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キャリア展望の指標としての結婚希望年齢

何歳で結婚したいの?

「何歳で結婚したいのか」という問いは、日常会話の中で何度も繰り返されたものであろう。大学生に限れば、会話の潤滑油のようなものであって、恋バナの導火線として使われているだけなのかもしれない。
他方、見方を変えると、「結婚希望年齢」とは、大学生の人生計画にとって、唯一、具体的にイメージできるイベントとも言える。婚活や妊活という情報は、学生たちにも、不安を煽る形で確実に伝わっているが、課長昇進や転職の年齢を具体的にイメージできる学生は少ない。学生たちは会社という組織がわからないのだから当然である。
シンガーソングライターの小坂明子さんが1973年に発表した「あなた」という曲は、結婚に対する若い女性の憧れが表現されていた(※1)。この曲の中には、「小さな家」「古い暖炉」「真っ赤なバラと白いパンジー」「ブルーのじゅうたん」「坊や」「レースを編む」という言葉が散りばめられている。今では、このような専業主婦家庭像は「贅沢な夢」である。
事実を確認するために、「大学生のライフスタイル調査(2016年)」から現代の大学生の結婚希望年齢を見てみよう(図1参照)。まず、25歳、28歳、30歳に山がある。ここでは、①「25歳まで希望」(22~25歳)、②「28歳まで希望」(26~28歳)、③「30歳まで希望」(29~30歳)の3つのグループに分けておく。

図1 結婚希望年齢の分布column201701_01※「大学生のライフスタイル調査(2016年)」

男女差は大きい。女性は25歳の希望が多く、男性は30歳の希望が多いという特徴がある。興味深い結果は、30歳以上で結婚したい人は男女共に圧倒的に少ないという事実である。少なくも希望の上では、「30才までには」と思っている若者が大多数なのである。
ここからは、女性に絞った分析をする。少し意地悪な分析だが、厚生労働省の『人口動態調査(厚生労働省)』から結婚した女性を総数とした年齢別の割合を年代別に確認してみる。この図に示されるように女性の初婚年齢は高齢化しており、2015年に30-34歳ではじめて結婚する女性は、その年に結婚した女性の中で24%も占める。さらに、この図は、結婚した場合の年齢別割合なので、未婚者は含まれない。つまり、希望と現実にはかなり距離があるのだ。

図2 結婚した女性の年令別割合の時系列変化column201701_02※『人口動態調査(2015年)』(厚生労働省)
注)結婚生活に入ったときの年齢別にみた年次別婚姻件数(初婚の妻)
※1:1973年第4回世界歌謡祭の最優秀グランプリ曲、200万枚を超える大ヒットになった。

クリスマスケーキからやまとなでしこ、そしてタラレバ娘へ

そもそも25という数字は、女性の自由を縛り付ける社会通念として存在してきた。女性の結婚はクリスマスケーキという言い方は、「25歳を過ぎると値崩れするよ」という意味だった。
では、28はどのような意味を持つのだろうか。松嶋菜々子さんが主演で大ヒットしたドラマ「やまとなでしこ」は、合コンの女王と呼ばれる客室乗務員の神野桜子さんが玉の輿結婚を目指しつつ、真実の愛に目覚める話である(※2)。その桜子さんにセリフに「27歳が売り時のピーク」や「(28歳の誕生日)今日から値崩れ」という言葉がある。つまり、時代が変わって2歳上昇したのである。このドラマが放送されたのは2000年である。そして調査時点(2016年)、30歳を希望する女子大生が約15%もいる。2017年1月から放送されている「東京タラレバ娘」で吉高由里子さんが演じる主人公の鎌田倫子は、20代のうちの結婚相手に高い理想を持っていたが、現在30歳独身で、過去の選択を悔やみつつ(・・してタラ・していレバ)、苦闘している(※3)。このように若い女性に共感される主人公も時代とともに変わったのである。

※2:中園ミホ、相沢友子のダブル脚本。
貧乏研究者の欧介くんと結ばれる桜子さんの最後のセリフは「私には見えるんです。10年後も、20年後も・・
あなたのそばには私がいる。残念ながら、あなたといると、私は幸せなんです」であった。
※3:東村アキ子先生の同名のマンガが原作である。
マンガの中の主人公は33歳である。読者と視聴者の違いを想定して、年齢の調整が図られていると考えられる。

