ポイントは「構造把握力」と「想像力」の有無?応募者の「理解力」を判断する方法
理解力を支える知識があるかどうかを見極めるのは簡単です。最もシンプルでかつ妥当性の高い選考手法は、筆記試験です。理解してほしい領域に関する専門的な知識を問う筆記試験を行うことで検査することがストレートに速いでしょう。
例えば、人事制度を改善してもらう人事企画担当を採用したいのであれば、「職能等級制度と職務等級制度の、それぞれのメリット、デメリットを説明してください」などの問題に答えてもらえば、自社の現行の人事制度をすぐに理解してもらえるかどうかわかるでしょう。
もちろん、「口頭試問」(面接時に、口頭で質問する)でも構いません。ただし、「口頭試問」の場合は、選考者自身がその道のプロでなければ判定できませんので(前述の例のように、人事の人が人事候補を見る場合ならともかく、エンジニアを採用する際に同じようなことはできないでしょう)、筆記試験のほうが適当ではないかと思います。
「対象の構造を把握する力」
です。「構造」とは捉えたい物事の「骨組み」、つまり重要な要素の間の因果関係などの関係性のことです。理解しなければならない対象は、たいていの場合、ノイズ(雑音。本質とは関係のない情報)がたくさん入っています。
このノイズを取り除いて、重要な骨子のみを取り出す力があれば、早く「骨組み」を理解することができます。この力を高めるためには、対象の細部にこだわり過ぎずに、全体像をつかもうとすることが必要です。
小さいことに囚われてしまうと、対象の一部に留まりすぎることになります。人間には認識や記憶の限界があり、一定の時間に覚えておける量は決まっています。ですから、あまりに長く細部にこだわると、前のことを忘れてしまい、全体像の理解の障害となります。
「構造把握力」は口頭試問見極めることができます。相手の構造把握力を見抜くためには、求職者が詳細に語っている内容を聞いた後(これはこれで評価に必要です。過去のエピソードなどのディテールを聞かないと、結局その人がやってきたことがレベルの高いことなのかそうでないのかわかりません)、「それは、まとめるとどうなりますか」「要するにどういうことでしょうか」「一言で言うならどうなりますか」などの質問が有効です。
ディテール(ノイズまで含んだ、現実をありのままに描写したもの)の表しているメッセージ(そのことを通じて伝えたいこと)を聞いてみれば、それが即座に出るかどうかによって、ちゃんと話の「目的」=「メッセージ」を意識しながら、「手段」=「ディテール」を組み立てていく構造的把握力があるかどうかがわかります。即座に出ない場合は、おそらく思いつくままに話をしているだけで、話の構造を思い浮かべながら話をしていないということが考えられます。
いくら理解が「速く」ても、間違った理解、誤解をしてしまっては、それは単なる「早合点」であり、意味がありません。むしろ、誤解に基づいて行なった対処は、良いことはもたらしませんので、害悪とさえ言えるでしょう。ですから、理解力には、「速さ」とともに「的確さ」が絶対に必要なのです。
むしろ、速く「誤解」するぐらいなら、ゆっくりと的確に理解したほうがよいかもしれません。では、理解の「的確さ」は何によってもたらされるのでしょうか。実は、「速さ」をもたらす2つの力「知識」「構造把握力」も、必要条件です。これがなければ、的確な正しい理解に辿りつくわけがありません。しかし、さらにそこに的確さが付け加わるためには、最後に「想像力」が必要になります。
「対象の構造を把握する力」
とは、頭の中に理解したことをイメージする力のことです。相手が言っていることを、単に言葉のレベルだけで考えるのではなく、イメージをすることで、自分の理解が正しいのか、的確なのかがわかります。
例えば、「昨晩は一人で、たこ焼きを500個買ってきて、一口で食べました」という文章は、もちろん文法的には何も問題はありません。しかし、超マイクロたこ焼きなどでもない限り、現実にはこんなことはありえません。つまり、「おそらくこの理解は間違っている」のです。5個を500個と聞き間違えたか、「一口」が「一気に」の意味であったか、ともかく何か誤解があったのでしょう。
そう思えるためには、言葉のレベルではなく、それを映像や音声の状態までイメージすることが必要です。上の文章をイメージしてみれば、すぐに「そんなバカな」と思えることでしょう。そう思えないのであれば、想像力がないか、相手を理解しようとする気がないのでしょう。
相手にこのような意味での「想像力」があるかどうかを確かめるためには、自分が経験したことではなく、書物で読んだり、誰かから伝聞で得たりした情報について、どのように理解をしているのかを確認してみると良いでしょう。
考者が相手よりも想像力が高いことが前提になりますが、選考者が聞いてみて「そんなはずないだろう」というような矛盾をはらんだ伝聞情報を相手が話していれば、「想像力がないのだな」と思ってよいかもしれません。上述のようなことであればシンプルですが、面接などで話される仕事上のエピソードはもっと複雑ですので、矛盾があるのかどうか、現実的にありうる話なのかどうかを判断するのは選考者の側にも力量が問われます。
筆者はこれまで2万人の方に面接をした経験があるのですが、例えばそういう話を聞いて、「え、それなら、20年以上、年間1000人の面接をしなければできないけど、そんなこと本当にできるの?」と想像できるかどうかが重要です(ちなみに、私は盛っていません。本当です)。
- 人材採用・育成 更新日:2018/09/18
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-