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外国人材を積極的に採用するべき理由とは? その準備とメリットについて聞いてみました

日本には約30万人の外国人留学生がいて、そのうちの約6割が日本での就職を希望しているそうです。
しかし、実際に就職ができるのは全体の3割程度というのが現状。彼らが日本で就職を希望する理由、そして多くの場合それがかなわない原因は何なのでしょうか。

今回は、ご本人も大学生の頃からアメリカや中国に留学・研究などで5年ほど滞在され、その後もアジアでのビジネス・研究などの経験を踏まえて留学生の就職と企業の外国人材活用について研究されている、亜細亜大学アジア研究所教授の九門大士先生にお話を伺いました。

九門 大士
プロフィール
九門 大士 (くもん・たかし)

亜細亜大学アジア研究所教授。東京大学公共政策大学院非常勤講師。東京大学公共政策大学院で外国人留学生向けに英語で「日本産業論」を教える。主な研究分野は、留学生の就職と企業の外国人材の活用、中国・アジアでの人材育成・キャリア開発など。慶應義塾大学法学部卒業、米ミシガン大学公共政策大学院修了。ジェトロ(日本貿易振興機構)にて中国・アジアにおける人材マネジメント・企業動向のリサーチなどを担当。中国・清華大学経済管理学院にて1年間の研修。東京大学工学部特任研究員、亜細亜大学国際関係学部特任教授などを経て、現職に就く。主な著書に『アジアで働く』(英治出版)、『中国進出企業の人材活用と人事戦略』(ジェトロ=共著)など多数。

日本人が気付きにくい、日本企業の魅力

― 今日はよろしくお願いします。まず、お伺いします。外国人留学生のうち6割が日本企業への就職を希望しているとのことですが、その理由をお聞かせいただけますでしょうか。

九門先生: はい、よろしくお願いします。まず前提として、日本での就職に関心を持っている留学生は東京大学をはじめ有名大学・大学院で学ぶエリート人材にも多くいます。日本のカルチャーやライフスタイルなどがきっかけで日本に興味を持ち、自然と好きな日本で働きたいと考える人も多いのです。日本企業に就職する具体的な理由は大きく分けて2つで、1つは日本型の人材育成制度にある魅力、もう1つが日本企業の先進的な技術力です。

― 日本型の人材育成制度というと… どういった点が魅力なのでしょうか。

九門先生:アメリカや中国など海外で主流の採用方法は「ジョブ型」といわれる個人の専門性を生かしたものです。これはメリットも多い半面、例えば文学や歴史を専攻した学生が就職先を見つけるのに苦労したり、大学時代の専攻と違うことを仕事にしたいと思っても、それがかなえられなかったりといったデメリットがあります。つまり、新卒の学生が最初に就く仕事を見つけるのが大変なのです。

その点で、「総合職採用をして、OJTや研修を通じて人材を育成する」という日本型の人材育成制度は特に中国人留学生などに非常に魅力的に映るようですね。

― なるほど。では、日本企業の先進的な技術力についてもお聞かせください。

九門先生: 日本のものづくりをはじめとするさまざまな技術に関心を持っている留学生は多いですね。ある有名国公立大学の理系で学んでいたインドネシア人の留学生は、母国で家具工場を経営する祖父から「日本のものづくりはすごい」と聞いて日本に留学し、日本企業の工場見学までして大手メーカーに就職しました。また、あるシンガポール人留学生は、日本ではまだまだ世界に発信されていない技術が眠っているので、それを海外に輸出していきたいと話していました。
日本企業にはグローバル企業が多いという印象を持つ外国人材も多いので、国際的な業務に関わることも視野に入れて、技術を含め自らのスキルや専門性を高め活かしたいと考えている人は多いですね。

外国人材の就職を阻むものは…

― 一方で、日本での就職を希望する外国人留学生のうち、約5割が就職できないとも伺いました。この理由についても教えていただけますか?

