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好きな場所で好きな人と働く時代、経験者採用で考えるべきこととは?

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2010年代のノマドワーカー流行から2020年代のコロナ禍(リモートワーク)を経て、「好きな場所で、好きな人と、好きな時間に働く」ワークスタイルを選択する人が増えました。 注目したいのは、とくに“仕事のデキる人”に、求職や生活基盤の流動化を進める傾向が見られることです。 よりよい経験者採用を目指す企業にとっては、どう舵取りしていくか、重要な局面に差し掛かっています。 本記事では、現状を踏まえたうえで、具体的な対応策を考えていきたいと思います。

求職者の価値観の動向

まず知っておきたいのは、「今、求職者の“価値観”はどう変化しているのか?」についてです。 とくにこの10年は、大きな価値観シフトの渦中にあります。動向をキャッチアップできていないと、採用活動につまずく原因ともなりかねません。

  • 2010年代:ノマドワークの流行
  • 2020年前後:リモートワークの浸透
  • 2023年以降:ワークスタイルの流動化

ひとつずつ、見ていきましょう。

2010年代:ノマドワークの流行

2010年代には「ノマドワーク」「ノマドワーカー」という言葉が、よく知られるようになりました。 ノマド(nomad)とは「遊牧民」という意味です。 本田直之氏が2012年3月に出版した著書『ノマドライフ』にて、好きな場所で自由に働くスタイルが提唱されました。*1 Googleトレンドで検索動向を見てみると、以下のとおり2012年に高く注目されたことがわかります。

*2 出所)Googleトレンド「ノマドワーカー」のデータを元に筆者作成

この時期、メディアでよく取り上げられていたのは、「おしゃれなカフェで、ノートパソコンを開いて、仕事する」といった都会的なスタイルです。 その意味では、たとえば地方の中小企業などにとっては、当事者感の低いブームだったといえます。

2020年前後:リモートワークの浸透

2012年のブーム後は注目度の下がったノマドワークですが、2020年に大きな転機が訪れます。 2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の流行により、企業は、強制的に「リモートワーク(自宅などオフィス外で働くこと)」の実行を余儀なくされました。 一方で、じつは“リモートワークが浸透する土壌”は、2010年代後半から少しずつ育っていた、という背景もあります。

たとえば、政府は、「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」*3を“テレワーク”と定義し、推進活動を行なっていました。

*4 出所)厚生労働省・総務省 テレワーク総合ポータル「導入状況の推移」を元に筆者作成

上のグラフを見ると、もともと、2016年〜2019年は右肩上がりにテレワーク導入企業が増えています(前項でご紹介した[ノマドワーカー]の検索トレンドが、再び上昇する時期とも一致します)。 ここでお伝えしたいことは、「コロナ禍は、リモートワークを生み出したのではなく、もともと推し進められていたリモートワークの浸透を早めた」という視点です。 別の表現をすれば、コロナ禍がなかったとしても、リモートワークが浸透するのは時間の問題だった、といえます。

2023年以降:ワークスタイルの流動化

前述のとおり、コロナ禍がなかったとしても浸
透していたと考えられるリモートワークですが、誰も想像し得なかったことが、ひとつあります。 それは、「世界中で、同じタイミングで、業界業種を問わず、一気にリモートワーク化した」という事実です。 これまで、多くのトレンドには、タイムラグがありました。たとえば、欧米諸国から始まり、日本に流入し、ほかの国々にも浸透していく——、という具合です。

今回、タイムラグのない、前代未聞の大きなシフトを経験し、世界中の働く人たちの価値観が変化しています。 その価値観の変化を一言でいえば、「ワークスタイルの流動化」です。詳しくは、次章でご説明しましょう。

「好きな場所で好きな人と働く」あたらしい価値観の特徴

2023年以降、ワークスタイルは「好きな場所で、好きな人と働く」方向へと、シフトしていくと思われます。 これと類似したコンセプトは、これまでも言われてきたことですが、コロナ禍を経た今、3つのあたらしい価値観が特徴的です。

  • 仕事相手の流動化
  • 移住地の流動化
  • 業務内容の流動化

それぞれ解説します。

仕事相手の流動化

リモートワークの環境が世界的に整ったことは、「仕事相手の選択肢」の著しい増大を意味します。 たとえば、「3つの選択肢」から選ぶしかなければ、ときには妥協や我慢もしながら、仕事相手を選びます。 それが、「100、500、1000…」と、選択肢の数が一気に増えたイメージです。

世界中のクライアントや仲間と、バーチャルチームを組んで、仕事ができる時代になりました。 バーチャルチームでは、Web会議、メッセージアプリ、プロジェクト管理ツールなどを使って、コミュニケーションを行います。 SNSやネットコミュニティを出入りするような気軽さで、その時々に好きな人と働くスタイルが、身近に変わりつつあります。

居住地の流動化

今までは、「好きな場所で働く」といっても、自宅やカフェなど「会社のオフィス内にいなくてよい」というニュアンスが強いものでした。 これからの“好きな場所”は、国内はもちろん、「海外の好きな街に住む」「仕事をしながら世界を旅する」「より生活費の低い地域へ移動する」など、遊牧度がより高くなっていくと考えられます。 こういった人々は「デジタルノマド」といわれ、すでに米国などでは、メディアで取り上げられる機会が増えています。

