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「採用学」対談(第5回対談)

「採用学」対談の第5回目です。今回は、前回に引き続き「採用における効果測定」というテーマで、お二人にお話していただきました。

■対談者プロフィール

採用学研究所 リーダー
服部泰宏(はっとり・やすひろ)
1980年神奈川県小田原市生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了、経営学博士。現在、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。日本企業における組織と個人の関わり合い(組織コミットメントや心理的契約)、経営学的な知識の普及の研究、シニア人材のマネジメント等、多数の研究活動に従事する。
採用学研究所 フェロー
神谷俊(かみや・しゅん)
1983年神奈川県小田原市生まれ。2013年法政大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、経営学修士。採用学研究所にて調査・研究を推進する一方、多様な組織に在籍し、独自のキャリアを展開。株式会社エスノグラファー代表取締役、株式会社ビジネスリサーチラボ研究員、面白法人カヤック「社外」人事など兼務。幅広い領域を越境しながら地域・組織などのコンサルティングを手掛ける。

■採用を効果的に進めるために私たちができることは?

<マイナビ>前回に引き続き、今回も「採用の効果」をテーマに対談をしていただきます。前回は、効果測定というテーマから派生して、そもそも企業は「何のためにやっているのか?」という目的と、実際に「何をやっているのか?」という実践がずれているというお話がありました。それを踏まえて、なぜその目的と実践がズレてしまうのか、また効果測定をしようという姿勢が薄れてしまうのかという観点で意見をいただいてきました。
さて今回は、改めて「では、実際に効果測定をしよう!」とする場合に、どういったポイントを踏まえて進めればいいのか?このテーマについてお話をいただきたいと思います。

■抽象的な人材要件では、効果測定は難しい。例えば「コミュニケーション能力」。

神谷:前回は企業の実態に即した話をしましたが、今回はちょっと手法や思考のヒントになる話をしましょうか。

服部:そうですね。建前上の理論について話したところで、どう進めるか?のヒントにはならないですもんね(笑)。

神谷:とは言え、効果測定をテーマにするのって結構難しい(笑)この対談記事だけで伝えるのはちょっと限界がありますよね。お話していく中で、エッセンスをうまく提示できるといいなと思います。実際に、採用学研究所で採用の効果測定を行う際に、重視するポイントについて話しましょうか。

服部:そうですね。効果測定ってそもそもどういう考え方でやっていくのか。それについて話していきながらポイントをいくつか抽出していきましょう。

神谷:はい。まず基本的な考え方ですが、前回の対談で、3つの採用効果の考え方について話しましたよね。

服部:A:求職者をひきつけること、B:採用した個々の求職者が入社後に成果を上げること、C:採用した求職者が組織全体の成果に貢献することの3つでした。

神谷:上記を踏まえて採用効果を考える際に、まず重要なのは上記のABCにおける「求職者」や「成果」といったキーワードです。これが自社においてどのような人材、あるいは結果を指すものなのかを具体的に設定していることが前提です。

服部:どういった人材を獲得していこうというねらいがあって、そのためにどのような手段を採択したのか。そこからですよね。そして採択した施策は、ターゲットにどのように受け止められていて、その結果どうであったのか。これらを詳細に調査していくのが基本ですもんね。

神谷:そうですね。目的に対して、現状の結果がどのような位置付けにあるのか。その差分を見ていく形ですね。だから、そこが“ユルユル”な設定であったりすると困ってしまう。

服部:確かに(笑)。でも、企業が自社の採用ターゲットが“ユルユル”かどうかって言うのは、どう判断すべきですかね。

神谷:、まずは、解釈が多様なもの。例えば、「コミュニケーション能力」。これはユルユルでしょう。コミュニケーション能力は、①印象管理に優れている、②質問内容に対してフィットする回答ができる、③協調性がある、④分かりやすい説明がある・・・などなど、色々な受け取り方ができますよね。これらを全て「コミュニケーション能力」と表現する人もいるでしょうが、僕には全て違う能力にも見える。あとは、「問題解決力」とか。問題発見か、施策の考案なのか、施策の実践なのか。どのような意味合いなのか、解釈が多様ですね。

