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「採用学」対談(第3回対談)

「採用学」対談の第3回目です。今回は人事担当者に求められる資質や姿勢について、お二人にお話していただきます。

■対談者プロフィール

採用学研究所 リーダー
服部泰宏(はっとり・やすひろ)
1980年神奈川県小田原市生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了、経営学博士。現在、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。日本企業における組織と個人の関わり合い(組織コミットメントや心理的契約)、経営学的な知識の普及の研究、シニア人材のマネジメント等、多数の研究活動に従事する。
採用学研究所 フェロー
神谷俊(かみや・しゅん)
1983年神奈川県小田原市生まれ。2013年法政大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、経営学修士。採用学研究所にて調査・研究を推進する一方、多様な組織に在籍し、独自のキャリアを展開。株式会社エスノグラファー代表取締役、株式会社ビジネスリサーチラボ研究員、面白法人カヤック「社外」人事など兼務。幅広い領域を越境しながら地域・組織などのコンサルティングを手掛ける。

■人事担当の苦悩と役割について考える。

<マイナビ>前回の第2回では、「面接」をテーマにお二人にお話頂きました。その中で、お話として出てきたのが「人事担当者が現場の社員を採用に巻き込むことの難しさ」に関するものでした。今回は、こちらを踏まえて人事担当者に求められる資質をテーマに対談をしていただきます。
服部:服部:前回、たしか神谷さんの事例で面接におけるコミュニケーションの設計を綿密に行ったにもかかわらず、現場の面接官の協力が得られなかった……というお話があったんですよね。人事と現場の間に意識の隔たりがあって、それを調整できなかったと。それを踏まえて、人事担当者ってどういう要素が求められるんだろうかというのを話すのが今回ですかね。
神谷:そうですね。現場との採用に対する認識をどう調整していくのか。現場協力をいかに仰ぐか。ここに苦労している人事は多いと思うんですよね。例えば、今の採用の難易度の捉え方などが人事と現場で全然違うケースもあります。人事担当者は危機感を持っているけれど、現場は楽観視しているという状況も多いように思えますね。
服部:それは聞きますね。おそらく情報の保有量の問題なのかと。今の市場の求人倍率や厳しさに関する情報を現場が把握できていないという側面はありそうです。

神谷:あるかもしれません。さらに、現場だけでなく、人事担当者と経営層の間にもそういった認識の乖離が発生しているケースがありますね。採用活動の難しさを人事担当者「だけ」が体感しているという状況も想像に難くない。四面楚歌……まではいかずとも、孤立無援な状況に立っている担当者はいらっしゃるでしょう。

服部:予算も潤沢にあって、比較的学生を採用しやすいような企業ならそれでも良いのでしょうけどね。

神谷:そうなんです。採用が厳しい企業ほど、そういった状況になっているケースもあるようです。今の採用市場においては、面接のコミュニケーションの質や、リクルーターのような採用施策の人的側面が重視されている状況です。インターンシップも現場協力が求められますよね。そのような中でいかに人事担当者が「ハブ」となって現場の社員協力を得ていくかというのは、本当に重要な問題。

服部:そうなんですよ。でも、ひとつ疑問なのは、なぜ採用だけ軽視されてしまうのかですね。「ヒト・モノ・カネ」の経営資源は、全て大事なのですけど、商品(モノ)や売上(カネ)に関しては、経営陣や現場社員はすごく意識的になる一方で、採用(ヒト)の部分は今一つ重視されていない印象です。

神谷:そうですね、「ヒト・モノ・カネ」全てが組織を発展させるうえで重要な資源ならば、同じように考えるべきなんでしょう。例えば、自社の商品が市場で評価されない、つまり売れないとなるとかなり問題になりますよね。しかし、「ヒト」の場合はどうでしょうね。自社が従業員に提供しているキャリアが求職者から評価されない、すなわち人が採用できないというこの問題が現場社員において希薄化されていくのはなぜでしょうね。商品が売れなければ、企業は全社的に販促施策を展開するでしょう。お客さんに対して必死に営業をするかもしれません。でも、採用ができない状況で、学生獲得のために全社的に……となる企業は限られている印象です。
服部:それ、面白いですね。採用活動をマーケティング活動として考えると糸口が見えてきそうです。マーケティングの責任者の動きを人事担当者がそのままやると、また異なってくるのかもしれません。自社の価値を、社外に対して発信し、受け入れてもらうという点については採用もマーケティングも一緒ですから。

