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人材が流動的な時代において注目を浴びる「アルムナイ」とは

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二人に一人が転職を経験しているとも言われるように、近年人材雇用の流動性が急速に高まっています。一人の人材を終身雇用をもって一社で雇い続ける時代は終わりつつあり、退職者や転職した社員と継続的に接点を持ちコミュニティ化する「アルムナイ」という概念が新たに注目を浴びています。この記事では人材の流動化が進む現代において切っても切れないアルムナイについて、概念そのものから注目されている背景について解説していきます。

アルムナイとは

アルムナイ(alumni)とは元々学校の卒業生やOB・OGを意味する言葉で、近年人事領域において企業の退職者・離職者を指す言葉として使われています。退職を機に疎遠になってしまう今までの接し方とは異なり、一度他社に転職をした社員を再雇用するカムバック採用や、退職者の口コミによる採用ブランディングなど、在籍する社員だけでなく一度会社を去った人材を活用した採用活動が広がっています。

例えばカムバック採用においては、別会社から採用するよりも自社の業務知識や関係構築が優れていることに加え、他社での業務経験も活かすことができるので、キャリア採用の手法の一つとして多くの企業に取り入れられています。さらに『辞めたけど良い会社ランキング』など退職者による口コミが就職先の選定に影響するようになり、退職した後もアルムナイと良好な関係を築くことで採用ブランディングに活用する動きも見られます。こうして一度会社を辞めた人材を中長期的に繋ぎとめて、良好な関係をマネジメントすることで採用活動にとってプラスに働かせることができます。

人材業界を取り巻く外部環境

アルムナイをはじめとする新しいトレンドが飛び交う昨今の人材業界において、今どんな変化が起きているのでしょうか。人口構成の変化やAI・ロボットの台頭など、“働く”ことに関する当たり前が今後大きく変化していくことが予想されます。こうして市場が変われば、採用する側の企業も当然時代に合わせた柔軟な対応を迫られることとなります。そこで今市場でどんな変化が起きているのか、詳しく見ていきましょう。

人材雇用の流動化

時代の変化と共に、終身雇用をもって生涯一社の企業に勤め上げるという常識は崩れつつあります。その典型的な現象が、キャリア採用の拡大です。現在大手企業を中心に、採用計画のうち経験人材の目標人数を拡大することを相次いで発表しています。日本経済新聞社がまとめた採用計画調査によると、大卒の採用計画が減少傾向にある一方で全体の採用計画に占める2023年春入社の中途採用の比率は増加し、今回初めて3割を超えました。

さらに働く会社を一社に絞らない、副業やフリーランスなどの新しい雇用形態も普及してきています。特に副業に関しては、厚生労働省が副業を制限する場合はその理由を含めて開示するよう企業に促すなど、就職先を決める際に副業のしやすさを軸に判断できるようにする方針を公表しました。

そして働く側も同様に副業意欲は年々増加傾向にあり、フリーランス人口も直近で大きく増加してきています。こうして複数社で働く人が増え、企業側の多種多様な雇用形態の容認も相まって人材雇用は今後ますます流動化が進んでいくことになるでしょう。

優秀人材の獲得競争が激化

2020年5月に公開されたマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、「2030年までに日本中の業務の27%が自動化され、約1660万人の雇用が機械に代替えされる可能性がある」と指摘されています。このような人間の仕事の一部が機械に取って代わるという話は、誰しもが耳にしたことがあるでしょう。この現象は単純作業のみに留まらず、バックオフィスや営業販売など、現在たくさんの人材雇用がなされているホワイトカラーの仕事の一部においても、同様に代替される可能性があります。

その結果人間が担う仕事はより高度で知的な領域にシフトし、優秀人材の希少価値が高まっていくと予想されます。井上智洋『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(文春新書、2016年)によると、クリエイティブ系(Creativity、創造性)、マネジメント系(Management、経営、管理)、ホスピタリティ系(Hospitality、もてなし)の三つの分野の仕事は無くならないだろうと述べられています。このように細かい配慮や規則性のない繊細な判断が必要となる仕事は機械の参入余地がまだなく、引き続き人材雇用のニーズが存在する一方で、それ以外の仕事については、たとえホワイトカラーであっても今後機械に代替えされていくことになります。

