成功する!」と教えるのではなく、「ダイエットの先に何がある? どうしてダイエットがしたい?」と問い掛け、考えさせるわけです。

— なるほど。ティーチングとコーチングの違いがはっきり分かりました。

初見先生: しかし、ダイエットの過程では運動器具の使い方や栄養バランスの考え方など、ティーチングによって知識を提供する必要もあるはずです。

つまり、知識を与えるティーチング、気付きを引き出すコーチング。それぞれの役割をよく理解して使い分けることが重要です。

そして、使い分けの例のうち、コーチングが有効に働くことの多い場面の一つが、「インターンシップにおけるフィードバック」なわけですね。

コーチングを使ったフィードバックで、学生の「学び」が伸びる!

— なぜ、インターンシップにおけるフィードバックではコーチングが有効に働くのでしょうか?

初見先生: インターンシップの目的は、学生が就業体験やワークを通じて業界や会社のことを学び、自分自身の能力や志向を発見することで、キャリア観を醸成していくことにあります。

前者(業界や会社の知識)はティーチングによって伝達可能ですが、後者の「自分自身の能力や志向」についてはどうでしょうか?

— 答えが単一ではないので、教えることはできませんね。

初見先生: そのとおりです。「君の能力はこれで、志向はこうだ!」と企業側から学生に押し付けることはできません。学生自身が発見する必要があります。この発見を促すのが、コーチングの手法なのです。

具体的には、「インターンシップの経験を通じて、自分の強みや課題は何だと思いましたか?」と問い掛けるような方法になります。対話を通じて学生自身の内省を深め、学生自身の言葉としてその答えを見つける手伝いをするわけです。

すると、「教えられた知識」であるティーチングとは異なり、「自分で発見した答え」であるコーチングによる成果の方が、学生の記憶と心に残るのです。これにより、インターンシップ全体の満足度が向上するばかりか、実際に学生にとっての学習効果(キャリア観の醸成など)も大きく伸びます。

結果として、そのような体験を提供してくれた企業に対する好意度や志望度が上がっていくわけですね。

実践編:フィードバックにコーチングを取り入れるためにできること

— しかし、コーチングを実践するには高いスキルが必要なのではないでしょうか。インターンシップの現場で生かすにはハードルが高そうですが、いかがですか?

初見先生: はい。本格的にコーチングを仕事にする場合には、専門的な勉強と訓練が必要です。しかし、インターンシップの現場で「コーチング的な手法」で学生の学びを伸ばすのであれば、意識を少し変えるだけでも効果があると思います。

例えば、せっかくインターンシップに参加してくれた学生には、「良い体験をしてほしい」「自社のことを知ってほしい」という思いから、答えや正解を先回りして教えてしまうことがあると思います。

この意識を少し変え、学生の内省を促し、「気付き」をリードするような態度を意識してください。

— 具体的にどのような態度でしょうか?

初見先生: 例えばワーク後に、学生のアウトプットに対し、「正解はこうだよ」と教えるのではなく、まずは「なぜその回答にたどり着いたのか?」と聞いてみる。このような問い掛けの工夫、学生と向き合う姿勢の変化を意識してください。

ただしその際、注意していただきたい点が2つあります。

1つが「安全な場」であること。学生が萎縮せずに安心して自分の考えを話せる雰囲気をつくり出すことが非常に重要です。これがないと、学生は「内省」するのではなく、企業の期待する答えを考え、話してしまいます。そういった観点からいえば、フィードバックは採用担当者ではなく、別の社員が行った方がいいかもしれません。

そして、もう1つが「時間の確保」です。企業側にとってインターンシップは非常に忙しいイベントなので、どうしても学生一人ひとりに対して丁寧に対応することが難しい場合があるでしょう。しかし、数分でもいいので、しっかりと向き合う時間を取るようにしてください。答えを急がせることは、内省につながりません。

— なるほど。難しいことのようですが、実際に意識することはシンプルですね。

初見先生: はい。また、プログラム終了後に、個人面談のようなフィードバックの機会を設ける際にも、コーチングは有効です。

こういった場では、プログラムを通して感じたその学生の長所や能力などについてコメントする企業が多いと思います。しかしすぐに答えを与えず、まずは「参加してみて何を感じた?」「うまくできた課題と難しかった課題はあった?どうしてそう思った?」といった質問を投げ掛けてみてはいかがでしょうか。自身の内省を促すことで、より自己理解や企業理解を深めることができるでしょう。

またこうした対話を通して、企業側がプログラムに込めた意図と、学生の受け止めとのギャップが明らかになる場合もあります。その場合は、今後のプログラムをチューニングすることができるチャンスにもなるわけです。

このように、コーチングのエッセンスが役立つ場面は数多くあります。もし興味が出たら本格的に学ぶと、さらに発見もあると思いますよ。

コーチングでインターンシップを“学びの場”に

インターンシップは、学生にとってはキャリアを考える最初の学びの場であり、企業にとっては未来の仲間となりうる人材との出会いの場です。そこで「どのようにフィードバックを届けるか」が、満足度や志望度を大きく左右します。

答えを教えるティーチング、気付きを引き出すコーチング。それぞれの役割を理解し、場面によって組み合わせて使うことで、学生は「ただの楽しい体験」ではなく、「成長の機会」として、インターンシップを受け止められるようになります。

すぐに特別なスキルを身に付ける必要はありません。問い掛けを工夫し、安心して振り返りを話せる場をつくること。それだけで学生の内省は深まり、企業に対するポジティブな印象も自然と高まります。

コーチング的な視点をインターンシップに取り入れることは、採用活動の一環としての領域を超えて、学生のキャリア形成を支援する社会的な役割を果たすことにもつながるはずです。ぜひ、実践してみてはいかがでしょうか。

インターンシップについて詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。

HUMAN CAPITALサポネットについて

採用・育成・組織戦略ご担当者さまの課題に寄り添う、 マイナビの情報メディア「HUMAN CAPITAL サポネット」。

採用戦略や手法の好事例、学生や求職者とのコミュニケーション設計、採用・選考における基本ルールやノウハウ、人材定着と組織生産性向上を視野に入れた研修・育成、現場での事例紹介まで、さまざまな課題やお悩みに寄り添うコラム、セミナー、市場調査データなどをお届けしてまいります。

また、会員登録していただくと採用・育成に役立つ資料や、調査データのダウンロードが可能となりますので、ぜひご登録ください。

会員登録はこちら
  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

    新卒・中途採用ご担当者さま、経営者さま、さらには面接や育成に関わるすべてのビジネスパーソンに向けた、採用・育成・組織戦略のヒントが満載の情報メディアです。HR領域に強いマイナビだからこそお伝えできるお役立ち情報を発信しています。

  • 人材採用・育成 更新日:2025/09/19
  • いま注目のテーマ

  • ログイン

    ログインすると、採用に便利な資料をご覧いただけます。

    ログイン
  • 新規会員登録

    会員登録がまだの方はこちら。

    新規会員登録

関連記事