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情報源の違いによって学生の企業情報の信用度が変わるのか

企業情報の情報源と学生の関係

欧米では、企業に関する情報そのものではなく、情報源自体が求職者に与える影響について議論されている。例えば、HRM研究者のVan HoyeとLievensが「Recruitment Advertising:採用広告」、「Publicity:報道」、「Word-of-Mouth:口コミ」という3つの情報源(※1)を用いて、2004年に「否定的な口コミの後に採用広告が提示されたとき、その企業への魅力がより一層増加する。」ことを報告している。続いて2005年には「求職者にとって魅力的な採用広告と口コミは報道から受ける悪いイメージの影響を抑制すること」を明らかにした。これらは、採用担当者にとっても興味深い発見だと言えるだろう。学生の企業への魅力を高め、エントリー数を伸ばすヒントとなりそうな結果が欧米で明らかになっている通り、日本でも学生と情報源にはなんらかの関係性がありそうである。

そこで手始めに日本国内の「報道」が学生の企業選択に何らかの影響を及ぼすのかを検証する為、マイナビの就職活動人気企業ランキングを使って調べてみることにした。ここでは、常にランキング上位に位置するトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」)の順位と一般的に報道されている業績の関係性を時系列で比較してみた(※2)。図1に注目してほしい。トヨタは2009年から大規模リコールを行った影響で業績が悪化し、国内では否定的な報道がなされた。2008年から過去5年連続で1位に位置していたランキングでも、同時期から急激に下落している。特に文系の方が、理系より極端な下落がみられる。この図は、「報道が採用広告の影響を阻害したのではないか」、「学生は報道を信用できるものとして捉えているようだ」など、情報源それぞれの性質や関係性の考察を深める要因となる。
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図1「トヨタ自動車業績と人気企業ランキングの推移」

調査について
~情報源それぞれの信用度と、文理や男女でその傾向が異なるか~

日本ではこの情報源に関する調査、研究が進んでいないというのが現状である。よって今回は、この分野の調査、研究の発展を期待して、その一端を担えるような調査を行うべきだと考えた。そこで、①情報源それぞれの信用度と、②文系・理系、男性・女性でその信用度の傾向に違いがあるかどうかを、アンケート調査によって明らかにする。

調査概要

調査対象:2016年3月卒業見込みの全国大学4年生、大学院2年生(文系理系、男女共に含む)
調査期間:2015年4月27日 ~5月1日
調査方法:マイナビ2016の全会員に対するWEBアンケート
有効回答数:12,067人
分析手法:次の結果と合わせて説明したい。
設問と回答選択肢:以下の通り。
1. その企業自らが開示する採用広告(企業HPや入社案内)から得た情報を基にエントリーする際、どの程度内容を信用しますか。
2. テレビや新聞、雑誌などのマスメディア等の媒体から得た情報を基にエントリーする際、どの程度内容を信用しますか。
3. 友人や先輩、家族などからの口コミから得た情報を基にエントリーする際、どの程度内容を信用しますか。
「1.全く信用しない」から「5.全て信用する」の5段階評定で調査

分析結果

(1)情報源それぞれの信用度
⇒「報道」はどちらとも言えない、「採用広告」と「口コミ」は同程度信用する傾向あり。

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図2「信用度平均値(5段階)」

(2)文系・理系、男性・女性でその信用度の傾向に違いがあるかどうか
⇒採用広告:文理× 男女○、女性の方が信用度が高い。
報道:文理○ 男女○、文系、女性の方が信用度が高い。
口コミ:文理× 男女○、女性の方が信用度が高い。(違いあり=○、違いなし=×)

図3の通り、「文系・理系、男性、女性」のカテゴリー別にそれぞれ5段階で回答した人数の割合を出した。統計分析(※3 χ二乗検定)の結果

  • ①「採用広告」では、文系と理系で信用すると回答した人数の割合に差はないが、女性の方が信用するという回答をした人数の割合が高く、男性は信用しないという回答をした人数の割合が高い。つまり文理では傾向に違いがなく、男女では傾向に違いがあるといえる。
  • ②「報道」では、文理も男女も人数の割合に差があり、どちらとも傾向に違いがある。
  • ③「口コミ」では、文理の割合には差がなく、男女の割合には差があり、文理は傾向に違いがないが男女はある。