業務内容の流動化

最後に3つめとして、業務内容も流動化しています。

たとえば、今までなら一式パッケージでしか発注できなかった仕事が、プロジェクト単位の細切れでバラ売りされているイメージです。 今までよりも少額・小さな単位での取引が増える分、参入ハードルが低くなり、さまざまな人がさまざまな価値を提供する流動的な市場が形成されると考えられます。 同じ人が、他業種を掛け持ちする例も増えています。たとえば、本業はマーケティング業を行っていて、本業が繁忙期ではないときに、英会話講師の仕事をする、という具合です。

経験者採用に取り組む企業がすべきこと

以上の背景を踏まえて、経験者採用に取り組む企業がすべきことは、何でしょうか。 以下の5つをご提案したいと思います。

  • 変化を知って意識を変える
  • 流動化を利用する
  • 自分たちが誰なのか明確にして表明する
  • 必要なテクノロジーへ投資する
  • 近くにいる従業員をより一層大切にする

変化を知って意識を変える

まずは変化を知って、意識を変えることです。 その一助となればと、ここまで求職者の動向をお伝えしてきましたが、現在は著しいスピードで状況が変化しています。 新しい情報のインプットから離れてしまうと、とたんに求職者のニーズを理解できなくなり、採用活動がスムーズに進まなくなります。 ぜひ、引き続き新しい情報のキャッチアップを続けていただきたいところです。

流動化を利用する

「人材が流動してしまう。採用しにくくなる」と感じる方もいるかもしれません。 しかし逆にそれは、「世界中で流動化する膨大な人材プールを、利用するチャンスが生まれている」という意味でもあります。 たとえば、今までなら採用が難しかったハイパフォーマー人材(優れた結果を出す人)を、採用できるチャンスともいえるのです。 とくに、今まで採用力の強化に悩んできた中小企業ほど、変化に乗れば現状打破しやすいといえます。

自分たちが誰なのか明確にして表明する

流動化を利用するには何をすべきかといえば、「自分たちが誰なのかを明確にすること」かつ、「それを(広報活動などで)明示的に表明すること」の2つが非常に重要です。 なぜなら、「好きな人と働きたい」という価値観が強まっていく今、「何者だかよくわからない人(企業)」は、興味関心の対象とならないからです。

コーポレートサイトや企業理念に、当たり障りのない文章を書いてはいないでしょうか。残念ながら、当たり障りがなく、どこでも見かける文章には、魅力が生まれません。 たとえば、以下のトピックについて、あらためて明文化し、発信するところからスタートしてみてください。

  • ミッション(使命、会社の活動を通して何を成し遂げようとしているか)
  • 価値観(行動や意思決定の指針として大切にしていること)
  • 企業文化(チームメンバーのあり方や交流を形成する形)
  • 顧客に対する姿勢(お客様への思いなど)
  • その他(会社のユニークな特徴や性格が伝わるエピソードなど)

必要なテクノロジーへ投資する

  • バーチャルチームと仕事をするためのツール(Web会議、メッセージアプリ、プロジェクト管理ツールなど)はもちろんのこと、その業界・業種ごとに必要なテクノロジーへの投資は、早めに進めておく必要があります。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉がよく聞かれますが、DXと採用力は無関係ではありません。
  • DXの基本情報としてチェックしておきたい資料に、経済産業省による「DXレポート」があります。

本記事執筆時点では、以下のとおり「2.1版」まで公表されています。

経済産業省によるDXレポート

  • (1)2018年9月発表:DXレポート
  • (2)2020年12月発表:DXレポート2
  • (3)2021年8月発表:DXレポート2.1

上記は、それぞれ異なる内容がレポートされており、順に目を通すことでDXへの理解が深まります。 最新情報は、経済産業省のWebサイトもご確認ください。

近くにいる従業員をより一層大切にする

最後に、「今、近くにいる従業員を大切にすること」をお伝えしたいと思います。 少々、抽象的な話になりますが、「会社から大切にされている従業員」は、他者から見て、「一緒に働きたい相手」に見えることが多いのです。 彼ら彼女らがまとうポジティブな雰囲気や、会社のサポートを受けて成長する姿、モチベーションの高さこそ、強い吸引力を持ちます。 単に流動化の波に乗ろうとするだけでなく、同時に“流動しない部分の価値”を再評価することで、好循環のスパイラルが生まれます。

さいごに

本記事では「あたらしい価値観と、その対応策」をテーマにお届けしました。 社会の価値観が大きくシフトしている今、現場感覚を持って、肌身で変化を感じることも重要です。 その絶好の場がひとつあり、それは「面接」です。たとえば、一次面接に採用の責任者や経営幹部が同席し、応募者の声を一緒にヒアリングするやり方があります。 どうすべきか困ったときほど、相手(求職者、応募者)を深く理解することが、打開策を運んでくれます。 よりよい経験者採用の実現を目指して、あたらしいやり方を模索していきましょう。

参考

  • Person 三島 つむぎ

    三島 つむぎ -

    ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

  • 人材採用・育成 更新日:2023/03/16
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