マイナビ 採用学に関する新卒採用コラム・記事のご紹介です。

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「採用学」対談(第4回対談)

「採用学」対談の第4回目です。今回は新卒採用における効果測定というテーマで、お二人にお話していただきます。

■対談者プロフィール

採用学研究所 リーダー
服部泰宏(はっとり・やすひろ)
1980年神奈川県小田原市生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了、経営学博士。現在、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。日本企業における組織と個人の関わり合い(組織コミットメントや心理的契約)、経営学的な知識の普及の研究、シニア人材のマネジメント等、多数の研究活動に従事する。
採用学研究所 フェロー
神谷俊(かみや・しゅん)
1983年神奈川県小田原市生まれ。2013年法政大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、経営学修士。採用学研究所にて調査・研究を推進する一方、多様な組織に在籍し、独自のキャリアを展開。株式会社エスノグラファー代表取締役、株式会社ビジネスリサーチラボ研究員、面白法人カヤック「社外」人事など兼務。幅広い領域を越境しながら地域・組織などのコンサルティングを手掛ける。

■採用の効果について改めて整理する。

<マイナビ>6月で内定出しがピークを迎え、多くの企業が今年度の採用を振り返っている時期です。来期の対策検討に向けて歩みだしている頃かと思います。それを踏まえ、今回は今年度の採用効果を検証していらっしゃる企業各社に向けて、「採用の効果」をテーマに対談をしていただきました。
神谷:さて、「採用の効果」ということですが、何から話していきましょうかね。まずは、何を捉えて「効果」と言うのか。このあたりから整理をしていけるといい。学術的な領域を手掛かりにしてみましょうか。

服部:そうですね。学術的な採用研究でまず整理しましょう。採用効果を捉えると大きく分けて3つに分類されます。A:求職者をひきつけること、B:採用した個々の求職者が入社後に成果を上げること、C:採用した求職者が組織全体の成果に貢献すること、の3つですね。

神谷:Aは、比較的意識されている人事ご担当者も多そうですね。自社にエントリーしてくれているのか?とか、辞退せずに意思決定をしているか?とか。現場の問題意識に近いような気がします。

服部:はい。求職者(学生)の感情や意思決定に関わる効果に注目するものですから、現場の問題意識に近いでしょうね。採用活動の成功とは、①良い人材を惹きつけ、②選考プロセスでの辞退などを防止し、③入社の意思決定を引き出すことにある、というスタンスですね。

神谷:ちゃんと採用できたか、否か。そこのみに注目するスタンスですね。
Bはいかがでしょうか。個人の入社後のパフォーマンス、つまり業績について注目するスタンスですよね。

服部:Bは、より高い視座ですね。仮に多くの人がエントリーし、魅力を感じ、入社をしたとしても、その人たちが組織に貢献しなければ意味がない。だとすれば、組織に対して貢献する人材をどのように見極めれば良いか。こうした視点を持った面接研究者や適性検査研究者がこうした視点をとっています。ここでいう業績には、いわゆる仕事業績以外にも、例えばその企業からの離職や会社へのコミットメントなどが含まれています。

神谷:新人が戦力となる為に、組織にうまく適応してやっていけるか。業績を生み出す能力が発揮されているか。この2つの個人パフォーマンスに意識的になるスタンスですね。そのためには、どういう人材を獲得すべきなのかを逆算して考えていくアプローチ。そして、Cは個人の視点から離れ、組織的な観点で効果を考えるスタンスですね。

服部:はい。Cとして、「組織業績」における効果があげられます。組織レベルの業績は、必ずしも個人の業績の総和とイコールにならず、入社後の配置や人材育成などとの関連で、そうした総和以上にもなるし、またそれ以下にもなる。

神谷:より複雑な効果の捉え方になりますね。人材同士の資質の掛け合わせで生まれる価値を想定しつつ、人材採用を検討していくわけですから。個人の能力だけでなく、組織への影響も考慮しつつ、採用を捉えていく必要がありますよね。

服部:そうですね。ここまで来ると配置転換や育成、評価や昇進昇格などとの関連で捉えていく必要がでてくるでしょうね。

神谷:まさに戦略人事の考えですね。戦略に資する人材を社内でいかにマネジメントしていくのか。その文脈で、どういった人材を採用すればいいのかを検討していく姿勢ですね。

■実際に採用効果はどのように捉えられているだろうか。

<マイナビ> 様々な効果の捉えかたがあるんですね。改めて、採用は深いなと思いました。実際に、企業において重視されている効果として、Aの観点が多いと思います。このあたりについて、どのようにお考えですか。