ということがわかった。
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図3「情報源の信用度」

考察
~なぜこのような結果となったか~

(1)情報源それぞれの信用度
⇒「報道」:媒体の違いが影響するか?
「採用広告」「口コミ」:入手できる情報が異なる。

単純な平均値の集計だけだが、学生全体でみると「採用広告」と「口コミ」をおおむね信用している傾向にあると言えるだろう。「報道」の信用度は他の2つに比べると低めであり、信用しているとも信用していないとも言えないという結果になった。これは、想定する状況を「新卒採用のエントリー」に限定しているので、大多数のエントリー先が一般では報道されないような企業群であることが関係していると考えられる。逆に報道される事の多いトヨタ自動車などは影響を受けており、文理による順位変動も文系の方が影響を受けている。また、「口コミ」は、「採用広告」と同程度の信用度があると言える。これは、「採用広告」だけでは情報収集に満足できない可能性を示唆している。つまり、学生は、「採用広告」に足りない情報を求めるが、足りない情報は「口コミ」からしか入手できないため、信用せざるを得ないと考えられる。

(2)文系・理系、男女でその信用度の傾向に違いがあるかどうか
⇒「報道」:報道の理解度によって傾向が異なる
「採用広告」:就職観の違いによって傾向が異なる
「口コミ」:求める情報、就職観の違いによって傾向が異なる


まとめ

⇒「採用広告」で伝えるべき内容を考えなおす必要性
OB訪問、インターンシップなど、社員との交流機会を増やす必要性

今回挙げた3つの情報源「採用広告」、「報道」、「口コミ」を採用担当者の視点から区別すると、学生に伝わる情報を採用担当者が取捨選択できるかどうか(コントロールしやすさ)と学生に伝わる情報を採用担当者が把握できるかどうか(把握しやすさ)でその性質を区別することができるだろう。「採用広告」は最もコントロールすることが可能な情報源で、学生に与える情報を取捨選択し、採用担当者にとって最適な情報を伝えることができる。さらに学生へ伝わる情報が把握できる。一方で、「報道」と「口コミ」は、採用担当者が伝えたい情報だけが学生に伝わるとは限らない。業績悪化や不祥事などは、コントロールの余地なく報道され、学生に伝わってしまう。幸い、「報道」は採用担当者も同時に知ることができるため、どのような情報が学生に伝わっているか、採用担当者が把握しやすい情報源である。しかし、「口コミ」はさらにコントロールが難しい。なおかつ、学生の入手した情報内容、その伝達経路を把握しにくいという特徴がある。以上のことを図4にまとめた。
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図4 採用担当者にとっての情報源の性質
多くの企業は、コントロールしやすく、把握しやすい「採用広告」に目を向けているものだと思うが、他の2つの情報源からの情報の影響も考えるべきではないか。「報道」は概ね信用に足らないという結果が出たが、トヨタの例を見ればまったく関係がないとは言い切れない。「口コミ」はコントロールしにくく、把握しにくい割に「採用広告」と同程度の信用度があるため採用担当者にとって脅威に感じる要素と言えるのではないか。「採用広告」に労力やコストを費やしている割に学生のエントリー数が思うように増加しない場合、原因はこの「口コミ」にあると疑った方が良いかもしれない。

今回の調査結果を踏まえて企業の採用担当者はどうするべきか。筆者が考える案は、企業が一定のコントロールが可能な「口コミ」といえるOB訪問、社員と学生の交流の重視である。エントリー前に、インターンシップなどで社員と学生の交流を盛んにし、事前に採用担当者が把握している学生が「口コミ」で知りたい情報を伝えるように社員に促すのはどうだろうか。その後、どのような情報を学生に伝えたかを社員に聞く。そうすると、情報のコントロールしやすさも、把握しやすさも高くなり、「口コミ」の脅威を打破することができるのではないか。

※1今回の調査では、情報源について、その企業自らが開示する企業HPや入社案内を「採用広告」、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアを「報道」、友人や先輩、家族などを「口コミ」と呼ぶ。
※2データは、「トヨタ企業サイト トヨタ自動車75年史」から引用した。(2015年9月7日アクセス)
※3 χ二乗検定とは、期待値と実際に測定された値の間にどれくらい差があるかを検定する分析手法である。例えば、コイントスを1,000回行った場合の期待値は、それぞれ500回、500回であるが、実際に測定した回数が表300回、700回の場合、期待値と実際の値に差が大きくあるため、コインの表裏には傾向の違いがあるといえる。文理、男女の期待値と実際の値に差がなければ、文理、男女で傾向の違いがないといえ、差があれば傾向の違いがあるといえる。
※4 2016年卒マイナビ大学生就職意識調査
※5 2016年卒マイナビ学生就職モニター調査 8月の活動状況

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