挑戦や協働で培った力に注目! 「運動部経験学生」の可能性と採用のポイント
新卒採用市場を取り巻く環境は、年々変化し続けています。その中で従来型の「大きな母集団を形成し、選考で絞り込んで採用する」という採用手法が近年、通じにくくなってきました。
そして、この手法に取って代わりつつあるのが「マッチング型」。つまり、接触の初期段階から学生とのマッチング(相性)を重視して選考を進めるスタイルです。
マッチング型採用の成功においては、ポテンシャルが高く、かつ競合の少ない学生をいかに見つけ出し、接触するかが肝となるわけですが、そこに苦労されている採用担当者は多いのではないでしょうか。そこで注目したいのが、運動部での経験を持つ学生たちです。彼らは厳しい練習や大会を通じて、体力や忍耐力だけでなく、協調性・継続力・成長志向といった幅広い力を培ってきました。
そこで今回は、マイナビで運動部経験学生の就職支援や、運動部経験学生を採用したい企業の採用支援を行っている安岡 真育に話を聞きながら、その隠されたポテンシャル、採用成功のためのポイントを解説します。
運動部経験学生は企業の求める「理想の学生」? その多様なポテンシャルとは
— 安岡さん、今日はよろしくお願いします。まず、運動部経験学生の代表的な強みについて教えてください。
安岡: はい。運動部経験学生が運動部の活動を通じて身に付けたと回答している強みは、以下のようなものです。
※ 以下、データや図版の出典は特に注記のない場合、同様です
安岡: よく想起される「礼儀・挨拶」「忍耐力」「体力」に加え、部活内の人間関係を構築していくうえで必要な「コミュニケーション能力」「チームワーク」も身に付いたと答える学生が7割近くにのぼります。
— これは、多くの企業が学生に求める資質と合致しそうですね。
安岡: そうなんです。その上、本人たちが認識できていない強みも存在します。
例えば厳しい練習を毎日続けてきたことによる「継続性」や、成果を出すために改善を重ねてきたことによる「成長志向」などがそれに当たります。特筆すべき強みですが、運動部経験学生たちはこれらを「当たり前」と感じていて、アピールになると思っていない学生もいます。
運動部経験学生の就職活動の実態 知られざる志向とスケジュール
— 多くのポテンシャルを持っている運動部経験学生ですが、一般的な学生と志向や就職活動スケジュールなどは異なるのでしょうか?
安岡: はい、いくつか違う点があります。
まず志向について、そのままプロ選手を目指す学生は少数派で、85%の学生が一般就職を希望しています。
志望先として人気の業界は、以下のとおりです。
— 「スポーツ・玩具・ゲーム製品」は、経験を生かしてスポーツ用品などのメーカーを志望しているのでしょうか。
安岡: そうですね。そのほか、体育教師を目指している(目指していた)学生も多いので、教育分野も人気です。ジムトレーナーやスイミング・体操スクールのコーチなどもこれに当たります。
ただ、それらに次いで「特定の業界は志望していない」という学生が多いことにも注目してください。
これは「何でもいい」というわけではなく、一般的な就職活動の時期と運動部の活動や大会時期がかぶるため、自己分析や業界・仕事研究がまだまだ進んでいないことを指しています。
なので、志望業界としてスポーツ用品メーカーや教育を挙げている学生も、「身近でイメージがしやすいから」「自分のやってきたことと近いから」という理由で挙げているだけの可能性もあります。
つまり、就職活動初期の時点で接点を持ち、自社の魅力を伝え、かつ、学生本人が気付いていない強みを引き出し評価するようなコミュニケーションが取れれば、ここに挙がっている業界群以外の企業でも、志望度を上げられる可能性が高いのです。
— 運動部経験学生への魅力付けについては後ほどぜひ詳しく聞かせてください。スケジュールはどうでしょうか?