九門先生:第一に、言葉の壁があります。彼らは日本に留学生として来ているので、多くの人はある程度の日本語が話せますが、それ以上のレベルを求められることが多いようです。以下の調査でも、外国人留学生に求める資質として、1位に日本語能力、2位にコミュニケーション能力が挙がっています。 日本企業でのコミュニケーションは非常にハイコンテキストで、「雰囲気」や「空気」でお互いに察し合い、協調して仕事を進めることを重んじる風土があります。このため、非常に高度な日本語能力やコミュニケーション力を求めるのかもしれません。

― 外国人材を採用するにあたって、最も求められるのが日本語能力とコミュ力というのは… ある意味で日本人を採用するときと変わりませんね。

九門先生: そうですよね。日本は2008年に「留学生30万人計画」と銘打って留学生の受け入れを拡大し、2019年に目標を達成しました。それなのに、こうした言語の壁、職場文化の壁が原因で就職ができないとなれば、せっかく日本に来た高度外国人材の卵が流出してしまいます。

「日本人と同じように働いてほしい」ではなく「外国人材だからこそ、才能を生かしてこういう仕事をしてほしい」と明確にすることが重要なのではないでしょうか。

外国人材の採用は目的を明確にした上で、採用基準を見直してみよう

― では、日本企業は外国人材にどのようなことを期待しているのでしょうか。

九門先生: 外国人留学生を採用する理由を企業に尋ねたアンケート調査があります。
九門先生: 「外国語の必要な業務があるため」「海外の事業所や法人での雇用・配属を見越して/ブリッジ要員のため」という項目が上位に入っています。

外国人材を採用して適切な部署に配置すれば、きっと採用目的にかなうと思いますが、そこまでのハードルが高すぎるのが現状です。また、外国人材としての特徴を活かせる「ダイバーシティ推進のため」や「異文化の価値観や発想力を取り入れるため」が低いのも気になります。

― 外国人材ならではの能力を期待しているのに、日本人同様の振る舞いを求め、日本語能力も非常に高いレベルを要求してしまう。ここに不一致があるんですね。

九門先生: はい。こうした不一致をなくすために、まずは「なぜ、外国人材を採用するのか」を明確にしましょう。日本人社員と同じようにジョブルーティンの中で国内営業の部署に最初から配置しても、能力は発揮できません。
一方で、その能力を生かせる海外営業や海外向けの事業開発、新規開拓などに配置すれば、彼・彼女らの母国語や英語も含めて対外的な仕事ができますので、おのずと求める日本語能力のハードルも下げられると思います。もちろん、外国人としての感性や能力を最大限に生かした成果も期待できますね。

― なるほど。とはいえ、やはり社内コミュニケーションには日本語が必要ですが、この点はいかがでしょうか。

九門先生: まず、わかりやすい日本語でできるだけ言語化して伝えていくことです。なんとなく空気を察して仕事をしてほしい、と思ってしまうかもしれませんが、私が会ってきた多くの外国人材がそこに難しさを感じています。

その点では、コロナ禍でリモートワークが増えたことはある意味でチャンスと捉えてもいいかもしれません。
こうして半ば強制的に物理的な距離ができたことで、日本人同士でもチャットやメールなどを通じて雰囲気や空気ではなく、「言語」でコミュニケーションをとる機会が増えていますよね。これは、外国人材と仕事をする上でも非常に有効です。

何より重要なのは、現場の理解

― 無事に採用できたとして、実際に自分の働いているチームに外国人が入ってくるとなると現場は身構えてしまうような気もしますが、いかがでしょうか。

九門先生: 受け入れる側に緊張感があるのは当然です。「ランチに誘ってもいいのかな」とか「どんな仕事を頼めばいいのかな」と、つい及び腰になってしまいますよね。それを解消するため、人事部からの働き掛けで受け入れ部署の現場に理解を促すことは必要だと思います。

出身の国や地域によって文化は大きく違いますし、一人ひとりを見てもさまざまです。例えば、入社する外国人材がベジタリアンだとわかっていれば、歓迎会の会場を焼き鳥屋ではなくインド料理屋にすることができますよね。
こういった細かなところから、受け入れ部署にレクチャーを行って理解してもらうことが大切です。