服部:確かに。「コミュニケーション能力」については、業務における能力発揮の状況を考えるとさらに具体的な表現が必要であることがわかりますよね。B to Bの企業で、すでに取引実績のある自社よりも規模の大きな企業の渉外担当に営業をかける仕事における「コミュニケーション能力」と、B to Cで個人顧客に飛び込み営業を行う場合の「コミュニケーション能力」とでは、求められる「コミュニケーション能力」は全く異なります。「問題解決力」も然りですね。
神谷:そう。だから、この人材要件が抽象的な場合は、効果測定を本質的に行うのは難しいでしょうね。下記の3点を踏まえて具体的に設定する必要があると考えています。1つめは、自社の事業との関連。事業計画として、どのような事業に投資をしていくのか。どのような人材が数年後に求められていくのか。未来軸ですね。そして、2つめはパフォーマンスとの関連。現在の軸で、今の仕事においてパフォーマンスに結びつく能力はなんなのか。3つめは、成長可能性との関連。過去の時間軸で、2つめの能力が採用で獲得すべきものなのか、自社で育成すべきものなのかを特定するという観点です。服部:入社してから、成長し、業績を達成し、将来的にも活躍していく。このプロセスで能力を特定してくわけですね。ちなみに、具体的に、というのはどういうレベルで考えたらいいですかね。

神谷:目指すのは、どの面接官が人材を評価してもブレが少ないという具体化の基準ですね。そのためにも、評価シートの設計などを重視すべき。「○○力」のように要件名を設定し、それがどのような能力なのかを示す定義(○定義)と、似て非なる定義(×定義)を記載し、さらに面接官内でそのイメージのすり合わせをする場があったりするといいですよね。通常は、面接官研修などで行われたりしています。

服部:なるほど。言語を尽くして認識のズレを解消し、さらにコミュニケーションの場を設けて相互理解を進めるんですね。

神谷:ところで服部先生、対話の内容がいきなり横道にそれています・・・。前回に引き続き(笑)。僕も余計なこと話しすぎて、採用要件の話になってきているっていう・・・。すみません。

■何を見るべきか?を定めておかないと、何も見えない。

服部:そうそう。テーマは、効果測定でしたね。気を取り直して、効果測定について話さなければ(笑)。ちょっと具体的に前提を固めて話してみましょうか。仮にある企業が、要件を厳密に設定していたとして、その人材をひきつけられているか?を効果測定しようとしたとします。これに関してはどのようなアプローチが考えられますかね。

神谷:冒頭の話で取り上げた「A:求職者をひきつけること」の効果測定ですよね。今度は、この「ひきつける」を噛み砕く必要があるんです。

服部:「ひきつける」という言葉には色々な要素が入っていますからね。

神谷:そうなんです。「ひきつけ」と言っても色々あります。興味関心を持ってもらうこと、それを入社の動機形成まで高めてもらうこと。さらに、それを継続して高めてもらうこと。さらに入社の意思決定をしてもらうこと。どのレベルの「ひきつけ」がその企業において重要なのか。その企業は、特にどのようなポイントに注力してその年度の採用を展開したのか。それを踏まえなければ、何を見るべきか?が定まらないし、それが定まっていないと調査をしても何も見えてこない。「説明会で志望度は上がりましたか?」と言ったような、抽象度の高い質問になってしまいます。

服部:そういった採用課題や注力ポイントに応じて、効果測定の焦点も変わってくるということですね。

神谷:そうです。例えば、今年は面接のやり方を変更したがどうだったのか?とか、説明会のスライドに動画を入れたがどのような印象だったのか?とか、具体的に見るべきポイントを定めないと曖昧なデータしか得られません。採用活動も経営活動ですから、投資したポイントでうまく成果が出ているのかを見極めていくべきです。最近ですと、プレ期の施策や社員との接点などが学生の「ひきつけ」に影響を与えているケースが多い気がしています。なので、そのあたりの自社の現行施策について調査していくのもありかもしれません。

■効果測定調査として、最初に何からすべきか?