安岡: 就職活動のスタート時期は他の学生とほぼ変わらず、3年生の春ごろには始めています。しかし、先ほどもお話ししたように大会時期との兼ね合いで、インターンシップ参加率が低いというのが一つの大きな特徴です。
具体的には、7割近くの大学3年生が「インターンシップや仕事体験に参加したい」としながらも、実際に参加した・これから参加予定の大学3年生は38%程度にとどまっています。
部活動とのスケジュールの合間を縫って可能な範囲で活動し、その後、3月以降の本選考時期に「やっと動き出せる」と高い意欲を持って就職活動に臨みます。
運動部経験学生とはどこで出会える? どう魅力を伝える?
— ここまでで、運動部経験学生が高いポテンシャルを持っていること、志望が固まる時期が遅いこと、そしてインターンシップに参加しない学生が多く、初期接点をつくりにくいことが分かりました。実際、運動部経験学生を採用したいと考える企業はどのように動けばいいのでしょうか?
安岡: 具体的なアプローチ方法でいえば、以下のようにキャリアセンター・就職情報サイト・SNS・就職イベントが有力です。
安岡: このほか、運動部経験学生に特有の特徴として「先輩社員(OB・OG・リクルーター)」、「監督やコーチの人的ネットワーク」と「運動部学生向けの特設サイト」も接点となります。
そのため、一般の学生との接点づくり(キャリアセンター訪問、ナビサイト掲載、イベント出展など)は続けながら、OB・OGを利用したスカウト活動、リクルーター活動や、専門サイトの活用も併用するといいでしょう。
安岡: また、インターンシップや仕事体験、オープン・カンパニー&キャリア教育などのプログラムを開催する場合には、時期は一般学生と同じように8月や12月以降、曜日は土・日曜日や、部活動がオフのケースが多い月曜日がお勧めです。
— なるほど。その際、情報の出し方や魅力の打ち出し方にはどのような工夫が必要でしょうか?
安岡: 基本的な企業情報はナビサイトやイベントを通じて伝えていきながら、運動部経験学生特有の志向に合わせた情報発信を行うことをお勧めします。例えば、「挑戦を続けてきた姿勢・経験を評価する」「運動部経験のある先輩社員の活躍事例を紹介する」といった方法です。
特に有効なのは、先輩社員がどのように活動経験を活かして成果を上げているかを具体的に伝えることです。学生が自分の経験と重ね合わせてイメージでき、自信を持って応募してくれるきっかけになります。
というのも、先ほどもお伝えしたように、運動部経験学生は自分自身のポテンシャルに気付いていないことが多く、さらに言えば、競技で目立つ成果が出せていないと、「就職活動でも企業から評価されないのではないか」と自信が持てない学生も実は多いのです。
そのため、活躍している元運動部の先輩社員のどんな強みが、どんな場面で、どう生かされているのかという情報は響くものです。ぜひこうした情報やトークをフックとして、志望度を醸成していくようなコミュニケーションを取っていただきたいですね。
また、少し違った視点として、「デュアルキャリアへの理解」を示すことも一部の学生には有効です。
— デュアルキャリアとは、どのような概念ですか?
安岡: プロとして完全に競技を仕事にするのではなく、会社員をしながら競技を続けるという考え方です。
「知っていて、検討したことがある」学生は、全体の10%と決して多くはありません。しかしデュアルキャリアを検討している学生に対しては、例えば土日出勤や残業の免除など、競技を続ける上でのサポートができるのであれば、ぜひアピールしましょう。ぐっと志望度が向上するはずです。
運動部経験学生という“知られざるハイポテンシャル層”に目を向けてみませんか?
ここまで見てきたように、運動部経験学生は社会人として求められる礼儀、協調性、継続力といった多くの資質を備えています。さらに、企業理解や業界研究、自己分析が浅い傾向があることは、裏を返せば、これからの関わり方次第で志望度を高められる、いわば“伸びしろ”のある存在でもあります。
もちろん、部活動との両立で就職活動のスケジュールが制限されるなどの特性はありますが、それを理解し、接点のつくり方や情報発信の工夫をすれば、他社が気付いていない優秀な人材と出会えるチャンスは大いにあります。
「なかなか良い学生に出会えない」と感じている中小企業こそ、運動部経験学生の可能性に目を向けてみてはいかがでしょうか。 “意外な一手”が、大きな戦力につながるかもしれません。
- 人材採用・育成 更新日:2025/08/27
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-