内閣府 男女共同参画局に聞く 健康・キャリア・地方創生――企業に求められる対応
女性版骨太の方針とは? 歴史・仕組み・企業にとっての意味
聞き手:マイナビ 大城戸菜月 (以下、文中では大城戸)
大城戸: まずは、「女性版骨太の方針」の概要について、改めてご説明いただけますか?
内閣府: 「女性版骨太の方針」とは、男女共同参画に関する施策について、政府全体として当該年度、また翌年度に重点的に取り組む事項をとりまとめたものです。毎年6月を目処に策定し、各府省庁の次年度予算要求に反映させることを目的としています。言い換えれば、その年度と次の年度に「政府が女性活躍や男女共同参画の分野で特に力を入れること」をまとめた政策パッケージと捉えていただければ分かりやすいと思います。
大城戸: 毎年発表されている方針ですが、長期計画との関係や位置付けについても教えてください。
内閣府: 政府では、5年ごとに「男女共同参画基本計画」を策定しており、現在は2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画に基づいて、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策に取り組んでいます。「女性版骨太の方針」は、この基本計画における施策をさらに加速させるため、毎年度重点的に取り組む事項を盛り込んでいます。正式な名称は、「女性活躍・男女共同参画の重点方針」というのですが、2022年からは「女性版骨太の方針」という呼称を使うようになりました。最近は今回取り上げていただいているように「女性版骨太の方針」という名称が浸透してきたように思います。
大城戸: 企業の人事や労務に関わる方々にとっては、どのように活用できるのでしょうか?
内閣府: 政策パッケージという側面もありますが、現在、政府ではどのようなことに力を入れているのかということが見て取れるものでもあります。女性活躍やダイバーシティなどに関する部署で働かれている方はもちろん、そうでない方にも、政府の問題意識や政策について関心を持っていただけるとうれしいです。
M字カーブの解消から地方創生へ――女性活躍をめぐる変化と展望
大城戸: 女性の活躍に関して、実際にどのような変化や効果が見られているのでしょうか?
内閣府: 例えば、日本における女性の就業率については、結婚・出産期にあたる20代後半、30代前半を底とする、いわゆる「M字カーブ」が長年の課題とされてきましたが、現在、M字はほぼ解消し、20代から50代まで台形に近い形を描いています。一方で、出産を機に女性が非正規雇用になることにより、女性の正規雇用比率が、20代後半をピークに、年代が上がるとともに低下する、いわゆる「L字カーブ」の問題が続いています。
大城戸: 男性の育休取得なども浸透してきたように思うのですが?
内閣府: 厚生労働省の調査(「令和6年度雇用均等基本調査」)によれば、令和6年度の男性の育児休業取得率は4割を超え、大きな進捗がありました。
大城戸: 一方で、どのような課題があるのでしょうか?
内閣府: 育児や介護などのライフイベントにおいて、女性が仕事との両立をしづらい状況やキャリア形成が困難となる状況がみられ、その背景として、長時間労働や、固定的な性別役割分担意識による女性への家事・育児などの負担の偏りがあります。また、最近では、特に地方において、希望する進学先が少ないことや、やりたい仕事や就職先が少ないことなどを理由に、若い女性がその地域から離れていってしまい、戻ってくる方の割合も低いという問題も生じています。
大城戸: 次に、「女性版骨太の方針」の2024年版と2025年版にはどのような違いがあるのでしょうか?
内閣府: 2024年版では、企業や地域において活躍する女性人材の育成や、企業の経営層・管理職、男女共同参画センターの職員など、企業や地域における女性活躍・男女共同参画推進のリーダー・担い手の育成・専門性の向上など、「人材の育成」を横串のテーマに掲げていました。一方、2025年版では、先ほど取り上げた、女性の地方離れという課題意識の下、女性にも選ばれる地方を実現するため、「女性に選ばれ、女性が活躍できる地域づくり」を第一の柱に掲げました。そのほかにも、「全ての人が希望に応じて働くことができる環境づくり」、「あらゆる分野の意思決定層における女性の参画拡大」、「個人の尊厳が守られ、安心・安全が確保される社会の実現」、「女性活躍・男女共同参画の取組の一層の加速化」の柱を掲げ、男女共同参画社会の実現に向けた取組を記載しています。
大城戸: 2025年版では「女性に選ばれ、女性が活躍できる地域づくり」が一つ目の柱ということですが、具体的にはどのような課題があるのでしょうか?
内閣府: 現在、東京一極集中の流れが続いており、特に女性が地方での生活を選択しない傾向が強まっています。(特に女性の流出が相対的に大きい地域も見られます。)内閣府が実施した意識調査(「令和6年度地域における女性活躍・男女共同参画に関する調査報告書」)では、若い女性が出身地域を離れた上位の理由として、「希望する進学先が少なかったから」、「やりたい仕事や就職先が少なかったから」、「地元から離れたかったから」といった回答が多くありました。また、出身地域を離れた女性の多くが、出身地域に根強い固定的な性別役割分担意識があるために出身地域に戻らないといった指摘もあります。こうした状況が、女性や若者の流出超過につながっていると考えられます。女性にも選ばれる地方を実現することを通じて、女性を含めた誰もが安心して住み続けられる地域を構築することは待ったなしの課題であると考えています。
大城戸: なるほど。「女性に選ばれる地方」という視点が必要なんですね。
内閣府: 今年は、女性に選ばれる地方の実現のため、日本各地でやりたい仕事をやろうと自ら起業に挑戦しようとしている女性にも焦点をあてました。昨年から、女性による起業に求められる支援は何かについて、生の声を聴くために、三原大臣が全国各地に足を運び、「地域で輝く女性起業家サロン」を開催してきており、その成果として、女性の起業支援策を盛り込みました。また、地域における「固定的な性別役割分担意識」や「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」の解消に向けた取組なども盛り込んでいます。魅力的な職場や学びの場、自ら起業する機会を地域に整えることで、女性や若者が安心して働き、暮らし続けられる地域社会を目指しています。
女性特有の健康課題は経済課題――3.4兆円の損失が示す深刻さ
大城戸: 女性版骨太の方針の中で、「働く女性の健康課題」についても取り上げられています。なぜ今、これが大きな柱になっているのでしょうか?
