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Campus Report 大学トップに聞く_vol.13 龍谷大学

 

“自省利他”の実践哲学で
社会に貢献する人材育成へ

龍谷大学学長
入澤 崇
■1955年、広島県因島生まれ。龍谷大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。専門は仏教文化学。1990年龍谷大学文学部仏教学科に着任し、ベゼクリク石窟壁画の復元事業や数多くの仏教遺跡調査に従事。2004年から5年間はアフガニスタン仏教遺跡調査隊の隊長を務める。龍谷ミュージアム館長、文学部長を経て、2017年4月に龍谷大学学長に就任。仏教の教えである利他の精神を育む教育の推進を第一に掲げる。
学内外のフィールドで
“自省利他”の実践哲学を身に着ける

龍谷大学の歴史の始まりは1639年、徳川三代将軍・家光の時代に西本願寺境内に創設された僧侶のための教育機関「学寮」が出発点です。浄土真宗の教えを建学の精神とし、大学9学部・短期大学部・大学院10研究科の総合大学に発展してまいりました。いまでは文化も国籍も異なる多様な学生が集い、本学で学んでいます。
創立380周年を迎える今年、建学の精神をわかりやすく伝えるとともに、龍谷大学ならではの人材育成につなげるために、新たな行動・実践哲学を発信しました。それが「自省利他」です。利己心にふり回されている自分のありようを省みて、家族や友人など多くの人との関係性に支えられていることに気づく。そして、他者や世の中をより良くする行動を起こし、力を尽くす。この自省利他を「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」姿として実践したのが、浄土真宗の開祖・親鸞聖人です。その生きる姿勢に学び、実践できる人材の育成は、教育理念・目的にも掲げています。
自省利他のない思い込みや妄想は、自己中心性という言葉で表現できます。自分が正しいと言い張り、受け入れられないものは否定し攻撃する。国際紛争から学校のいじめまで、多くの社会問題はこの自己中心性から生まれると言えるでしょう。このようなエゴイズムに陥らないために、自省利他の精神によって、社会や他者と接するなかで己を省みることが大切です。大学4年間をどう過ごし、何を学ぶのか。いかにして自分自身の適性を見極め、社会における役割を担っていくのか。自ら考えて行動することで、はじめて他者のために力を発揮できる存在へと成長できるのです。実践的な哲学を、習慣として身に着ける――それが、龍谷大学で学ぶということにほかなりません。
その学びを学生の自立とキャリア形成につなげるために、多彩なインターンシッププログラムの提供にも全学的に取り組んでいます。協定型・短期体験型・海外インターンシップなど、受け入れ企業の協力を得た実践的な教育プログラムに参加する中で、ときに学生は自分が想像していなかったような場面に出くわすこともあるでしょう。しかし、そんな経験やそこで得た気づきこそが、それまでの自分にない発想や価値観を芽生えさせてくれ、大学での学びにも生かすことができるのです。職場や人間関係の悩みを抱える人に共感できる。意見が異なる相手にも、自分を押し通すのではなく、違いを乗り越える新たな発想やアイデアを生み出せる。自省利他の精神を持って人と接し、自己研鑽を繰り返すことで、社会に出ても通用する存在になってほしいと考えています。

多様な価値観と対話し共生・共存へと導く
「本当のグローバル人材」を育てる

学長に就任して3年、私は「開かれた学長室」として日々学生を迎え入れてきました。そのなかで強く感じたのは、自発的に心に湧き上がる想いとして、社会に貢献したいと考える学生が多いということ。学内外でボランティアなどの社会貢献活動に取り組み、自らも成長している様子を垣間見ることができました。まさに自省利他の精神に基づいた、龍谷大学で育った証だと言えるでしょう。
そんな学生たちの主体性と行動力をさらに後押しするべく、現在、自省利他の精神とSDGs(国連が定める17テーマの持続可能な開発目標)を結びつける取り組みを推進しています。貧困や飢餓、質の高い教育などの様々な社会問題の解決に向けて、産業界の協力も得て国内外の仏教教育機関とネットワークを構築。昨年、台湾で開催された世界学長会議でも「仏教×SDGs」の取り組みを世界に発信し、大きな反響をいただきました。