神谷:ところで我々、調査のアプローチについて一切触れていませんが・・・。

服部:それはまずいですね。基本的に、研究者の場合は何を調査したいかを定めたら先行研究などを参照して設問設計を行って、アンケートなどで定量的な調査を進めたり、インタビュー調査などを絡めたりするのですが。それを統計学のアプローチで分析していくわけです。果たして参考になるでしょうか。

神谷:ならないでしょうね(笑)。採用担当者は、統計学を学ばないと効果測定できないのか?というと、そうでもないと思っています。「統計的に有意である」とか、そういった精緻な分析を目指すよりも、すぐにやれることがある。まず企業担当者が「自前」で行う場合、僕がオススメしているのは
質的調査です。服部:インタビュー調査とか?

神谷:そうですね。具体的には、内定者へのインタビュー調査と記述式のアンケートです。これが、実践しやすく、かつ有意義なアプローチだと思っています。定量的なアンケート設計は、まず一定数の内定者がいる企業でなければ集団の傾向は捉えにくいですし、ある程度の知見がないと設問が誘導的になってしまったり、選択肢の設計が偏ってしまったりしてデータとしてイマイチな結果に終わるケースが多いように思います。もちろん、スキルある方はどんどんやるべきだと思っていますが、初めて実施しようという場合は質的調査をおすすめします。

服部:そうですね。我々のような専門家でも、設問の設計はかなりこだわるポイントですし、正直なところ工数がかかります。インタビューなどを実施すると、学生のリアルな声を聞けるのでいいかもしれませんね。

神谷:そうなんですよ。そもそも効果測定を行う意義は、次年度の採用の効果を引き上げる点にある。ならば、その主体者である採用担当者が、もう一方の主体者である学生に話を聞くというアプローチは有益だと思っています。

服部:でも、採用担当者に学生が本音を言うのか・・・という問題がありますよね。あまりネガティブなコメントしなさそうですが。

神谷:利害関係が邪魔するでしょうね。でも、きちんとインタビューを行う目的を伝えて協力姿勢を促した上で、ネガティブコメントも出させる仕掛けにしておくと、案外出てくるもんです。例えば、「弊社の採用を通して<良い>と感じた点を3つと、<改善すべき>と感じた点を3つそれぞれ教えてください」とか。

服部:協力関係は築けそうですよね。内定者なのだから、来年度は社員になるわけですし。そのアプローチはありですね。インタビューなどでは、「あなたが採用担当者だったら、次年度の採用で何をするか?」のような問いかけをしても間接的に改善点が見えてきそうですね。

神谷:はい。そういう感じでじっくりインタビューに時間をかけてもいいのかなと。僕がやる場合は、1名あたり90分くらいかけます。さらに並行して、匿名式のアンケートで同様の設問を自由記述でやったりしておくと、自社の魅力点や改善点はかなり見えてくるかなと。

服部:採用担当者自身のスキルアップにも繋がりそうですね。

神谷:はい。個人的にスキルアップを望む採用コンサルの方々に、「インタビューをやりまくれ」とアドバイスしているくらいですから、相当なスキルアップになるかと思います。

服部:効果測定というと、測定という言葉が入っているため、ついつい定量的な調査ばかりを検討してしまいがちですが、質的調査で施策がどのように受け止められているかを丹念にヒアリングすることも効果を測る上では重要なアクションですね。

神谷:はい。採用ターゲットが何を感じて、何を考え、どのような行動に出たのか?これを、本人の言葉で捉えることは、施策の改善を進める上でかなり有益かと思います。

<マイナビ>前回に引き続き、効果測定をテーマにお話頂きました。専門知識がないとできないと思われがちな効果測定ですが、「質的調査も効果測定として有益」というアドバイスや、「内定者に対するヒアリングから始める」という実践的なアドバイスを頂きました。
本日もどうも有り難うございました。

※次回、次々回については、9/12にマイナビが主催し、採用学研究所が講義された「これからの時代における新卒採用との向き合い方」開催報告をさせて頂きます。