そして何より、出身国にとらわれすぎず、一人の人間、一人のビジネスパーソンとして理解することですね。

― なるほど。外国人材が自分の同僚になる、部下になるというシチュエーションでは、外国人ということに集中してしまって個人を見ることができない場合もあるかもしれませんね。

九門先生: そうなんです。当然のことなのですが、見落としがちかもしれません。ここまでにお話した、外国人材に特有の課題をクリアした上で、その本人の資質や個性、経歴をよく見て、どんな仕事をしたいのか、どんな仕事で成果を上げられそうかという視点でもきちんと考え話し合いの機会をつくることは、忘れないでほしいですね。

社内に変革をもたらす起爆剤になり得る?

― 最後にお伺いします。外国人留学生は能力の高い人も多く、しかも6割が日本企業への就職を希望している。しかし、ここまでのお話を伺っていると受け入れのために企業側に求められる準備も相当なものです。このハードルを乗り越えた先に、企業にはどのようなメリットがあると思いますか?

九門先生: 日本以外の国で育ち、学び、そして日本に興味を持って留学してきた外国人材は、当然ながら日本人社員とは全く違うバックグラウンドを持っているので、採用にあたっても、一緒に仕事をするにあたっても、ある意味で「摩擦」を感じることもあるかもしれません。

しかし、その摩擦は刺激でもあり、凝り固まった企業文化、これまで不文律的に行われてきた慣習を見直すいい機会にもなります。また、摩擦を乗り越えていくなかで他国の文化から持ち込まれる新しい考え方は、新しいビジネスなどイノベーションを生み出す力も与えてくれるでしょう。

日本が外国人材の獲得に積極的になっている理由として、減っていく労働人口の補てんや、グローバル市場での優位性獲得といった点が挙げられることが多いのですが、私はそれだけではないと思っています。

外国人材が持つ一人ひとりの異なる才能を生かすことは、自社のイノベーション力や競争力の向上につながるはずです。日本企業の良さを理解している上に、文化的に全く違うバックグラウンドを持つ外国人材と仕事をすることで得られるメリットは、大きいと思いますよ。逆に、日本人の補填として日本人と同じような外国人材を求めてしまうと、コロナ禍が収束しても優秀な外国人材は日本企業に来なくなってしまうのではという危機感を持っています。今こそ、ポストコロナを見据えて外国人材のように異なる才能を生かしていく組織のあり方を考える時ではないでしょうか。

― 九門先生、今日はありがとうございました!

九門先生: はい、ありがとうございました。

一人のビジネスパーソンとして迎え、変化の起爆剤となる

日本はいま、労働人口の減少が避けられない状況にあります。その環境下でもグローバル市場で戦うために、国際感覚のある外国人材の採用を… というのは、わかりやすい一方で規模が大きすぎて足元を見失ってしまいそうです。

目線をぐっと落として、自社のメリットという視点から外国人材の採用を考えると、とてもわかりやすくなりますね。
凝り固まった企業文化の変革や、新たなビジネス創出のための起爆剤と考えれば、わかりやすい以上に、自然と外国人材一人ひとりをビジネスパーソンとして迎えるために必要なことが見えてくるでしょう。

今回、取材にご協力いただいた九門先生の新刊「日本を愛する外国人がなぜ日本企業で活躍できないのか? 外国人エリート留学生の知られざる本音」が2020年9月29日に発売されます。

外国人エリート留学生の本音から、外国人材を生かす先進企業の事例、そしてポストコロナ時代の日本企業の働き方や組織のあるべき姿まで、採用だけでなくこの国でビジネスをする上でのヒントが詰まった1冊。今回の記事で外国人材の活用に興味を持った読者の方は、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

書籍カバー最終版(日本を愛する外国人)

<書籍情報>
書名:日本を愛する外国人がなぜ日本企業で活躍できないのか?
外国人エリート留学生の知られざる本音
著者:九門 大士
定価:1980円(税込)
発行日:2020年9月29日
出版社:株式会社 日経BP
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4296107070/