働き方×家庭の理想像

ところで、このように結婚をめぐる意識の変遷を辿っていくと、変化①のように全ての大学生の意識が時代とともに変化してきたと誤解されてしまうかもしれない。しかし実際は、変化②のように①25歳まで希望と②28歳まで希望が分化し、さらに現在は、③30歳まで希望が分化してきたと推測できる。つまり、今の女子大学生の中には、昔ながらの希望の人と新しい希望の人が混在しているのである。

図3 結婚意識変化の概念図column201701_03

では、結婚希望の3グループ間に働き方+家庭の計画にも違いがあるのであろうか。そこで、「大学生のライフスタイル調査」の「結婚後の仕事に関してどのように考えていますか」という質問項目を使って、結婚希望別に働き方+家庭の違いを確認してみた(表1)。

表1 理想の世帯

夫婦共働きが望ましい 主に自分の収入のみで生活するのが望ましい 主に相手の収入のみで生活するのが望ましい 結婚せず自分の収入のみで生活するのが望ましい 合計
25歳まで希望 標本数 344 5 155 0 504
割合% 68.25 0.99 30.75 0 100
28歳まで希望 標本数 893 4 327 0 1,224
割合% 72.96 0.33 26.72 0 100
30歳まで希望 標本数 337 6 79 144 566
割合% 59.54 1.06 13.96 25.44 100
合計 標本数 1,574 15 561 144 2,294
割合% 68.61 0.65 24.46 6.28 100

※「大学生のライフスタイル調査(2016年)」

まず、結婚希望年齢にかかわらず、夫婦共働きが望ましいと考えている女子学生が圧倒的に多いことが確認できる。共働き希望は専業主婦希望の倍以上である。ただし、25歳まで希望グループは、「主に相手の収入のみで生活するのが望ましい」を選択している人が他のグループと比べて多い(約31%)。このグループにおいて専業主婦願望がそれなりに残っていると言えよう。また、30歳までに希望グループに関しては、「結婚せずに自分の収入のみで生活するのが望ましい」を選んだ人が約25%にもなる。他のグループは0%なので、大きな違いである。なお、この結果は30歳までに結婚希望と一貫性がない回答であるが、おそらく回答者も将来の選択に揺れていると考えられる。
このような結婚希望のグループ間の違いは、「子育てについて、あなたの考えに近いものを選んでください」という質問からも確認できる(表2)。25歳まで希望や28歳まで希望のグループは、育児に対して積極的である。特に25歳まで希望は「子供ができたら仕事をやめて子育てに専念したい」という回答が他のグループに比べると多い。一方、30歳まで希望は他のグループと比較すると、「今のところあまり子供は欲しくない」や「子育てのことなど考えたこともない」という回答が多い。

表2 子育ての希望

育児休暇を取って積極的に子育てしたい 育児休暇は取らないが夫婦で子育てはしたい 子供ができたら仕事をやめて子育てに専念したい 子育てはできるだけ相手や両親にまかせたい 今のところあまり子供は欲しくない 子育てのことなど考えたこともない 合計
25歳まで希望 標本数 364 23 87 3 18 9 504
割合% 72.22 4.56 17.26 0.6 3.57 1.79 100
28歳まで希望 標本数 899 96 152 6 51 20 1224
割合% 73.45 7.84 12.42 0.49 4.17 1.63 100
30歳まで希望 標本数 288 41 38 6 117 76 566
割合% 50.88 7.24 6.71 1.06 20.67 13.43 100
合計 標本数 1551 160 277 15 186 105 2294
割合% 67.61 6.97 12.07 0.65 8.11 4.58 100

資料)「大学生のライフスタイル調査(2016年)」

以上、結婚希望の違いを分析してみると、1,2年の違いであっても、特に女性にとって主観的には大きな1年であることがわかった。20代の1年の差の意味は大きいのである。そうであるならば、大学生のキャリア展望を示す「指標」として結婚希望年齢に注目すべきと言えよう。

法政大学 キャリアデザイン学部 梅崎 修 教授

1970年生まれ。大阪大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。2002年から法政大学キャリアデザイン学部に在職。専攻分野は労働経済学、人的資源管理論。新卒採用、就職活動、キャリア教育などの分野で日々新たな知見を発信している。主著「大学生の学びとキャリア―入学前から卒業後までの継続調査の分析(共著)」等。