神谷:その方向で思考を進めてみますか。つまり、なぜ商品が売れないのか?を考えるのと同様に、自社が人材獲得できていない理由を考える。そのうえで要因を徹底的に調べたり、社内の関係部署に働きかけたり……。ようするに顧客のニーズを分析するように、学生のニーズと向き合い、それに対応するアクションを企画していく感じですね。経営層に掛け合って、予算を確保しようとすることもあるでしょう。そういう姿勢で現場を巻き込んでいくことが人事担当者に求められるのでしょうね。この動き方は、従来の労務管理業務を軸とした「人事部」の動きとは掛け離れていますよね。

服部:そうですね。実際に、人事の在り方を問う議論はアカデミックでもありますよね。例えば、Ulrich(1997)は人事担当者に組織変革の推進者や、人材と戦略を考案するパートナーであることを提唱しています。

神谷:Ulrichの提唱するHRの役割は、あくまで海外企業をモデルとした役割なのでしょうが、現在の日本企業にこそあてはまる側面はありますよね。労働市場が非常に活性化し、従業員不足に関する悩みも色濃くなっている。そこで、人材という戦略資源の確保や育成は、経営課題の俎上にあるともいえます。それに、日本企業のほうが社内調整が困難なところもある(笑)。

服部:日本においても人事という仕事の捉え方が大きく変わってきていますよね。市場環境の変化がかなりスピーディですから、人材確保や育成の機能が停滞すると、状況の変化に現場や組織が適応できなくなることもあるかもしれません。その時に、人事担当者が外部環境と内部環境の整合性を保つために動き回る必要があるんでしょうね。経営や現場との溝を恐れることなく飛び越えて社内と交渉していくような、そんなスタイルが求められているんでしょうね。
神谷:組織の指示や変化を待つのではなく、人事から組織を変えていく。そんな姿勢ですね。

■リアリスト & プロデューサー としての資質が求められる。

服部:重要なのは自社を俯瞰する視点ではないでしょうか。

神谷:「自社を」という点がポイントですね。「自社の採用の状況や成果」ではなく、「自社」という組織体そのものを捉える視点が大事ですよね。学生含めた外部市場の状況を踏まえて、そこに自社をどのように売り出していくかを検討できなくては、戦略を構築することができません。さらに言うと、俯瞰的な視点に加えて人事はある意味でリアリストである必要性もあるのかなと。
服部:リアリストですか、なるほど。

神谷:自社は規模が小さいとか、認知度が低いとか、採用担当者の人数が少ないという現実から目を背けてしまったり、それを隠して、或いはよく見せようとしたりしてしまうと、人事担当自身が企業の実態を見えなくなってしまう。リアルから目を背けた時点で、その特徴を巧く意味付けしていこうとする思考がなくなってしまう。そうすると採用すべき人材や広報内容がどんどん実態から乖離していく。

服部:「弱み」をよく見せたところで、学生が入社後にリアリティショックに陥るリスクが高まるだけですし、ミスマッチが生まれるだけですね。自社の「弱み」ではなく、「特徴」として捉える。冷静な視点ですね。

神谷:そう、あくまで特徴なのです。組織が小さいとか、ニッチな業種であるとか、そういうのはあくまで特徴。採用が上手くいかないことの直接的な理由にはなり得ません。だから、組織の特徴イコール採用上の弱みというわけではない。むしろ、特徴を認識してからが重要。その特徴と向き合って組織の魅力や価値を見出していく姿勢が求められると思っています。

服部:そうですね。実態を直視して、過不足のポイントを的確に捉えていくということですね。確かに、ビジネスの世界は、組織の大きさや参入市場の規模だけで企業の強さが決まるわけではないですからね。

神谷:そうです。例えば「組織が小さい」という特徴は、価値がある環境とも捉えることができる。例えば、入社後の経験の質に大きな影響を与えるでしょう。規模が小さければ個人の裁量が大きくなる。それは、試行錯誤の幅を大きくさせたり、従業員個人の意思決定レベルを引き上げたりするかもしれない。そしてその経験の質は、今後のキャリアの質を高めるはずです。そういう側面だってあるはずなんです。その観点から見ると、個人的なキャリアが重視されるこれからの時代こそ、小さな組織に入った方がいい……なんて言うポジティブな捉え方もあるはずですよね。僕なんか入社するなら絶対小さいところがいい(笑)。
服部:「小さな組織という特徴こそがリソースである」とみなすスタンスですね。言ってみれば組織のプロデュースをするっていうこと。自社のリアルと対峙して、そこから価値を見出し、学生へ伝える。