私はシルクロード研究を専門としていますが、異なる民族が共生し、多様な言語や文化が共存するためには、仏教が大きな役割を果たしたと考えています。同じように、グローバル化や多様化がさらに進展するこれからの社会にも、仏教の自省利他の精神が必要なのではないでしょうか。いま、あらゆる教育機関がグローバル人材の育成を掲げていますが、特定の価値観が全世界に広がることをグローバル化だと勘違いすることほど危険なことはありません。偏ったものの見方や排他的な行動をしない人が、本当のグローバル人材なのです。
本学は33ヶ国・地域110大学と学生交換留学を締結しており、現在では28ヶ国から留学生を受け入れてキャンパスで日常的な交流を重ねています。また、低年次におけるグローバル・キャリア意識の醸成とキャリア・ビジョンの形成を目的に、将来のキャリアとしてグローバル社会での活躍やグローバルな仕事に興味のある1・2年生を対象とした正課外のキャリア教育プログラム「グローバル・キャリア・チャレンジ・プログラム(GCCP)」を開講しています。語学力に磨きをかけるとともに、グローバル企業や国際機関で活躍する講師による課題解決型グループワークを中心に、企業見学などのフィールドワークも実施しています。さらに、本プログラムで特に優秀な成績を残したチームには、海外インターンシップの参加権を付与するなど、より多くの学生に海外経験を積ませることで、グローバルな視点を持ち、積極的に修学に取り組む学生を育成しています。このように、本学には国際的に活躍できる本当のグローバル人材が育つ、格好の学びと実践の環境があると自負しています。そしていま、同じ建学の精神を持つ全国の大学・高校・中学・小学校・幼稚園71校が加盟する龍谷総合学園にも、その仕組みづくりが広がっています。

進取の気風で創造性を発揮する
社会や地域に貢献する知の拠点をめざして

無限の可能性を追求し、自らの未来を切り拓いていく学生たちと、その一人ひとりと真摯に向き合う大学。そんな姿を表現したのが、龍谷大学のスローガン“You,Unlimited”です。
例えば、キャリア支援。学生のうちに学問に勤しむことはもちろんですが、社会に出てからもライフワークとして何かに取り組み続けることは、人生を豊かにしてくれます。本学のキャリアセンターは目先の就職だけではなく、長い人生を自ら組み立てて豊かなものにし、いつも前へと歩みを進めていける学生のキャリア支援を重要視しています。また、社会で活躍する卒業生が教職員や学生と交流を重ねる環境があることも、龍谷大学の特色です。卒業生で構成する校友会は学部別だけでなく職種別にもネットワークを組織し、学生の就職活動にも大きな力を与えてくれています。学生、卒業生、大学が密に連携する「オール龍谷」体制を今後もさらに強化してまいります。
さらに、教育・研究の充実も着実に推進しています。2020年4月には理工学部を改組し、先端理工学部を開設します。従来のタコ壺型の専門教育ではなく、分野横断型の専門教育を実現可能とする文部科学省主導による工学系教育改革に則った課程制度を導入するのは、理系学部では新しい取り組みとなります。昨今のAI(人工知能)をはじめとする科学技術の進展とともに、それらを扱う人間がどうあるべきかが強く問われる時代を迎えました。国内の仏教系総合大学で、初めて理工学部を誕生させた龍谷大学には、その問いに応えられる人材を育てる使命があるのです。専門領域の学びを深めつつ、幅広い視野と対応力を持つ存在になる。その本質は、グローバル人材の育成と同じです。

進取の気風に富み、先進的な取り組みを重ねてきた龍谷大学は、いつの時代も新たなものを生み出してきました。様々な社会問題を解決する道を見出す自省利他の実践哲学も、「創造性」がその鍵になります。これからの大学は、社会に貢献するための知の拠点としての姿を、より鮮明に描き出すことが求められることでしょう。社会や地域と厚い信頼関係を築き、より良い未来に導くための知の発信を続けていくこと。そしてまた、社会や地域を牽引するリーダーシップが発揮できる人材を育成し続けることが、これまで以上に大事な役割としてクローズアップされていくでしょう。
社会と時代の要請に応える龍谷大学は、どうあるべきか。20年後の2039年に迎える創立400周年に向かって、中身をさらに充実させるべく、着実に歩みを進めていきます。

 
龍谷大学 https://www.ryukoku.ac.jp/
龍谷大学は、1639年西本願寺境内に設けられた教育機関「学寮」に始まり、「浄土真宗の精神」を建学の精神として時代の要請に応え、社会的課題の本質と向き合いながら、教育機関としての役割を果たし、2019年に創立380周年を迎えました。このこれまでに蓄積された豊富な図書や資料、親鸞聖人の生き方に学ぶ仏教的人間教育のあり方は、本学の最も誇るべき特長です。しかし、本学はその歴史と伝統に甘んじることなく、常に大学自身のあり方を問い続け、教学改革、国際化への素早い対応、開かれた大学としての市民への開放など、革新的な大学創造に取り組んできました。
とりわけ1975年からは具体的、長期的な計画にもとづき、新たな社会的・時代的要請に対応する大学創造をめざしており、現在は、「第5次長期計画」のもと、教職員が一体となって大学改革に取り組んでいます。2020年4月には現在の理工学部を改組し、「先端理工学部」を開設します。
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