神谷:そうですね。確かにAの観点で捉える企業が多いように思いますね。「今年の採用はどうだったのか?」この問いに対して、エントリー数や選考参加社数、辞退数などで上司の方に説明されているご担当者が多いと思います。実際に採用データを分析してみても、Bの観点はあまり感じ取れないかな。入社後のパフォーマンスに資する能力へ注目する。そして、戦略的に集めたり、見極めたりできている企業は限られている印象です。

服部:私も同意見ですね。実態としてみれば、現状の採用活動は、上記のAを主眼において設計されているといえるでしょう。面接での評価と入社後の業績にはほとんど相関性がないのが現実です。しかし、一方で「御社における採用活動の成功とはなんですか」とたずねてみると、多くのご担当者が「組織に貢献する人材を採用すること」とか、「組織を変革する人材を採用すること」という答えを返してきます。

神谷:それは面白いですね。Bの観点を企業は知らないわけではないし、より本質的な効果であると認識しているはずです。しかし、実態としてはAの観点で行われている。言い方が悪いですが、実態と「建前」が乖離しているんでしょうか。

服部: Bを建前としておきながら、実際に信奉しているのは、Aの方なのではないかというのが、私の見立てです。クリス・アージリスの言葉で言うならば、建前上の持論(espoused theory)を語る一方で、実際に使用されている持論(theory-in-use)が存在していると。

神谷:目的地と、次の一歩がズレている。「なぜ、やっているのか?(Why)」のベクトルと、「実際にどのようにやっているのか?(How)」のベクトルが、異なる方向を向いている。こういう現象はなぜ起こるのか?そこについてちょっとはなしてみましょうか。

■なぜ目的と実践が乖離するのか。

服部:これは、新卒採用に特有の “採用と「業績」とのタイムラグの問題”が絡んでいるのだと思います。ある人を採用してから実際に「業績」をあげる/あげないが判明するまでには必ずタイムラグがある。そのラグが長くなればなるほど、「業績」は採用時に測定した能力以外の様々な要素の影響を受けることになります。

神谷:例えば、採用した人材が1年後に業績を上げたという事例があるとする。その1年後に上げた業績が、採用による効果なのか、入社後の研修や教育の影響か。先輩社員や上司の影響か。或いは景況が好転したためなのか。たまたま、売上を伸ばしやすい商品や顧客を担当したからなのか。神のみぞ知る感じですね(笑)。

服部:そうなんです。日本企業の場合、このタイムラグがとりわけ大きくなる。具体的には、私の分析では、典型的な日本企業の営業職において、新卒社員たちの成果が顕在化するまでには少なくとも2、3年はかかってしまう。

神谷:それくらいは、かかりそうですね。営業職ならまだ効果測定しやすい方かもしれません。事務職やメーカーなどの職務はさらに個人のパフォーマンスが見えにくいでしょうし…。

服部:まずパフォーマンスの定量化することが大変な組織もあるでしょうね。

神谷:それに、そんなに長期間の調査や分析ができるのかという論点もありますよね。採用担当は、次年度の実践を検討するためには次々と施策や企画を決めなければいけない。インターンシップが実質的には採用の文脈に組み込まれていますから、採用業務はより膨大になっているだろうなと。だからこそ、彼らの喫緊の問題意識はオペレーションの改善にあるのでしょう。

服部:いろいろな要素が絡み合って、今のような採用現場の状況がつくりあげられているということでしょうね。その状況において、長期的な効果検証は実践するのは困難かもしれない。

神谷:Bの観点は重要なのは分かっちゃいるけど、検証が容易ではない。目的と実践の乖離は採用だけではなく、人事施策の全てに言えることかもしれませんね。人事施策が人材に影響を与えるには時間が必要です。研修でも、評価制度でも、昇進昇格でも、同じことが言えます。「現行の仕組みや施策が本当に妥当なのか?」の問いに対してアンサーをだそうという姿勢をとれないままに、担当者はTODOリストの「次」をやらなければいけない。

<マイナビ>効果測定の方法などを気軽に話し合ってもらおうと考えていましたが、思いのほか重いテーマだったようですね。今回の対談だけで完結することは難しそうですので、次回以降もこのテーマをつないでいきたいと思います。次回は今回のお話を踏まえて、「では、採用現場の担当者はどうしたらよいのか?」この点について対談をr続けて頂きます。

次回をお楽しみにお待ちください。