内閣府: 女性特有の健康課題は2016年から継続的に取り上げられてきましたが、昨年から大きな柱のひとつとして明確に位置付けられています。女性特有の健康課題が就業継続やキャリア形成に大きな影響を与えていることが背景にあります。経済産業省の推計(「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」)によれば、月経随伴症状や更年期症状などによる労働損失は年間で約3.4兆円にのぼるとされています。これは企業や個人の問題にとどまらず、日本全体の経済にも影響する大きな課題です。
大城戸:
3.4兆円という数字は大変大きいですよね。企業にとっても、誰もが自分らしく働き続けるために、健康を支える環境づくりが欠かせませんね。
内閣府: 健康課題に対しては、企業や社会が一体となって支える仕組みづくりが欠かせません。例えば、社内相談窓口の設置や定期的な検診受診の促進、必要なときに柔軟に休暇を取れる仕組みなどが求められます。また、内閣府の調査(「令和5年度男女の健康意識に関する調査」)によれば、20代から30代の若い層において、最も気になる症状に十分に対処できていない割合は、女性の方が高い傾向が見られ、仕事や家事・育児・介護で忙しく病院に行く時間がないなどが理由として挙げられています。こうした傾向を変えるためにも、受診といった適切な行動に結びつけられるよう、セルフチェックを活用するなどの取組が重要です。
大城戸: なるほど。都市部と地方では女性特有の健康課題を改善する取組において、進み具合に差があるのでしょうか?
内閣府: 大企業などでは取組が進んでいる一方で、地方の中小企業では財政的・体制的な制約もあって十分に対応できていない現状があります。(取組にばらつきがあるのが実情です。)そのため、政府としても政策的に後押しをしつつ、企業規模や地域にかかわらず働く女性が安心できる環境づくりを進めていきます。
企業・地域・政府が協働する女性活躍の未来
大城戸: 採用や人材定着の観点から、女性活躍の現状をどう捉えていますか?
内閣府: 2012年から2024年の12年間で、女性の就業者数は400万人以上増え、第1子出産前後の女性の継続就業率についても、2010年から2014年は約5割だったのが、2015年から2019年には約7割となりました。しかし、女性の管理職や役員は諸外国と比べ低い水準にとどまっており、課長級で約16%、部長級で約10%、女性役員比率は約16%となっています。また、女性の登用については進んでいる企業とそうでない企業があり、進捗には差異が見られます。
大城戸: 確かに「採用して終わり」ではなく、その先のキャリアをどう支えるかが重要なんですね。
内閣府: はい。政府としては、採用から登用まで一貫したキャリア形成支援を行い、人材育成のパイプラインを構築することが重要と考えていて、管理職、更には役員への女性登用に向けた取組を進めています(参照:企業で活躍する女性リーダーからのメッセージ~ロールモデル集~、女性役員登用に向けた行動計画と取組事例集)。また、女性の登用を進めるためにも、仕事と生活の両立支援は重要です。厚生労働省の調査(若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査結果(速報))によれば、若年層の約7割が、会社を選ぶときに、「仕事とプライベートの両立」を意識しており、人材確保の面でも大事です。
大城戸: これまでの取組や課題を踏まえて、女性活躍において目指す世界観はどのようなものなのでしょうか?
内閣府: 私たちが目指しているのは、誰もが性別にかかわりなく、その人権がきちんと尊重され、個性と能力を十分に発揮できる社会です。その達成のためには、政府だけではなく、企業や地域の様々な方々も一体となって、取組を推進していくことが大切だと考えています。今後も、いつでも・どこにいても、誰もが自分らしく生きがいを持って生きられる社会の実現のために、取り組んでいきたいと思います。
取材内容をもとに、welltowa編集部が考える、企業にとっての「女性版骨太の方針」の意味
以下は、取材内容をもとに株式会社マイナビwelltowa編集部が整理した、企業が今後の企業戦略・人事戦略に活かせる主なポイントです。
- 女性版骨太の方針は、政府の政策文書であると同時に、社会の変化や人材ニーズを映し出す「未来予測の鏡」。
- 女性活躍のための採用・育成・登用のパイプライン整備や、健康・両立支援の環境づくりは、単なる社会貢献ではなく、企業にとって優秀な人材を惹きつけ、定着させるための差別化ポイントにもなり得る。
- 管理職比率の向上、地方での就業機会の拡大、女性の健康課題への対応といった政府の重点施策は、企業の人事戦略に直結する。だからこそ、経営者や管理職、人事担当者は、これらの観点を採用・育成・働き方の仕組みに反映させることで、組織の競争力強化につなげることができる。
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- 経営・組織づくり 更新日:2025/11/07
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