さらに人口統計に注目してみると、少子高齢化の進行によって生産年齢人口が減少し、そもそも労働を担う人口の母数が減っていく傾向にあります。総務省「国税調査」の「人口推計」によると、2020年時点における生産年齢人口は約7400万人と言われておありますが、2050年には約5200万人とおおよそ2000万人程度減少すると予想されています。そして2065年には生産年齢人口が全人口の約5割にまで減少する見込みです。

このように日本では労働に従事する人口の逓減が深刻であり、優秀な人材を探し出そうにもその母数となる生産年齢人口がどんどん減っていく見通しです。一方、機械やAIが次々と人間の担う仕事に取って代わり、人材雇用はより高度で知的な領域へと舵を切るため、結果として優秀な労働者の獲得競争が激化することが避けられません。

強力な人的資本を形成する「アルムナイ」が注目を浴びる理由

ここまでで述べたように、今市場では人材雇用の流動化や優秀人材の獲得競争の激化など、変化の時代が到来しています。そこでこれらの危機を乗り越えるために注目されているのが、アルムナイという概念です。

人材雇用が流動化するなか、終身雇用するだけでは、他社に勝つことは難しいです。そこで自社のことを一番理解している退職・離職した社員を雇用形態に関わらず古巣の企業に繋ぎとめ、新規採用よりもさらに強力な人的資本として活用することのできるアルムナイが、たくさんの企業で活用されはじめています。一度辞めた社員を副業やフリーランスとして雇うケースもあれば、再雇用につなげるカムバック採用と呼ばれる手法も徐々に普及し始めています。

なぜアルムナイという手段をとるべきなのか

強力な人的資本を形成する手段は、新卒採用からキャリア採用、人材育成に至るまで多数存在しています。そのなかでなぜ企業はアルムナイに着目し活用しているのでしょうか。アルムナイを活用することで得られるメリットや他の手法と比較した強みについて説明していきます。

候補者との接点構築のしやすさ

新卒・キャリア問わず、優秀人材との接点構築はどの企業も頭を悩ませている領域です。マーケットにターゲットとなる人材は確実に存在しているものの、彼らを見つけ出して自社を就職先として魅力に感じてもらうためには、かなり労力を要します。一方でアルムナイを活用したカムバック採用を進める場合は、元々社員としての接点もありゼロから接点をつくる必要がないため、採用手法のひとつとして注目を浴びています。退職した後も自社でコストをかけて育て上げた人材と継続的に接点を持ち続けることでカムバック採用につなげ、強力な人的資本を低コストで形成することができます。

人材の質に関する優位性

接点構築がしやすいことに加え、人材の質という観点でもアルムナイの活用は優れていると言うことができます。アルムナイを活用したカムバック採用において、候補者は他の採用手法で接点を持つ人と異なり一度自社での勤務経験があります。その点カルチャーフィットや社内情報の把握が進んでおり、即戦力としての活躍が規定できます。さらに自社での経験に加え他社での勤務経験を経ていることから、他業界の情報やスキルをはじめ、自社だけではカバーしきれない新しい領域の知見を身につけた状態で採用することができます。自社での即戦力人材としての期待値に加え、他社での勤務経験を経ていることによるリスキリングこそが、アルムナイを活用することの優位性です。

こうして優秀な人材との接点を一度きりでとらえず、在籍有無に関わらず中長期的な繋がりを形成することで、人材獲得競争が激化するなかでも強力な人的資本を形成することができます。未来の人的資本形成に備えるべく、各社がアルムナイ活用に向けて動き出しているのです。優秀な人材との接点をアルムナイというかたちで中長期的に捉え、在籍有無に関わらず自社の人的資本として活用できる状態にすることが、この変化の時代を生き抜く一つの重要な鍵となります。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/08/23
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