神谷:はい。あくまで例として「組織の大きさ」を挙げましたが、これは社員の特徴や、商品の特徴、事業ドメインなど、あらゆる特徴に対してプロデュースできる余地がありますよね。

服部:的確に自社のオリジナリティを見極めて、他社とは異なる角度で「物差し」をあてて、そこを意味づけて市場の中でポジションを確立していく。そういう姿勢ですね。

神谷:もう1つ、リアリストであるべき理由は、人材というリソースの「評価者」としての意味合いですね。

服部:人事は、人材というリソースを適切に捉える必要がある。

神谷:そうです。僕は、人材というリソースは実に抽象度の高い資源であると感じています。個人の価値観や人間観によっても捉え方は異なるでしょうし、カネやモノほど客観的にデータ化できない。それゆえに、ついつい希望的観測をしてしまう側面があると思っています。モノならば、原価やスペックなど制約が見える化されているので、嫌でもリアルに考えざるを得ない。しかし、人材に関しては、未来や成長、教育や潜在的な能力、価値観や信念など見えない割合が一定レベルで潜在する。そこに希望を抱きすぎて実態からブレてしまうのも危険だなと思います。

服部:確かに。人材要件でも、非常に多様な資質を求めてしまうケースはありますよね。

神谷:「特盛人材」ですね。また「即戦力」といったキーワードもよく見かけますね。未経験者の新卒を指して即戦力という言語を当て込むのは、やや過剰な表現だなと感じます。

服部:あまりに非現実的な人材要件は、採用効率の観点で言えば定める意味がありませんし、反対に採用のパフォーマンスを落としかねない。だからこその「リアリストたれ」ですね。組織を俯瞰する視点の中に、人材の資質や能力を適切に見抜く視点も含まれるのでしょうね。

■そして、クリエイティビティを楽しむ。

服部:人事のスタンスについてお話をしてきましたが、この対話の中で出た資質は、①組織のリソースや実態・特徴を適切に捉えるリアリストとしての姿勢、②そこから独自的な価値を見出し、プロデュースする姿勢でしたね。これ、振り返って感じましたが順番が大事な気がします。

神谷:順番?逆になってはマズイということですかね。

服部:そう。例えば、組織のリソースを踏まえずに、いきなりプロデュースをしようとしてもダメ。それは人材要件も同じなのですが、組織の実態に即していないプロデュースやアプローチはいくら言語が奇抜であっても、空回りするでしょう。まずは、組織のリソースや特徴を俯瞰的に捉える。そのうえで価値を打ちだせる側面を抽出し、プロデュースをしていく。
神谷:リソースの把握、そして戦略の構築。経営戦略と同じようなものですね。

服部:しかし、実際にそういったスタンスで採用に臨める人は限られている気がします。とかく採用担当者というと、前年度の採用成果を踏まえて、反省的に採用計画を立案し、いかに効率的に進めるかという姿勢が強いような。マネジメントの側面というか……。戦略的に採用を考えていくのって面白いと思うんですけどね。

神谷:自社を俯瞰し、他社と比較をして、一見「弱み」に見えてしまうものを強みとして捉えられたら、それは面白いですよね。

服部:自社の特徴を捉えて、それをキャッチーな言語に置き換えて、自社にマッチする採用戦略に転換していく。そのプロセスは非常にクリエイティブですよね。

神谷:そういったプロデュースやクリエイティビティを楽しめる感覚って重要な気がしています。実態を踏まえつつ、知恵を絞って最適な独自路線を拓くような……。

服部:採用学で支援をさせて頂いた三幸製菓さんの「カフェテリア採用」はまさにそれですね。一度そういった自社独自のアプローチを生み出すと「これはイケる」っていう感触が、また人事担当者を走らせる。

神谷:その先にあるのは、組織の指示命令やミッションといったKPIではないのでしょう。自社らしい採用を創る楽しさ、とでも言うんでしょうか。そういうものに背中を押されていく。セルフドライブな人事が増えていくといいですね。

<マイナビ>有り難うございました。人事担当者の役割についてお話をいただきました。興味深いのは、経営的、マーケティング的な視点も含まれていたという点ですね。さらに、「リアリストでなければならない」という神谷さんのコメントは求人広告を手がけるマイナビにとっても深く突き刺さるコメントでした。本日は、どうも有り難うございました。

今後も、採用施策の様々なテーマについてお二人にお話頂き、毎月記事を更新していこうと考えています。
次回をお楽しみにお待ちください。